外傷性低髄液圧症候群 - その後の状況
 今回の学会は色々な意味で今までとは雰囲気がちょっと違った感じで興味深かったのだが,第3日目A会場の午前の部を全て費やして開催された - 特別企画3 関連学会Update いま何がホットか - というセッションは短時間で脳神経外科とその周囲の問題の現状が理解できる大変優れた企画だった.

 10の関連学会の中で日本神経外傷学会からの報告に「外傷性低髄液圧症候群」についての研究の進捗状況が発表されていた.我が国の症例を海外と比較すると,「症例数が海外の15倍以上.交通事故が原因である比率が高い.漏出の大部分が腰仙部.起立性頭痛の頻度が低い.Gd硬膜増強の頻度が低い.転帰が不良.」などの特異性があり,我が国で外傷性低髄液圧症候群と診断されている病態には神経症・うつ状態,慢性疲労症候群,頚椎捻挫・外傷性頚部症候群,緊張性頭痛・その他の頭痛,などが混在しているらしいことが述べられていた.

 会場から健康保険診療についての質問があったが,病態がはっきりしていないものに健康保険を適用することは厚労省が認めないとのことだった.現在は,病態をはっきりさせるべく調査を進めている最中とのことで,本邦の外傷性低髄液圧症候群も典型例は欧米並に少ない?らしいとの話で終わったが結論はまだ出ていないようだ.

 交通事故の際に治療費の問題で「事故による外傷性低髄液圧症候群」かどうかが裁判で争われているニュースが以前にあったが,ネットで少し調べてみたところでは最近はいわゆる典型例以外は裁判官も認めなくなってきているようで,今回の学会で報告されたように典型例のみを「外傷性低髄液圧症候群」と診断する方向で社会的なコンセンサスが得られるようになるのかもしれない.

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