脳外科医というとどんな印象を一般には持たれているのかよくわからない.自分では新しいものにすぐに飛びつく人がほかの科の医師にくらべて多いような気がする.

もちろん自分も含めての話だが,特に新しい診断機器や手術器械にはすぐに反応する傾向がある.私生活でも新型の高性能スポーツカーや高性能なポータブルコンピュータを持ってたりしている.

脳神経外科の診断や治療の技術もどんどん新しくなるので,新し物好きでないと置いていかれるからそういう傾向になるのかも知れない.

ここ数年で日本脳神経血管内治療学会の専門医制度ができて若い脳神経外科医には今後必修のような印象を与えているようだ.

これは大腿の動脈から頭頸部の動脈にアクセスして治療するもので.開頭手術をしないでも治療できるという点もいいが,開頭手術ではできない治療ができるというのが大変すばらしいと私は思う.

脳外科医として手術がほぼ1人前にできるようになるにはだいたい10年というのが目安である.それだけ手術の技術的難易度や患者のリスクが高いためと思う.複雑な手技をマスターする努力や長時間の手術や心理的ストレスに対する忍耐力が要求されるのである.それらを獲得できる脳外科医は実はほんの一部なのである.

一方の血管内手術はだいたい3年で一人前になるようだ.若い脳外科医が飛びつきたくなるのも無理はない.開頭手術ができなくても治療できるのだ.しかも,患者さんのリスクは古典的脳外科手術よりも少ないと聞かされている.メディアも新しい治療法と注目している.

新し物好きの若い脳外科医にはまさにうってつけだ.とりあえず新しくて習得期間が短いからやってみるのはいいのかも知れない.

だが,熟達した術者になるには寸暇を惜しんで努力する必要があるのを忘れてはいないだろうか.血管内手術の術者には放射線科医でも循環器内科医でもなれるのである.開頭手術がきちんとできる脳外科医になるのにわき目を振っている暇はないと思うのだがどうだろうか.

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