『--健康志向なのに? 肥満や大量飲酒増加、国の目標遠のく--

 肥満や大量飲酒する人の割合などが、国の定めた目標値から、より遠のいていることが厚生労働省のまとめでわかった。国民の健康づくり計画「健康日本21」に掲げる70項目の達成目標値のうち、約20項目で計画をつくった時より悪化していた。健康志向が高まっていると言われる中、目標達成が難しくなっている実態が浮かび上がった。

 健康日本21は、同省が00年につくり、国民の食生活や運動量、がん患者の数などを改善しようと、70項目について「目標値」を決めた。2010年までの達成を目指している。

 同省が、各項目について計画をつくった当時の国民健康・栄養調査などの数値と、昨年5月までにわかった数値(暫定)を比べたところ、20〜60歳代の男性の肥満の割合は、計画時の24.3%から29.5%に悪化。目標値の15%以下には遠く及ばなかった。

 飲酒量では、日本酒換算で1日3合以上飲む男性の割合が、目標値は3.2%以下なのに、策定時の4.1%から5.3%に増えた。

 牛乳、乳製品などカルシウムを含む食品の摂取量(目標値・1日当たり130グラム以上)は策定時は107グラムだったが、97グラムに減った。また、朝食を食べない中高生の割合は、6.0%から8.7%に、30歳代の男性では20.5%から23.0%にそれぞれ増えていた。

 運動の目安になる1日当たりの歩数も男女とも減った。

 幼児の虫歯や食塩摂取量など目標値に近づいた項目もあったが、多くが横ばい。調査中で比較できない項目も3割以上あった。

 厚労省は今年度中をめどに計画の中間見直しを進めており、「目標値の見直しも含めて検討していきたい」としている。 』

 現状の分析から将来の予測そして対策までがきちんとできて初めて数値目標の意味があると思うのだが,厚生労働省の目標値というのは目標というより要望と言ったほうがいいのではないだろうか.予防医学という点からみれば,この結果は厚生労働省のミスと言っていいだろう.

 名義貸し問題への対応や診療報酬の削減も然りである.国家権力を背景に自分の都合を押し付けるだけの厚生労働省には合理的な問題解決能力があるとは思えない.最近はこんなことも問題になっている.

『--医療改革法案了承持ち越し 自民、療養床再編に反対論--

 自民党厚生労働部会は3日午前、入院日数の短縮や生活習慣病対策などで医療費抑制を目指す、厚生労働省の医療制度改革関連法案の了承手続きに入ったが、長期入院患者が多い療養病床の再編、縮小案に反対意見が出て、了承を同日午後以降に持ち越した。

 会合では、常時の治療を必要としていない「社会的入院」を減らすため、療養病床(38万床)のうち、介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減するとの同省の再編案に議論が集中。「現在入院している患者や家族の意向を調査せずに決めている」「老人の症状によっては、入る施設がなくなってしまう」などの反対論が続出し、意見が集約できず、午後、部会を再開し議論を続けることになった。』

 現在入院している患者や家族の意向を調査していないというのはどうだろうか.先日の,過剰な医療を減らし給付費の膨張を抑制するだけでなく、「医療の供給体制全体を国民の要望に応える形に改革する」(同省幹部)狙いというのは言葉だけだったと思われてもしょうがないだろう.なんと典型的なお役所仕事で誠意のないことだろうか.

 医療現場から言わせてもらえば,「介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減する」という論理的な根拠がないしこれによって生じる患者の家族や国民の負担増の予測も明かされていない.要するに現状分析も将来の予測も示さずに削減論だけを出しているわけだ.

 これでは,患者が在宅や施設への移動する際の心理的,肉体的な不安,そして家族の経済的負担の増加などによる医療機関とのトラブルはすぐに起こるだろうし,将来的には団塊の世代による病床不足からの入院拒否や介護保険料の急増による国民の負担増はむしろ医療保険の増額を上回る可能性すら出てくるのではないだろうか.

 厚生労働省が財務省でもないのにお金の話ばかりするのには失望させられる.国民の健康を守り,福祉を充実させるという視点からの現状分析と将来の予測というものを国民に示して施策の合理的な根拠を示す義務はないのだろうか.それを示してもらえるなら医師として納得できるのであるが.

 どうも厚生労働省の論理は「お金がないから払えない.もっと医療費を安くしろ.」と言っているだけにみえる.こんな見かけの数字合わせをしたら現実はうまくいくはずはないのである.そんなことは当然わかっているはずで,やはりわかっていながらうまく偽装して責任逃れするつもりなのだろう.こうして問題はまた先送りとなり,医療現場でこちらが苦労させられるわけである.

コメント

nophoto
medwriter
2006年2月8日13:03

同感です。
といっても私は医療ライターですが。http://medwriter.blog45.fc2.com/

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