名義貸しと僻地の医師不足を解消するために,自治医科大学のような制度をすべての医学部に導入しようとしているらしい.

具体的に言うと,入学時に僻地医療に従事することを条件にする.医師免許取得後の何年かを僻地医療に従事する義務を負わせるなどが案としてあがっているらしい.

だが,これが解決策になるとは私には到底思えない.まず,地方の病院が本当に欲しいのは一生いてくれる経験豊富で腕のいい医師なのだ.
だが,そんな医師がいたら都会の病院も欲しい.だから,地方には腕のいい医師は本人に何か理由がなけれれば残らない.

では,地方に残る理由を考えてみよう.

お金の面では地方自治体はどこも苦しい.だから給与面では昔のようないい条件はない.

仕事も地方の病院で最新鋭の医療器械をそう導入できるはずもなく新しい診断や治療の機会も少ない.だから論文も書きにくい.地方に長くいると大学との関係は疎遠となり大学での出世は望めなくなる.

患者との関係は確かに都会に比べて人情に厚い傾向や小さな町ならではの狭くて密な人間関係が経験できるがこれも一長一短である.

生活面では都会暮らしになれた家族からの生活の質や人間関係の不満が一番の問題だ.また,就学期の子供がいれば教育問題もある.

こう考えると何かの理由で地域医療に燃える医師以外は都会に集まるわけである.
かといって渋々赴任した医師がまともに働くことも期待できない.
なんとも医師としては情けない話ではあるが,これが現実的な医師側の問題だと思う.

それでも快適に診療ができるなら仕事を重視する医師なら我慢できると思うが,実際には地方の病院の環境はいろいろな面でよくないのが実態だ.院長をはじめとして固定の医師ほどあまり働かない傾向がある.出張医のみが当直や救急などの疲れる仕事をやらされるのでは人手も多く快適な都会に戻りたくなっても無理はない.

僻地勤務を義務化してもその期間が終わったらすぐに都会の病院や大学にもどるだろう.ただ医師側に負担を強いるやりかたでは優秀な医師は育たない.優秀な人材はそんな職業には就かなくなるだろう.それは医療全体の質の低下をまねくような気がするがどうだろうか.

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索