『英国:若者たち、大義なき暴動

 警官による黒人男性射殺に端を発した英国の暴動は13日、発生から1週間が経過し、ひとまず沈静化した。ロンドンを中心に約1600人の若者らが逮捕され、過去数十年間で最悪の事態となった暴動は、英社会に深い傷痕を残した。若者らはなぜ略奪、放火に走り、警察はなぜ有効に対処できなかったのか。背景を探った。

 人種、階層バラバラ 共通項は閉塞感

 「異なる(背景の)若者らが同じ行動を取るという新たな難題に直面している」。キャメロン英首相は11日の臨時議会で、事態を「新たなタイプの暴動」と位置づけた。今回の暴動は、英国が過去に経験した政治的不満や人種差別などを背景にした暴動とは異なり、動機や目的が不明瞭な「大義なき暴動」とも呼ばれている。

 暴動が沈静化し、英メディアは「どんな若者が暴徒だったのか」と自問している。逮捕されて裁判所に出廷した容疑者らは、裕福な女子大生やグラフィックデザイナー、小学校の補助教員、11歳の少年など人種も含めて一般化が難しいからだ。

 暴動の中身は大別して、略奪,放火などの破壊行為,警察への攻撃--に3分類される。発端は、黒人男性射殺に対するロンドン北部での6日の抗議デモの暴徒化だったが、事態への警察のソフトな対応を見た若者らが簡易ブログ「ツイッター」などのソーシャルメディアでつながり、暴動が模倣犯的に拡大していった。その大半は略奪で、象徴的なのはスーパーからワイン1本を盗んで逃げる少年や、盗んだ衣類の「サイズを間違えた」と店に戻った若者らの姿だ。盗品は日用品が中心で、途上国型の略奪に近い。暴動に火をつけたロンドン北部トットナム地区や東部ハックニー地区などは失業者や貧困層の多い地域だけに、先進国・英国の中の「途上国」の反乱とも言える。

 英・社会正義研究所のプール所長は「彼らは希望を持てず、失うものは何もないと感じている」と指摘する。キャメロン首相らは暴徒を犯罪者と断罪するが、暴動を生んだ全体状況として、社会階層の上昇の機会から取り残された若者らの閉塞(へいそく)感、失業、経済格差の拡大などの問題があるのは間違いない。

 問題の根深さを示すのは、一般社会から断絶した若者らの不満を背景に広がるギャング(暴力的犯罪集団)文化だ。ロンドン警視庁の07年調査では、市内に250を超えるギャング組織が存在するといい、今回の暴動拡大でもギャング組織が中核的な役割を果たしたとの指摘もある。

 また「新たなタイプの暴動」で目を引くのは、事態の展開の速さだ。暴動は中部バーミンガムなど各地に野火のように広がったが、ほぼ4日間で収束。ネットを介した「非政治的な暴動」は熱しやすく、さめやすいようだ。』

 ネットの情報はもともと匿名性が高く不確かなものが多かったと思う.だから,情報を鵜呑みにするのは危険だということは昔からのネットユーザーにとっては常識だったのではないだろうか.

 ネットがより大衆化することで,そういうことを理解できない人でもネットの情報に簡単にアクセスし,自ら情報を発信することも可能になった.現在は,その最たるものがTwitterだろう.

 Twitterならまともな文章も書けない人でも情報を拡散することができるし,次から次へとリアルタイムに情報が流れるから,情報の質を検証することなく情報を流し流される人も当然のごとく多量に発生することだろう.

 先の震災の時にTwitterには役立つ情報もある一方で,間違った情報が多量に拡散したことをみれば,間違った情報にアクセスした人が瞬間的に誤った結論を導きだして暴徒化したとしても不思議はないだろう.リアルタイムで情報が流れることは危険から非難する場合には有効かもしれないが,故意に誤った情報を流されれば扇動され操られる危険も孕んでいるということである.

 そう考えると,Twitterの情報にあまりに依存して判断を誤る人が日本でも多数発生する可能性がありそうで心配になる.もちろん,ネット上の情報はたとえ大手メディアでも間違っていることがあるから常に注意する必要はあるのだが,Twitterの危険なところはそのリアルタイム性により連鎖反応が起きやすいところではないだろうか.

 たとえ自分には大した悪意がなく,ネットの情報に踊らされただけだとしても犯罪行為は決して許されるものではないだろう.英当局はネットによる暴動にどう対処するのだろうか.
 

コメント

マサムネ
2011年8月15日17:13

ツイッターをやらないのでツイッターのよさがわかりませんが、正しい情報も正しくない情報もリアルタイムで不特定多数の人間に簡単に発信できてしまうところが
利点でも汚点でもあるような気がします。

ホテルマンがプロ意識を持たずに顧客情報をツイッターで話すなんてホテルマンの
質が落ちたのか、ツールに使われてしまう人間の質が落ちたのか。

どっちにしろ10年前では考えられなかったことですね。

じゃあ現行の法律でそれらすべてを規制できるか?と聞かれるとうーん。となるし

私も○○から聞いたのを正しいと思ったからツイートしたんだもの悪くない!と

言う人を法で裁けるのか?

微妙なところですね。

DON
2011年8月15日20:12

先の東日本大震災においても、通信が復旧してからも、しばらくの間、いろいろな情報が飛び交いました。

例えば、「津波襲来直後に強盗団が市内で金庫破りしている」「自衛隊を装って、避難所から救援物資を持ち去った」「ボランティアを装って、物色している連中がいる」など。

被災地で暴動が起こらなかったのは、東北の人たちの我慢強い性格からなのか。

毛布が足りない、灯油、ガソリンがない、寒い、食べ物が少ない。救援物資が来ない。

よく暴動が起きなかったものだと、感じます。


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