わかりにくいので自分なりに整理してみました.

『後期高齢者医療制度の問題点

1.公的保険給付範囲を削減・縮小する。

2.都道府県が「医療費適正化計画」を策定し、数値目標の達成が困難な都道府県に対しては、厚生労働大臣の指示で、ペナルティを課す。ここでの「医療費適正化」とは、都道府県を国の出先機関とし、「いかに患者に保険医療を使わせないか」を競争させること。

3.今は負担ゼロの人に新たに保険料負担が発生する。

 a.政府が示している平均的厚生老齢年金受給者の場合の保険料は、月額6,200円で、年間74,400円の負担増となり、2ヵ月ごとに介護保険料と合わせて2万円以上が年金から天引きされる(月額15,000円以上の年金受給者の、老齢年金、遺族年金、障害年金から天引き)。

 b.扶養家族となっていたために、保険料負担がゼロだった人(厚生労働省の推計では約200万人)には、激変緩和措置として2年間は半額になる措置が取られることになっていますが、新たな負担増であることは変わらない。

 c.サラリーマンとして働いている人が75歳になれば、その扶養家族は新たに国民健康保険に加入しなければならず、国民健康保険料がそのまま負担増になる。

4.現行制度にない厳しい資格証明書の発行

 a.保険料を「年金天引き」ではなく「現金で納める」人(政府の試算では2割と見込まれている)にとっては、保険料を滞納すれば「保険証」から「資格証明書」に切り替えられ、「保険証」を取り上げられられる。

 b.さらに、特別な事情なしに納付期限から1年6ヶ月間保険料を滞納すれば、
保険給付の一時差し止めの制裁措置もある。

5.給付を切り詰める『差別医療』の導入

 a.医療機関に支払われる診療報酬は、他の医療保険と別建ての「包括定額制」とし、「後期高齢者の心身の特性に相応しい診療報酬体系」を名目に、診療報酬を引き下げ、受けられる医療に制限を設ける方向を打ち出している。 

 b.厚生労働省から示されているのは、主な疾患や治療方法ごとに、通院と入院とも包括定額制(例えば、高血圧症の外来での管理は検査、注射、投薬などをすべて含めて一カ月○○○円限りと決めてしまう方法)の診療報酬を導入する。

6.後期高齢者を対象とした「かかりつけ医」の報酬体系を導入し、「登録された後期高齢者の人数に応じた定額払い報酬」とし、「医療機関に対するフリーアクセス(『いつでも、誰でも、どこへでも』)の中の『どこへでも』をある程度制限」することを提言しており、後期高齢者に対する医療内容の劣悪化と医療差別を招く恐れがある。

7.後期高齢者が増え、また医療給付費が増えれば、「保険料値上げ」か「医療給付内容の劣悪化」か、というどちらをとっても高齢者は「痛み」しか選択できない、あるいはその両方を促進する保険料自動引き上げの仕組みになっている。

 a.2年ごとに保険料の見直しが義務付けられ、各広域連合の医療給付費の総額をベースにして、その10%は保険料を財源にする仕組みとなっている。

 b.さらに後期高齢者の人数が増えるのに応じてこの負担割合も引き上げる。

7.保険料は、「後期高齢者医療広域連合」の条例で決めていくが、関係市町の負担金、事業収入、国及び県の支出金、後期高齢者交付金からなる運営財源はあるものの、一般財源を持たない「広域連合」では、独自の保険料減免などの措置が困難になる。

8.広域連合議員の定数は制限されており、半数以上の市町から議員を出すことができない。しかも、その議員は「各市町の長及び議会の議員」のうちから選ばれることとなっており、当事者である後期高齢者の意見を、直接的に反映できる仕組みが不十分。

9.住民との関係が遠くなる一方、国には「助言」の名をかりた介入や、「財政調整交付金」を使った誘導など大きな指導権限を与えており、広域連合が国のいいなりの“保険料取立て・給付抑制”の出先機関になる恐れがある。』

 要約すると高齢者の公的保険給付範囲を削減・縮小する一方で,自己負担を増加させ「かかりつけ医」以外への受診機会を抑制し,さらに国による老人医療への介入を増大させ地方の医療崩壊を促進するシステムのようだ.これで長寿医療制度とはまったくふざけた不適切な表現である.私ならこれを「国立姥捨山制度」と命名したいところだ.

 まず,月々の保険料が6200円というのが気にくわない.「かかりつけ医」の報酬算定が月1回で6000円だというのに,何故,それを上回る保険料を75歳以上の人が払わなければならないのであろうか.これは,明らかに不当な差別だろうし,新制度に便乗した保険料の上乗せではないだろうか.

 それに,「かかりつけ医」以外での受診は従来通りに出来高払いというのも矛盾した話である.これは,慢性疾患があって「かかりつけ医」のある患者さんが,「かかりつけ医」にかかった場合の料金と「かかりつけ医」以外にかかった場合の料金が違うということもあるし,そもそも慢性疾患がなくて普段は病院に通院していない人の場合は,出来高でいままで通りの料金であるにもかかわらず,場合によっては自動的に毎月6200円を上乗せされているようなことになるのである.

 いずれにしても,新制度は増大する高齢者の医療費を圧縮するのが真の目的なのだから,診療側からみて「かかりつけ医」になっていい事など何もあるはずがない,だから,医師会によっては「かかりつけ医」になることを拒否するように会員にすすめるようなところが出てくるのである.患者さんにとっても「かかりつけ医」ができたから安心できるわけもないだろう.なにしろ厚生労働省の言う「かかりつけ医」とは月々6000円以内で診療してくれる医師という以外の何者でもないのだから.

 新制度は患者のためでも医師のためでもないということがわかっていただけたであろうか.誰のための制度かということはもう考えなくてもわかるだろう.財政破綻のツケをこれから増えるであろう高齢者自身,そして将来的には私たちに背負わせるのと,地方自治体の医療行政への影響力を弱め,厚労省の介入をさらに強めるための布石にすぎないと私は思うのだがどうだろうか.
 

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