病院のかかり方(脳出血編)
2008年7月8日 病院のかかり方(脳神経外科の場合)『 くも膜下出血:初診、6.7%見落とす CT実施せず--脳神経外科学会調査
くも膜下出血の患者のうち、脳神経外科医以外が初診した6.7%が風邪などと診断され、事実上、病気を見落とされていたことが7日、日本脳神経外科学会の調査で分かった。患者が軽い頭痛しか訴えなかったことなどから、くも膜下出血を発見できるCT(コンピューター断層撮影)を実施していなかった。同学会は「軽い頭痛の患者全員にCTを行うわけにはいかない。現代医療の限界とも言える」としている。
同学会学術委員会の嘉山孝正・山形大教授らが、宮城県と山形県の2病院で、脳神経外科のカルテ全491例を調査した。
宮城県は07年1月〜08年5月が対象。198例中37例が脳神経外科医以外で初診を受け、うち10例(5.1%)が風邪、高血圧、片頭痛などと診断されてCTを受けず見落とされた。10例すべてが再発し2例が死亡した。
山形県は96〜05年が対象。専門医以外の初診は293例中48例で、23例(7.8%)が見落とされ、すべてが再発し2例が死亡した。
見落とし計33例のうち17例は、くも膜下出血の常識に反して発症時に軽い頭痛しか起きておらず、委員会は「専門医以外では他の頭痛と区別できない」と指摘。他の16例も「診断が難しい例がある」とした。山形県では脳神経外科医でも見落とした軽度頭痛の患者が1例あった。
米国では5〜12%の見落とし率という報告がある。嘉山教授は「くも膜下出血の診断は難しく、完ぺきな診断はできない。現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し、脳ドックの普及など社会全体で対策を考えるべきだと思う」と話している。』
素人がこの記事を読むと,脳神経外科医以外だから見落としたかのように思うのだろうが,この記事では結果的にくも膜下出血があった患者で脳神経外科を受診した患者のみが対象なのだから,脳神経外科医以外で頭部CTを撮らずに見落としが多いのは当たり前で,このこと自体は最初から予想されたことである.
そして,次に頭部CTを撮っていれば見逃さなかったかのように思うのだろうが,それもまた素人の考えにすぎない.以前にも書いたが,脳神経外科専門医でも頭部CTだけで100%くも膜下出血の診断ができるわけでもないのである.頭痛症状のはじまり方やその後の経過も重要な情報だが,MRIやMRAそして3D-CTAといった他の画像診断に頼らなければならないこともよくあるのが現実である.
病院のかかり方ということで一番いい方法は,「くも膜下出血の時は脳神経外科医に診てもらう」ということになるのだろうが,ではどんな時に脳神経外科にかかればいいかということが一番知りたいところではないだろうか.
脳出血の場合の特徴的な症状にはまず,突然はじまる頭痛と嘔吐がある.この場合,突然というのはそれまで痛くなかったのが,ある瞬間から痛くなるということである.これだけで,脳神経外科医はくも膜下出血を疑う.
さらに,これに意識障害や手足の麻痺といったものが加わると出血による脳の損傷が疑われ脳内出血があることを考えるが,こういった神経症状がある場合は,救急車を呼べば脳神経外科のある病院に運んでもらえるだろうからあまり考えることはないだろう.
脳出血かどうかを症状で判断できるとしたら,この程度ではないだろうか.この場合,痛みの強さについてはあまり当てにはならないことも付け加えておこう.頭部CTでくも膜下出血と脳内出血があった患者さんでも「激しいというほどの痛みではない.」と言って歩いて来院した人も本当にいたくらいである.痛みの感じ方というのはかなり個人差があるものらしい.
くも膜下出血はもっとも危険な頭痛であり緊急性を要する病態であるから以上のような頭痛を経験したら24時間いつでも脳神経外科を受診することをおすすめする.もちろん脳出血以外にも頭痛を伴う脳の病気はたくさんあるが,それらについてはまた機会があれば書いてみよう.
くも膜下出血の患者のうち、脳神経外科医以外が初診した6.7%が風邪などと診断され、事実上、病気を見落とされていたことが7日、日本脳神経外科学会の調査で分かった。患者が軽い頭痛しか訴えなかったことなどから、くも膜下出血を発見できるCT(コンピューター断層撮影)を実施していなかった。同学会は「軽い頭痛の患者全員にCTを行うわけにはいかない。現代医療の限界とも言える」としている。
同学会学術委員会の嘉山孝正・山形大教授らが、宮城県と山形県の2病院で、脳神経外科のカルテ全491例を調査した。
宮城県は07年1月〜08年5月が対象。198例中37例が脳神経外科医以外で初診を受け、うち10例(5.1%)が風邪、高血圧、片頭痛などと診断されてCTを受けず見落とされた。10例すべてが再発し2例が死亡した。
山形県は96〜05年が対象。専門医以外の初診は293例中48例で、23例(7.8%)が見落とされ、すべてが再発し2例が死亡した。
見落とし計33例のうち17例は、くも膜下出血の常識に反して発症時に軽い頭痛しか起きておらず、委員会は「専門医以外では他の頭痛と区別できない」と指摘。他の16例も「診断が難しい例がある」とした。山形県では脳神経外科医でも見落とした軽度頭痛の患者が1例あった。
米国では5〜12%の見落とし率という報告がある。嘉山教授は「くも膜下出血の診断は難しく、完ぺきな診断はできない。現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し、脳ドックの普及など社会全体で対策を考えるべきだと思う」と話している。』
素人がこの記事を読むと,脳神経外科医以外だから見落としたかのように思うのだろうが,この記事では結果的にくも膜下出血があった患者で脳神経外科を受診した患者のみが対象なのだから,脳神経外科医以外で頭部CTを撮らずに見落としが多いのは当たり前で,このこと自体は最初から予想されたことである.
そして,次に頭部CTを撮っていれば見逃さなかったかのように思うのだろうが,それもまた素人の考えにすぎない.以前にも書いたが,脳神経外科専門医でも頭部CTだけで100%くも膜下出血の診断ができるわけでもないのである.頭痛症状のはじまり方やその後の経過も重要な情報だが,MRIやMRAそして3D-CTAといった他の画像診断に頼らなければならないこともよくあるのが現実である.
病院のかかり方ということで一番いい方法は,「くも膜下出血の時は脳神経外科医に診てもらう」ということになるのだろうが,ではどんな時に脳神経外科にかかればいいかということが一番知りたいところではないだろうか.
脳出血の場合の特徴的な症状にはまず,突然はじまる頭痛と嘔吐がある.この場合,突然というのはそれまで痛くなかったのが,ある瞬間から痛くなるということである.これだけで,脳神経外科医はくも膜下出血を疑う.
さらに,これに意識障害や手足の麻痺といったものが加わると出血による脳の損傷が疑われ脳内出血があることを考えるが,こういった神経症状がある場合は,救急車を呼べば脳神経外科のある病院に運んでもらえるだろうからあまり考えることはないだろう.
脳出血かどうかを症状で判断できるとしたら,この程度ではないだろうか.この場合,痛みの強さについてはあまり当てにはならないことも付け加えておこう.頭部CTでくも膜下出血と脳内出血があった患者さんでも「激しいというほどの痛みではない.」と言って歩いて来院した人も本当にいたくらいである.痛みの感じ方というのはかなり個人差があるものらしい.
くも膜下出血はもっとも危険な頭痛であり緊急性を要する病態であるから以上のような頭痛を経験したら24時間いつでも脳神経外科を受診することをおすすめする.もちろん脳出血以外にも頭痛を伴う脳の病気はたくさんあるが,それらについてはまた機会があれば書いてみよう.
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