『再診料下げに応援なし 産科診療所や選挙に配慮

 厚生労働省が目指した開業医(診療所)の再診料引き下げが見送られたのは、産科や小児科などを含め診療所全体に対し、一律に影響が出るという指摘のほか、開業医を中心とする日本医師会と選挙で敵対しては不利になるという与党議員心理が働いたことなどがある。

 衆院解散・総選挙に備え、与党は日医を敵に回せば集票が減るなど選挙を戦えないという立場から、与党への働き掛けを強めた日医と歩調を合わせた。この結果「厚労省の応援団は皆無だった」(厚労省幹部)という。

 このほか、軟こうや湿布の張り付けなど軽い処置の初・再診料の定額化が決まり、これが実質的に再診料20円程度の引き下げに相当。さらに日医が、今回の診療報酬改定で"闘いの象徴"としていた再診料の引き下げを阻止するため、当初は反対していた再診料の上乗せ部分である外来管理加算の引き下げを認めたため、厚労省は旗を降ろさざるを得なかった。

 一方、病院の再診料引き上げについては、支払い側である健康保険組合連合会に対する配慮だ。「開業医の再診料下げが困難なら病院への再診料引き上げで格差が少し埋まり説明もつく。病院への再診料のアップは財源的にも大したことがない」(同幹部)ことから、急きょ決まった』

『開業医再診料維持 格差是正効果は疑問 中医協案、抜け道多く

 08年度診療報酬改定の焦点となっていた開業医と勤務医の格差是正策は、開業医の再診料減額を見送る代わりに、「外来管理加算」を縮小する案などで決着した。厚生労働省は「名を捨て実を取った」と言う。しかし、一般に「勤務医より裕福」とされる開業医から勤務医への所得移転がどこまで実現するのかは、疑問が残る。(2面参照)

 厚労省は、夜間や休日に診療する開業医の報酬を手厚くする一方で、再診料は引き下げ、時間外診療をしない開業医を淘汰(とうた)する考えだった。不足が著しい勤務医が安易に開業に走ることに歯止めをかける狙いもあった。しかし、開業医の影響が強い日本医師会(日医)は猛反発した。

 日医は「何でも反対」でなく、身を切らせて骨を断つ作戦に出て成功した。医師の技術料の増額改定分(1000億円強)を、早くから「全額勤務医対策に回してもよい」と提案。軽度の治療に対する報酬廃止案も受け入れた。その代わり再診料については「基本給にあたる」(幹部)として、与党も味方につけて譲らない構えを崩さなかった。

 厚労省によると、今回の代替案でも、再診料引き下げによって開業医(約9万カ所)から賄う想定だった四百数十億円の財源を確保できるという。しかし外来管理加算適用を「5分以上相談に乗った場合」に限るなどという案には抜け道も多い。再診料の減額と同じ効果が出るか、疑わしい案と言えそうだ。

 約1500億円の勤務医対策費により、300床の病院で年間5000万円の収入増になるという。ただこれは、机上の計算に過ぎない。想定した費用が賄えなければ、今回の妥協に批判が集まるのは避けられない。』

開業医(診療所)の再診料引き下げが見送られたと報じられたが,どうせこんなことだろうと思っていたらやっぱりそうだったのかという感じで毎度のことながらあきれる話だ.

もっとも再診料引き下げが現実になったとしたらクリニックの先生たちは困るだろうが,病院勤務医はそれで給料が上がるわけでもないし,医師数が急に増えるわけでもないから別に嬉しくもなんともないだろう.

結果的に1500億円の勤務医対策費などは病院にとって多少の経営改善にはなるかもしれないが,所詮,焼け石に水である.勤務医にとっては良い影響など何もないことだろう.いつものことながらなんとも虚しい結末である.

現場の医師のことなど考えず机上の空論で医療に介入し続けてきた厚生労働省に勤務医の気持ちなど理解できるはずもないから,期待などしていないが,もし本当に格差を是正するのだったら,まず労働時間の適正化から手をつけてもらえないだろうか.特に病院当直業務と救急外来での時間外勤務の区別などは厳密に指導してもらいたいものだ.

これなら余分な医療費はかからないし,厚生労働省は現在も医師が余っていると言い続けているのだからそれぐらいのことは当然出来るのではないだろうか.もっとも,勤務医の数が足りていなければ救急患者の受け入れはさらに困難を増すだろうが,それこそが行政による真の医療改革というものではないだろうか.

コメント

nophoto
hgp
2008年2月1日18:42

はじめまして!

とても為になる事が書いてあり、勉強になります。
また、拝見させていただきます(^-^)

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