『--臨床研修制度の見直し要望 医学部長病院長会議--

 2004年度から始まった医師の臨床研修制度の影響で、大学での人材不足やへき地の医師不足が起きているとして、全国の大学でつくる「全国医学部長病院長会議」(吉村博邦(よしむら・ひろくに)会長)は17日、厚生労働省や文部科学省に対し、研修制度の見直しなどを要望した。

 また、全国自治体病院協議会も同日、厚労省などに医師不足や偏在の解消を要望した。同会議によると、臨床研修医の大学病院への在籍率は、03年度の72・6%から05年度の49・2%と大幅に低下した。研修できる医療機関の基準が大幅に緩和され、特に大都市の病院に研修医が集中。地方の大学病院離れが深刻化した結果、大学病院から中堅クラスの医師をへき地へ派遣できなくなった。

 同会議は(1)研修医を適切に配置する仕組みをつくるなど、臨床研修制度を見直す(2)卒業以前の学生も実習で一定の医療行為ができるよう、環境を整える(3)卒業前後で国の指導が文科省と厚労省に分かれているが、一貫した医師教育を推進できる行政システムを望む-ことなどを要望した。

 吉村会長らは「研修修了後も地域や大学に医師が戻らなければ、地域医療は壊滅し、日本の医療の研究力も落ちる」と語った。

 研修医はこれまで、十分な研修プログラムもなく、大学病院で安価な労働力として使われていると批判があった。昨年度から始まった制度では、幅広い分野で基礎的な診療能力を身に付けることに主眼が置かれた。』

 残念ながら大都市の病院に研修医が集中したことが多くの地方で働く臨床医の気持ちを代弁していると思わざるを得ない.もちろん研修医が同じ研修を受けるならネームバリューのある大都市の病院でという気持ちからで彼らが研修後に地方医療に目覚める可能性はあるだろう.だが,地方で働く医師にもどうせ働くなら症例数も情報も多い大都市の病院でという気持ちがあってもなんの不思議もないだろう.

 大学病院と自治体病院の思惑はまったく異なるが本音は自分のところの医師確保である.大学病院こそが医療レベルが高いなどという神話はすでに研修医の間では崩壊しているし,自治体病院は研修体制以前に経済的に崩壊しかかっているところが多いということも今どきの研修医はお見通しなのだろう.これもインターネットのおかげ(弊害?)か.

 結局のところ研修医制度は医師の流動化をもたらしただけのようである.結果として医局制度が崩壊し地方医療が崩壊したとすればその代償としては果たして高かったのか安かったのか.少なくとも地方の医療コストは上昇しないわけにはいかないだろう.大学病院も人材不足がさらに進んで現在のレベルの維持も困難になるのだろうか.先のことはわからないが,いずれにしてもこれらが元にもどることはないような気がする臨床医は私だけだろうか.

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