『 -- 優しい心で冷たいメスを 心臓移植の和田氏が学生に --

 1968年に国内で初めて心臓移植手術を行い、手術の是非が論議を招いた札幌医大の和田寿郎(わだ・じゅろう)名誉教授(84)が18日、手術を行った同大で学生らに講演、「手には冷たいメスを握ろうとも、優しい心を持ってほしい」などと訴えた。

 講演は大学祭の一環。実行委員会によると、和田氏が学生に講演することは珍しく、熱心な依頼で実現したという。

 和田氏は講演で、さまざまな問題が指摘されている現在の医療現場について「心の勉強が足りていない」と倫理面の重要性を指摘。「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」などと強調した。

 問題視された心臓移植手術については「(手術後に)世界全部を敵に回すことになった」と振り返ったのにとどまった。

 講演は約300人が傍聴し熱心に耳を傾けた。北海道大医学部5年の庄司哲明(しょうじ・てつあき)さん(23)は「後進のためになろうという意思を感じた。期待に応えたい」と話した。

 和田氏は同大教授だった68年8月に心臓移植手術を執刀したが患者は83日目に死亡。臓器提供者の死の判定をめぐって刑事告発され不起訴となったが、その後の臓器移植や脳死論議などに大きな影響を及ぼした。』

 若い医師に「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」と言ったところで理解できるものはほとんどいないだろう.若い頃は誰でも向学心や功名心という不純な動機が困難な仕事に対するエネルギー源になるのであって,和田寿郎氏だってきっとそうだったに違いない.

 『衣食足りて礼節を知る』というが,人間は昔から生活が安定してはじめて良い人間ということを意識できるものなのだろう.しかし,人間の欲は際限がないもので,最近のニュースに出てくる人たちは私から見ればすでに十分お金持ちだが礼節には至らないようだ.そう言えば世界一お金持ちのビル・ゲイツ氏がマイクロソフトを引退して慈善事業にお金と時間をかけるそうだが,彼が50歳だそうだから,私もそれまでにはお金の心配をせずに「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」などと言えるようになりたいものだ.

コメント

nophoto
herb tea
2006年6月20日12:08

 いつもブログを読ませていただいています。私自身、脳外科の手術経験があるので、どうしても関連の記事には目が行ってしまいます。ブログの内容は、患者側の立場からみてもなるほどと共感することも多く、専門的な内容でよく理解できないときも、先生のブログはとても参考になります。一つ教えていただきたいのですが6月7日のブログの記事で、「脳腫瘍を固める薬剤の投与を受けた男性が・・・」というのがありましたが、脳腫瘍の摘出手術をする場合出血を防ぐためにカテーテルで薬剤をいれ腫瘍を固めるということをする場合があるのですか?すみませんもしお手数でなければ教えてください。今後もブログの更新を楽しみに読ませていただきます。

ブログ脳外科医
脳外科医
2006年6月20日12:43

ブログですので簡単にお答えします.手術時の出血を減らすことを目的に髄膜腫などで腫瘍を栄養している血管を塞栓子で閉塞させることはあります.血流がなくなった腫瘍は壊死して軟らかくなりますので腫瘍を固めるという言い方はちょっと違和感があります.

yuyuneko
2006年6月20日22:20

和田寿郎(わだ・じゅろう)氏が公演されたことを知りました。あれからもしっかりあの事実に向きあっておられる様子に敬意を覚えました。紹介ありがとうございました。脳外科医さんの現在も50歳からの活動にも期待をしています。

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