『不都合な記事は削除、マスク買い占め……新型コロナ「中国」の“火事場泥棒”を許すな

 火事場泥棒とは混乱に紛れて窃盗を働く者、転じてごたごたに紛れて不正な利益を占めることを指す。世界各国が新型コロナウイルスの感染拡大への対応に追われる中で、発生源となった中国が現在覇権を拡大するために行なっている行為はまさにそれにあたるのだ。

 中国全国人民代表大会(全人代)を5月22日に控え、新型コロナウイルスを巡る中国の覇権拡大の動きが活発化している。

 その横暴な振る舞いに“冷や水”を浴びせかけるように、5月3日、AP通信は中国政府によるコロナ感染の“隠蔽工作”について、米国国土安全保障省が作成した4枚の内部報告書の存在を報じた。

「中国当局がコロナ感染の発火点となった湖北省武漢市の“異変”を初めて対外的に発表したのは昨年12月31日でした。当初は“原因不明の肺炎患者を確認した”と説明するのみでした。しかし、この報告書では、昨年12月の早い段階からウイルスの脅威を警告していた医師らの訴えを排除して情報を隠蔽していたと指摘しています」(ワシントン特派員)

 報告書によれば、中国は1月にマスクなどの医療物資を海外から大量に買い占める一方で、輸出量を大幅に減らして備蓄しており、その輸出入の動きは常識的に考えられる範囲を超えていたという。

「トランプ大統領の最側近であるポンペオ国務長官はテレビ番組でAP通信の報道を追認、5月6日の記者会見でも、中国の初期対応の問題に繰り返し言及していました」(同前)

国内外に虚偽の報告

 中国は春節(旧正月)が始まる直前の1月23日に武漢市を都市封鎖したが、かねてから初期対応の“不作為”がコロナ拡大の一因だと批判を浴びてきた。

 北京特派員が内情を語る。

「今年2月、武漢市にある人民解放軍海軍工程大学の1月2日付の内部通知が流出しました。『原因不明の肺炎を予防、阻止するため、部外者の立ち入りを厳しく制限する』というもので、この時点ですでに中国当局は人から人に感染するリスクを認識していたことになります。しかし、武漢市側は1月11日になっても『人から人に感染した明確な証拠は見つかっていない』と国内外に虚偽の報告を行なっていたのです。中国が人から人への感染を認めたのは1月20日でした」

 さらに国内の情報統制も徹底されていたという。

「1月から3月にかけて国内メディアで、コロナ発生からの経緯を検証したルポルタージュ記事などが、ネットで公開された直後に削除されるケースが頻発しました」(同前)

コロナ告発記事がすぐに削除

 例えば中国共産党機関紙である人民日報系の環球時報が3月16日、武漢市中心医院の医療従事者の証言を取り上げた新型コロナに関する記事を電子版で公開した。記事では昨年12月に重症急性呼吸器症候群(SARS)に似たウイルス性肺炎の患者が急増していたにもかかわらず、病院側は現場の医師に「報告するな」と口止めし、医師には病院幹部が「ウイルス性の肺炎」ではなく、「肺に感染」と診断書に書くよう強制していたと指摘。異変を悟られないよう医療従事者のマスク着用を禁じ、結果的に多くの医師が感染したという衝撃の内容だったが、すぐに削除されたのだ。

 中国共産党のプロパガンダの一翼を担うメディアが、中国当局に不都合な内容を報じることは極めて異例だ。

「削除された各国内メディアの記録をミラーサイトなどで残そうとしていた北京市の若い男女が“国家政権転覆”の疑いで拘束された事件もありました」(同前)

マスクをかき集めていた

 そして隠蔽工作と並行し、中国は深刻なマスク不足を補うために国内企業の再稼働を急ぎ、海外からもマスクなどの医療物資をかき集めていったのだ。

「中国側は国内のマスク製造ラインを統制し、増産態勢を整備しましたが、そのマスクが海外輸出に回されることはありませんでした。中国が一転して欧州やアフリカなど150カ国以上にマスクや人工呼吸器などの医療物資を提供する“マスク外交”を展開し始めるのは、中国当局が3月12日に『感染のピークは過ぎた』と明言してからです。それまで中国側はマスク不足が原因で輸出が滞っているだけだとして、輸出規制は否定していたが、米国はそこに輸出入データの公表を遅らせる意図があったと指摘しているのです」(同前)

 中国側は、マスク外交の成果を喧伝することで、国際社会の反中感情を和らげ、米国を中心とする対中包囲網の形成を避けたい意向があった。だが、こじれた米中関係は約40年前の国交正常化以来最悪と言われるまでに深刻化している。

 中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏が語る。

「中国の強気な外交攻勢は、中国軍の元兵士が外国兵を打ち負かす映画にちなんで『戦狼外交』と呼ばれます。その象徴が中国外務省の華春瑩報道局長。彼女は約5年前に出世を遂げ、その強硬発言で注目を集めています。今回もポンペオ国務長官ら米政権幹部を“ゴロツキ”などと口汚く罵っていますが、あくまで習近平氏へのアピールであり、国内向けの処世術でしかない。それを国際舞台でやれば反発を招くのは当然です」

中国における死亡者約4600人は本当か?

 華氏とともにスポークスマンを務める趙立堅副報道局長は、米軍が武漢に感染症をもたらした可能性をSNSで主張し物議を醸した。

「彼は『中国の犠牲のおかげで世界はウイルスに備える時間を稼ぐことができた』などと厚顔無恥としか思えない発言もしています。中国は非常にしたたかで、米国でもトランプ大統領と相対する民主党が知事をしている州には重点的に医療援助をしている。しかし、問われているのは中国の隠蔽体質。米国で約7万9000人がコロナで亡くなっているのに、中国が約4600人というのは、にわかには信じ難い数字です」(同前)

 米中関係の悪化で最も懸念されるのが中国による“海洋進出”の動きだ。

「米国海軍でコロナ感染が拡大し、11隻ある米海軍空母のうち、グアムに停泊中の『セオドア・ルーズベルト』や神奈川県の米海軍横須賀基地を拠点とする『ロナルド・レーガン』など計4隻が展開不能に追い込まれています。その間隙を縫う形で、中国が東シナ海、台湾海峡、南シナ海などで挑発行動を繰り返しているのです」(自衛隊関係者)

 尖閣諸島周辺でも中国の海警局所属の公船が連日のように接続水域への侵入を繰り返しているのだ。3月だけで連続26日、のべ30日接近。今年は5月11日までに10回の領海侵入を海上保安庁が確認した。

 元海上自衛隊海将の五味睦佳氏が語る。

「あくまで軍事行動ではなく、武力紛争に発展しない範囲で、海洋警察と準海軍組織の海上民兵を使ってジワジワと進行するのが彼らのやり方。海洋警察は年々装備を増強しており、刻々と緊張が高まっているのが現状なのです」

 さらに中国は南シナ海では看過できない“暴走”を始めている。

「火事場泥棒をやっているようなもの」

「中国は4月18日に南シナ海のスプラトリー諸島とパラセル諸島にそれぞれ南沙区と西沙区という行政区を設けると発表しました。南シナ海上空に防空識別圏を設ける布石とも囁かれていますが、今後、軍拡に資金を要する中国にとって豊富な地下資源を有するこの海域の実効支配を強めたことは、計り知れない意味を持つ」(外務省関係者)

 評論家の石平氏は中国の一連の海洋進出を「火事場泥棒以外の何ものでもない」と喝破する。

「元をただせば初期対応を誤ってウイルスを拡散させたのは中国。いわば火をつけて、各国がコロナ対応に追われている間に火事場泥棒をやっているようなもの。そうすることで、コロナ禍で中国政府の隠蔽工作を疑問視する国内批判をかわし、習近平体制が依然として盤石だとアピールする効果もあるのです」(同前)

 中国指導部による香港の民主化運動の弾圧も、構図はまったく同じだ。

香港民主派弾圧にも伏線が

 香港警察は4月18日、“香港民主派の父”と呼ばれる李柱銘氏ら香港の主要な民主派15人を違法集会参加などの容疑で一斉逮捕したが、伏線があった。

「中国政府は2月13日、香港とマカオ政策を担当する香港マカオ事務弁公室トップの張暁明主任を副主任に降格し、主任を夏宝竜・人民政治協商会議副主席が兼任すると発表しました。夏氏は、習氏が浙江省の党委員会書記だった当時の側近です。つまり、香港に“習派”の重鎮を送り込み、自身の意向がより直接伝わる体制を築いた。そしてコロナ感染拡大阻止の名目で、4人以上が集まることを禁止する“集会禁止令”を3月末に発布して大規模デモを牽制。そのうえで昨年から続く反政府デモに一切の妥協をしない姿勢を示すべく民主派弾圧に踏み切ったのです」(前出・北京特派員)

 その背景をジャーナリストの福島香織氏はこう語る。

「中国当局の香港への介入を阻止したい民主派に対し、法解釈を強引に変えて介入している危険な状態です。韓国や米国など、香港の後ろ盾になっていた国々がコロナ対応で手一杯で、国際社会の反応が鈍いなか、やりたい放題がまかり通っています。習近平体制はなし崩し的に影響力を行使する一方で、コロナ後の覇権を握るため、国内では2月時点で経済回復の大号令をかけていた。米中対立で逃げ出した外資をいかに国内に呼び戻し、リーマンショック以上のV字回復ができるかが今後の課題になる」

 中国にとっての“誤算”は、肩入れしてきたアフリカ諸国の支持に陰りが見え始めていることだ。

「中国はこれまで一帯一路政策で金をバラ撒き、アフリカ諸国、とくにナイジェリアは国民の8割が中国を支持していました。しかし4月に広東省でアフリカ人がコロナを媒介しているというデマが流れ、現地に住むアフリカ人らが中国当局から非人道的な扱いを受けた。このトラブルに対し、ナイジェリアを含むアフリカ20カ国が連名で非難声明を出し、ナイジェリアでは中国企業の焼き討ちも起きているのです」(中国ルポライターの安田峰俊氏)

 実はコロナ後の世界経済で喫緊の懸念とされる食糧問題で、鍵を握るのがアフリカの存在だ。

「中国は世界の約8億6000トンの穀物在庫の半分を抱えながら、輸入量もケタ違いに多い。アフリカはコロナ禍とサバクトビバッタの蝗害で食糧難に喘いでおり、中国の食糧支援カードは武器にもなり得るが、切り方を間違えれば、世界の嫌われ者になる危険性も孕んでいます」(食糧問題の専門家)

 中国の専横をこれ以上許してはならない。』

『習近平「人類運命共同体」の正体は「中国への隷属」
自由・人権、国家主権も認めない社会を世界は受け入れない

中国で開催中の全人代に出席した習近平国家主席(5月22日、写真:新華社/アフロ)
 中国の新型コロナウイルス(以下コロナウイルス)感染者は8万4081人、死者は4638人(2020年5月24現在)である。

 しかし、武漢での発生状況を早くから掴み、世界保健機関(WHO)にも通報した台湾は中国の死者を2万5000人以上と報道し、米国に亡命している郭文貴氏は5万人と発言している。

 中国の発表に信頼性がないのはいつものことであるが、中国がコロナウイルスによる感染状況をWHOと結託して隠蔽したとなると世界に対する犯罪行為である。

 今も10万人の感染者が日々発生し、世界の感染者は530万人を超え、死者も34万人超となった。最大の被害国は米国で、160万人超が感染し、約10万人が死亡した。

1月21日前後の状況

 5月10日の英デイリーメールは、「習近平主席が1月21日、WHOのテドロス事務局長に電話をかけ、『コロナウイルスの人の間の伝染関連情報を統制し、パンデミックのような世界レベルの警告を延期してほしい』と要請した」というドイツ連邦情報局(BND)の諜報文書を独シュピーゲル紙が入手したと報じた。

 武漢市中心病院・南京路分院の救急科主任である艾芬(アイフェン)の手記(『文藝春秋』2020年5月号所収)によると、1月21日、通常の3倍にあたる1523人を診察し、655人の発熱患者が出て病棟は飽和して受け入れられない状態であった。

 1月24日のAFPは、感染者が830人を超え、少なくも26人が死亡と報じ、艾芬主任は27日の感染者は2829人で、死者は81人としている。

 1月20日に習近平主席は「ヒト―ヒト感染」を認め、「情報を隠すことなく全力で感染症対策に取り組むよう」指示した。そして23日午前2時に武漢市と湖北省の封鎖を決定し、8時間後の10時に封鎖を行う。

 この前後に病院建設を指示したとみられ、1月24日の中国国営メディアは「武漢市内に感染者に特化した病院を新設している」と、50台近くのショベルカーが展開し、路上にはダンプカーやミキサー車が延々と続いている写真と同時に報じている。

 2月2日に1000床の病院が完成、3日から患者を受け入れている。

 他方、WHOは22日に会議を開き、23日テドロス局長は「中国で発生しているウイルスは世界的な脅威でない」として緊急事態宣言を見送る。

 北京とジュネーブの時差を考慮すると、中国の封鎖決定とWHOの会議、封鎖実施と緊急事態宣言見送りの日にちの符節が合っている。

 前年12月中・下旬には「ヒト―ヒト感染」も「ウイルス性肺炎」も中心病院の医者グループでは共有されているが、厳しく口止めされている(艾芬女医が夫へ言えたのも習近平主席の指示が出た1月20日)。

 また、口止めされていた期間に中国は病院建設や都市封鎖を行うなど緊迫した状況にあるが、WHOの「中国で発生しているウイルスは世界的な脅威でない」は、中国以外の国々を「慢心」させるための声明のように思える。

 1月27日、テドロス事務局長は北京を訪問、翌28日習近平主席と会談。29日には「中国は主席の指導性発揮でコントロールしている」とのステートメントを発表。ここでも中国を評価している。

 しかし、2日後の31日には一転して「ウイルスは世界的な脅威」と認めるも、パンデミック認定はこの日から40日後の3月11日で、主席が局長に「警告延期」を依頼したとされる日からは50日後である。

 中国が国内対策を整斉と進めた後をWHOは追っかけているようにも見え、米国のドナルド・トランプ大統領が「WHOは〝中国の操り人形″〝中国寄り″だ」と発言するのも故なしとしないようである。

真相が明かされない国家の実体

 習近平主席は2013年5月、大学教師が学生と議論してはならない事項を「七不講(チーブジャン)」として示した。

 人権侵害、言論統制、政治活動の制限、選挙権の不在、(天安門事件などの)歴史的過ち、特権階級の独占・腐敗、党による司法の支配である。

 共産党独裁体制の矛盾や恥部に対して国民の目と口を塞ぐこと、すなわち「検閲」によって、共産党と指導者の無謬性を保証しようとするものだ。

 武漢の李文亮医師が「SARSウイルス、これは大変だ」という発言をチャット仲間と交わし市民に漏れたことで訓戒を受けことは、まさしく七不講の中国社会への適用であったのではないだろうか。

 武漢在住で新型コロナウイルスの感染状況を直に目にすることができた方方という作家が日記を日々公開していたが、「2月7日から2月23日の間には公開すらされず、3月に入ってからも日記を公開できない日が続いた」という。

 ちなみに2月7日は李文亮医師が死亡した日である。

 公開された日記から市民は厳しい状況を読み取り、高く評価していたことが次の2人の発言からもよく分かる。厳しい言論統制と公権力に順応する中国のメディアの現実を髣髴とさせる。

 戴教授は「武漢の閉鎖以降、武漢人が毎日まずしていることは方方日記を読むことです。武漢、中国は歴史上ないほどの大惨禍に遭遇しているにもかかわらず、テレビも新聞も何も報道しない。すでにみんなこの世にテレビや新聞があることすら忘れています。皆、方方日記だけを読んでいます」と書いた(2月24日戴氏のブログより、現在削除)。

 慎説(ハンドルネーム)は「ウイルスに関心を持つ多くの人々は、(方方日記が)現地の真実を伝えていると確信している。提灯記事を書くために派遣された300人のマスコミ関係者に声を失わせ、中国のすべての物書きに恥をかかせている」と述べている。

 方方の公開された日記は当局の検閲にかからない範囲でしかないわけで、本当の現実、より深刻な真実は外部に出ることはなかった。

空疎に聞こえる習近平演説

 米国が「感染拡大の原因は〝中国による隠蔽″」と批判するなか、5月18、19日にWHOの年次総会が開かれた。

 コロナウイルスの蔓延の折柄、開幕式はビデオ会議形式で行われ、新華社によると習近平中国国家主席が次のような演説を行った。

「新型コロナウイルス感染症という第2次世界大戦以降で最も深刻な世界の公衆衛生突発事件を前に、各国の人々は勇敢に立ち向かい、共に見守り助け合い、困難を共に乗り越えてきた」

「中国は人を根本とし、生命第一を堅持しており、公開と透明、責任ある態度に終始してきた。終始人類運命共同体構築の理念を守り、自国民の生命と健康に責任を負うだけでなく、世界の公共衛生事業に対する責任も果たしてきた」

 世界中がコロナウイルスで苦悶に喘いでいるのを前にして、「よくも言えたものである」と感心するとともに嘆息せざるを得ない。

 続けて「新型コロナの感染はいまだ拡大を続けており、予防・抑制活動はなおも努力を要する。感染の予防・抑制に全力を挙げ、WHOに指導的役割を発揮させるべきである」と訴えた。

 さらに「アフリカ諸国への支援を拡大し、グローバルな公衆衛生ガバナンスを強め、経済・社会の発展を回復させ、国際協力を強化しなければならない」として、「人類衛生健康共同体」の構築を呼びかけ、次のような5項目の措置を発表した。

①今後2年間に20億ドルの国際援助(主に発展途上国)
②輸送と優先通関ルートの確立
③アフリカへの医療支援

④予防ワクチンの開発と発展途上国支援
⑤G20とともに最貧国の支援

 ①~④は中国の「一帯一路」に疑問を持ち始めたアフリカや発展途上国を視野に入れた支援のテコ入れで、それをオブラートに包むために⑤のG20との協力を打ち出した感じである。

「生命第一」「公開と透明」などを強調した習近平主席の演説に対し、米国代表のアレックス・アザー保健福祉長官は「ある加盟国は新型ウイルスの発生を明らかに隠そうとして、透明性を確保する義務を怠って世界に甚大な被害を及ぼした」と、冷ややかな反論をした。

人類運命共同体の発想はどうして生まれたか

 習近平主席の「人類運命共同体」の発想は、「人民日報」元論説委員で体制内改革派と称される馬立誠氏の「対日新思考」にヒントを得ているようである。

 氏は2002年、江沢民の歴史認識で日中関係がぎくしゃくし、胡錦濤政権が発足した直後、日本だけを責める見方から距離を置き、客観的事実に即して対処するように訴えた。

 2003年2月21日付「朝日新聞」は、「新思考の『対日論文』波紋」「中国共産党、賛否決めず」という見出しで、馬立誠氏が人民日報に発表した論文の概要を紹介した。

「国土が小さく資源の乏しい日本が世界第2位の経済的地位にあるのは、アジアの誇りと言える。日本は民主・法治体制を確立しており、『軍部』が専横する状況にはない。・・・中国は戦勝国であり大国であるという度量をもたねばならず、日本に厳しすぎてはならない」

「村山富一元首相や小泉純一郎首相は盧溝橋で哀悼の意を示し、侵略戦争への反省を表明した。日本の謝罪問題は解決しており、形式にこだわる必要はない。・・・新たな競合の場は経済と市場であり、両国民は狭い観念を克服して一体化に向けて進むべきだ」

 習近平政権になっていた2015年、馬立誠氏は中国側に寛容を求める第2の論文を発表する。

 そして、日中国交正常化45周年を前にした2017年9月、「『対日関係新思考』を三たび諭す」として、「人類愛で歴史の恨みを溶かす」(『中央公論』2017年10月号所収)を発表した。

 日中戦争時に両国の文筆家が書いた詩などには、相手の国土や国民を思いやる内容が見られる。こうした内容が「人類愛で恨みを溶かす」ということだと馬立誠氏は語る。

 また、習近平主席が2013年3月に「人類運命共同体」の構築を提唱したことを取り上げ、これこそが「人類愛の基礎」だという。

 そして、ヴォルテールや孔子、黒人指導者マンデラなどの先賢たちの論述は、「寛容、憐憫、同情、博愛、和解」が「人類の愛の基本元素」となり得ることを示しているという。

 4度目の新思考は日中国交正常化45周年を記念した会議で「日中の和解」がテーマになったことに触発されて書いたもので、「和解とは何か、いかに和解するか」(『中央公論』2018年8月号所収)である。

 天安門事件や両国の政治的ネックにも言及しながら、政治、経済、文化・芸術、旅行者の往来など、多肢にわたる分野で日中関係が改善していることを強調する。すなわち相互の民意の疎通で和解が一段と進むとしている。

おわりに

 チベットやウイグル、そして香港、さらには今次のコロナウイルス騒擾で、世界の多くの国が中国の人権や行動の異常に気づき始めた。

 しかし、開発途上国の指導者の中には中国の経済支援に目がくらみ、取り込まれていく国も多い。

 コロナウイルスでは米国が最大の被害国となり苦悶しているのを横目に、早々と克服したする中国は世界の救世主然として振る舞いつつある。

 ロシアでは中国の勢力圏の中での平和、すなわち「パクス・シニカ」の議論が活発になっているという(「日本経済新聞」2020年5月24日)。

 自由や民主主義、法の支配を認めない中国が覇権を握った暁に、習近平主席が提唱する「人類運命共同体」や「人類衛生健康共同体」の構築が期待できるだろうか。

 一党独裁の中国が覇権国家となれば、「パクス・アメリカーナ」とは全く異なり、国家主権も認めない奴隷国家的な華夷秩序を強いられるかもしれない。

 その「くびき」を脱するには100~300年の呻吟を要するに違いない。

 緊急事態宣言を発したが強制力を使わずに解除に向かった日本は世界の「ミステリー」となっている。

 日本の生き方は、米中が対決する中で民主主義陣営の一員として全体主義陣営をいかに民主体制に向かわせるかの旗振り役となることではないだろうか。

 中国の力を認めることに吝かであってはならない。しかし、その力、中でも経済力と技術力は、まずは国際社会の発展に還元して、地球に存在する人類の福祉に役立ててもらわなければならない。

 それには、香港市民と同様に中国人民の意識が肝要である。

 馬立誠氏の新思考には一党独裁と中国人民の関係についての言及がほとんどない。体制内改革派として言論の許容範囲を知り尽くし、新思考でその範囲を拡大しつつあるのであろうが、やはり「画竜点睛を欠く」感を免れない。

 習近平主席の「人類運命共同体」あるいは「人類衛生健康共同体」提唱が、覇権獲得の方便ではなく心底からの願いというならば、コロナウイルスの発生源調査での(疑問がもたれている研究所なども開放して)「率先協力」することが試金石となろう。』


自然発生にせよ研究所の事故にせよ新型コロナウィルス流行の最初の中心地が中国だったことは疑いもない。

しかし、その後の中国の対応は独善的であり、金に目がくらんだWHOのテドロス事務局長にパンデミックの宣言を遅らせたことが、世界の対応を遅らせたことも間違いないと思う。

その後も中国はこの機会を利用して、マッチポンプを演じるどころか世界がコロナへの対応に追われる最中に覇権を拡大しようとしていることも事実である。

トランンプ大統領が言うまでもなく、中国をこのままにしていたら自由主義が世界から消えてなくなる可能性さえあるだろう。


一党独裁が民主主義なわけがないが、中国の人民は一体何を考えているのだろうか。

中国人も中国共産党の被害者だと私は思うが、当人が被害者の自覚がなければ改革しようなどとは思いもしないのだろう。

香港や台湾の人たちは共産党のやり方がおかしいことはよくわかっているのだろうが、日本はこれから中国とどう関わるつもりなのだろうか。

まさか、インバウンド欲しさに習近平を国賓として歓迎するつもりなのだろうか。

私は今はもうあり得ない話だと思いたいが、なにせあのア◯総理のことだから、またやらかしてしまうのかもしれない。

連続任期が1位となる8月24日辞任説が流れているようだから、もう何もしないで静かに退場してくれた方がいいと思う。

それにしても、いまさら連続任期1位にこだわっているとしたら、やっぱりそれだけで歴史に残る政権と自らみとめることになるわけで、これを花道と言えるのかどうかは微妙なところだろう。

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