『東大病院で脳腫瘍(しゅよう)の摘出手術を受けた後、投与された麻酔用睡眠薬の副作用で低酸素脳症となり、約5年半も意識不明の状態が続いている大阪市の楊鴻飛(よう・こうひ)さん(85)と妻ら計3人が、東大に総額約1億300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、約6600万円の支払いを命じた。
菅野博之(かんの・ひろゆき)裁判長は「呼吸困難などの重大な副作用が頻繁にある強力な薬なのに、技量未熟な研修医が1人でかなりの量を急速に使用した」と指摘。「呼吸困難になった場合の治療態勢を整えるべきだったのに怠った」と研修医の過失を認めた。判決によると楊さんは1998年9月、東大病院脳神経外科で手術を受けた。手術は成功したが、入院中に意識障害を起こし病室内で歩き回ろうとしたため、研修医が深夜、超即効性睡眠薬を2回にわたり静脈注射。一時呼吸停止となり、蘇生(そせい)はしたものの、低酸素脳症で意識不明の状態が続いている。楊さんの妻、杜雲峰(とうんぽう)さん(83)は判決を受け「東大は事故当時に指導医が不在で当直医にも連絡が取れなかったことを、裁判で判明するまで隠していた。薬剤の使用などに非はなかったとする不誠実な態度は医師としても人間としても許されない」と話した。』

先日テレビでこの件をやっていたが,患者さんの娘とその夫も医師で医師が大学病院を訴えたというのが話題になっていた.この記事でもまたまた研修医が問題になっているようだが,研修医が技量未熟なのはあたりまえで術後管理や当直を研修医一人でやらせるのは問題なのはわかりきったことである.

だが,このわかりきったことが是正できないのが大学病院なのである.この春から研修医制度がスタートしたため研修医が一人で術後管理することなどないはずであるが,東北大学などではそのかわりに大学院生を使うことを明らかにしている.では,大学院生なら事故は防げるのであろうか.

この事故で問題となったドルミカムという薬はホリゾンやイソゾールなどに比べれば安全域が広く使いやすいほうではあるのだが,これらの薬は効果に個人差があり使用には十分な経験を要すると思う.ちゃんと気道確保の準備があればもちろんこういった事故は防げるのだろうが,呼吸停止といった事態はよく起こるのであろう.

東大を訴えた医師がテレビで言っていたのは研修医の過失よりも研修医がひとりで判断しなければならない状況をつくりだした東大脳神経外科の診療体制に問題があるという意見だった.先日の抗がん剤の投薬ミスもそうだったがこれも大学病院の危機管理意識の低さがまねいた事故といえるのかもしれない.

ちなみに東大脳神経外科は日本で一番最初に脳神経外科学講座が開設された伝統ある教室だそうである.

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