『--長期入院患者の負担軽減 「180日ルール」廃止--

 厚生労働省は25日、医療保険適用型療養病床の長期入院患者に対し、入院日数が180日を超えると自己負担が増える「180日ルール」を来年4月の診療報酬改定で廃止する方針を中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。

 同時に、同療養病床の患者を処置の内容や疾患、状態に応じて分類。医療の必要度が低い患者への診療報酬を減額し、介護保険適用施設などに移るよう促す報酬体系にする。

 180日ルールは退院できるのに入院し続ける「社会的入院」解消のため、罰則的に導入された制度。同じ病気での入院日数が通算180日を超えると、入院料の15%が保険給付の対象外となる。

 しかし、現実には行き先がないため、負担増のまま入院し続ける患者が多く、制度廃止を求める声が出ていた。』

 これで長期に安心して入院ができるようになったということにはならないだろう.むしろ医療の必要度が低い患者への診療報酬を減額することにより長期療養患者は介護保険施設への移動を余儀なくされることだろう.

 どういうことかを説明すると長い話になってしまうが,ことの始まりは介護保険制度の導入であろう。社会的入院と呼ばれる特に治療を要しないのに入院している患者を病院から引き離し家庭や施設に移すという制度である.私は当時在宅医療にも従事していたが,制度導入以前に介護保険事業による医療サービスの低下を懸念していた.

 果たして介護保険制度によって提供される医療サービスは社会的入院の場合より向上しただろうか?そして,同じサービスを提供するためにかかるコストは低下したであろうか?私はどう見てもコストパフォーマンスは低下していると思う.

 入院療養を介護療養に切り替えることは病院から介護業者へのサービス主体の転換であり,国の健康保険から自治体の介護保険への支払いの主体転換でもあった.その結果としてはおそらく医療費の低下よりも介護保険料と自費の増加のほうがはるかに多いだろう.これでは自治体と住民が自前で公共事業をやるようなものだ.

 今回の180日ルールの改正も入院条件の緩和では決してなく,同時に同療養病床の患者の分類を細分化することにより社会的入院では病院側に採算が取れなくすることにより介護保険適用施設などに移るよう促すということである.もとより経営状態の厳しい病院であれば社会的入院を長引かせれば診療単価の低下を招くわけであるから急性期の28日を過ぎれば180日どころか1日でも早くベッドを空けるように患者に求めることは容易に想像できる.

 今後は療養型病床であればより介護度の高い寝たきりや神経難病の患者さんにシフトすることになるだろう.介護型病床にするなら改築の補助金まで出してもらえるようだが現在の介護保険施設を見ても採算性には疑問がありいずれの選択をとるか難しいだろう.来年4月の診療報酬改定次第ではあるが療養型病床の縮小が今後は進むと予想されるのだがどうなるだろうか.

 180日ルールの廃止は負担軽減のためなどではなく医療費削減のための必要性が薄れただけということなのであろう.慢性期療養の患者さんにとっては食費の自己負担も含め医療サービスのさらなる低下は避けられないであろう.

コメント

スミぱん@国会を見よう
スミぱん
2005年11月30日5:42

ウチが入院していたところは、ほとんど「社会的入院」の
人が多かったのですが、彼らはもし退院しても住むところも
なければ職もないので(年配の方が多いため)、180日
ルールを適用したら、真っ先に悲鳴をあげるんじゃないかと
思います。

スミぱん@国会を見よう
スミぱん
2005年11月30日5:44

失礼、180日ルールを廃止したら、ですね。

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