救急は緊急事態じゃないはずだが
2008年10月22日 医療の問題 コメント (3)『脳出血「対応できぬ」7医療機関が拒否、妊婦死亡
脳出血を起こして緊急搬送先を探していた東京都内の妊婦(36)が、七つの医療機関から受け入れを断られ、出産後に死亡していたことが22日、わかった。
いったん受け入れを断り、最終的に対応した都立墨東病院(墨田区江東橋)は、緊急対応が必要な妊婦を受け入れる病院として都の指定を受けていた。都は詳しい経緯を調べている。
都などによると、今月4日午後6時45分ごろ、江東区に住む出産間近の妊婦が頭痛や吐き気などを訴え、同区内のかかりつけの産婦人科医院に運ばれた。医師は、墨東病院に電話で受け入れを要請したが、同院は「当直医が1人しかいないので対応できない」と断った。医師は引き続き、電話で緊急対応が可能な病院を探したが、「空きベッドがない」などの理由で、同院を含め計7病院に受け入れを断られた。
医師は約1時間後、再び墨東病院に要請。同院は別の医師を自宅から呼び出して対応し、同9時30分ごろから帝王切開で出産、同10時ごろから脳出血の手術をしたが、妊婦は3日後に死亡した。赤ちゃんは無事だった。
墨東病院は、母体、胎児、新生児の集中治療に対応できる「総合周産期母子医療センター」として1999年6月に都が指定。
同センターに関する都の基準では、「産科医を24時間体制で2人以上確保することが望ましい」とされている。しかし、同病院では、産婦人科の常勤医が2004年に定員の9人を割ってから、慢性的に不足しており、現在は、4人にまで減っていた。
そんな中、当直も担当していた非常勤産科医が6月末で辞め、7月以降は土日、祝日の当直医を1人に縮小しており、妊婦が搬送された4日は土曜日だった。
都の室井豊・救急災害医療課長は「搬送までの時間と死亡との因果関係は不明だが、もう少し早ければ、命が助かった可能性も否定できない。産科の医療体制が脆弱(ぜいじゃく)だった点は問題で、早急に対策を取りたい」として、受け入れを断った他の病院についても、当時の当直体制など、詳しい事情を聞いている。』
24時間態勢で緊急対応が必要な妊婦を受け入れるとしている病院が別の医師を自宅から呼び出して対応しなければならないなんていうのはおかしな話だ.そんな病院が24時間救急をやっていることが問題で,救急搬送の受け入れを制限せざるを得なかったのは東京都の福祉行政の責任だろう.
とは言っても,産科医が4人しかいなくなったのも補充がきかなくなったのも研修医制度や福島や奈良の訴訟事件などの影響による医師の逃散の結果なのだろうから,東京都内とは言えどもブランド病院との格差がこういうところで顕在化しただけなのだろう.
一人で当直していた医師にすれば,頑張って受け入れて死亡して訴訟を起こされるリスクと,受け入れを頑なに拒否して救急車内で死亡して問題になるリスクとの究極の選択から受け入れの方を選択して応援の医師を呼んだのではないだろうか.それでも,結果として受け入れが1時間遅れ,脳出血の手術の3日後に死亡すればこうしてマスコミのネタになってしまうのである.
聞いた話だが,小児救急でも同じようなことが起きているようで,人手不足で過労気味になると耐えられなくなった若い医師から辞めていくので,最後には残された責任感ある部長医師の負担が増えているようである.こうなると自分が過労死するか患者が死んで訴えられるのを待っているようなものである.本来,救急医療というのは救急病院にしてみれば日常業務であって,緊急事態ではないはずなのに脳出血の妊婦さん一人でこの騒ぎというのは異常ではないだろうか.
医師が少ないからといって当直医が救急医も兼ねるという伝統的な労働基準法違反も一向に改善される気配がないのも,定員割れした病院が救急指定になっているのも元はと言えば厚生労働省のせいなのだが,医師の待遇を改善する気などまったくないだけでなく,未だに本音は医療費削減で,さらに隙あらば医師を強制配置しようなどと考えている輩に医療現場の環境改善を期待するのは無理だろう.
マスコミは簡単に記事になる医者たたきや病院たたきで終わらずに,医師が救急医療から逃げ出そうとしている本当の理由を探してみる気はないのだろうか.
脳出血を起こして緊急搬送先を探していた東京都内の妊婦(36)が、七つの医療機関から受け入れを断られ、出産後に死亡していたことが22日、わかった。
いったん受け入れを断り、最終的に対応した都立墨東病院(墨田区江東橋)は、緊急対応が必要な妊婦を受け入れる病院として都の指定を受けていた。都は詳しい経緯を調べている。
都などによると、今月4日午後6時45分ごろ、江東区に住む出産間近の妊婦が頭痛や吐き気などを訴え、同区内のかかりつけの産婦人科医院に運ばれた。医師は、墨東病院に電話で受け入れを要請したが、同院は「当直医が1人しかいないので対応できない」と断った。医師は引き続き、電話で緊急対応が可能な病院を探したが、「空きベッドがない」などの理由で、同院を含め計7病院に受け入れを断られた。
医師は約1時間後、再び墨東病院に要請。同院は別の医師を自宅から呼び出して対応し、同9時30分ごろから帝王切開で出産、同10時ごろから脳出血の手術をしたが、妊婦は3日後に死亡した。赤ちゃんは無事だった。
墨東病院は、母体、胎児、新生児の集中治療に対応できる「総合周産期母子医療センター」として1999年6月に都が指定。
同センターに関する都の基準では、「産科医を24時間体制で2人以上確保することが望ましい」とされている。しかし、同病院では、産婦人科の常勤医が2004年に定員の9人を割ってから、慢性的に不足しており、現在は、4人にまで減っていた。
そんな中、当直も担当していた非常勤産科医が6月末で辞め、7月以降は土日、祝日の当直医を1人に縮小しており、妊婦が搬送された4日は土曜日だった。
都の室井豊・救急災害医療課長は「搬送までの時間と死亡との因果関係は不明だが、もう少し早ければ、命が助かった可能性も否定できない。産科の医療体制が脆弱(ぜいじゃく)だった点は問題で、早急に対策を取りたい」として、受け入れを断った他の病院についても、当時の当直体制など、詳しい事情を聞いている。』
24時間態勢で緊急対応が必要な妊婦を受け入れるとしている病院が別の医師を自宅から呼び出して対応しなければならないなんていうのはおかしな話だ.そんな病院が24時間救急をやっていることが問題で,救急搬送の受け入れを制限せざるを得なかったのは東京都の福祉行政の責任だろう.
とは言っても,産科医が4人しかいなくなったのも補充がきかなくなったのも研修医制度や福島や奈良の訴訟事件などの影響による医師の逃散の結果なのだろうから,東京都内とは言えどもブランド病院との格差がこういうところで顕在化しただけなのだろう.
一人で当直していた医師にすれば,頑張って受け入れて死亡して訴訟を起こされるリスクと,受け入れを頑なに拒否して救急車内で死亡して問題になるリスクとの究極の選択から受け入れの方を選択して応援の医師を呼んだのではないだろうか.それでも,結果として受け入れが1時間遅れ,脳出血の手術の3日後に死亡すればこうしてマスコミのネタになってしまうのである.
聞いた話だが,小児救急でも同じようなことが起きているようで,人手不足で過労気味になると耐えられなくなった若い医師から辞めていくので,最後には残された責任感ある部長医師の負担が増えているようである.こうなると自分が過労死するか患者が死んで訴えられるのを待っているようなものである.本来,救急医療というのは救急病院にしてみれば日常業務であって,緊急事態ではないはずなのに脳出血の妊婦さん一人でこの騒ぎというのは異常ではないだろうか.
医師が少ないからといって当直医が救急医も兼ねるという伝統的な労働基準法違反も一向に改善される気配がないのも,定員割れした病院が救急指定になっているのも元はと言えば厚生労働省のせいなのだが,医師の待遇を改善する気などまったくないだけでなく,未だに本音は医療費削減で,さらに隙あらば医師を強制配置しようなどと考えている輩に医療現場の環境改善を期待するのは無理だろう.
マスコミは簡単に記事になる医者たたきや病院たたきで終わらずに,医師が救急医療から逃げ出そうとしている本当の理由を探してみる気はないのだろうか.
コメント
根本的な原因をきちんと調べてからでない、現場ではやってられないですね。
ちなみに、ウチが通っている単科精神科の病院は、副院長が辞めてから、
医師の補充がなくて、主治医の負担が増えました(だから予約制にした
のか?)。