CPAの現実

2010年6月10日 医療の問題
『夕張市立診療所:自殺図った男性の救急受け入れ拒否 「外来に対応」

 夕張市は1日、市立診療所が先月、自殺を図り心肺停止状態になった市内の50代男性の救急受け入れを断っていたと発表した。昨年9月にも同様のケースがあり、市は同診療所の村上智彦医師から事情を聴いた。

 市の説明では、5月19日午前8時前、「首をつり、自殺を図った男性がいる」という119番通報があった。救急隊員が駆けつけると、男性は心配停止状態で、診療所に受け入れ要請したが、外来患者診療のため、対応不可能として断られたという。男性は市内の別の医療機関で死亡が確認されたという。

 村上医師は「首つりと聞いて検案(死亡確認)のケースと判断した。緊急性が低く、自分は外来もあったため、他の医療機関で対応してもらいたいと伝えた」と話している。

 同診療所は昨年9月27日夜、同様に首をつった状態で見つかった男子中学生の受け入れを断った。市と診療所は、二度と同じような事態が起きないようホットラインを設けるなどしている。藤倉肇市長は「誠に遺憾という思い。市立診療所の開設者として総括が必要だ」と話した。』

『夕張市立診療所:受け入れ拒否問題 医師「1人では困難」--市が聴取

 夕張市立診療所が5月に心肺停止状態の男性の受け入れを断った問題で、同市は8日、診療所を運営する医療法人「夕張希望の杜」(理事長・村上智彦医師)からの聴取結果を、市議会行政常任委員会に報告した。

 村上医師は拒否の理由について「1人態勢で心肺蘇生は困難」とし、今後の対応について「高次医療機関に運ぶべきだ」と答えたという。藤倉肇市長は「一刻一秒を争う心肺停止患者の受け入れは最も近い医療機関にお願いしている。(診療所と)今後も話し合いを続ける」と述べた。

 昨年9月、心肺停止状態の少年の受け入れを診療所が拒否したことから、その後、市と診療所との間で▽ホットラインの設置▽心肺停止患者を受け入れて初期対応する--などで申し合わせをしている。』

参考記事:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3660

 実際のところ「1人態勢で心肺蘇生は困難」なのか,「検案(死亡確認)のケースと判断した」のかはわからないが,近くに他に病院がないのだったら外来は一時中断してでも受け入れるのが現実的な対応だと私は思う.

 だが,勘違いして欲しくないのは,首をつり自殺で心肺停止だったら結果は変わらなかっただろうが,外来が忙しいなんていう理由でそれを他に回すのはちょっと違うんじゃないかと私は思っているということだ.一人でできることだけやって,それで万が一蘇生したら,その時は診療所でその後の治療はできないだろうから他の病院に依頼すればいいのだ.

 参考記事の村上医師の言い分も理解できるが,夕張市が診療所でCPAの対応も希望している以上,自分が対応できないなら辞めればいいだけなのである.その結果,診療所に医師がいなくなってしまってもそれは夕張市の問題だろう.CPAに対応できるだけの人材もないのに形式的に受け入れたところで医療としての意味はあまりないだろう.

 CPAといっても最近は救命救急士は挿管もできるし救急車にはAEDだってあるのだから救命できるようなケースはそれで蘇生できるだろうし,それも不可能で心電図の波形がないようなものはたとえ病院に運ばれても大抵はどうにもならないだろう.型通りに心肺蘇生法を試みて駄目なら死亡確認するだけだ.医師がたくさんいれば助かるわけではない.

 だから,今回のケースも受け入れなかったことによって結果が変わったとは考えにくいが,市長が問題にしているのは救命可能だったかどうかではなく村上医師が市との申し合わせを無視したことだったのだろう.だとしたら,今後,夕張市が医師を募集する時には,はっきりとそのことを明示するべきだろう.それでも働きたい医師がいるなんて私には到底思えないのだが,今後この市立診療所はどうなるのだろうか.

 

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