交通事故による脳脊髄液減少症の診断基準は?
2006年7月13日 医療の問題 コメント (1)『 -- 「特定疾患に認めて」 脳脊髄液減少症の全国組織 --
交通事故などに遭った後、頭痛やしびれを引き起こす脳脊髄(せきずい)液減少症の患者栂紀久代(とが・きくよ)さん(54)=大阪市=の呼び掛けで、全国の患者を支援する会「サン・クラブ」がこのほど発足した。
全国から趣旨に賛同する人が集まり、会員数は既に患者200人を含む1000人に。同会は会員を中心に患者の症状や生活への影響について8月末までに実態調査をする予定で、栂さんは「一人一人の声を国に届けることで、特定疾患として認めてもらいたい」と話している。
栂さんは1980年に鳥取県で交通事故に遭った。頭痛や体のしびれや耳鳴りに悩まされてきたが、病院では「仮病」と言われたり、「うつ病」と診断されたりした。自ら医師を探し出し、脳脊髄液減少症と診断されるまで23年かかった。
脳脊髄液減少症は脳と脊髄を覆う脳脊髄液が漏れ、液に浮かんでいる脳の位置がずれることで、頭や首、手足の痛み、記憶力低下や不眠などを引き起こす。同会によると、全国で約5000人が治療を受けているとされるが、患者数の実態は把握されていない。
腰椎(ようつい)に注射した血液の凝固作用で漏れを止める「ブラッドパッチ」という治療法があるが、厚生労働省は「学会からの要望がない」などとして健康保険の適用を認めていない。近年、重い後遺症として交通事故との因果関係を認める判決が相次いでいる。』
先日,徳島県議会が「脳脊髄(せきずい)液減少症(低髄液圧症候群)」の実態調査や治療法確立などを求める意見書を採択し小泉首相らへ提出するそうだ.裁判で後遺症として交通事故との因果関係を認めているのは知っていたが,交通事故による脳脊髄液減少症の病態については私も経験がなく文献を読んでもよく理解できない点も多い.
問題なのは,確定診断に至る診断法や診断基準などが確立されていないことや学会レベルでの認知が低いことだろう.つまり,医療者側の診断や治療の方法論が一般診療レベルに達していない状況で,患者,マスコミ,司法で病名がひとり歩きしているような感じがするのである.
患者さんのニーズがかなり強いことはこうした患者団体が存在することからもわかる.ただ,現状では特定疾患とするにしてもそれ以前にこの病態についてもっと調査研究する必要があると思うが,行政に問題提起するという点では十分意味がある行動だろう.現に,厚生労働省は「学会からの要望がない」などとして「ブラッドパッチ」に健康保険の適用を認めていないとあるが,これなどは例によって責任を医師に押し付けているだけである.
今のところ自称「脳脊髄液減少症」の患者さんが外来で声を荒げて診断書を要求するなどという事態にはなっていないが,テレビを見て自分がこの病気だと信じて疑わない人は他の疾患でもよくいるのである.厚生労働省が得意の研究班でもつくってこの病態の診断法と診断基準を早急に公示してもらいたい脳外科医はたぶん私だけではないだろう.
交通事故などに遭った後、頭痛やしびれを引き起こす脳脊髄(せきずい)液減少症の患者栂紀久代(とが・きくよ)さん(54)=大阪市=の呼び掛けで、全国の患者を支援する会「サン・クラブ」がこのほど発足した。
全国から趣旨に賛同する人が集まり、会員数は既に患者200人を含む1000人に。同会は会員を中心に患者の症状や生活への影響について8月末までに実態調査をする予定で、栂さんは「一人一人の声を国に届けることで、特定疾患として認めてもらいたい」と話している。
栂さんは1980年に鳥取県で交通事故に遭った。頭痛や体のしびれや耳鳴りに悩まされてきたが、病院では「仮病」と言われたり、「うつ病」と診断されたりした。自ら医師を探し出し、脳脊髄液減少症と診断されるまで23年かかった。
脳脊髄液減少症は脳と脊髄を覆う脳脊髄液が漏れ、液に浮かんでいる脳の位置がずれることで、頭や首、手足の痛み、記憶力低下や不眠などを引き起こす。同会によると、全国で約5000人が治療を受けているとされるが、患者数の実態は把握されていない。
腰椎(ようつい)に注射した血液の凝固作用で漏れを止める「ブラッドパッチ」という治療法があるが、厚生労働省は「学会からの要望がない」などとして健康保険の適用を認めていない。近年、重い後遺症として交通事故との因果関係を認める判決が相次いでいる。』
先日,徳島県議会が「脳脊髄(せきずい)液減少症(低髄液圧症候群)」の実態調査や治療法確立などを求める意見書を採択し小泉首相らへ提出するそうだ.裁判で後遺症として交通事故との因果関係を認めているのは知っていたが,交通事故による脳脊髄液減少症の病態については私も経験がなく文献を読んでもよく理解できない点も多い.
問題なのは,確定診断に至る診断法や診断基準などが確立されていないことや学会レベルでの認知が低いことだろう.つまり,医療者側の診断や治療の方法論が一般診療レベルに達していない状況で,患者,マスコミ,司法で病名がひとり歩きしているような感じがするのである.
患者さんのニーズがかなり強いことはこうした患者団体が存在することからもわかる.ただ,現状では特定疾患とするにしてもそれ以前にこの病態についてもっと調査研究する必要があると思うが,行政に問題提起するという点では十分意味がある行動だろう.現に,厚生労働省は「学会からの要望がない」などとして「ブラッドパッチ」に健康保険の適用を認めていないとあるが,これなどは例によって責任を医師に押し付けているだけである.
今のところ自称「脳脊髄液減少症」の患者さんが外来で声を荒げて診断書を要求するなどという事態にはなっていないが,テレビを見て自分がこの病気だと信じて疑わない人は他の疾患でもよくいるのである.厚生労働省が得意の研究班でもつくってこの病態の診断法と診断基準を早急に公示してもらいたい脳外科医はたぶん私だけではないだろう.
コメント
点滴直後に好転する傾向があったのは、脳脊髄液の復活であったのか、・・