『保安院長“なぜ、寝た子を起こす”

 6年前、国の原子力安全委員会が進めていた原発事故への防災指針の改訂を巡って、原子力安全・保安院が反対し、緊急時の避難区域の設定などの国際基準が指針に反映されなかった問題で、当時の保安院の院長が「なぜ、寝た子を起こす」と、安全委員会の委員に検討をやめるよう直接、伝えていたことが分かりました。

 この問題は、6年前の平成18年、原子力安全委員会が進めていた原子力防災指針の見直しを巡って、国際機関が求めていた、緊急時に直ちに避難させる区域の導入について、保安院が安全委員会の事務局に対し、「国民の不安を増大する」などと再三、反対の申し入れを行ったものです。

 この問題について、当時、指針の見直しを担当した原子力安全委員会の久住静代委員が、平成18年5月に開かれた保安院幹部との昼食会で、広瀬研吉元保安院長から「事故は起こらないのに、なぜ、寝た子を起こすんだ」と防災指針の見直しをやめるよう厳しい口調で迫られたことを明らかにしました。

 久住委員は「地方自治体も関心が高く、やめることはできない」と反論したということですが、その後も、安全委員会の事務局に保安院から反対の申し入れが続き、最終的に国際基準は指針に反映されませんでした。

 久住委員は「安全委員会の事務局のメンバーは、保安院などほかの省庁からの出向者の寄せ集めで、親元の省庁からの圧力に弱く、安全委員会の事務局が作成する指針の素案に影響が出た」と話しています。

 これについて、原子力安全・保安院は「当時の保安院長をはじめとする保安院の対応は、安全委員会の公表した資料や久住委員の指摘のとおり問題があったことは明白だ。反省せざるをえない」としています。

 防災指針見直し巡るやり取り公表

 原発事故に対する防災指針の見直しを巡って行われたやり取りについて、原子力安全委員会はホームページ上に文書で公表しました。公表された資料は、安全委員会の事務局が残していたメモや、保安院の担当者との電子メールの文面です。

 平成18年4月24日の保安院の原子力防災課が作成した文書では、IAEAが求めていた、緊急時に直ちに避難させる区域について、「原子力事故時に周辺住民の方が事故の大小にかかわらず即時に避難をしなければならないという誤解を与えかねないことなどから、無用な社会的混乱を回避する」として、「『即時避難』という語句を使用することは控えていただきたい」としています。

 その2日後の「申し入れメモ」と書かれた文書では、IAEAの考え方を導入した新たな原子力防災指針の検討を行うことは、「社会的な混乱を惹起(じゃっき)し、原子力安全に対する国民不安を増大する恐れがある」として、検討自体を凍結するよう記されています。

 これに対して、安全委員会が、防災指針の改定の検討は防災体制の向上のための努力の一環だとして、申し入れを拒否すると、保安院は平成18年6月15日の文書で、「IAEAの決定と我が国の防災指針の見直しはリンクさせるべきものではない」として、安全委員会の防災指針の見直しの検討を不注意で遺憾だとして抗議しています。

 このほか、電子メールでのやり取りで、保安院の担当者は「防災指針については、変更をしないことが大前提」、「防災指針、運用について変更がなく、なんら新しい措置を伴うことを指針に盛り込まないのであれば最小限の防災指針の字句修正を行うことはやむを得ない」などと防災指針の見直しをしないよう迫っています。』

『保安院 防災指針国際基準化に反対

 6年前、原発事故に対する防災指針を国際基準に合わせて見直す検討が行われた際、原子力安全・保安院が「不安を増大するおそれがある」などと再三反対し、緊急時の避難区域の設定などの国際基準が指針に反映されなかったことが分かりました。
6年前の平成18年、国の原子力安全委員会は、IAEA=国際原子力機関が当時進めていた原子力防災に関する安全基準の検討に合わせて防災指針の見直しを行いました。

 原子力安全委員会や原子力安全・保安院によりますと、見直しでは、IAEAが求めていた緊急時に直ちに避難させる区域を新たに設けるかどうかが大きな議論になりましたが、これに対し、保安院が「直ちに避難ということばは社会的な混乱を引き起こし、国民の不安を増大するおそれがある」などと、再三、反対の申し入れを行っていたということです。

 防災指針は翌年の平成19年5月に見直されましたが、結果的にIAEAの基準は反映されませんでした。

 福島第一原発の事故では、東京電力から原発の緊急事態を知らせる通報があってから国が最初に3キロ圏内に避難指示を出すまでに4時間半余りかかっており、もっと早い段階で避難の呼びかけをすべきだったのではないかという指摘が出ています。
これについて原子力安全委員会管理環境課の都筑秀明課長は「6年前の段階でもう少し踏み込んで防災指針が改訂されていれば、今回の事故でもより適切な避難対応ができていたかも知れず、非常に残念だ」と話しています。

 一方、原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監は「当時、制度の見直しのメリット、デメリットを慎重に考えるべきだとして導入に異議を唱えたのは事実だ。今回の事故のように短時間で事態が悪化することを考えておらず、あらかじめ見直していれば今回の避難対応も違うものになった可能性があり、早い段階で取り入れておけばよかったと思う」と話しています。』

 私は,『原発事故は起きるべくして起きた』と考えるのですが,「事故は起こらないのに、なぜ、寝た子を起こすんだ」と言ったという広瀬研吉元保安院長は今いったいどう思っているのでしょうか.事故原因と原発再稼働などについてご意見を伺いたいものです.

 脳神経外科学会の専門資格更新に必要なものとして『医療安全講習会』の受講があり,そこでの話が『医療に安全など存在しない.あるのはリスクだけ』ということでした.安全というものは存在しない,存在するのはリスクだけでそのリスクを如何に低下させるかというのが安全を確保するただ一つの方法だということです.

 なるほどと思いました.『原発は安全』と言っていた人達は安全について実はよく考えなかったか,知っていてもリスクを下げる努力をわざと怠ったということなのでしょう.おそらく専門家と言われる人達は後者だったのだと私は思います.

 見たところ事故以前と根本的な考え方が何も変わっていないのに「再稼働しないと,あーだら,こーだら...」と言っている人達を見ると,レッドカードを出したくなるのは私だけでしょうか.

コメント

しもべの一人、H
2012年3月17日9:20

こんにちは、しもべという者です。
コメントありがとうございました。

 柔道導入、原子力関係と2つの記事を昨日、今日で読ませていただきました。
柔道については、ニュースの特集などで、初めてそのリスクを知ったので、もう少し詳しい事が知りたいな、と考えていたので非常にありがたかったです。

>原子力関連
 対外的な顔としての「寝た子は起こすな」に加えて、「赤信号、みんなで渡れば・・・」のフレーズも内部にはあったでしょうね。
ただ、「無用な社会的混乱を回避する」や、事故当時の安全委員会の「メルトダウンの可能性0ではない」という表現・考え方など、悲しいかな、理解できてしまう自分がいます。
「安全など存在しない。あるのはリスクだけ」は非常に鋭く明確な表現ですね。
言われてハッとしました。続く文節と合わせて非常に耳が痛い文面です。


最後に、勝手ながらリンクさせて頂きました。
今後とも記事楽しみにさせて頂きます。

ブログ脳外科医
2012年3月17日10:26

リンクどうもありがとうございます.

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