命の値段

2003年12月26日
今回のイラク派遣で自衛隊員が死亡した場合は遺族に9000万円が支払われるらしい.これが高いか安いかと考えることは命の値段をつけることなのであろうか.

最近の医療事故での民事訴訟の賠償金をみていると死亡時は1億円を超えることもめずらしくなくなってきている.中には1億7000万円なんていうのもあった.

本来,人の命に値段なんてないはずだから,これはやっぱり遺族救済金なのだろう.

脳神経外科学会で団体加入している医師損害賠償責任保険なんかは上限が1事故1億円であるが,これでは足りない場合が今後続出するかもしれない.

http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/NougeHaigyouMT.shtml

ここには訴訟社会での救急医療のあり方が問われているが,脳血管障害つまりブレインアタックで搬送される患者もいずれ同じ運命が待っているかもしれない.

話は変わるが,最近脳ドックで見つかった未破裂脳動脈瘤の手術で後遺障害が残ったり死亡して訴訟になるのが多いようだ.

リスクを考えると未破裂脳動脈瘤は健康保険適用外にして主治医と相談して報酬を決めるのがいいかも知れない.そして高額な保険を症例ごとにかけた方がいいのではないだろうか.

だが,手術で後遺障害が出た場合にこれを業務上過失傷害とされたら保険をかけても救われない.破裂して死亡したら業務上過失致死というのだったら,私はリスキーな手術はやめたほうがいいのだろうか.

人が病気になるのはその人の遺伝的要因と生後の環境的要因の2つが原因であって,患者が病院を受診するまでに医師はなんの責任もないはずである.

つまり医師が病気を治すということは,患者自身の問題解決の手助けをすることであるはずだ.

法的に医師が患者に病気を治す義務を負うのかどうか私にはわからないが,明確な基準が示されないまま治療の結果のみで法的に医療事故という言い方をするのには疑問を感じる.

裁判などで結果のみで損害賠償というなら病気になった本人の過失相殺という考えはなぜ出てこないのだろうか.

米国のように産婦人科医がいなくなったり,脳外科医が救急医療をやらなくなったりする前に考えておくべき問題だと思うのだが,診療報酬改定はそんなことはおかまいなしだ.

政府は良質な医療を格安で提供させ,リスクは一方的に医療従事者に負わせる方針のようであるが,そんなにうまい話が通用するだろうか.

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