今度もはしごの掛け替え?
2007年4月16日 医療の問題『 療養病床の削減計画策定へ 厚労省方針受け、都道府県
厚生労働省が、療養病床の削減について高齢化の進展など地域の実情を踏まえるとの方針案を示したことで、今後は都道府県レベルで削減目標数などを盛り込んだ「医療適正化計画」の策定作業が本格化する。
計画は2008年度から5年間。今秋には、各都道府県から報告を受け、療養病床の再編が終わる11年3月末までの全体の削減目標が決まる。
削減に伴い退院患者の受け入れ先となる老人保健施設など介護サービス量の見込みなども併せて示される。当面、75歳以上の後期高齢者が膨らむことや独居世帯が増えることを想定すると、どうサービスを増やすかという考え方が中心となりそうだ。
ただ20年ごろには65歳以上の高齢者の増加が横ばいに転じることになり、中長期的な視点が必要との指摘も。高齢者が減少する地域も少なくなく、施設が過剰に転じる可能性があるためだ。
02年の都道府県別の将来人口推計によると、新潟、香川は20年以降、高齢者人口が減少。北海道や熊本などでも25年には減少傾向に転じる。首都圏や関西圏など大都市圏では比較的に年齢層がまだ若く、高齢者の増加傾向が続くとみられている。
また、介護保険制度がなかった10年ほど前に、高齢化社会を見据えて国が療養病床を奨励。多くの病院が借金してまで転換を図った経緯があり、「はしごを外された」(病院経営者)との声などへの配慮が必要となる。
団塊世代の高齢者層入りを控え、国は在宅医療、在宅介護の推進をますます強める見通しだが、医療や介護サービスが質・量ともに確保できるかが問われている。』
『 新型老健施設は終末期も対応 厚労省、療養病床転換促す
厚生労働省は14日、慢性疾患を抱えるお年寄り向けの療養病床を減らすため、療養病床から老人保健施設に転換した場合、終末期のお年寄りのみとりや夜間看護などを充実させた新しいタイプの老健施設とすることを認める方針を固めた。削減で療養病床に入れなくなるお年寄りの受け皿とし、転換を促す狙いがある。09年の介護報酬改定で、療養病床から新型の老健施設に移行した施設への報酬を手厚くする。
厚労相の諮問機関である「介護施設等の在り方に関する委員会」で検討し、6月をめどに具体的な対応をまとめる。
療養病床には現在、医療保険を使って入院するベッド25万床と、介護保険を使う12万床がある。だが、療養病床の患者の半数は「医師の対応がほとんど必要ない」とされる。こうした社会的入院を解消し、医療費を抑えるため、厚労省は療養病床を12年度末までに15万床超に減らす方針だ。
療養病床に入れないお年寄りは、老健施設や有料老人ホーム、自宅療養に移ることを想定している。しかし現実には、病状が安定していても、チューブによる栄養補給や、機械でのたんの吸引が必要な患者もいる。退院後に自宅へ戻るまでのリハビリなどを行ってきた現在の老健施設では受け入れが難しい場合があり、どの施設も受け入れてくれない「介護難民」が発生する恐れがある。
療養病床を抱える医療機関の多くも、必要な医療を提供できなくなるなどとして老健施設への転換に難色を示している。厚労省は、療養病床で提供している比較的軽度な医療行為を、療養病床から転換した後の老健施設でも対応できるようにすることで、療養病床の削減を進めたい考えだ。
また、現行の老健施設では「入所者100人につき看護師・准看護師9人」としている基準よりも看護師を多く配置。日常の看護や終末期のみとり、身体機能を維持するためのリハビリを充実させる。
従来の老健施設に対する介護報酬とは別に、療養病床から新型の老健施設に転換したところに限り、介護報酬を上乗せする方針。みとりやリハビリの看護を提供した場合は、さらに加算することも検討する。
これまでの老健施設は病院と自宅との「橋渡し」が中心で、施設で死を迎える人は入居者の2%にとどまる。自宅で亡くなるまで過ごすのが難しいお年寄りも多いため、新型老健施設では、長期的なケアや終末期医療にも対応できる「ついのすみか」の面ももたせる。
厚労省は、療養病床の削減で医療保険給付は12年度時点で年4000億円減る一方、介護保険は1000億円増え、差し引き3000億円の給付抑制につながるとしている。新型老健施設で介護報酬を手厚くすれば、給付の抑制幅は小さくなる可能性がある。 』
医療保険を使って入院するベッド25万床と介護保険を使う12万床の計37万床を15万床にした場合,その差は22万床.これを介護保険の増加の1000億円でみると1床あたりで年45万円の計算になる.
1ヶ月では,わずか3万7500円.療養病床から新型の老健施設に転換したところに限り、介護報酬を上乗せするといってもせいぜい月1万円もいかないだろうから,10年経っても病床転換による設備投資の元が採れるかどうかも疑わしいのではないだろうか.
10年前の療養型病床の時も最初はおいしそうに見えたが,すぐに話が変わって痛い目にあったのはつい最近のことだから,病院もこんな話に飛びつくわけにはいかないだろう.だから病床転換するよりも廃院してしまうところが多いのではないだろうか.
だが,そんなことは厚労省は十分承知しているのだろう.結局,療養病床で提供する軽度な医療行為や終末期への対応は開業医にやらせるつもりのようで,最近はこんなことも言っているのである.
『 「大病院、一般外来なし」 役割分担促す 厚労省方針
厚生労働省は13日、今後の医療政策の方向性として、大病院や専門病院は一般的な診察はせずに入院と専門的な外来に特化する一方、開業医に対しては休日・夜間の診療や患者の自宅を訪れる訪問診療を求める報告書をまとめた。病院と開業医の役割分担を明示することで、勤務医の過度な負担を軽減するとともに、在宅医療への移行をはかるのが狙いだ。今後、診療報酬の見直しなどを通じて実現を目指す。
柳沢厚労相を本部長とする「医療構造改革推進本部」が報告書を作成。都道府県の担当者を集めた17日の会議で提示する。
報告書では、日本の医療の問題点として、大病院、中小の病院、開業医の役割分担が明確ではない結果、「拠点となる大病院などに外来患者が集中し、勤務医に過度の負担がかかっている」と指摘。大病院は「質の高い入院治療が24時間提供されるよう、原則として入院治療と専門的な外来のみを基本とする」と明記した。
また、中小の病院は軽い病気の入院治療や脳卒中などの回復期のリハビリテーションなどを担当することが妥当とした。
一方、「夜間や休日などの治療に不安がある」とする患者のニーズに対応するため、開業医の果たすべき役割として(1)休日夜間急患センターに交代で参加する(2)時間外でも携帯電話で連絡がとれる(3)午前中は外来、午後は往診・訪問診療という経営モデルをつくる、などを挙げた。
開業医はこれまで以上に広範な対応や知識が求められるため、開業医のチーム化や研修を充実させ、「看(み)取りも含め24時間体制での連絡や相談機能を果たすことのできる体制を検討する必要がある」としている。
長期療養が必要なお年寄りについては、患者を継続的に診る「在宅主治医」の重要性に言及。患者自らが主治医を選び、医師間や病院との調整を担ってもらうことで、ケアの質を上げる。
こうした方向性に基づいて、厚労省は地域の医療計画を策定するよう、各都道府県に要請。開業医の訪問・夜間診察の診療報酬の引き上げや、総合的な医師の養成などに取り組む考えだ。 』
勤務医の負担を軽減というと聞こえはいいが,結局は開業医からの夜間・救急診療の依頼が増えるだけで,勤務医のストレスが減ることにはならないだろう.むしろ,夜間呼び出しがないのだけが救いだった開業医も巻き込んで,さらに医療は荒廃していくのではないだろうか.
厚生労働省の朝令暮改は今に始まったことではないのだろうが,最近の医療行政は臨床医の私には理解できないことだらけである.政府の本当の狙いは病院経営自体を企業の支配下に置くことではないかと思うのだが,その意味では目的を達成しつつあるのだろうか.10年後の医療がどうなっているのかまったく想像もできないのは,きっと私だけではないだろう.
厚生労働省が、療養病床の削減について高齢化の進展など地域の実情を踏まえるとの方針案を示したことで、今後は都道府県レベルで削減目標数などを盛り込んだ「医療適正化計画」の策定作業が本格化する。
計画は2008年度から5年間。今秋には、各都道府県から報告を受け、療養病床の再編が終わる11年3月末までの全体の削減目標が決まる。
削減に伴い退院患者の受け入れ先となる老人保健施設など介護サービス量の見込みなども併せて示される。当面、75歳以上の後期高齢者が膨らむことや独居世帯が増えることを想定すると、どうサービスを増やすかという考え方が中心となりそうだ。
ただ20年ごろには65歳以上の高齢者の増加が横ばいに転じることになり、中長期的な視点が必要との指摘も。高齢者が減少する地域も少なくなく、施設が過剰に転じる可能性があるためだ。
02年の都道府県別の将来人口推計によると、新潟、香川は20年以降、高齢者人口が減少。北海道や熊本などでも25年には減少傾向に転じる。首都圏や関西圏など大都市圏では比較的に年齢層がまだ若く、高齢者の増加傾向が続くとみられている。
また、介護保険制度がなかった10年ほど前に、高齢化社会を見据えて国が療養病床を奨励。多くの病院が借金してまで転換を図った経緯があり、「はしごを外された」(病院経営者)との声などへの配慮が必要となる。
団塊世代の高齢者層入りを控え、国は在宅医療、在宅介護の推進をますます強める見通しだが、医療や介護サービスが質・量ともに確保できるかが問われている。』
『 新型老健施設は終末期も対応 厚労省、療養病床転換促す
厚生労働省は14日、慢性疾患を抱えるお年寄り向けの療養病床を減らすため、療養病床から老人保健施設に転換した場合、終末期のお年寄りのみとりや夜間看護などを充実させた新しいタイプの老健施設とすることを認める方針を固めた。削減で療養病床に入れなくなるお年寄りの受け皿とし、転換を促す狙いがある。09年の介護報酬改定で、療養病床から新型の老健施設に移行した施設への報酬を手厚くする。
厚労相の諮問機関である「介護施設等の在り方に関する委員会」で検討し、6月をめどに具体的な対応をまとめる。
療養病床には現在、医療保険を使って入院するベッド25万床と、介護保険を使う12万床がある。だが、療養病床の患者の半数は「医師の対応がほとんど必要ない」とされる。こうした社会的入院を解消し、医療費を抑えるため、厚労省は療養病床を12年度末までに15万床超に減らす方針だ。
療養病床に入れないお年寄りは、老健施設や有料老人ホーム、自宅療養に移ることを想定している。しかし現実には、病状が安定していても、チューブによる栄養補給や、機械でのたんの吸引が必要な患者もいる。退院後に自宅へ戻るまでのリハビリなどを行ってきた現在の老健施設では受け入れが難しい場合があり、どの施設も受け入れてくれない「介護難民」が発生する恐れがある。
療養病床を抱える医療機関の多くも、必要な医療を提供できなくなるなどとして老健施設への転換に難色を示している。厚労省は、療養病床で提供している比較的軽度な医療行為を、療養病床から転換した後の老健施設でも対応できるようにすることで、療養病床の削減を進めたい考えだ。
また、現行の老健施設では「入所者100人につき看護師・准看護師9人」としている基準よりも看護師を多く配置。日常の看護や終末期のみとり、身体機能を維持するためのリハビリを充実させる。
従来の老健施設に対する介護報酬とは別に、療養病床から新型の老健施設に転換したところに限り、介護報酬を上乗せする方針。みとりやリハビリの看護を提供した場合は、さらに加算することも検討する。
これまでの老健施設は病院と自宅との「橋渡し」が中心で、施設で死を迎える人は入居者の2%にとどまる。自宅で亡くなるまで過ごすのが難しいお年寄りも多いため、新型老健施設では、長期的なケアや終末期医療にも対応できる「ついのすみか」の面ももたせる。
厚労省は、療養病床の削減で医療保険給付は12年度時点で年4000億円減る一方、介護保険は1000億円増え、差し引き3000億円の給付抑制につながるとしている。新型老健施設で介護報酬を手厚くすれば、給付の抑制幅は小さくなる可能性がある。 』
医療保険を使って入院するベッド25万床と介護保険を使う12万床の計37万床を15万床にした場合,その差は22万床.これを介護保険の増加の1000億円でみると1床あたりで年45万円の計算になる.
1ヶ月では,わずか3万7500円.療養病床から新型の老健施設に転換したところに限り、介護報酬を上乗せするといってもせいぜい月1万円もいかないだろうから,10年経っても病床転換による設備投資の元が採れるかどうかも疑わしいのではないだろうか.
10年前の療養型病床の時も最初はおいしそうに見えたが,すぐに話が変わって痛い目にあったのはつい最近のことだから,病院もこんな話に飛びつくわけにはいかないだろう.だから病床転換するよりも廃院してしまうところが多いのではないだろうか.
だが,そんなことは厚労省は十分承知しているのだろう.結局,療養病床で提供する軽度な医療行為や終末期への対応は開業医にやらせるつもりのようで,最近はこんなことも言っているのである.
『 「大病院、一般外来なし」 役割分担促す 厚労省方針
厚生労働省は13日、今後の医療政策の方向性として、大病院や専門病院は一般的な診察はせずに入院と専門的な外来に特化する一方、開業医に対しては休日・夜間の診療や患者の自宅を訪れる訪問診療を求める報告書をまとめた。病院と開業医の役割分担を明示することで、勤務医の過度な負担を軽減するとともに、在宅医療への移行をはかるのが狙いだ。今後、診療報酬の見直しなどを通じて実現を目指す。
柳沢厚労相を本部長とする「医療構造改革推進本部」が報告書を作成。都道府県の担当者を集めた17日の会議で提示する。
報告書では、日本の医療の問題点として、大病院、中小の病院、開業医の役割分担が明確ではない結果、「拠点となる大病院などに外来患者が集中し、勤務医に過度の負担がかかっている」と指摘。大病院は「質の高い入院治療が24時間提供されるよう、原則として入院治療と専門的な外来のみを基本とする」と明記した。
また、中小の病院は軽い病気の入院治療や脳卒中などの回復期のリハビリテーションなどを担当することが妥当とした。
一方、「夜間や休日などの治療に不安がある」とする患者のニーズに対応するため、開業医の果たすべき役割として(1)休日夜間急患センターに交代で参加する(2)時間外でも携帯電話で連絡がとれる(3)午前中は外来、午後は往診・訪問診療という経営モデルをつくる、などを挙げた。
開業医はこれまで以上に広範な対応や知識が求められるため、開業医のチーム化や研修を充実させ、「看(み)取りも含め24時間体制での連絡や相談機能を果たすことのできる体制を検討する必要がある」としている。
長期療養が必要なお年寄りについては、患者を継続的に診る「在宅主治医」の重要性に言及。患者自らが主治医を選び、医師間や病院との調整を担ってもらうことで、ケアの質を上げる。
こうした方向性に基づいて、厚労省は地域の医療計画を策定するよう、各都道府県に要請。開業医の訪問・夜間診察の診療報酬の引き上げや、総合的な医師の養成などに取り組む考えだ。 』
勤務医の負担を軽減というと聞こえはいいが,結局は開業医からの夜間・救急診療の依頼が増えるだけで,勤務医のストレスが減ることにはならないだろう.むしろ,夜間呼び出しがないのだけが救いだった開業医も巻き込んで,さらに医療は荒廃していくのではないだろうか.
厚生労働省の朝令暮改は今に始まったことではないのだろうが,最近の医療行政は臨床医の私には理解できないことだらけである.政府の本当の狙いは病院経営自体を企業の支配下に置くことではないかと思うのだが,その意味では目的を達成しつつあるのだろうか.10年後の医療がどうなっているのかまったく想像もできないのは,きっと私だけではないだろう.
『 訪問介護で全国監査へ 厚労省通知
厚生労働省は10日、広域的に事業を展開する指定訪問介護事業者について虚偽の介護報酬申請が行われていないか、速やかに監査するよう都道府県に通知した。東京都が訪問介護大手のコムスン、ニチイ学館、ジャパンケアサービスに対し、不正請求があったとして業務改善勧告を出したことを受けた措置。3社を含め広域的に事業を展開している事業者が対象で、悪質な事例については厳正な処分を求めている。』
年金をいいだけ無駄遣いしてくれた厚生労働省に比べれば4300万円なんてかわいいものだが,訪問介護事業で利益を上げるためにはそのくらいのリスクは計算していたのではないだろうか.
老人介護のコストダウンが目的なのだから当然かもしれないが,病院での社会的入院の時代に比べるとかなり手薄な感じがするのが現在の訪問介護サービスである.しかし,コムスン本社は六本木ヒルズにあるそうだから,実際には介護保険料からの収益はきっとかなりなものなのだろう.
医療保険の時代とちがってサービスの質を落とせば儲かるのが介護保険制度なのだから企業は今後もあの手この手でコストダウンを計るに違いない.だから,指定取り消し前に廃業するという裏技もあらかじめ想定内だったに違いないと思うのは私だけだろうか.
厚生労働省は10日、広域的に事業を展開する指定訪問介護事業者について虚偽の介護報酬申請が行われていないか、速やかに監査するよう都道府県に通知した。東京都が訪問介護大手のコムスン、ニチイ学館、ジャパンケアサービスに対し、不正請求があったとして業務改善勧告を出したことを受けた措置。3社を含め広域的に事業を展開している事業者が対象で、悪質な事例については厳正な処分を求めている。』
年金をいいだけ無駄遣いしてくれた厚生労働省に比べれば4300万円なんてかわいいものだが,訪問介護事業で利益を上げるためにはそのくらいのリスクは計算していたのではないだろうか.
老人介護のコストダウンが目的なのだから当然かもしれないが,病院での社会的入院の時代に比べるとかなり手薄な感じがするのが現在の訪問介護サービスである.しかし,コムスン本社は六本木ヒルズにあるそうだから,実際には介護保険料からの収益はきっとかなりなものなのだろう.
医療保険の時代とちがってサービスの質を落とせば儲かるのが介護保険制度なのだから企業は今後もあの手この手でコストダウンを計るに違いない.だから,指定取り消し前に廃業するという裏技もあらかじめ想定内だったに違いないと思うのは私だけだろうか.
『異常行動、10歳未満が半数 医薬品機構、症例HPで公開
インフルエンザ治療薬「タミフル」による副作用の疑いがある症例のうち、「異常行動」が05年度は計36件で、うち10歳未満が18件と半分を占めていることが、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」への副作用報告で分かった。今回、投与が原則禁止された10代では15件、20歳以上は3件だった。ただ、同機構が個別に副作用との関連性を評価したものではなく、因果関係ははっきりしていない。報告は薬事法に基づく制度。症例は01-05年度分が現在、同機構のホームページで公開されている。
タミフルを巡る副作用情報は01年の発売以降、約1800件で、厚生労働省が「異常行動」を中心に内容を再調査する方針を明らかにしている。
05年度の同機構への副作用報告総数は約500件。副作用の症状は約170項目に上るが、「異常行動」(36件)が最も多かった。このうち20歳以上の3件の内訳は40代、70代、90代がそれぞれ1件だった。』
『タミフル取り消し、回収を NPO法人が厚労省に要望
10代への処方が原則中止となったインフルエンザ治療薬「タミフル」について、特定非営利活動法人「医薬ビジランスセンター」の浜六郎(はま・ろくろう)代表は26日、承認取り消しと回収を求める要望書を厚生労働省に提出した。
要望書は、厚労省がタミフルと異常行動の因果関係に否定的だった従来の立場を白紙に戻したことについて「因果関係を実質的に認めたことを意味する」と指摘。10代の処方中止だけでは他の年代の被害を防ぐことができないとしている。』
製造元のスイス・ロシュ社の推計では,01年の発売以来,世界の服用者の約8割にあたる約2450万人が日本で服用したそうだ.インフルエンザが流行したのではなくタミフルの服用が流行したということなのだろう.これだけ短期間に大量に投与すれば未知の副作用が明らかになったとしても不思議ではないだろう.だからと言ってタミフルよりも副作用による死亡のリスクが高い薬すべてを承認取り消しにするとしたら,治療に有効なかなりの種類の薬が市場から消えるのではないだろうか.
今回の一件で予防接種を受ける人が増えるのか,それともリレンザでまた同じことを繰り返すのか興味深い.今の臨床は主治医の意見よりもマスコミの影響力が強く,患者さんの希望が最優先だから,素人判断が横行するわけで,それには厚生労働省もとりあえず白紙撤回して責任逃れをするしかないと判断しただけではないだろうか.
インフルエンザ治療薬「タミフル」による副作用の疑いがある症例のうち、「異常行動」が05年度は計36件で、うち10歳未満が18件と半分を占めていることが、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」への副作用報告で分かった。今回、投与が原則禁止された10代では15件、20歳以上は3件だった。ただ、同機構が個別に副作用との関連性を評価したものではなく、因果関係ははっきりしていない。報告は薬事法に基づく制度。症例は01-05年度分が現在、同機構のホームページで公開されている。
タミフルを巡る副作用情報は01年の発売以降、約1800件で、厚生労働省が「異常行動」を中心に内容を再調査する方針を明らかにしている。
05年度の同機構への副作用報告総数は約500件。副作用の症状は約170項目に上るが、「異常行動」(36件)が最も多かった。このうち20歳以上の3件の内訳は40代、70代、90代がそれぞれ1件だった。』
『タミフル取り消し、回収を NPO法人が厚労省に要望
10代への処方が原則中止となったインフルエンザ治療薬「タミフル」について、特定非営利活動法人「医薬ビジランスセンター」の浜六郎(はま・ろくろう)代表は26日、承認取り消しと回収を求める要望書を厚生労働省に提出した。
要望書は、厚労省がタミフルと異常行動の因果関係に否定的だった従来の立場を白紙に戻したことについて「因果関係を実質的に認めたことを意味する」と指摘。10代の処方中止だけでは他の年代の被害を防ぐことができないとしている。』
製造元のスイス・ロシュ社の推計では,01年の発売以来,世界の服用者の約8割にあたる約2450万人が日本で服用したそうだ.インフルエンザが流行したのではなくタミフルの服用が流行したということなのだろう.これだけ短期間に大量に投与すれば未知の副作用が明らかになったとしても不思議ではないだろう.だからと言ってタミフルよりも副作用による死亡のリスクが高い薬すべてを承認取り消しにするとしたら,治療に有効なかなりの種類の薬が市場から消えるのではないだろうか.
今回の一件で予防接種を受ける人が増えるのか,それともリレンザでまた同じことを繰り返すのか興味深い.今の臨床は主治医の意見よりもマスコミの影響力が強く,患者さんの希望が最優先だから,素人判断が横行するわけで,それには厚生労働省もとりあえず白紙撤回して責任逃れをするしかないと判断しただけではないだろうか.
医療職は不人気になる?
2007年3月17日 医療の問題 コメント (11)『「注射1人で出来ない」看護師学校の過半数で8割超す
新人看護師の看護技術低下が深刻化している。
日本看護協会の調査では、人工呼吸、心臓マッサージ、止血など救急救命術や注射などを「1人でできる卒業生が20%未満」という看護学校が半分を超えた。
新人看護師による医療事故も少なくない。事態を重く見た厚生労働省の検討会は来週、病院実習を大幅に増やすなど、看護教育カリキュラムの10年ぶりの見直しを議論する。
「点滴を付けた患者の寝間着やシーツを1人で替えられない」「患者の搬送時、ストレッチャーを真っすぐ押せない」。毎年4月になると、東大付属病院の榮木実枝看護部長のもとに新人看護師を巡るトラブル報告が相次ぐ。「ここ5、6年、シーツ交換など『これだけはできてほしい』ということができない人が増えた」と言う。』
今までにあわせて4期ほど看護学校で解剖学と脳神経外科疾患について教えた事がある.最後には翌年の講師の依頼をお断りさせていただいたのだが,その理由というのはあまりにも学生の質が悪くなったということだった.
もともと人に教えるなどということは好きではないが,教える以上はこちらもなるべく新しくて興味が持てるような資料を毎回色々準備して講義に臨んでいるのである.講義中居眠りしている学生はまあ許せたとしても,試験の採点の時に全員があまりに勉強していないのがわかり,正直言って驚いたのと同時に失望させられたのである.
基本的に留年はさせないように学校側から頼まれるので,試験問題はまったく教科書の範囲内だけにとどめて難易度も毎回変わらないようにしているのだが,最近の看護学生は昔の学生に比べて真剣に勉強していないことが試験の結果をみれば一目瞭然だったのである.それで私も休日を潰してまで資料を準備をして教える気を失ってしまったのだ.
だが,これが勉強しないのではなくやってもできない,つまり看護師を希望する学生の質が落ちているのだとしたら問題はより深刻だ.政府は医療費抑制のために厚生労働省に詳細な年次目標計画を提出させて,医療コストのさらなる圧縮を計ろうとしているようだが,それはすなわち医療職の人件費抑制ということにつながっていくに違いない.そんな状況で,今後,医師や看護師に優秀な人材が確保できるのだろうか.
医学部はまだ人気が高いとは言っても,研修医の動向をみてもわかるように一部の診療科はすでに職業としての魅力を失っているようであるし,地方医療の荒廃ぶりをみれば高い倫理感や医師としての使命感などを期待されてもそれに応える医師が増えるわけがないのも明らかだ.今や医師が業務上過失致死で逮捕されるのであるから,せっかく苦労して医師になっても得る物がないのでは人材が先細りになるのではないかと心配になる.
看護師も同様ではないだろうか,いくら呼び名が看護婦から看護師になっても社会的地位が向上し勤務が楽になって給与が増えたわけではない.診療報酬改訂のためにいろんな特典付きで勧誘されても,それは看護専門職としての技術やキャリアを買われたわけではなく頭数をそろえるのに必要とされただけの話である.こんな状況では,日頃から自分の仕事に対する学習意欲がわかないのも無理はないのではないだろうか.
最近は,どこの病院でも研修会や各種の委員会を通じて看護師の知識と技術の向上に努めてはいるのであるが,やはり肝心なのは新人看護師さん達の資質だろうと思う.しかし,医療コストを下げることばかり考えているといずれ看護師さんの大部分は賃金の安い外国からの人たちになってしまうのではないかと心配しているのは私だけだろうか.
新人看護師の看護技術低下が深刻化している。
日本看護協会の調査では、人工呼吸、心臓マッサージ、止血など救急救命術や注射などを「1人でできる卒業生が20%未満」という看護学校が半分を超えた。
新人看護師による医療事故も少なくない。事態を重く見た厚生労働省の検討会は来週、病院実習を大幅に増やすなど、看護教育カリキュラムの10年ぶりの見直しを議論する。
「点滴を付けた患者の寝間着やシーツを1人で替えられない」「患者の搬送時、ストレッチャーを真っすぐ押せない」。毎年4月になると、東大付属病院の榮木実枝看護部長のもとに新人看護師を巡るトラブル報告が相次ぐ。「ここ5、6年、シーツ交換など『これだけはできてほしい』ということができない人が増えた」と言う。』
今までにあわせて4期ほど看護学校で解剖学と脳神経外科疾患について教えた事がある.最後には翌年の講師の依頼をお断りさせていただいたのだが,その理由というのはあまりにも学生の質が悪くなったということだった.
もともと人に教えるなどということは好きではないが,教える以上はこちらもなるべく新しくて興味が持てるような資料を毎回色々準備して講義に臨んでいるのである.講義中居眠りしている学生はまあ許せたとしても,試験の採点の時に全員があまりに勉強していないのがわかり,正直言って驚いたのと同時に失望させられたのである.
基本的に留年はさせないように学校側から頼まれるので,試験問題はまったく教科書の範囲内だけにとどめて難易度も毎回変わらないようにしているのだが,最近の看護学生は昔の学生に比べて真剣に勉強していないことが試験の結果をみれば一目瞭然だったのである.それで私も休日を潰してまで資料を準備をして教える気を失ってしまったのだ.
だが,これが勉強しないのではなくやってもできない,つまり看護師を希望する学生の質が落ちているのだとしたら問題はより深刻だ.政府は医療費抑制のために厚生労働省に詳細な年次目標計画を提出させて,医療コストのさらなる圧縮を計ろうとしているようだが,それはすなわち医療職の人件費抑制ということにつながっていくに違いない.そんな状況で,今後,医師や看護師に優秀な人材が確保できるのだろうか.
医学部はまだ人気が高いとは言っても,研修医の動向をみてもわかるように一部の診療科はすでに職業としての魅力を失っているようであるし,地方医療の荒廃ぶりをみれば高い倫理感や医師としての使命感などを期待されてもそれに応える医師が増えるわけがないのも明らかだ.今や医師が業務上過失致死で逮捕されるのであるから,せっかく苦労して医師になっても得る物がないのでは人材が先細りになるのではないかと心配になる.
看護師も同様ではないだろうか,いくら呼び名が看護婦から看護師になっても社会的地位が向上し勤務が楽になって給与が増えたわけではない.診療報酬改訂のためにいろんな特典付きで勧誘されても,それは看護専門職としての技術やキャリアを買われたわけではなく頭数をそろえるのに必要とされただけの話である.こんな状況では,日頃から自分の仕事に対する学習意欲がわかないのも無理はないのではないだろうか.
最近は,どこの病院でも研修会や各種の委員会を通じて看護師の知識と技術の向上に努めてはいるのであるが,やはり肝心なのは新人看護師さん達の資質だろうと思う.しかし,医療コストを下げることばかり考えているといずれ看護師さんの大部分は賃金の安い外国からの人たちになってしまうのではないかと心配しているのは私だけだろうか.
労働時間だけが売り物です
2007年2月19日 医療の問題 コメント (3)『厚労相また失言? 「労働時間だけ売り物」
柳沢伯夫厚生労働相は19日午前の衆院予算委員会で、工場労働を「労働時間だけが売り物」とした労働法制に関する自らの発言について、撤回と議事録からの削除を検討する考えを明らかにした。
柳沢氏の発言は、15日の参院厚生労働委員会で答弁したもの。柳沢氏は事務職の一部を残業代の支払い対象から外すホワイトカラー・エグゼンプションに関連し、「工場労働というか、ベルトコンベヤーの仕事。もう労働時間だけが売り物ですというようなところでなく働いている方々の現実に着目した労働法制をつくることが課題だ」と述べた。
この発言について、民主党の川内博史氏が19日の衆院予算委で、「現場で一生懸命働いている方に失礼だ」と批判し、柳沢氏自らが議事録からの削除を申し出るよう求めた。これに対し、柳沢氏は「全体を見てもらえば誤解が生じるとは思わないが、『だけ』という表現が、ある人々を傷つけるとの指摘なので、(削除が)可能かどうかを相談したい」と述べた。』
『 月3回は32時間勤務=「休みゼロ」も3割近く−勤務医の労働実態調査・医労連
月3回は連続32時間勤務、3割近くは1カ月間休日なし−。勤務医の厳しい労働実態が19日、日本医療労働組合連合会(日本医労連)の初の調査で浮き彫りになった。慢性的に疲労を感じる人は6割に上った。
調査は昨年11月から今年1月にかけて、同労連の加盟組織などを通じ、勤務医に調査票を配布。25道府県約150施設の1036人の回答を集計した。
前月の宿直回数は平均2.9回。4回以上の人は全体の4分の1を占め、「10回以上」の人もいた。宿直明けの日に勤務がないのはわずか4.2%で、大半の人は宿直時に32時間連続勤務をしていた。
休憩時間を規定通り取れる人は約2割にとどまる。前月休んだ日数の平均は3.3日で、ゼロの人も27.0%いた。』
病院の宿直なんて救急患者が来なければ『もう労働時間だけが売り物です』というような仕事だけど,いつどんな救急患者が来るかと思うと非常にストレスを感じる医師は多いはずである.おまけに救急患者はだいたいが夕食後や明け方に来る事が多いから,受け入れる方は食事や睡眠が不規則になるものなのである.だから自分の健康を考えれば宿直なんてまっぴら御免だというのが多くの医師の本音ではないだろうか.
脳神経外科の場合,多くは2〜3人で宿直あるいは呼び出しの当番をまわすことが多いから,ひと月に多い人で15回以上,少ない人でも7〜8回は救急患者で呼び出されているのではないだろうか.そして医師の場合は宿直明けはそのまま翌日も勤務するのが常識になっているから前日の8時間+宿直16時間+翌日8時間で32時間労働になるわけである.運が悪いと本当に睡眠時間が0のまま緊急手術になることもあるが,たとえ緊急じゃなくとも当直の翌日に定期の手術なんてやりたいわけがないのである.
『働いている方々の現実に着目した労働法制をつくることが課題』などときれいごとを言うくらいなら,まず勤務医の連続勤務時間と一ヶ月の宿直時間の上限設定くらい厚生労働省でしてくれてもいいような気がするのだがどうだろうか.それとも勤務医はホワイトカラーじゃないから過労死あるいは医療事故で勾留されるまで働き続けなければいけないのだろうか.
柳沢伯夫厚生労働相は19日午前の衆院予算委員会で、工場労働を「労働時間だけが売り物」とした労働法制に関する自らの発言について、撤回と議事録からの削除を検討する考えを明らかにした。
柳沢氏の発言は、15日の参院厚生労働委員会で答弁したもの。柳沢氏は事務職の一部を残業代の支払い対象から外すホワイトカラー・エグゼンプションに関連し、「工場労働というか、ベルトコンベヤーの仕事。もう労働時間だけが売り物ですというようなところでなく働いている方々の現実に着目した労働法制をつくることが課題だ」と述べた。
この発言について、民主党の川内博史氏が19日の衆院予算委で、「現場で一生懸命働いている方に失礼だ」と批判し、柳沢氏自らが議事録からの削除を申し出るよう求めた。これに対し、柳沢氏は「全体を見てもらえば誤解が生じるとは思わないが、『だけ』という表現が、ある人々を傷つけるとの指摘なので、(削除が)可能かどうかを相談したい」と述べた。』
『 月3回は32時間勤務=「休みゼロ」も3割近く−勤務医の労働実態調査・医労連
月3回は連続32時間勤務、3割近くは1カ月間休日なし−。勤務医の厳しい労働実態が19日、日本医療労働組合連合会(日本医労連)の初の調査で浮き彫りになった。慢性的に疲労を感じる人は6割に上った。
調査は昨年11月から今年1月にかけて、同労連の加盟組織などを通じ、勤務医に調査票を配布。25道府県約150施設の1036人の回答を集計した。
前月の宿直回数は平均2.9回。4回以上の人は全体の4分の1を占め、「10回以上」の人もいた。宿直明けの日に勤務がないのはわずか4.2%で、大半の人は宿直時に32時間連続勤務をしていた。
休憩時間を規定通り取れる人は約2割にとどまる。前月休んだ日数の平均は3.3日で、ゼロの人も27.0%いた。』
病院の宿直なんて救急患者が来なければ『もう労働時間だけが売り物です』というような仕事だけど,いつどんな救急患者が来るかと思うと非常にストレスを感じる医師は多いはずである.おまけに救急患者はだいたいが夕食後や明け方に来る事が多いから,受け入れる方は食事や睡眠が不規則になるものなのである.だから自分の健康を考えれば宿直なんてまっぴら御免だというのが多くの医師の本音ではないだろうか.
脳神経外科の場合,多くは2〜3人で宿直あるいは呼び出しの当番をまわすことが多いから,ひと月に多い人で15回以上,少ない人でも7〜8回は救急患者で呼び出されているのではないだろうか.そして医師の場合は宿直明けはそのまま翌日も勤務するのが常識になっているから前日の8時間+宿直16時間+翌日8時間で32時間労働になるわけである.運が悪いと本当に睡眠時間が0のまま緊急手術になることもあるが,たとえ緊急じゃなくとも当直の翌日に定期の手術なんてやりたいわけがないのである.
『働いている方々の現実に着目した労働法制をつくることが課題』などときれいごとを言うくらいなら,まず勤務医の連続勤務時間と一ヶ月の宿直時間の上限設定くらい厚生労働省でしてくれてもいいような気がするのだがどうだろうか.それとも勤務医はホワイトカラーじゃないから過労死あるいは医療事故で勾留されるまで働き続けなければいけないのだろうか.
救急医療もいよいよ崩壊?
2007年2月14日 医療の問題『 江別市立病院:常勤医退職問題 あり方検討委が答申、医師の負担軽減を
内科医の大量退職に伴う患者減少で江別市立病院の経営が悪化している問題で、同病院あり方検討委員会(加藤紘之委員長ら6人)は答申を小川公人市長に提出した。緊急の対応策として内科常勤医の確保を図り、専門性の高い医療を提供する地域のセンター病院としての役割・機能を果たすべきだと提言した。答申を受け、小川市長は9日記者会見し、「着実に実行していきたい」と再建へ決意を示した。
同病院は06年3月に12人いた内科常勤医が10月に不在となり、06年度の決算は14億2000万円の赤字となる見込みだ。今年1月からは内科常勤医を2人確保しているが、患者数の回復には至っていない。
答申には(1)救急医療に関する勤務医の負担軽減(2)カルテの電算化などに対応する医療事務補助員の採用(3)医療紛争への病院の組織的対応(4)院内保育所設置(5)経験を積んだ熟練医師の半日勤務などでの活用----などを盛り込み、一人一人の医師の負担軽減や女性医師・看護師を採用しやすい環境作りを提言した。さらに、院長に予算、人事権を与え、強力なリーダーシップで医師・看護師の確保と採算性を考慮した経営改善に取り組むべきだとした。小川市長は昨年11月、学識経験者6人に同病院の役割を諮問し、これまで5回、委員会を開いてきた。』
赤字病院が厚生労働省の言いなりにカルテを電算化すればそれだけでさらに経営が傾くと思うのだが,江別市立病院の場合は今後さらに増大するであろう赤字をいつまで市が支える事ができるのか気になるところだ.
それ以上に気になったのは,「救急医療に関する勤務医の負担軽減」という項目だが,これをどのように実現するのかは非常に興味があるところだ.最近聞いた話だと公的病院が夜間に当直医以外の呼び出しを避けるために救急患者の搬入を断ることがあるらしい.それも院長が勤務医の負担を軽減して病院からいなくなるのを防ぐためだとしたらどうだろうか.
救急隊から搬入要請があっても当直医が専門医に連絡がつかないことなどを理由に搬入を断れば,場合によっては他市の公的病院まで搬送しなければならなくなる.まあ,こんなことは米国ではよくある事らしいが,我が国もついにそのレベルに達したようだ.米国型医療を目指す厚生労働省のねらいは達成されつつあるが,一方でこれからは交通事故による多発外傷や心筋梗塞あるいは出血型脳卒中になったら搬送中に死亡する確率も高くなるのではないだろうか.
仰天発言連続の厚生労働大臣も,産婦人科医と同様に救急患者を診る医師がいなくなるのは救急患者が減っているからとはいくらなんでも言えないだろうが,なぜ,医師がやる気を失っていくのかについてはもっとよく考えてもらわないとわが国の医療崩壊は救急医療でも確実に進行すると心配しているは私だけだろうか.
内科医の大量退職に伴う患者減少で江別市立病院の経営が悪化している問題で、同病院あり方検討委員会(加藤紘之委員長ら6人)は答申を小川公人市長に提出した。緊急の対応策として内科常勤医の確保を図り、専門性の高い医療を提供する地域のセンター病院としての役割・機能を果たすべきだと提言した。答申を受け、小川市長は9日記者会見し、「着実に実行していきたい」と再建へ決意を示した。
同病院は06年3月に12人いた内科常勤医が10月に不在となり、06年度の決算は14億2000万円の赤字となる見込みだ。今年1月からは内科常勤医を2人確保しているが、患者数の回復には至っていない。
答申には(1)救急医療に関する勤務医の負担軽減(2)カルテの電算化などに対応する医療事務補助員の採用(3)医療紛争への病院の組織的対応(4)院内保育所設置(5)経験を積んだ熟練医師の半日勤務などでの活用----などを盛り込み、一人一人の医師の負担軽減や女性医師・看護師を採用しやすい環境作りを提言した。さらに、院長に予算、人事権を与え、強力なリーダーシップで医師・看護師の確保と採算性を考慮した経営改善に取り組むべきだとした。小川市長は昨年11月、学識経験者6人に同病院の役割を諮問し、これまで5回、委員会を開いてきた。』
赤字病院が厚生労働省の言いなりにカルテを電算化すればそれだけでさらに経営が傾くと思うのだが,江別市立病院の場合は今後さらに増大するであろう赤字をいつまで市が支える事ができるのか気になるところだ.
それ以上に気になったのは,「救急医療に関する勤務医の負担軽減」という項目だが,これをどのように実現するのかは非常に興味があるところだ.最近聞いた話だと公的病院が夜間に当直医以外の呼び出しを避けるために救急患者の搬入を断ることがあるらしい.それも院長が勤務医の負担を軽減して病院からいなくなるのを防ぐためだとしたらどうだろうか.
救急隊から搬入要請があっても当直医が専門医に連絡がつかないことなどを理由に搬入を断れば,場合によっては他市の公的病院まで搬送しなければならなくなる.まあ,こんなことは米国ではよくある事らしいが,我が国もついにそのレベルに達したようだ.米国型医療を目指す厚生労働省のねらいは達成されつつあるが,一方でこれからは交通事故による多発外傷や心筋梗塞あるいは出血型脳卒中になったら搬送中に死亡する確率も高くなるのではないだろうか.
仰天発言連続の厚生労働大臣も,産婦人科医と同様に救急患者を診る医師がいなくなるのは救急患者が減っているからとはいくらなんでも言えないだろうが,なぜ,医師がやる気を失っていくのかについてはもっとよく考えてもらわないとわが国の医療崩壊は救急医療でも確実に進行すると心配しているは私だけだろうか.
家庭も崩壊するだろうな
2007年1月25日 医療の問題 コメント (2)『 過労死基準超える残業 忍び寄る崩壊の足音/2(東京)
医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/2 過労死基準超える残業
◇「次世代が増えないと限界」
横浜市立大母子医療センターの産科主任、奥田美加医師(40)は、夕方過ぎに病院から自宅へ電話を入れるのが日課だ。小学1年生の長男(7)からは、決まって同じことを聞かれる。「ねえ、今日帰ってくるの?」
月7-8回当直し、連続36時間勤務や土日の呼び出しは当たり前。自宅で食事中に呼び出され、泣きそうな顔の長男を残して出勤することもしばしばだ。予定外の手術も多く、学会発表の準備などもある。勤務時間は週75時間以上に達する。
奥田さんは「何とかやれているのが本当に不思議。次世代が増えてくれないともう限界」と話す。しかし、産科は研修医から敬遠されている。神奈川県で06年春に初期研修を終えた600人のうち、産婦人科医を選んだのは10人だった。
厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」の調査では、医師は平均で週に63・3時間働いている。平均的な医師でも月90時間以上は時間外労働をしており、同省の過労死認定基準が目安とする「月80時間の時間外労働」を超えている。
■ ■
「医者なんてろくな職業じゃない」。小児科医を目指し、神奈川県の病院で研修医生活を送る千葉智子さん(25)は高校3年だった99年春、小児科医の父、中原利郎さんから医師への道を猛反対された。
その夏。「父は過度のストレスを感じている」との心配が的中してしまう。白衣姿で勤務先の病院の屋上から飛び降り自殺した。44歳だった。
自殺の半年前、小児科部長代理になった。責任が重くなる一方、退職や転職で半減した医師の補充もなく、当直日数が増えた。遺書には「経済大国の首都で行われるあまりに貧弱な小児医療。医師を続ける気力も体力もありません」とあった。
智子さんは、医師の労働条件を整備しようと、厚労省の医系技官を目指した。しかし、小児科の講義で「小児には発達があり未来があり、病気が治る可能性がある」と聞き、父の思いの原点を感じて心が動いた。父親に認めてもらえるような医師が目標だ。
労災認定を求めて薬剤師の妻、のり子さん(50)が起こした行政訴訟の判決が3月、東京地裁である。のり子さんは「夫のような悲劇が二度と起きない医療現場になってほしい」と訴える。
一方、大阪高裁では2月、看護師の過労死認定を巡る訴訟の控訴審判決が言い渡される。
原告は、01年3月にくも膜下出血で亡くなった国立循環器病センター(大阪府吹田市)の看護師、村上優子さん(当時25歳)の遺族。当時、村上さんが友人に送ったメールには「日勤が忙しくて、帰ったのは22時前でした。寝る時間がほとんどなくってそのまま深夜(勤務)に突入。もう始まったときからふらふらでした」とあった。
1審判決は遺族側全面敗訴だったが、裁判を支援する会の仲村幸治事務局長は「看護師の職場環境は劣悪。村上さんの例は氷山の一角だ」と訴える。
■ ■
05年秋の米国医師会雑誌に、過労による医師の能力低下を調べた論文が掲載された。週80-90時間働き、夜間の呼び出しもある小児科研修医の注意力などの能力は、週44時間勤務の小児科研修医が飲酒した状態と同じ程度に落ちていた。
医師不足による過労は、患者の安全も脅かしている。』
医師の息子だった高校時代の同級生たちのことを思い出すが,父親,もしくは両親が立派な医師であればあるほどダメな奴が多かったような気がする.そんな彼らも今では立派な医師になって自分の子供たちに自分と同じ思いをさせているのだろうか.
数年前にクリニック開業した同級生にある会合で15年ぶりに会った.学生時代から責任感の強い奴だったが,そのためか一人で地方の公立病院でいつまでも大学からの派遣で働かされたあげくに燃え尽きたようだ.今では,開業資金を返済するためにあまりやる気もなく働いているそうだ.そして,やっと子供と話せる時間ができたと思ったら,すでに子供には見限られていたらしい.
過労死も厭だが,生きる意味を失うのでは生きている価値がない.医師は人命を救う立派な職業だと誰も思っていないと感じるようになってしまったら「医者なんてろくな職業じゃない」という言葉が出てしまうのかもしれない.
医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/2 過労死基準超える残業
◇「次世代が増えないと限界」
横浜市立大母子医療センターの産科主任、奥田美加医師(40)は、夕方過ぎに病院から自宅へ電話を入れるのが日課だ。小学1年生の長男(7)からは、決まって同じことを聞かれる。「ねえ、今日帰ってくるの?」
月7-8回当直し、連続36時間勤務や土日の呼び出しは当たり前。自宅で食事中に呼び出され、泣きそうな顔の長男を残して出勤することもしばしばだ。予定外の手術も多く、学会発表の準備などもある。勤務時間は週75時間以上に達する。
奥田さんは「何とかやれているのが本当に不思議。次世代が増えてくれないともう限界」と話す。しかし、産科は研修医から敬遠されている。神奈川県で06年春に初期研修を終えた600人のうち、産婦人科医を選んだのは10人だった。
厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」の調査では、医師は平均で週に63・3時間働いている。平均的な医師でも月90時間以上は時間外労働をしており、同省の過労死認定基準が目安とする「月80時間の時間外労働」を超えている。
■ ■
「医者なんてろくな職業じゃない」。小児科医を目指し、神奈川県の病院で研修医生活を送る千葉智子さん(25)は高校3年だった99年春、小児科医の父、中原利郎さんから医師への道を猛反対された。
その夏。「父は過度のストレスを感じている」との心配が的中してしまう。白衣姿で勤務先の病院の屋上から飛び降り自殺した。44歳だった。
自殺の半年前、小児科部長代理になった。責任が重くなる一方、退職や転職で半減した医師の補充もなく、当直日数が増えた。遺書には「経済大国の首都で行われるあまりに貧弱な小児医療。医師を続ける気力も体力もありません」とあった。
智子さんは、医師の労働条件を整備しようと、厚労省の医系技官を目指した。しかし、小児科の講義で「小児には発達があり未来があり、病気が治る可能性がある」と聞き、父の思いの原点を感じて心が動いた。父親に認めてもらえるような医師が目標だ。
労災認定を求めて薬剤師の妻、のり子さん(50)が起こした行政訴訟の判決が3月、東京地裁である。のり子さんは「夫のような悲劇が二度と起きない医療現場になってほしい」と訴える。
一方、大阪高裁では2月、看護師の過労死認定を巡る訴訟の控訴審判決が言い渡される。
原告は、01年3月にくも膜下出血で亡くなった国立循環器病センター(大阪府吹田市)の看護師、村上優子さん(当時25歳)の遺族。当時、村上さんが友人に送ったメールには「日勤が忙しくて、帰ったのは22時前でした。寝る時間がほとんどなくってそのまま深夜(勤務)に突入。もう始まったときからふらふらでした」とあった。
1審判決は遺族側全面敗訴だったが、裁判を支援する会の仲村幸治事務局長は「看護師の職場環境は劣悪。村上さんの例は氷山の一角だ」と訴える。
■ ■
05年秋の米国医師会雑誌に、過労による医師の能力低下を調べた論文が掲載された。週80-90時間働き、夜間の呼び出しもある小児科研修医の注意力などの能力は、週44時間勤務の小児科研修医が飲酒した状態と同じ程度に落ちていた。
医師不足による過労は、患者の安全も脅かしている。』
医師の息子だった高校時代の同級生たちのことを思い出すが,父親,もしくは両親が立派な医師であればあるほどダメな奴が多かったような気がする.そんな彼らも今では立派な医師になって自分の子供たちに自分と同じ思いをさせているのだろうか.
数年前にクリニック開業した同級生にある会合で15年ぶりに会った.学生時代から責任感の強い奴だったが,そのためか一人で地方の公立病院でいつまでも大学からの派遣で働かされたあげくに燃え尽きたようだ.今では,開業資金を返済するためにあまりやる気もなく働いているそうだ.そして,やっと子供と話せる時間ができたと思ったら,すでに子供には見限られていたらしい.
過労死も厭だが,生きる意味を失うのでは生きている価値がない.医師は人命を救う立派な職業だと誰も思っていないと感じるようになってしまったら「医者なんてろくな職業じゃない」という言葉が出てしまうのかもしれない.
公立病院はもうだめか?
2007年1月24日 医療の問題『 東京・大阪の公立病院の半数、診療縮小
医療クライシス:東京・大阪の公立病院の半数、診療縮小----毎日新聞調査
◇常勤医285人不足
医師不足などのため、東京都と大阪府内の計54の公立病院のうち、公立忠岡病院(大阪府忠岡町、83床)が3月末に閉院するほか、半数近い26病院で計46診療科が診療の休止・縮小に追い込まれていることが、毎日新聞の調査で分かった。常勤医で定員を満たせない病院は45病院あり、不足する常勤医は計285人に上る。非常勤医で穴埋めできていない病院もあり、医師不足によって病院の診療に支障が出る「医療崩壊」が、地方だけでなく2大都市にも広がり始めている実情が浮かんだ。
調査は都府立、公立、市立病院(大阪市立大病院を除く)と、都保健医療公社が運営する病院を対象に実施。00年以降の診療休止・縮小の状況や、今月1日現在で常勤医が定員に満たない科の数などを尋ねた。
閉院を決めた忠岡病院は、03年に12人いた医師が05年には4分の1に激減。昨年4月に皮膚科と泌尿器科、今月は脳神経外科を休止し、病院自体も存続できなくなった。
診療科別に見ると、休止・縮小したのは、産科・産婦人科が計10病院で最多。次いで小児科6、耳鼻咽喉(いんこう)科が5病院だった。
不足している常勤医数は、内科が18病院で計47人と最も多く、麻酔科15病院29人、産科・産婦人科が16病院27人、小児科が11病院22人と続いた。不足の理由は、▽04年度導入の新医師臨床研修制度をきっかけに、大学病院が系列病院から医師を引き揚げた▽勤務がきつく、リスクを伴うことが多い診療科が敬遠されている----など。
診療への影響は、「救急患者の受け入れ制限」(都立大塚病院・豊島区)など、救急医療への影響を挙げる病院が目立つ。住吉市民病院(大阪市)のように、産科医不足による分べん数の制限を挙げる病院も多かった。
打開策については、都立墨東病院(墨田区)などは「給与水準引き上げ」と回答、府立急性期・総合医療センター(大阪市)が「出産・子育てから復職支援など女性が働きやすい環境作り」を挙げるなど、労働環境の改善を挙げる病院が目立つ。「医療訴訟に対する裁定機関や公的保険制度の確保」や、「地域の病院と連携し、医師の診療応援など交流を図る」などの意見もあった。
◇「高額医療費」実は平均以下----OECDデータ
地方だけでなく、大都市にも「医療崩壊」が広がり始めた背景には、日本の低医療費政策がある。医療費を巡る政策論議では長年、いかに抑制するかがメーンテーマとなってきたが、経済協力開発機構(OECD)の国際比較データからは、正反対の実情が浮かぶ。
医療費を対国内総生産(GDP)比でみると、日本は1960年代半ばの一時期にOECD加盟国平均に達していた以外は、一貫して平均を下回っている。03年もGDP比8%で、平均の8・8%に届かない。
特に、先進7カ国(G7)の水準には程遠く、差が広がるばかり。03年のG7平均は10・1%で、日本はG7平均に比べて医療費の支出が2割も少なく、先進国並みに医療にお金をかけているとは言えないのが現実だ。
人口1000人あたりの診療医師数(診療に従事する医師の数)は、一度もOECD平均を上回ったことがない。差は年々拡大し、04年には平均3・1人に対し日本は2人。OECD平均に達するには、医師を1・5倍に増やす必要がある。』
東京・大阪がこれじゃあ北海道の地方医療は崩壊して当然なのかもしれない.
医療クライシス:東京・大阪の公立病院の半数、診療縮小----毎日新聞調査
◇常勤医285人不足
医師不足などのため、東京都と大阪府内の計54の公立病院のうち、公立忠岡病院(大阪府忠岡町、83床)が3月末に閉院するほか、半数近い26病院で計46診療科が診療の休止・縮小に追い込まれていることが、毎日新聞の調査で分かった。常勤医で定員を満たせない病院は45病院あり、不足する常勤医は計285人に上る。非常勤医で穴埋めできていない病院もあり、医師不足によって病院の診療に支障が出る「医療崩壊」が、地方だけでなく2大都市にも広がり始めている実情が浮かんだ。
調査は都府立、公立、市立病院(大阪市立大病院を除く)と、都保健医療公社が運営する病院を対象に実施。00年以降の診療休止・縮小の状況や、今月1日現在で常勤医が定員に満たない科の数などを尋ねた。
閉院を決めた忠岡病院は、03年に12人いた医師が05年には4分の1に激減。昨年4月に皮膚科と泌尿器科、今月は脳神経外科を休止し、病院自体も存続できなくなった。
診療科別に見ると、休止・縮小したのは、産科・産婦人科が計10病院で最多。次いで小児科6、耳鼻咽喉(いんこう)科が5病院だった。
不足している常勤医数は、内科が18病院で計47人と最も多く、麻酔科15病院29人、産科・産婦人科が16病院27人、小児科が11病院22人と続いた。不足の理由は、▽04年度導入の新医師臨床研修制度をきっかけに、大学病院が系列病院から医師を引き揚げた▽勤務がきつく、リスクを伴うことが多い診療科が敬遠されている----など。
診療への影響は、「救急患者の受け入れ制限」(都立大塚病院・豊島区)など、救急医療への影響を挙げる病院が目立つ。住吉市民病院(大阪市)のように、産科医不足による分べん数の制限を挙げる病院も多かった。
打開策については、都立墨東病院(墨田区)などは「給与水準引き上げ」と回答、府立急性期・総合医療センター(大阪市)が「出産・子育てから復職支援など女性が働きやすい環境作り」を挙げるなど、労働環境の改善を挙げる病院が目立つ。「医療訴訟に対する裁定機関や公的保険制度の確保」や、「地域の病院と連携し、医師の診療応援など交流を図る」などの意見もあった。
◇「高額医療費」実は平均以下----OECDデータ
地方だけでなく、大都市にも「医療崩壊」が広がり始めた背景には、日本の低医療費政策がある。医療費を巡る政策論議では長年、いかに抑制するかがメーンテーマとなってきたが、経済協力開発機構(OECD)の国際比較データからは、正反対の実情が浮かぶ。
医療費を対国内総生産(GDP)比でみると、日本は1960年代半ばの一時期にOECD加盟国平均に達していた以外は、一貫して平均を下回っている。03年もGDP比8%で、平均の8・8%に届かない。
特に、先進7カ国(G7)の水準には程遠く、差が広がるばかり。03年のG7平均は10・1%で、日本はG7平均に比べて医療費の支出が2割も少なく、先進国並みに医療にお金をかけているとは言えないのが現実だ。
人口1000人あたりの診療医師数(診療に従事する医師の数)は、一度もOECD平均を上回ったことがない。差は年々拡大し、04年には平均3・1人に対し日本は2人。OECD平均に達するには、医師を1・5倍に増やす必要がある。』
東京・大阪がこれじゃあ北海道の地方医療は崩壊して当然なのかもしれない.
『 -CABGとCEAの同時手術によって死亡および脳卒中のリスクが上昇-
新規研究は、冠動脈バイパス移植と頸動脈内膜切除の同時手術を受ける患者は、CABG単独手術と比較して死亡または術後脳卒中のリスクが高いことを示している。2番目の報告は、利点が比較的小さい無症候性患者におけるCEAの使用が増加しているようであるが、画期的な試験の後、CEAの使用の妥当性が改善したことを示唆する。
冠動脈バイパス移植(CABG)と頸動脈内膜切除(CEA)の同時手術を受ける患者は、CABG単独手術と比較して、死亡または術後脳卒中のリスクが約38%上昇したことを、新規研究は示している。
「同時手術の利点については議論がある」と研究の著者であるカンザス大学医療センター(カンザスシティ)のRichard M. Dubinsky, MDは、米国神経学会 (AAN)の声明で述べている。「この術後脳卒中および死亡の有意な増加を考えると、手術をそれぞれ別の入院時に実施する場合と比較した利点があればそれを決定するために、同時手術のランダム化臨床試験が必要である。」
別の報告では、不適切な理由により実施されたと考えられる頸動脈内膜切除術の数が、次第に減少していることが示唆されている。マウントサイナイ医科大学(ニューヨーク)のEthan A. Halm, MDを中心とする著者らは、この改善は、動脈内膜切除術に関する画期的なランダム化試験の結果によってもたらされたものだと述べたが、著者らによると手術による正味の利点が小さい、無症候性患者におけるCEAの増加が観察されたことについての懸念を表明している。
両研究は、『Neurology』1月15日号において発表された。
同時手術の危険性は低いのではなく高いのか?
最初の報告において、Dubinsky博士らは、米国におけるすべての急性期入院の20%の層別標本であるNationwide Inpatient Sampleのデータを使用して、CEAとCABGの同時手術を受けた患者における院内死亡および術後脳卒中の発生率をCABG単独手術と比較した。
同時手術によって期待されたことは、CABG施行中の動脈-動脈間の塞栓性脳梗塞から頸動脈循環を保護すること、およびたとえ同時手術の方が長時間であっても、1回の麻酔で1回だけの手術を行うことによってリスクを軽減することであると、著者らは言及している。
この解析において、CEAを組み合わせたCABG手術の割合が、当該研究期間中に増加し、1993年には1.1%であったのが2002年には1.58%になったことが明らかになった。共存疾患について調整した後、同時手術を受けた患者はCABG単独手術と比較して、死亡および術後脳卒中の統合アウトカムのリスクが38%上昇した。
死亡および術後脳卒中の統合エンドポイントにおけるCEA-CABG同時手術とCABG単独手術の比較
Fig.1
初めて認められたことの1つとして、女性であることはアウトカムに関して防御効果があることが示唆されたと、著者らは指摘している。
「CEA-CABG同時手術の頻度は増加したが、報告された症例集積研究は、同時手術に利点があるかどうかについての結論を出すには不適切である」と、著者らは結論づけている。「頸動脈および冠動脈のアテローム性動脈硬化を有する患者におけるCEA-CABG同時手術の利点がもしあるなら、それを確認するため、頸動脈狭窄の程度および脳卒中の既往によって層別して、1年以上の経過観察を行うランダム化対照比較臨床試験が、明らかに必要である」。
付随する論説において、アルバータ大学(エドモントン)のThomas E. Feasby, MDおよびRobarts研究所(オンタリオ州ロンドン)のHenry J.M. Barnett, MDは、この付加リスクは、いくつかの他の最近の研究において報告されたよりも低いが、「通常は無症候性の頸動脈狭窄に対してこれら2つの手術を同時に行うことについて、引き続き注意を促している」と述べている。
「同時手術の頻度(2002年にはすべての[CEAの]1.58%)を考えると、ランダム化対照比較試験において有効であることが証明されるまでは、熟練した専門家による慎重な施行に適した状況である」と、同博士らは結論づけている。
妥当性の改善
別の報告において、Halm博士らは、1990年代末にNorth American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial(NASCET)およびAsymptomatic Carotid Atherosclerosis Study (ACAS)を含む主要なCEA試験が発表されて以来、CEAの妥当性および適応がどのように変化したかを評価した。
1981年のRAND Health Service Utilization Studyで、Medicare受給者に実施されたCEA手術の32%は、不適切な適応に対して行われていた、と示唆されたことを受けて、それらの試験は開始された。今回の研究であるNew York Carotid Artery Surgery(NYCAS)試験では、1998年1月-1999年6月にニューヨーク州の高齢患者に実施された9,588件のCEA手術の妥当性を評価した。
詳細なデータを医療記録から抽出し、CEAの1,557の適応リストと比較した。著者らは、大多数の手術は適切と考えられる理由によって行われていたと報告している。すなわち、不適切と考えられたものは8.6%にすぎず、最初のRAND試験における32%から、著しく減少した。
Fig.2
手術が不適切と判断された最も一般的な理由は、無症候性患者における共存疾患の頻度が高いこと;大きな脳卒中の後の手術であったこと;またはごく軽度の狭窄に対する手術であったことであった。
72.3%、すなわちほぼ4分の3の患者は無症候性狭窄のためにCEAを行っていたのに対して、18.6%にはTIAがあり、9.1%には脳卒中があった。
「誰が頸動脈内膜切除術を受けるべきかについての医学研究に大規模な公共投資が行われてから、不適切な理由で手術を受ける患者の数が大幅に減少していることは朗報である」と、Halm博士はAAN声明の中で述べた。「悪い知らせは、主に、閉塞動脈による症状のない患者に対する手術を行う方向へと変化していることであり、そのような患者は手術による利点が小さく、他の疾患のある患者の場合はさらに小さくなる。」
悪魔は細部に宿る
同じ論説において、Feasby博士およびBarnett博士も、無症候性患者における手術の多用に関して懸念を表明している。ACASは高度の狭窄を有する患者における手術による利点を示したが、その研究における絶対リスク低下は、わずか2.3%というACASグループにおける周術期脳卒中発生率に基づくものであった、と同博士らは指摘している。
従って、ACASの結果は「最良のシナリオ」になる。なぜなら、Halm博士らの研究における合併症の発生率は3%であり、米国の10の州における別の最新報告では4.5%であったからである。これだけの患者が手術ではなく内科的治療を受けたら、患者は脳卒中が発生することなく生存した可能性が高かっただろうと考えられる。
「したがって、[CEAの]妥当性が1980年代と比較して著しく改善したように思われるという、Halm博士らの研究の結果は喜ばしいが、主に無症候性患者に対する手術へと移行する傾向がみられることは重大である」と、同博士らは結論づけている。
NYCAS試験は、連邦の医療研究・品質調査機構、メディケア・メディケイドサービスセンター、およびRobert Wood Johnson財団からの支援を受けた。
Neurology 2007;187-194, 195-197, 172-173.』
CABGとCEAの同時手術の話を初めて聞いたのは10年ほど前だったろうか.CABG症例に高率に頚動脈狭窄が合併し,CEAを先行させた二期的手術の術中心筋梗塞発生率が一期的手術での心筋梗塞発生率と比べ有意に高いことから,一期的にCABGとCEAを行うという話だったような気がする.
しかし,実際にはCEAを体外循環確立前に施行していたようであるから,それでは1回の麻酔で1回だけの手術を行うことによるリスクの軽減以上の効果はないような気がする.そう考えると,CEAを先行させた二期的手術の術中心筋梗塞発生率との差は出ないように感じるのだがどうだろうか.
脳外科医側から見た場合,CEA術中の心筋梗塞発生は術後の予後に影響を与える因子であるからCABGを先行させたいところであるが,「CEAとの同時手術がCABG単独手術と比較して、死亡または術後脳卒中のリスクが約38%上昇する」というのが本当であれば同時手術を行うメリットは脳外科医にも心臓外科医にもないことになってしまうだろう.今後も同時手術をすすめるべきかどうか悩むことになるだろうか.
しかし,最近は頚動脈ステントも安全になってきており,患者の希望もあってCEAはほとんど行われなくなってきているし,OPCABの適応が拡大したこともあってCEAとCABGの同時手術も激減しているのではないだろうか.この問題がこの後どうなるのかはわからないが,外科医に安全と信じられていたことが意外とそうでもないということがわかっただけでも大きな収穫だったのではないだろうか.
新規研究は、冠動脈バイパス移植と頸動脈内膜切除の同時手術を受ける患者は、CABG単独手術と比較して死亡または術後脳卒中のリスクが高いことを示している。2番目の報告は、利点が比較的小さい無症候性患者におけるCEAの使用が増加しているようであるが、画期的な試験の後、CEAの使用の妥当性が改善したことを示唆する。
冠動脈バイパス移植(CABG)と頸動脈内膜切除(CEA)の同時手術を受ける患者は、CABG単独手術と比較して、死亡または術後脳卒中のリスクが約38%上昇したことを、新規研究は示している。
「同時手術の利点については議論がある」と研究の著者であるカンザス大学医療センター(カンザスシティ)のRichard M. Dubinsky, MDは、米国神経学会 (AAN)の声明で述べている。「この術後脳卒中および死亡の有意な増加を考えると、手術をそれぞれ別の入院時に実施する場合と比較した利点があればそれを決定するために、同時手術のランダム化臨床試験が必要である。」
別の報告では、不適切な理由により実施されたと考えられる頸動脈内膜切除術の数が、次第に減少していることが示唆されている。マウントサイナイ医科大学(ニューヨーク)のEthan A. Halm, MDを中心とする著者らは、この改善は、動脈内膜切除術に関する画期的なランダム化試験の結果によってもたらされたものだと述べたが、著者らによると手術による正味の利点が小さい、無症候性患者におけるCEAの増加が観察されたことについての懸念を表明している。
両研究は、『Neurology』1月15日号において発表された。
同時手術の危険性は低いのではなく高いのか?
最初の報告において、Dubinsky博士らは、米国におけるすべての急性期入院の20%の層別標本であるNationwide Inpatient Sampleのデータを使用して、CEAとCABGの同時手術を受けた患者における院内死亡および術後脳卒中の発生率をCABG単独手術と比較した。
同時手術によって期待されたことは、CABG施行中の動脈-動脈間の塞栓性脳梗塞から頸動脈循環を保護すること、およびたとえ同時手術の方が長時間であっても、1回の麻酔で1回だけの手術を行うことによってリスクを軽減することであると、著者らは言及している。
この解析において、CEAを組み合わせたCABG手術の割合が、当該研究期間中に増加し、1993年には1.1%であったのが2002年には1.58%になったことが明らかになった。共存疾患について調整した後、同時手術を受けた患者はCABG単独手術と比較して、死亡および術後脳卒中の統合アウトカムのリスクが38%上昇した。
死亡および術後脳卒中の統合エンドポイントにおけるCEA-CABG同時手術とCABG単独手術の比較
Fig.1
初めて認められたことの1つとして、女性であることはアウトカムに関して防御効果があることが示唆されたと、著者らは指摘している。
「CEA-CABG同時手術の頻度は増加したが、報告された症例集積研究は、同時手術に利点があるかどうかについての結論を出すには不適切である」と、著者らは結論づけている。「頸動脈および冠動脈のアテローム性動脈硬化を有する患者におけるCEA-CABG同時手術の利点がもしあるなら、それを確認するため、頸動脈狭窄の程度および脳卒中の既往によって層別して、1年以上の経過観察を行うランダム化対照比較臨床試験が、明らかに必要である」。
付随する論説において、アルバータ大学(エドモントン)のThomas E. Feasby, MDおよびRobarts研究所(オンタリオ州ロンドン)のHenry J.M. Barnett, MDは、この付加リスクは、いくつかの他の最近の研究において報告されたよりも低いが、「通常は無症候性の頸動脈狭窄に対してこれら2つの手術を同時に行うことについて、引き続き注意を促している」と述べている。
「同時手術の頻度(2002年にはすべての[CEAの]1.58%)を考えると、ランダム化対照比較試験において有効であることが証明されるまでは、熟練した専門家による慎重な施行に適した状況である」と、同博士らは結論づけている。
妥当性の改善
別の報告において、Halm博士らは、1990年代末にNorth American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial(NASCET)およびAsymptomatic Carotid Atherosclerosis Study (ACAS)を含む主要なCEA試験が発表されて以来、CEAの妥当性および適応がどのように変化したかを評価した。
1981年のRAND Health Service Utilization Studyで、Medicare受給者に実施されたCEA手術の32%は、不適切な適応に対して行われていた、と示唆されたことを受けて、それらの試験は開始された。今回の研究であるNew York Carotid Artery Surgery(NYCAS)試験では、1998年1月-1999年6月にニューヨーク州の高齢患者に実施された9,588件のCEA手術の妥当性を評価した。
詳細なデータを医療記録から抽出し、CEAの1,557の適応リストと比較した。著者らは、大多数の手術は適切と考えられる理由によって行われていたと報告している。すなわち、不適切と考えられたものは8.6%にすぎず、最初のRAND試験における32%から、著しく減少した。
Fig.2
手術が不適切と判断された最も一般的な理由は、無症候性患者における共存疾患の頻度が高いこと;大きな脳卒中の後の手術であったこと;またはごく軽度の狭窄に対する手術であったことであった。
72.3%、すなわちほぼ4分の3の患者は無症候性狭窄のためにCEAを行っていたのに対して、18.6%にはTIAがあり、9.1%には脳卒中があった。
「誰が頸動脈内膜切除術を受けるべきかについての医学研究に大規模な公共投資が行われてから、不適切な理由で手術を受ける患者の数が大幅に減少していることは朗報である」と、Halm博士はAAN声明の中で述べた。「悪い知らせは、主に、閉塞動脈による症状のない患者に対する手術を行う方向へと変化していることであり、そのような患者は手術による利点が小さく、他の疾患のある患者の場合はさらに小さくなる。」
悪魔は細部に宿る
同じ論説において、Feasby博士およびBarnett博士も、無症候性患者における手術の多用に関して懸念を表明している。ACASは高度の狭窄を有する患者における手術による利点を示したが、その研究における絶対リスク低下は、わずか2.3%というACASグループにおける周術期脳卒中発生率に基づくものであった、と同博士らは指摘している。
従って、ACASの結果は「最良のシナリオ」になる。なぜなら、Halm博士らの研究における合併症の発生率は3%であり、米国の10の州における別の最新報告では4.5%であったからである。これだけの患者が手術ではなく内科的治療を受けたら、患者は脳卒中が発生することなく生存した可能性が高かっただろうと考えられる。
「したがって、[CEAの]妥当性が1980年代と比較して著しく改善したように思われるという、Halm博士らの研究の結果は喜ばしいが、主に無症候性患者に対する手術へと移行する傾向がみられることは重大である」と、同博士らは結論づけている。
NYCAS試験は、連邦の医療研究・品質調査機構、メディケア・メディケイドサービスセンター、およびRobert Wood Johnson財団からの支援を受けた。
Neurology 2007;187-194, 195-197, 172-173.』
CABGとCEAの同時手術の話を初めて聞いたのは10年ほど前だったろうか.CABG症例に高率に頚動脈狭窄が合併し,CEAを先行させた二期的手術の術中心筋梗塞発生率が一期的手術での心筋梗塞発生率と比べ有意に高いことから,一期的にCABGとCEAを行うという話だったような気がする.
しかし,実際にはCEAを体外循環確立前に施行していたようであるから,それでは1回の麻酔で1回だけの手術を行うことによるリスクの軽減以上の効果はないような気がする.そう考えると,CEAを先行させた二期的手術の術中心筋梗塞発生率との差は出ないように感じるのだがどうだろうか.
脳外科医側から見た場合,CEA術中の心筋梗塞発生は術後の予後に影響を与える因子であるからCABGを先行させたいところであるが,「CEAとの同時手術がCABG単独手術と比較して、死亡または術後脳卒中のリスクが約38%上昇する」というのが本当であれば同時手術を行うメリットは脳外科医にも心臓外科医にもないことになってしまうだろう.今後も同時手術をすすめるべきかどうか悩むことになるだろうか.
しかし,最近は頚動脈ステントも安全になってきており,患者の希望もあってCEAはほとんど行われなくなってきているし,OPCABの適応が拡大したこともあってCEAとCABGの同時手術も激減しているのではないだろうか.この問題がこの後どうなるのかはわからないが,外科医に安全と信じられていたことが意外とそうでもないということがわかっただけでも大きな収穫だったのではないだろうか.
薬のリスクとベネフィット
2007年1月13日 医療の問題
『 -- 抗凝固療法に伴うICHが増加中 -- 抗凝固薬使用に伴う頭蓋内出血の発生率は1990年代に5倍になり、高齢者では10倍にもなった。ワルファリンは心房細動の多くの症例で今でも有効だが、そのリスクについても依然として慎重に検討する必要がある --
抗凝固薬の使用に伴う頭蓋内出血(ICH)の発生率が1990年代に5倍に増加し、高齢者では10倍にもなっていると最新の研究が示唆している。
この増加分のほとんどは心房細動(AF)患者に対するワルファリンの使用が増えたことで説明される、と研究者らは述べている。この患者群の脳卒中がこの治療法で減少したことは、この10年間の数多くの研究で確認されている。ワルファリン療法の既知のリスクであるICHの増大が伴うという今回の調査結果は、必ずしも多くの患者にとってこの薬剤のベネフィットがリスクを上回らなくなったことを意味するものではないと、著者らは述べている。
「我々の調査結果で、適切な場合のワルファリンの使用を手控える必要はない」と、筆頭著者であるシンシナティ大学医療センター(オハイオ州)のMatthew L. Flaherty, MDが米国神経学会の記者会見で語った。「医師は、今回の結果を利用して、患者へのワルファリン使用のベネフィットとリスクを正確に測ることができる。研究者にとっては、脳出血患者に対するワルファリンに替わる、より安全な代替薬と有効な治療法の開発を、今回の結果が促進するものであると言える」。
この報告は、『Neurology』1月9日号に掲載されている。
伸びるワルファリンの使用量
ワルファリンを用いた抗凝固療法で、AF患者の脳卒中リスクを有意に低下させることができるということを示したStroke Prevention in Atrial Fibrillation(SPAF)試験などの複数の画期的な試験が1990年代に発表されて以来、ワルファリンの使用量は延び続けている。ワルファリン療法のリスク/ベネフィット比は、患者の脳卒中リスクが高い場合には良好だが、高齢者での一次予防として用いる場合には「リスクとベネフィットの差が縮まり」、ベネフィットが出血リスクで相殺される場合もあると著者らは記している。
この治療の合併症の中で「もっとも恐ろしい」のはICHだが、抗凝固療法関連のICHの正確な推定値は今のところ存在しないと著者らは指摘している。今回の研究においてFlaherty博士らは、グレートシンシナティ/ノースケンタッキー地域の1988年、1993-94年、1999年の3つの時期において、初めてのICHで入院した患者全員を特定した。この3つの時期は、AFにおける抗凝固療法の主要な試験が行われた時期の前後にあたる。出血は、患者がワルファリンまたはヘパリンを使用している場合に、抗凝固薬関連と見なした。
Fig.1
すると、抗凝固薬関連ICHの年間発生数(AAICH)はこれら3つの時期全体にわたって有意に増加しており、全ICH症例の中に占める割合も増加していた。
「AAICHの重大さについて言えば、その全発生率は今ではクモ膜下出血の発生率をわずかに下回るだけであり、都市部では年間10万人あたり6.6例が発生している」とFlaherty博士らは言及している。
80歳以上の患者では、発生率はさらに有意に増加しており、1988年には年間10万人あたり2.5例だったのが1999年には45.9例に増加している(傾向のP値 <0.001)。
1 人あたりのワルファリン使用量が4倍になった1988年-1999年におけるワルファリンのベネフィットを評価するために、研究者らは3つの時期のうち後半の2時期において初めての心原性脳塞栓症による入院の発生率も調べてみた。すると心原性脳塞栓症の発生率は、全体およびAF性のいずれについても、 1993-1994年から1999年にかけて有意な変化が見られなかった。
Fig.2
しかし上記の結果は、AF性の虚血性脳卒中は減少しているとするその他の研究の結果に整合していないことを、著者らは指摘している。また、米国のAF有病率は年齢に関係なく長期にわたって増大している様子があることに著者らは触れている。「その事実からすれば心原性脳塞栓症の発生率は増加するはずである。したがって我々の研究による静的発生率は、虚血性脳卒中の予防におけるワルファリンのベネフィットを表わしている可能性が強いと、我々は考える」。
この研究の資金の一部は、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から提供されている。Neurology. 2007;68:116-121.』
「納豆禁」で有名なワルファリンであるが,これとバファリンを混同している患者さんがいる.これらは共に脳梗塞を予防する薬であるが別物である.
ワルファリンは弁膜症を伴わない心房細動(NVAF;不整脈の一種)のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)の再発予防では第一選択であり,これに替わる薬は今のところ無い.納豆が食べられないことは別にリスクでもなんでもないだろうが,過剰投与による出血性合併症は問題で,場合によっては命に関わることもあるということは知らない人も多いのではないだろうか.
もっと問題なのは,この薬はいつも同じ量を服用していても効果が不安定でINRという指標で定期的に検査する必要があることである.外来通院のたびに採血されるのは苦痛だろうが,これ以外に効果を判定する方法はない.それでも出血性合併症を起したり,脳梗塞になることを思えばきちんと検査を受けてもらう以外ないのである.
もうひとつ薬を中止した場合のリスクもある.抜歯や胃や大腸の内視鏡検査の際に薬の中止を求められ休薬することがあるのだが,その直後に脳梗塞になったり塞栓症を起こすことがある.どうしても必要な検査や手術であればやむを得ないことなのだが,こういうリスクもあることは意外と知られていないのではないだろうか.
抗凝固薬の使用に伴う頭蓋内出血(ICH)の発生率が1990年代に5倍に増加し、高齢者では10倍にもなっていると最新の研究が示唆している。
この増加分のほとんどは心房細動(AF)患者に対するワルファリンの使用が増えたことで説明される、と研究者らは述べている。この患者群の脳卒中がこの治療法で減少したことは、この10年間の数多くの研究で確認されている。ワルファリン療法の既知のリスクであるICHの増大が伴うという今回の調査結果は、必ずしも多くの患者にとってこの薬剤のベネフィットがリスクを上回らなくなったことを意味するものではないと、著者らは述べている。
「我々の調査結果で、適切な場合のワルファリンの使用を手控える必要はない」と、筆頭著者であるシンシナティ大学医療センター(オハイオ州)のMatthew L. Flaherty, MDが米国神経学会の記者会見で語った。「医師は、今回の結果を利用して、患者へのワルファリン使用のベネフィットとリスクを正確に測ることができる。研究者にとっては、脳出血患者に対するワルファリンに替わる、より安全な代替薬と有効な治療法の開発を、今回の結果が促進するものであると言える」。
この報告は、『Neurology』1月9日号に掲載されている。
伸びるワルファリンの使用量
ワルファリンを用いた抗凝固療法で、AF患者の脳卒中リスクを有意に低下させることができるということを示したStroke Prevention in Atrial Fibrillation(SPAF)試験などの複数の画期的な試験が1990年代に発表されて以来、ワルファリンの使用量は延び続けている。ワルファリン療法のリスク/ベネフィット比は、患者の脳卒中リスクが高い場合には良好だが、高齢者での一次予防として用いる場合には「リスクとベネフィットの差が縮まり」、ベネフィットが出血リスクで相殺される場合もあると著者らは記している。
この治療の合併症の中で「もっとも恐ろしい」のはICHだが、抗凝固療法関連のICHの正確な推定値は今のところ存在しないと著者らは指摘している。今回の研究においてFlaherty博士らは、グレートシンシナティ/ノースケンタッキー地域の1988年、1993-94年、1999年の3つの時期において、初めてのICHで入院した患者全員を特定した。この3つの時期は、AFにおける抗凝固療法の主要な試験が行われた時期の前後にあたる。出血は、患者がワルファリンまたはヘパリンを使用している場合に、抗凝固薬関連と見なした。
Fig.1
すると、抗凝固薬関連ICHの年間発生数(AAICH)はこれら3つの時期全体にわたって有意に増加しており、全ICH症例の中に占める割合も増加していた。
「AAICHの重大さについて言えば、その全発生率は今ではクモ膜下出血の発生率をわずかに下回るだけであり、都市部では年間10万人あたり6.6例が発生している」とFlaherty博士らは言及している。
80歳以上の患者では、発生率はさらに有意に増加しており、1988年には年間10万人あたり2.5例だったのが1999年には45.9例に増加している(傾向のP値 <0.001)。
1 人あたりのワルファリン使用量が4倍になった1988年-1999年におけるワルファリンのベネフィットを評価するために、研究者らは3つの時期のうち後半の2時期において初めての心原性脳塞栓症による入院の発生率も調べてみた。すると心原性脳塞栓症の発生率は、全体およびAF性のいずれについても、 1993-1994年から1999年にかけて有意な変化が見られなかった。
Fig.2
しかし上記の結果は、AF性の虚血性脳卒中は減少しているとするその他の研究の結果に整合していないことを、著者らは指摘している。また、米国のAF有病率は年齢に関係なく長期にわたって増大している様子があることに著者らは触れている。「その事実からすれば心原性脳塞栓症の発生率は増加するはずである。したがって我々の研究による静的発生率は、虚血性脳卒中の予防におけるワルファリンのベネフィットを表わしている可能性が強いと、我々は考える」。
この研究の資金の一部は、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から提供されている。Neurology. 2007;68:116-121.』
「納豆禁」で有名なワルファリンであるが,これとバファリンを混同している患者さんがいる.これらは共に脳梗塞を予防する薬であるが別物である.
ワルファリンは弁膜症を伴わない心房細動(NVAF;不整脈の一種)のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)の再発予防では第一選択であり,これに替わる薬は今のところ無い.納豆が食べられないことは別にリスクでもなんでもないだろうが,過剰投与による出血性合併症は問題で,場合によっては命に関わることもあるということは知らない人も多いのではないだろうか.
もっと問題なのは,この薬はいつも同じ量を服用していても効果が不安定でINRという指標で定期的に検査する必要があることである.外来通院のたびに採血されるのは苦痛だろうが,これ以外に効果を判定する方法はない.それでも出血性合併症を起したり,脳梗塞になることを思えばきちんと検査を受けてもらう以外ないのである.
もうひとつ薬を中止した場合のリスクもある.抜歯や胃や大腸の内視鏡検査の際に薬の中止を求められ休薬することがあるのだが,その直後に脳梗塞になったり塞栓症を起こすことがある.どうしても必要な検査や手術であればやむを得ないことなのだが,こういうリスクもあることは意外と知られていないのではないだろうか.
今さら何を言うかと思えば...
2006年12月27日 医療の問題『 一律の打ち切りは不適切 リハビリの日数制限で通達 介護への円滑移行促す
厚生労働省は26日までに、脳卒中などを患った人が必要とするリハビリテーションについて、医師がリハビリの日数制限を理由に「一律に打ち切らない」ようにし、利用者を医療から介護サービスへ円滑に引き継ぐよう求める通達を、出先機関や都道府県に出した。
同省は4月から身体機能の回復効果が高まるよう、発症直後からの短期・集中的なリハビリを重視する制度改革をした。半面、期限や目標があいまいで「漫然とした」リハビリを減らし、介護保険に引き継ぐため、特定の疾患と症状を除き、公的医療保険が使える日数を疾患別に制限(最大180日)。これに対し、国会などで「説明不足」「患者切り捨て」などの批判が起きた。
このため同省は通達により、利用者が新制度下でも、医療保険と介護保険で切れ目なく必要なリハビリを受けられるよう、医師はじめ関係者に促すことにした。
医療保険のリハビリには日数制限があるが、上限を超えて続ければ改善が見込まれる失語症や高次脳機能障害など50を超す疾患・症状には日数制限はなく、医師の判断で継続できる。
ところが、こうした新制度の内容が「医療現場に正確に伝わっていない」という指摘もある。このため通達は医師に対し、日数制限の例外となる疾患の正確な把握と改善が見込まれるかどうかの適切な判断を求め「リハビリを機械的に打ち切ることは適切でない」としている。
また医療保険が使えるリハビリ終了後、患者の意向に沿い、速やかに介護保険が使えるリハビリを受けられるよう「医療機関と居宅介護支援事業者等の連携強化」を求めている。医療機関は要介護認定の申請手続き、介護事業者への連絡などで患者を支援する。
▽リハビリの日数制限
リハビリの日数制限 2006年度の診療報酬改定に伴い、公的医療保険が適用される日数の上限が、呼吸器(90日)から脳血管疾患など(180日)まで4疾患ごとに設けられた。同時に1回のリハビリ時間を従来の1・5倍の120分に増やし、医療機関が身体機能の早期改善を目指し、急性期(発症後おおむね1カ月)と回復期(同3-6カ月)のリハビリを重点的に行うようにした。引き続き、維持期(同2-5年)は必要に応じ、介護保険が適用される居宅介護支援事業者が生活機能の維持・向上を目指すリハビリを行う。失語症などの特定疾患には日数制限はない。』
リハビリの打ち切りについては,最近になり医療機関やリハビリテーション学会からの反論がニュースになっている.医師がリハビリの日数制限を理由に「一律に打ち切らない」ようにと言うが,もとはと言えば,厚生労働省がその根拠や制度の実際の運用について十分な説明もせずにリハビリの日数制限を診療報酬の改定に盛り込んだのが原因である.
医療現場ではこの日数制限の解釈に困惑したのも事実であり,結局は診療報酬請求を切られるのを恐れて患者さんに病院でのリハビリをあきらめてもらうか,請求せずに赤字覚悟のサービスでリハビリを継続するかの二者択一となったのである.その結果,患者さんのことを第一に考える病院の経営はまたも圧迫されたわけである.
今回の通達にしても,医師の判断で継続できるとは言うものの具体的にその基準が示されているわけではないから,診療報酬を請求しても査定で切られたり,監査で不正請求よばわりさせる可能性は残されていると思わざるを得ない.社会保険庁のやることはまったく信用できないから疑心暗鬼にもなるわけだ.
これが,厚生労働省のいつもの手口なのである.きちんと制度の中身を説明せずに相手の出方を見てから自分勝手な解釈をつけて,都合の悪いことは医者や医療機関のせいにするのである.俗に言う「あと出しジャンケン」なのだから,何をやっても決して自分たちに都合の悪いことは起こらないわけである.
この記事を読むと医師はまるで無慈悲にもリハビリを一律に打ち切った悪者のようである.円滑に引き継ごうにも希望するリハビリを提供してくれる介護サービスが見つからない患者さんたちも今回は大変迷惑したことだろうが,こんな医療制度改革に毎度付き合わされる医師の気持ちも少しは皆さんにわかって欲しいと思うのは私だけでしょうか.
厚生労働省は26日までに、脳卒中などを患った人が必要とするリハビリテーションについて、医師がリハビリの日数制限を理由に「一律に打ち切らない」ようにし、利用者を医療から介護サービスへ円滑に引き継ぐよう求める通達を、出先機関や都道府県に出した。
同省は4月から身体機能の回復効果が高まるよう、発症直後からの短期・集中的なリハビリを重視する制度改革をした。半面、期限や目標があいまいで「漫然とした」リハビリを減らし、介護保険に引き継ぐため、特定の疾患と症状を除き、公的医療保険が使える日数を疾患別に制限(最大180日)。これに対し、国会などで「説明不足」「患者切り捨て」などの批判が起きた。
このため同省は通達により、利用者が新制度下でも、医療保険と介護保険で切れ目なく必要なリハビリを受けられるよう、医師はじめ関係者に促すことにした。
医療保険のリハビリには日数制限があるが、上限を超えて続ければ改善が見込まれる失語症や高次脳機能障害など50を超す疾患・症状には日数制限はなく、医師の判断で継続できる。
ところが、こうした新制度の内容が「医療現場に正確に伝わっていない」という指摘もある。このため通達は医師に対し、日数制限の例外となる疾患の正確な把握と改善が見込まれるかどうかの適切な判断を求め「リハビリを機械的に打ち切ることは適切でない」としている。
また医療保険が使えるリハビリ終了後、患者の意向に沿い、速やかに介護保険が使えるリハビリを受けられるよう「医療機関と居宅介護支援事業者等の連携強化」を求めている。医療機関は要介護認定の申請手続き、介護事業者への連絡などで患者を支援する。
▽リハビリの日数制限
リハビリの日数制限 2006年度の診療報酬改定に伴い、公的医療保険が適用される日数の上限が、呼吸器(90日)から脳血管疾患など(180日)まで4疾患ごとに設けられた。同時に1回のリハビリ時間を従来の1・5倍の120分に増やし、医療機関が身体機能の早期改善を目指し、急性期(発症後おおむね1カ月)と回復期(同3-6カ月)のリハビリを重点的に行うようにした。引き続き、維持期(同2-5年)は必要に応じ、介護保険が適用される居宅介護支援事業者が生活機能の維持・向上を目指すリハビリを行う。失語症などの特定疾患には日数制限はない。』
リハビリの打ち切りについては,最近になり医療機関やリハビリテーション学会からの反論がニュースになっている.医師がリハビリの日数制限を理由に「一律に打ち切らない」ようにと言うが,もとはと言えば,厚生労働省がその根拠や制度の実際の運用について十分な説明もせずにリハビリの日数制限を診療報酬の改定に盛り込んだのが原因である.
医療現場ではこの日数制限の解釈に困惑したのも事実であり,結局は診療報酬請求を切られるのを恐れて患者さんに病院でのリハビリをあきらめてもらうか,請求せずに赤字覚悟のサービスでリハビリを継続するかの二者択一となったのである.その結果,患者さんのことを第一に考える病院の経営はまたも圧迫されたわけである.
今回の通達にしても,医師の判断で継続できるとは言うものの具体的にその基準が示されているわけではないから,診療報酬を請求しても査定で切られたり,監査で不正請求よばわりさせる可能性は残されていると思わざるを得ない.社会保険庁のやることはまったく信用できないから疑心暗鬼にもなるわけだ.
これが,厚生労働省のいつもの手口なのである.きちんと制度の中身を説明せずに相手の出方を見てから自分勝手な解釈をつけて,都合の悪いことは医者や医療機関のせいにするのである.俗に言う「あと出しジャンケン」なのだから,何をやっても決して自分たちに都合の悪いことは起こらないわけである.
この記事を読むと医師はまるで無慈悲にもリハビリを一律に打ち切った悪者のようである.円滑に引き継ごうにも希望するリハビリを提供してくれる介護サービスが見つからない患者さんたちも今回は大変迷惑したことだろうが,こんな医療制度改革に毎度付き合わされる医師の気持ちも少しは皆さんにわかって欲しいと思うのは私だけでしょうか.
医師はホワイトカラー?
2006年12月9日 医療の問題 コメント (1)『 -- 残業代ゼロ労働制導入、年収水準は盛らず 厚労省最終案 --
厚生労働省は8日、来年の労働法制見直しについての最終報告案を、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に提出した。一定条件を満たした会社員が1日8時間の労働時間規制から外れ、残業代を払う必要がなくなる「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、導入を明示したものの、対象者の年収の基準は示さなかった。労働組合は導入に強く反対しており、法制化に向け労使の攻防の激化が予想される。
今回の見直しは、パートや派遣など非正社員が増え、正社員にも成果主義が普及するなど働き方が多様化した実態をふまえ、働き手と企業との雇用ルールを整備するのが狙い。労働契約法の新設など幅広い内容を含む。
ホワイトカラー・エグゼンプションでは、対象者の満たすべき条件として(1)労働時間では成果を適切に評価できない(2)重要な権限・責任を伴う(3)仕事のやり方などを使用者に指示されない(4)年収が相当程度高い??の四つを挙げた。過労死など健康被害が懸念されるため、法定の週休1日(年間52日)を対象者は2日(同104日)にし、違反企業に改善命令や罰則を科す。』
ホワイトカラー(White-Collar 白い襟)とは、主に事務に従事する人々を指す職種・労働層を指す言葉だそうだ.一方,ブルーカラーの仕事は「きつい(Kitsui)」「汚い(Kitanai)」「危険(Kiken)」ことを意味する3Kということばで表現され,ホワイトカラーの方が清潔で安全な職場というイメージらしい.
だとすれば,医師はホワイトカラーよりはブルーカラーに近い職種である.もっとも医師の仕事は物を生産したりするわけでもないからブルーカラーにも入らないのだろう.服装という点で見ると確かに白衣やケーシーの襟は白いけれども,デスクワークというよりは技術職であるからホワイトカラーにはならないだろう.
だから,きっとホワイトカラー・エグゼンプションにの対象ではないのだろうが,対象者の満たすべき条件をみるとほとんど条件は満たしているようである.そこで,私が注目したのは,『過労死など健康被害が懸念されるため、法定の週休1日(年間52日)を対象者は2日(同104日)にし、違反企業に改善命令や罰則を科す。』という点である.
もとより超過勤務手当ても代休もなく,休日出勤も当たり前になっている医師が現在でも相当数いると思われるのだが,厚労省はまたも医師は例外ということで済ますつもりなのだろうか.
http://diarynote.jp/d/41284/20060630.html
厚生労働省は8日、来年の労働法制見直しについての最終報告案を、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に提出した。一定条件を満たした会社員が1日8時間の労働時間規制から外れ、残業代を払う必要がなくなる「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、導入を明示したものの、対象者の年収の基準は示さなかった。労働組合は導入に強く反対しており、法制化に向け労使の攻防の激化が予想される。
今回の見直しは、パートや派遣など非正社員が増え、正社員にも成果主義が普及するなど働き方が多様化した実態をふまえ、働き手と企業との雇用ルールを整備するのが狙い。労働契約法の新設など幅広い内容を含む。
ホワイトカラー・エグゼンプションでは、対象者の満たすべき条件として(1)労働時間では成果を適切に評価できない(2)重要な権限・責任を伴う(3)仕事のやり方などを使用者に指示されない(4)年収が相当程度高い??の四つを挙げた。過労死など健康被害が懸念されるため、法定の週休1日(年間52日)を対象者は2日(同104日)にし、違反企業に改善命令や罰則を科す。』
ホワイトカラー(White-Collar 白い襟)とは、主に事務に従事する人々を指す職種・労働層を指す言葉だそうだ.一方,ブルーカラーの仕事は「きつい(Kitsui)」「汚い(Kitanai)」「危険(Kiken)」ことを意味する3Kということばで表現され,ホワイトカラーの方が清潔で安全な職場というイメージらしい.
だとすれば,医師はホワイトカラーよりはブルーカラーに近い職種である.もっとも医師の仕事は物を生産したりするわけでもないからブルーカラーにも入らないのだろう.服装という点で見ると確かに白衣やケーシーの襟は白いけれども,デスクワークというよりは技術職であるからホワイトカラーにはならないだろう.
だから,きっとホワイトカラー・エグゼンプションにの対象ではないのだろうが,対象者の満たすべき条件をみるとほとんど条件は満たしているようである.そこで,私が注目したのは,『過労死など健康被害が懸念されるため、法定の週休1日(年間52日)を対象者は2日(同104日)にし、違反企業に改善命令や罰則を科す。』という点である.
もとより超過勤務手当ても代休もなく,休日出勤も当たり前になっている医師が現在でも相当数いると思われるのだが,厚労省はまたも医師は例外ということで済ますつもりなのだろうか.
http://diarynote.jp/d/41284/20060630.html
パンダの消える動物園
2006年10月30日 医療の問題 コメント (3)『 周産期母子医療センター:厚労相「来年度中に整備」-衆院厚生労働委
大淀町立大淀病院に入院していた妊婦が、転院先の大阪府内の病院で出産後に死亡した問題で27日、民主党の柚木道義衆院議員が衆議院厚生労働委員会で質問。柳沢伯夫・厚労相が答弁した。主なやり取りは次の通り。
----今回の奈良の悲劇は、なぜ起こったのか。
◆担当医に過失があったかなかったか。答えを留保する。今後、総合周産期母子医療センターの整備などで再発防止に努めたい。
----センター整備は都道府県にまかせていると言いながら、厚労省はこの6月に未整備8県の担当者を呼んで指導したというではないか。奈良も含めいつまでにセンターを整備するつもりか?
◆来年度中に行う。
----大変重い答弁をいただいた。来年度というのは、計画か、実施か。
◆来年度中に実施し、動かすということ。
----大変前向きな答弁をいただいた。
警察が業務上過失かどうか捜査に入っている。先に福島県の産科医が逮捕された事例もあったが原因、責任について意見が分かれる件では、警察が追及するより専門家の機関が究明する方が重要。慎重であるべきでは。
◆より専門的・技術的な調査が大事と思う。国交省の航空・鉄道事故調査委員会のような体制が必要だ。時期としては、今年度中に試案を厚労省が出して来年度には有識者の意見を聞きたい。
----(搬送先が長時間決まらなかったのは)25日の毎日新聞夕刊にあるように、満床、分娩(べん)中、麻酔医不在などいくつか理由はある。奈良県のハイリスク分娩母体の県外搬送率は約40%と他のある県の4倍。これまでは全国有数とされる大阪府の産婦人科診療総合援助システムのおかげでやり繰りしてきた。それも限界。奈良と大阪について、一般の救急医療と母子医療センターをプラスした、県境を越えた医療網の構築を省としてもリードできないか。
◆府県がネットワークを組むことは非常に有意義。府県の話し合いが進むことが大事だが、厚労省としてもバックアップして参りたい。』
笛を吹くのは勝手だが,パンダのいない檻を整備したところで誰が芸をするのだろうか.一生懸命に自分のできる芸を見せたのに,芸が下手だと牢屋へ移されるようではパンダの絶滅は近いだろう.パンダを集約してセンターで芸をさせたところで,観客が増えてより芸への要求が厳しくなるのでは,たとえ餌が多少良くなったとしても状況が改善されるとは思えない.
今は奈良のパンダたちにばかり注目が集まっているが,他の地方で頑張っているパンダやヒグマやツキノワグマたちも芸の厳しさと観客のマナーにすでに嫌気がさしているのではないだろうか.議員様や大臣様が国会でなにを言うのも勝手だが,いくら芸達者なクマ達でも勝手な言い分に付き合う気がなければ逃散するだけだということを忘れないほうがいいだろう.
大淀町立大淀病院に入院していた妊婦が、転院先の大阪府内の病院で出産後に死亡した問題で27日、民主党の柚木道義衆院議員が衆議院厚生労働委員会で質問。柳沢伯夫・厚労相が答弁した。主なやり取りは次の通り。
----今回の奈良の悲劇は、なぜ起こったのか。
◆担当医に過失があったかなかったか。答えを留保する。今後、総合周産期母子医療センターの整備などで再発防止に努めたい。
----センター整備は都道府県にまかせていると言いながら、厚労省はこの6月に未整備8県の担当者を呼んで指導したというではないか。奈良も含めいつまでにセンターを整備するつもりか?
◆来年度中に行う。
----大変重い答弁をいただいた。来年度というのは、計画か、実施か。
◆来年度中に実施し、動かすということ。
----大変前向きな答弁をいただいた。
警察が業務上過失かどうか捜査に入っている。先に福島県の産科医が逮捕された事例もあったが原因、責任について意見が分かれる件では、警察が追及するより専門家の機関が究明する方が重要。慎重であるべきでは。
◆より専門的・技術的な調査が大事と思う。国交省の航空・鉄道事故調査委員会のような体制が必要だ。時期としては、今年度中に試案を厚労省が出して来年度には有識者の意見を聞きたい。
----(搬送先が長時間決まらなかったのは)25日の毎日新聞夕刊にあるように、満床、分娩(べん)中、麻酔医不在などいくつか理由はある。奈良県のハイリスク分娩母体の県外搬送率は約40%と他のある県の4倍。これまでは全国有数とされる大阪府の産婦人科診療総合援助システムのおかげでやり繰りしてきた。それも限界。奈良と大阪について、一般の救急医療と母子医療センターをプラスした、県境を越えた医療網の構築を省としてもリードできないか。
◆府県がネットワークを組むことは非常に有意義。府県の話し合いが進むことが大事だが、厚労省としてもバックアップして参りたい。』
笛を吹くのは勝手だが,パンダのいない檻を整備したところで誰が芸をするのだろうか.一生懸命に自分のできる芸を見せたのに,芸が下手だと牢屋へ移されるようではパンダの絶滅は近いだろう.パンダを集約してセンターで芸をさせたところで,観客が増えてより芸への要求が厳しくなるのでは,たとえ餌が多少良くなったとしても状況が改善されるとは思えない.
今は奈良のパンダたちにばかり注目が集まっているが,他の地方で頑張っているパンダやヒグマやツキノワグマたちも芸の厳しさと観客のマナーにすでに嫌気がさしているのではないだろうか.議員様や大臣様が国会でなにを言うのも勝手だが,いくら芸達者なクマ達でも勝手な言い分に付き合う気がなければ逃散するだけだということを忘れないほうがいいだろう.
どう説明しても損害賠償じゃないの
2006年10月27日 医療の問題 コメント (1)『 -- 防衛医大医療過誤、遺族敗訴を破棄 最高裁 --
元立正大教授の男性(当時61)が防衛医大病院(埼玉県)で脳の手術を受けた後に死亡したことを巡り、「医師の説明義務違反があった」などとして、遺族が国を相手に約9600万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が27日、あった。最高裁第二小法廷(滝井繁男裁判長)は「どの術式を受けるか、あるいは手術を受けずに様子を見るか、患者が熟慮の上判断できるようにわかりやすく説明する義務を尽くさなかった」として、遺族を敗訴させた二審・東京高裁判決を破棄。説明内容についての事実関係の審理を尽くすよう、同高裁に差し戻した。
判決によると、元教授は95年12月、同病院で破裂していない脳動脈瘤(りゅう)があると診断された。翌年2月にプラチナ製の形状記憶合金(コイル)で動脈瘤に血が入らないようにふさぐ手術を受けたが、コイルが動脈内に流れ出し、開頭手術でも取り除けず、およそ半月後に死亡した。
脳動脈瘤は放置しても6割は破裂しないとされ、今回の手術は緊急性のない予防的なものだった。同小法廷は「コイル塞栓(そくせん)術は脳梗塞(こうそく)を発生させるなどの危険があり、こうした医学的知見について説明すべきだった」と述べた。』
「脳動脈瘤は放置しても6割は破裂しない」と最高裁が認定したのかどうかはわからないが,「コイル塞栓(そくせん)術は脳梗塞(こうそく)を発生させるなどの危険があり、こうした医学的知見について説明すべきだった」とあるのは,防衛医大病院ではそれさえも説明しなかったということなのだろうか.医療事故関係のニュースではいつものことだがよくわからない点が多い.
未破裂脳動脈瘤が脳ドックなどで見つかったら,予防的治療をするのかしないかの2つに1つである.そして,手術には開頭術と血管内手術があるが,必ずしもどちらでも好きなほうでというものでもない.動脈瘤の部位や形状によって安全性には差があると考えられるのだが,たとえより安全な方を選んだとしても1%程度のリスクは残ると考えるべきだろう.
手術だからではなく,世の中に100%安全なんていうものはないと考えるのがあたりまえだと思うからである.未破裂動脈瘤について言えば,手術をしなくても破裂すれば50%くらいの確率で死亡するし,開頭術でもコイル塞栓術でも死亡するリスクは0ではないから,当事者になれば死亡率は100%である.問題は自分がその当事者になるかどうかであって,全体に対する発生確率を考えても自分のことはわからないということである.
脳外科医の立場で言えば,手術のリスクはある程度までは自分の腕でコントロール可能であるが,不測の事態は常に起こり得るわけで外科医であればそれは職業上のリスクであり避けることはできない.最近では,手術の結果が悪ければ訴訟になる確率は以前より高くなったと思われる,それも民事訴訟ならまだしも刑事訴訟ではどうにも対処のしようもない.
民事訴訟に巻き込まれないためにできることと言えば,手術の前に説明と同意に十分な時間をかけるというのはもちろん大切だろうが,話をしながら家族の様子を伺うことも重要だろう.以前にも書いたが,先生と呼ばれる職業の人たちは要注意である.この場合,それでも医師であれば手術のリスクを理解してもらえる可能性は高いだろうが,それ以外の職種では「先生におまかせします.」といいながらも結果に対する期待値が高すぎて結果に不満が出ることもあるだろうから,こういう患者や家族に対しては普段にもまして慎重な対応が必要だろう.
結局,医師がいくら十分に説明したつもりであっても,相手がそれをどのように理解したかが問題で,それを事前に正確に把握する手だてはない.手術の際に不測の事態が起きることが理解されないまま不満足な結果に終われば,「そんな説明は聞いていない」「そんなことが起きるとは思わなかった」となり損害賠償請求のリスクは避けられないのではないのだろうか.
こう考えてみると,無過失責任保険のような救済制度は産科だけでなく,すべての外科手術に必要だということになると思われる,現在は,まだそこまで議論にもなっていないし,それも医師や病院側で準備するような話になっているようだが,本来であれば手術で救われる患者側もまさかの時のために相応の負担をするべきではないかと思うのは私だけだろうか.
元立正大教授の男性(当時61)が防衛医大病院(埼玉県)で脳の手術を受けた後に死亡したことを巡り、「医師の説明義務違反があった」などとして、遺族が国を相手に約9600万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が27日、あった。最高裁第二小法廷(滝井繁男裁判長)は「どの術式を受けるか、あるいは手術を受けずに様子を見るか、患者が熟慮の上判断できるようにわかりやすく説明する義務を尽くさなかった」として、遺族を敗訴させた二審・東京高裁判決を破棄。説明内容についての事実関係の審理を尽くすよう、同高裁に差し戻した。
判決によると、元教授は95年12月、同病院で破裂していない脳動脈瘤(りゅう)があると診断された。翌年2月にプラチナ製の形状記憶合金(コイル)で動脈瘤に血が入らないようにふさぐ手術を受けたが、コイルが動脈内に流れ出し、開頭手術でも取り除けず、およそ半月後に死亡した。
脳動脈瘤は放置しても6割は破裂しないとされ、今回の手術は緊急性のない予防的なものだった。同小法廷は「コイル塞栓(そくせん)術は脳梗塞(こうそく)を発生させるなどの危険があり、こうした医学的知見について説明すべきだった」と述べた。』
「脳動脈瘤は放置しても6割は破裂しない」と最高裁が認定したのかどうかはわからないが,「コイル塞栓(そくせん)術は脳梗塞(こうそく)を発生させるなどの危険があり、こうした医学的知見について説明すべきだった」とあるのは,防衛医大病院ではそれさえも説明しなかったということなのだろうか.医療事故関係のニュースではいつものことだがよくわからない点が多い.
未破裂脳動脈瘤が脳ドックなどで見つかったら,予防的治療をするのかしないかの2つに1つである.そして,手術には開頭術と血管内手術があるが,必ずしもどちらでも好きなほうでというものでもない.動脈瘤の部位や形状によって安全性には差があると考えられるのだが,たとえより安全な方を選んだとしても1%程度のリスクは残ると考えるべきだろう.
手術だからではなく,世の中に100%安全なんていうものはないと考えるのがあたりまえだと思うからである.未破裂動脈瘤について言えば,手術をしなくても破裂すれば50%くらいの確率で死亡するし,開頭術でもコイル塞栓術でも死亡するリスクは0ではないから,当事者になれば死亡率は100%である.問題は自分がその当事者になるかどうかであって,全体に対する発生確率を考えても自分のことはわからないということである.
脳外科医の立場で言えば,手術のリスクはある程度までは自分の腕でコントロール可能であるが,不測の事態は常に起こり得るわけで外科医であればそれは職業上のリスクであり避けることはできない.最近では,手術の結果が悪ければ訴訟になる確率は以前より高くなったと思われる,それも民事訴訟ならまだしも刑事訴訟ではどうにも対処のしようもない.
民事訴訟に巻き込まれないためにできることと言えば,手術の前に説明と同意に十分な時間をかけるというのはもちろん大切だろうが,話をしながら家族の様子を伺うことも重要だろう.以前にも書いたが,先生と呼ばれる職業の人たちは要注意である.この場合,それでも医師であれば手術のリスクを理解してもらえる可能性は高いだろうが,それ以外の職種では「先生におまかせします.」といいながらも結果に対する期待値が高すぎて結果に不満が出ることもあるだろうから,こういう患者や家族に対しては普段にもまして慎重な対応が必要だろう.
結局,医師がいくら十分に説明したつもりであっても,相手がそれをどのように理解したかが問題で,それを事前に正確に把握する手だてはない.手術の際に不測の事態が起きることが理解されないまま不満足な結果に終われば,「そんな説明は聞いていない」「そんなことが起きるとは思わなかった」となり損害賠償請求のリスクは避けられないのではないのだろうか.
こう考えてみると,無過失責任保険のような救済制度は産科だけでなく,すべての外科手術に必要だということになると思われる,現在は,まだそこまで議論にもなっていないし,それも医師や病院側で準備するような話になっているようだが,本来であれば手術で救われる患者側もまさかの時のために相応の負担をするべきではないかと思うのは私だけだろうか.
記事の出来次第で見えてくるものもある
2006年10月17日 医療の問題 コメント (6)『 -- 分べん中意識不明 18病院が受け入れ拒否…出産…死亡 --
奈良県大淀町立大淀病院で今年8月、分べん中に意識不明に陥った妊婦に対し、受け入れを打診された18病院が拒否し、妊婦は6時間後にようやく約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に収容されたことが分かった。脳内出血と帝王切開の手術をほぼ同時に受け男児を出産したが、妊婦は約1週間後に死亡した。遺族は「意識不明になってから長時間放置され、死亡につながった」と態勢の不備や病院の対応を批判。大淀病院側は「できるだけのことはやった」としている。
妊婦は同県五条市に住んでいた高崎実香さん(32)。遺族や病院関係者によると、出産予定日を過ぎた妊娠41週の8月7日午前、大淀病院に入院した。8日午前0時ごろ、頭痛を訴えて約15分後に意識不明に陥った。
産科担当医は急変から約1時間45分後、同県内で危険度の高い母子の治療や搬送先を照会する拠点の同県立医科大学付属病院(橿原市)に受け入れを打診したが、同病院は「母体治療のベッドが満床」と断った。
その後、同病院産科当直医が午前2時半ごろ、もう一つの拠点施設である県立奈良病院(奈良市)に受け入れを要請。しかし奈良病院も新生児の集中治療病床の満床を理由に、応じなかった。
医大病院は、当直医4人のうち2人が通常勤務をしながら大阪府を中心に電話で搬送先を探したがなかなか決まらず、午前4時半ごろになって19カ所目の国立循環器病センターに決まったという。高崎さんは約1時間かけて救急車で運ばれ、同センターに午前6時ごろ到着。同センターで脳内出血と診断され、緊急手術と帝王切開を実施、男児を出産した。高崎さんは同月16日に死亡した。
大淀病院はこれまでに2度、高崎さんの遺族に状況を説明した。それによると、産科担当医は入院後に陣痛促進剤を投与。容体急変の後、妊娠中毒症の妊婦が分べん中にけいれんを起こす「子癇(しかん)発作」と判断し、けいれんを和らげる薬を投与した。この日当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。
緊急治療が必要な母子について、厚生労働省は来年度中に都道府県単位で総合周産期母子医療センターを指定するよう通知したが、奈良など8県が未整備で、母体の県外搬送が常態化している。
大淀病院の原育史院長は「脳内出血の疑いも検討したが、もし出血が判明してもうちでは対応しようがなく、診断と治療を対応可能な病院に依頼して、受け入れ連絡を待っていた」と話した。
一方、高崎さんの遺族は「大淀病院は、総合病院として脳外科を備えながら専門医に連絡すら取っていない。適切な処置ができていれば助かったはずだ」と話している。』
他のニュースでは「18病院が転送拒否」というところばかりが強調されているので,「産婦人科は基幹病院に出産が集中したせいでどこも満床になって受け入れ不能になり,こういう不幸な出来事も起きうるのか」などと思っていたら,このニュースを読んでびっくり.
ここまで詳しく報道されると,転送拒否される以前に大淀病院側が「できるだけのことはやった」というには,問題があることが見えくる.当直の内科医の指摘を受け入れて頭部CTを産科医が撮っていれば,脳出血の診断がついていたはずであることが悔やまれる.
脳神経外科を標榜して脳神経外科専門医もいる病院であれば,より正確な状況判断がくだせたであろうこと,そして,その情報を家族に知らせた上で,治療方針を説明し転送するかどうかを決定する機会があったこと,脳出血の合併が明らかであれば転送先もより早く絞り込めて最悪でももっと早く国立循環器病センターに収容された可能性があったことなどである.
もっとも,妊婦の脳出血の場合は妊娠中毒症によるものと同じくらい脳動脈瘤破裂のことが多いと言われているから救命できたかどうかはわからないのではあるが,遺族が病院側の説明に対して「大淀病院は、総合病院として脳外科を備えながら専門医に連絡すら取っていない。適切な処置ができていれば助かったはずだ」と言いたくなる気持ちは理解できる.
あやうく私も「18病院転送拒否」というセンセーショナルなタイトルに何も知らずに勝手に納得してしまうところであった.マスコミの言うことを鵜呑みにしてはいけないといつも思っていたはずなのに知らないうちに違う方向へ誘導されてしまいそうになるとは,恐ろしいことだ.
奈良県大淀町立大淀病院で今年8月、分べん中に意識不明に陥った妊婦に対し、受け入れを打診された18病院が拒否し、妊婦は6時間後にようやく約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に収容されたことが分かった。脳内出血と帝王切開の手術をほぼ同時に受け男児を出産したが、妊婦は約1週間後に死亡した。遺族は「意識不明になってから長時間放置され、死亡につながった」と態勢の不備や病院の対応を批判。大淀病院側は「できるだけのことはやった」としている。
妊婦は同県五条市に住んでいた高崎実香さん(32)。遺族や病院関係者によると、出産予定日を過ぎた妊娠41週の8月7日午前、大淀病院に入院した。8日午前0時ごろ、頭痛を訴えて約15分後に意識不明に陥った。
産科担当医は急変から約1時間45分後、同県内で危険度の高い母子の治療や搬送先を照会する拠点の同県立医科大学付属病院(橿原市)に受け入れを打診したが、同病院は「母体治療のベッドが満床」と断った。
その後、同病院産科当直医が午前2時半ごろ、もう一つの拠点施設である県立奈良病院(奈良市)に受け入れを要請。しかし奈良病院も新生児の集中治療病床の満床を理由に、応じなかった。
医大病院は、当直医4人のうち2人が通常勤務をしながら大阪府を中心に電話で搬送先を探したがなかなか決まらず、午前4時半ごろになって19カ所目の国立循環器病センターに決まったという。高崎さんは約1時間かけて救急車で運ばれ、同センターに午前6時ごろ到着。同センターで脳内出血と診断され、緊急手術と帝王切開を実施、男児を出産した。高崎さんは同月16日に死亡した。
大淀病院はこれまでに2度、高崎さんの遺族に状況を説明した。それによると、産科担当医は入院後に陣痛促進剤を投与。容体急変の後、妊娠中毒症の妊婦が分べん中にけいれんを起こす「子癇(しかん)発作」と判断し、けいれんを和らげる薬を投与した。この日当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。
緊急治療が必要な母子について、厚生労働省は来年度中に都道府県単位で総合周産期母子医療センターを指定するよう通知したが、奈良など8県が未整備で、母体の県外搬送が常態化している。
大淀病院の原育史院長は「脳内出血の疑いも検討したが、もし出血が判明してもうちでは対応しようがなく、診断と治療を対応可能な病院に依頼して、受け入れ連絡を待っていた」と話した。
一方、高崎さんの遺族は「大淀病院は、総合病院として脳外科を備えながら専門医に連絡すら取っていない。適切な処置ができていれば助かったはずだ」と話している。』
他のニュースでは「18病院が転送拒否」というところばかりが強調されているので,「産婦人科は基幹病院に出産が集中したせいでどこも満床になって受け入れ不能になり,こういう不幸な出来事も起きうるのか」などと思っていたら,このニュースを読んでびっくり.
ここまで詳しく報道されると,転送拒否される以前に大淀病院側が「できるだけのことはやった」というには,問題があることが見えくる.当直の内科医の指摘を受け入れて頭部CTを産科医が撮っていれば,脳出血の診断がついていたはずであることが悔やまれる.
脳神経外科を標榜して脳神経外科専門医もいる病院であれば,より正確な状況判断がくだせたであろうこと,そして,その情報を家族に知らせた上で,治療方針を説明し転送するかどうかを決定する機会があったこと,脳出血の合併が明らかであれば転送先もより早く絞り込めて最悪でももっと早く国立循環器病センターに収容された可能性があったことなどである.
もっとも,妊婦の脳出血の場合は妊娠中毒症によるものと同じくらい脳動脈瘤破裂のことが多いと言われているから救命できたかどうかはわからないのではあるが,遺族が病院側の説明に対して「大淀病院は、総合病院として脳外科を備えながら専門医に連絡すら取っていない。適切な処置ができていれば助かったはずだ」と言いたくなる気持ちは理解できる.
あやうく私も「18病院転送拒否」というセンセーショナルなタイトルに何も知らずに勝手に納得してしまうところであった.マスコミの言うことを鵜呑みにしてはいけないといつも思っていたはずなのに知らないうちに違う方向へ誘導されてしまいそうになるとは,恐ろしいことだ.
『県立志摩病院:4医師退職の意向 県議会委、院長が窮状訴える /三重』
『四万十市立市民病院:医師不足でピンチ、夜間救急指定返上も /高知』
『現場から:田沢湖病院の救急指定取り下げ 重労働が招く医師の「過疎」 /秋田』
最近1週間で見かけた公立病院の医師不足のニュースタイトルをならべてみた.
こうなることは以前に予想した通りだが,そのスピードがここに来て加速しているような気がする.この勢いで一気に地方の医療は崩壊してしまうのだろうか.
『四万十市立市民病院:医師不足でピンチ、夜間救急指定返上も /高知』
『現場から:田沢湖病院の救急指定取り下げ 重労働が招く医師の「過疎」 /秋田』
最近1週間で見かけた公立病院の医師不足のニュースタイトルをならべてみた.
こうなることは以前に予想した通りだが,そのスピードがここに来て加速しているような気がする.この勢いで一気に地方の医療は崩壊してしまうのだろうか.
健康保険医療は配給制になるのか?
2006年10月6日 医療の問題『 -- 高齢者医療の定額化検討 厚労省、年度内に方針 --
厚生労働省は5日、社会保障審議会に設置した後期高齢者医療の在り方に関する特別部会(糠谷真平(ぬかや・しんぺい)部会長)の初会合を開き、2008年4月に始まる75歳以上を対象とした医療制度での診療報酬体系などをめぐる検討を始めた。
厚労省は、高齢者医療費の抑制や患者負担の軽減を図るため、病気の種類や治療方法ごとに報酬を定める「定額制」(包括払い)を導入する方針を固めており、定額制や終末期医療の対応をどう評価するかなどが検討の焦点となる。来年3月に基本的な方針をまとめる。
この日の会合で委員側から、財政面への配慮から高齢者医療費を削ることに反対する意見や、終末期医療で家族の合意の在り方について議論を求める声もあった。
今後は、自宅での日常的な医学管理から、最期のみとりまで一貫して対応できる主治医の普及のほか、医師、看護師、ケアマネジャーらの連携による医療・介護サービス、入院によるホスピスケアの普及などをテーマに協議を進めていく。』
定額制の話になると必ず「患者負担の軽減」というお決まりの言葉がつくのだが,本当に患者負担が軽減されるだろうか.疾患ごとに定額ということは医療サービスの内容にかかわらず料金が同じということである.これでは配給券を持って病院へ行くようなものではないだろうか.最初からサービスの範囲が診療報酬で限定されている医療で病状に応じて必要十分な治療が受けられるのだろうか.
同じ病名でも軽症な患者さんでは治療の割に高額な負担をすることになったり,重症の患者さんでは治療の割に負担が軽くなる可能性があるとはいえ,病院側の都合で必要十分な治療が受けられないことはないのだろうか.病気が治らなければ退院できず病院側も困るからそんなことはないというのだろうか.
厚生労働省が定額制を導入したがっているのは,病院が過剰な診療を行い医療費の増大を招いていると考えているからなのかもしれないが,理由はどうあれやることは高齢者医療費の支出抑制であるから医療サービスの総量は確実に減少するわけである.問題は,それが適切に減少するのかどうかである.
ここで私が思い出すのは,以前に介護保険制度が導入され病院の在宅医療サービスが減少した時のことである.これは健康保険医療で提供されたサービスを介護保険制度を創設することにより医療費から切り離したわけだが,はたして介護保険で提供されるサービスは低コストで高品質だっただろうか.そして,その後どうなったのかは最近のニュースを見れば明らかだろう.
結局,介護保険も現在は支出抑制のために介護度の見直しと制限事項の増加のため実質的な患者負担は増加しているのが現実である.厚生労働省がやった最近の医療改革を検証すればひたすら健康保険で受けられるサービス量を低下させてきただけであることがわかるだろう.医療費削減だけが目的で財政難を理由に医療を配給制にするような定額制の導入はわが国の健康保険制度が終末期になっていることを示していると考えるのは私だけだろうか.
厚生労働省は5日、社会保障審議会に設置した後期高齢者医療の在り方に関する特別部会(糠谷真平(ぬかや・しんぺい)部会長)の初会合を開き、2008年4月に始まる75歳以上を対象とした医療制度での診療報酬体系などをめぐる検討を始めた。
厚労省は、高齢者医療費の抑制や患者負担の軽減を図るため、病気の種類や治療方法ごとに報酬を定める「定額制」(包括払い)を導入する方針を固めており、定額制や終末期医療の対応をどう評価するかなどが検討の焦点となる。来年3月に基本的な方針をまとめる。
この日の会合で委員側から、財政面への配慮から高齢者医療費を削ることに反対する意見や、終末期医療で家族の合意の在り方について議論を求める声もあった。
今後は、自宅での日常的な医学管理から、最期のみとりまで一貫して対応できる主治医の普及のほか、医師、看護師、ケアマネジャーらの連携による医療・介護サービス、入院によるホスピスケアの普及などをテーマに協議を進めていく。』
定額制の話になると必ず「患者負担の軽減」というお決まりの言葉がつくのだが,本当に患者負担が軽減されるだろうか.疾患ごとに定額ということは医療サービスの内容にかかわらず料金が同じということである.これでは配給券を持って病院へ行くようなものではないだろうか.最初からサービスの範囲が診療報酬で限定されている医療で病状に応じて必要十分な治療が受けられるのだろうか.
同じ病名でも軽症な患者さんでは治療の割に高額な負担をすることになったり,重症の患者さんでは治療の割に負担が軽くなる可能性があるとはいえ,病院側の都合で必要十分な治療が受けられないことはないのだろうか.病気が治らなければ退院できず病院側も困るからそんなことはないというのだろうか.
厚生労働省が定額制を導入したがっているのは,病院が過剰な診療を行い医療費の増大を招いていると考えているからなのかもしれないが,理由はどうあれやることは高齢者医療費の支出抑制であるから医療サービスの総量は確実に減少するわけである.問題は,それが適切に減少するのかどうかである.
ここで私が思い出すのは,以前に介護保険制度が導入され病院の在宅医療サービスが減少した時のことである.これは健康保険医療で提供されたサービスを介護保険制度を創設することにより医療費から切り離したわけだが,はたして介護保険で提供されるサービスは低コストで高品質だっただろうか.そして,その後どうなったのかは最近のニュースを見れば明らかだろう.
結局,介護保険も現在は支出抑制のために介護度の見直しと制限事項の増加のため実質的な患者負担は増加しているのが現実である.厚生労働省がやった最近の医療改革を検証すればひたすら健康保険で受けられるサービス量を低下させてきただけであることがわかるだろう.医療費削減だけが目的で財政難を理由に医療を配給制にするような定額制の導入はわが国の健康保険制度が終末期になっていることを示していると考えるのは私だけだろうか.
じゃあ技術料は成功報酬にしたらどうだ
2006年10月3日 医療の問題 コメント (1)『 -- 死亡率:手術多い病院ほど低い傾向 診療報酬論議に影響----心臓、食道・肺がん手術 -- 胸部外科学会調査
心臓手術と食道がん、肺がんの手術では、手術件数が多い病院ほど死亡率が低い傾向があるとのデータを1日、日本胸部外科学会(松田暉理事長)が発表した。厚生労働省は今春、手術件数の多い病院に高い診療報酬を与える制度を「根拠が薄い」と廃止し、再び同様の基準を設けるべきかについて検討会で議論中だ。同学会は「件数は少なくても死亡率が低い病院があり、一律の規制は適当でない」と説明するが、今回の結果は議論に影響するとみられる。
同学会は00-04年に全国の計約700病院で心臓、食道がん、肺がんの手術を受けた患者計約30万人について、病院ごとの死亡率と手術件数との関係を分析した。病院名を公表しない約束で、各病院からデータを集めた。
その結果、心臓の「大動脈置換術」では、年平均20件以上を実施した病院で、手術後30日以内の死亡率が7・9%だったのに、同5件未満の病院では18・5%と2倍以上高くなった。後天性心臓病の手術全体でも、年100件以上の75病院の平均死亡率2・3%に対し、年25件未満の90病院では同4・8%だった。
食道がんでは、年75件以上の6病院で、在院死亡率が平均1・6%だったが、25件未満の716病院では平均6・5%と4倍の差があった。25件未満では、死亡率が20%を超える病院もあった。
肺がんでは、年150件以上の病院で死亡率0・3%、10件未満では1・6%だった。
◇治療成績の公表を----佐野俊二・岡山大医学部教授(心臓血管外科)の話
手術件数が多いほど死亡率が下がるのは、プロの大工が日曜大工よりうまいのと同じで、ごく当然だ。手術が年25件未満、つまり月1、2件では明らかに足りない。心臓外科医はプロとして治療成績を公表すべきだ。その代わり優秀な医師は高い報酬が得られる制度にしてほしい。』
腕に自信のある外科医の本音は「手術成績の優秀な医師には高い報酬を」だろうが,厚生労働省の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度の本音は要するに医療費削減であって,優秀な医師が高い報酬が得られる制度ではなかった.厚生労働省が優秀な医師の待遇改善をするなんていう話は聞いた事がないし,そもそも手術の技術料はもともとどう考えたって安すぎると私は思う.私の専門の脳神経外科にしても一つの技術料が100万円を超える手術なんて皆無である.自由診療の美容外科と比べてみれば健康保健診療での技術料がいかに低く抑えられているかわかるだろう.
前回の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度では,この安い技術料を手術数の少ない病院ではさらに削っただけである.これでは小規模病院では外科は不採算になる.要するに外科を大規模病院に集約する方向に向かわせたのだと思うが,これだと個人病院はもちろん,市立病院などのもともと経営の厳しい地域の基幹病院でさえも外科はやってられなくなる.地域の救急医療では手術を受ける機会がなくなればそれはすなわち患者の死を意味する.手術を受けられずに死亡した場合は手術の死亡率にはならないが,救命が目的であればこれでは本末転倒だろう.
そんなに手術成績と診療報酬を連動させたいのであれば,一例ごとに技術料を成功報酬にしたらどうだろうか.これなら外科医は納得できるのではないだろうか.もっともその場合,成功した場合の報酬は今の2倍以上にはしてもらわないと「優秀な医師は高い報酬」なんてことにはならないだろう.どうせ医療費削減が目的なんだろうからそんなことになるはずはないと思うのは私だけだろうか.
心臓手術と食道がん、肺がんの手術では、手術件数が多い病院ほど死亡率が低い傾向があるとのデータを1日、日本胸部外科学会(松田暉理事長)が発表した。厚生労働省は今春、手術件数の多い病院に高い診療報酬を与える制度を「根拠が薄い」と廃止し、再び同様の基準を設けるべきかについて検討会で議論中だ。同学会は「件数は少なくても死亡率が低い病院があり、一律の規制は適当でない」と説明するが、今回の結果は議論に影響するとみられる。
同学会は00-04年に全国の計約700病院で心臓、食道がん、肺がんの手術を受けた患者計約30万人について、病院ごとの死亡率と手術件数との関係を分析した。病院名を公表しない約束で、各病院からデータを集めた。
その結果、心臓の「大動脈置換術」では、年平均20件以上を実施した病院で、手術後30日以内の死亡率が7・9%だったのに、同5件未満の病院では18・5%と2倍以上高くなった。後天性心臓病の手術全体でも、年100件以上の75病院の平均死亡率2・3%に対し、年25件未満の90病院では同4・8%だった。
食道がんでは、年75件以上の6病院で、在院死亡率が平均1・6%だったが、25件未満の716病院では平均6・5%と4倍の差があった。25件未満では、死亡率が20%を超える病院もあった。
肺がんでは、年150件以上の病院で死亡率0・3%、10件未満では1・6%だった。
◇治療成績の公表を----佐野俊二・岡山大医学部教授(心臓血管外科)の話
手術件数が多いほど死亡率が下がるのは、プロの大工が日曜大工よりうまいのと同じで、ごく当然だ。手術が年25件未満、つまり月1、2件では明らかに足りない。心臓外科医はプロとして治療成績を公表すべきだ。その代わり優秀な医師は高い報酬が得られる制度にしてほしい。』
腕に自信のある外科医の本音は「手術成績の優秀な医師には高い報酬を」だろうが,厚生労働省の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度の本音は要するに医療費削減であって,優秀な医師が高い報酬が得られる制度ではなかった.厚生労働省が優秀な医師の待遇改善をするなんていう話は聞いた事がないし,そもそも手術の技術料はもともとどう考えたって安すぎると私は思う.私の専門の脳神経外科にしても一つの技術料が100万円を超える手術なんて皆無である.自由診療の美容外科と比べてみれば健康保健診療での技術料がいかに低く抑えられているかわかるだろう.
前回の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度では,この安い技術料を手術数の少ない病院ではさらに削っただけである.これでは小規模病院では外科は不採算になる.要するに外科を大規模病院に集約する方向に向かわせたのだと思うが,これだと個人病院はもちろん,市立病院などのもともと経営の厳しい地域の基幹病院でさえも外科はやってられなくなる.地域の救急医療では手術を受ける機会がなくなればそれはすなわち患者の死を意味する.手術を受けられずに死亡した場合は手術の死亡率にはならないが,救命が目的であればこれでは本末転倒だろう.
そんなに手術成績と診療報酬を連動させたいのであれば,一例ごとに技術料を成功報酬にしたらどうだろうか.これなら外科医は納得できるのではないだろうか.もっともその場合,成功した場合の報酬は今の2倍以上にはしてもらわないと「優秀な医師は高い報酬」なんてことにはならないだろう.どうせ医療費削減が目的なんだろうからそんなことになるはずはないと思うのは私だけだろうか.
知らない(変な?)名前ばかりです
2006年9月19日 医療の問題 コメント (4)『 -- ジェネリック医薬品、医師の7割が信頼性に「?」--
新薬の特許が切れた後に同じ成分で開発され、価格が安く抑えられた後発医薬品(ジェネリック医薬品)について、日本医師会は、医師の約7割が「使用に慎重あるいは懐疑的な意見を持っている」とする調査結果を発表した。日医は「現場での信頼性が確立されているとはいえない」として厚生労働省などに問題点を訴えていくという。
5月末から7月、ホームページを通じて後発品の品質や効果について会員の意見を募り、約580人から回答があった。
後発品の「効果」について尋ねたところ、有効回答154人のうち「問題なし」との答えが31%だったのに対し、「問題あり」は69%。「品質」(有効回答104人)についても54%が「問題あり」とした。「安定供給」(同89人)については7割が、副作用や安全などの「医薬品情報提供」(同116人)については8割が「問題あり」と答えた。
後発品は開発費がほとんどかからないため、価格は新薬の2〜7割。厚労省は医療費抑制のため利用促進を打ち出し、4月に規制が緩和され、市場参入が相次ぐなど使用が広がっている。 』
厚生労働省が利用促進し,効果も変わりないとメーカーが宣伝しているのだから,患者さんに希望されれば外来でも処方するしかない.第一,品質や副作用なんて外見ではわからないし,臨床試験のデータもないのだから評価のしようがないと思う.正直なところ何年も大量に使ってきた自分の経験も同等品とはいえ役立つのかどうかさえわからないのだ.
今や院外処方であるから外来処方をジェネリック医薬品に変更してもほとんど病院の利益にはならない.療養型病床などは定額なので高価な先発品を使うよりもジェネリック医薬品を使うほうが病院の収益は大きい.診療報酬は激減したので療養型病床のある病院はジェネリック医薬品を率先して導入しているはずである.おかげで処方箋に知らない名前ばかりが並んで担当医は苦労するだろう.
これからは患者さんが自分で治療を選択できる時代というわけである.格差社会では,お金に余裕のある人は先発のブランド品,コストパフォーマンスを追及する人はジェネリックという選択でいいんでしょうか.もっともそれもパフォーマンスが保証されていなければおかしな話になると思うのだが,本当はどうなのだろうか.
新薬の特許が切れた後に同じ成分で開発され、価格が安く抑えられた後発医薬品(ジェネリック医薬品)について、日本医師会は、医師の約7割が「使用に慎重あるいは懐疑的な意見を持っている」とする調査結果を発表した。日医は「現場での信頼性が確立されているとはいえない」として厚生労働省などに問題点を訴えていくという。
5月末から7月、ホームページを通じて後発品の品質や効果について会員の意見を募り、約580人から回答があった。
後発品の「効果」について尋ねたところ、有効回答154人のうち「問題なし」との答えが31%だったのに対し、「問題あり」は69%。「品質」(有効回答104人)についても54%が「問題あり」とした。「安定供給」(同89人)については7割が、副作用や安全などの「医薬品情報提供」(同116人)については8割が「問題あり」と答えた。
後発品は開発費がほとんどかからないため、価格は新薬の2〜7割。厚労省は医療費抑制のため利用促進を打ち出し、4月に規制が緩和され、市場参入が相次ぐなど使用が広がっている。 』
厚生労働省が利用促進し,効果も変わりないとメーカーが宣伝しているのだから,患者さんに希望されれば外来でも処方するしかない.第一,品質や副作用なんて外見ではわからないし,臨床試験のデータもないのだから評価のしようがないと思う.正直なところ何年も大量に使ってきた自分の経験も同等品とはいえ役立つのかどうかさえわからないのだ.
今や院外処方であるから外来処方をジェネリック医薬品に変更してもほとんど病院の利益にはならない.療養型病床などは定額なので高価な先発品を使うよりもジェネリック医薬品を使うほうが病院の収益は大きい.診療報酬は激減したので療養型病床のある病院はジェネリック医薬品を率先して導入しているはずである.おかげで処方箋に知らない名前ばかりが並んで担当医は苦労するだろう.
これからは患者さんが自分で治療を選択できる時代というわけである.格差社会では,お金に余裕のある人は先発のブランド品,コストパフォーマンスを追及する人はジェネリックという選択でいいんでしょうか.もっともそれもパフォーマンスが保証されていなければおかしな話になると思うのだが,本当はどうなのだろうか.
『 -- 亀田総合病院に賠償命令 処置ミス認定、約8200万 --
千葉県鴨川市の亀田総合病院(亀田信介(かめだ・しんすけ)院長)でぜんそく治療を受けていた高校2年の二男=当時(17)=が出血性ショックで死亡したのは処置のミスが原因として、両親が約8800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、千葉地裁は11日、病院側に約8200万円の支払いを命じた。判決理由で小磯武男(こいそ・たけお)裁判長は「カテーテル挿入時に血管を傷つけた過失が大量の出血をもたらした」と死亡と処置ミスとの因果関係を認めた。
病院側は「血管損傷の事実はない。死因はぜんそく薬の成分『テオフィリン』によるショック症状などだ」と反論していた。
判決によると、二男は2001年1月1日未明、吐き気などを訴え受診。ぜんそく治療で病院から処方されていたテオフィリンの血中濃度が高いことが判明。処置の過程で医師が脚の付け根にカテーテルを挿入した際、動脈や静脈を傷つけたため、後腹膜腔から大量に出血。二男は同日夜、死亡した。
亀田院長は「強い憤りを感じており、ただちに控訴する」とコメントしている。
亀田総合病院は電子カルテシステムの本格運用をいち早く導入するなど先進的な医療施設として知られ、浅田次郎(あさだ・じろう)氏の小説「天国までの百マイル」のモデルとされる』
別のニュースではIVHカテーテルを挿入後より血尿が止まらず死亡したことになっていたようで,いったいどこの動脈や静脈を傷つけたら後腹膜腔から大量に出血するのか私にはよくわからない.大腿静脈穿刺のIVHも死亡事故が起きるほど危険だということなのだろうか.
この記事からは,事実認定が病理解剖もしくは法医解剖の結果なされたのかどうかわからないが,「動脈や静脈を傷つけたため、後腹膜腔から大量に出血」とか「血尿が止まらず」といった程度の説明では約8200万円という高額の賠償には不釣り合いな印象がするのは私だけだろうか.
事実の確認が曖昧で,治療にかかわらず患者が死亡すると賠償請求のための訴訟が続くようではやはり無過失賠償保険が必要だろう.それまでは安心して治療できないと感じる医師は防衛医療に徹するしかないのかも知れない,こんな報道が続くようでは,ここしばらくは医療の矮小化はますます加速することになるのだろう.
千葉県鴨川市の亀田総合病院(亀田信介(かめだ・しんすけ)院長)でぜんそく治療を受けていた高校2年の二男=当時(17)=が出血性ショックで死亡したのは処置のミスが原因として、両親が約8800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、千葉地裁は11日、病院側に約8200万円の支払いを命じた。判決理由で小磯武男(こいそ・たけお)裁判長は「カテーテル挿入時に血管を傷つけた過失が大量の出血をもたらした」と死亡と処置ミスとの因果関係を認めた。
病院側は「血管損傷の事実はない。死因はぜんそく薬の成分『テオフィリン』によるショック症状などだ」と反論していた。
判決によると、二男は2001年1月1日未明、吐き気などを訴え受診。ぜんそく治療で病院から処方されていたテオフィリンの血中濃度が高いことが判明。処置の過程で医師が脚の付け根にカテーテルを挿入した際、動脈や静脈を傷つけたため、後腹膜腔から大量に出血。二男は同日夜、死亡した。
亀田院長は「強い憤りを感じており、ただちに控訴する」とコメントしている。
亀田総合病院は電子カルテシステムの本格運用をいち早く導入するなど先進的な医療施設として知られ、浅田次郎(あさだ・じろう)氏の小説「天国までの百マイル」のモデルとされる』
別のニュースではIVHカテーテルを挿入後より血尿が止まらず死亡したことになっていたようで,いったいどこの動脈や静脈を傷つけたら後腹膜腔から大量に出血するのか私にはよくわからない.大腿静脈穿刺のIVHも死亡事故が起きるほど危険だということなのだろうか.
この記事からは,事実認定が病理解剖もしくは法医解剖の結果なされたのかどうかわからないが,「動脈や静脈を傷つけたため、後腹膜腔から大量に出血」とか「血尿が止まらず」といった程度の説明では約8200万円という高額の賠償には不釣り合いな印象がするのは私だけだろうか.
事実の確認が曖昧で,治療にかかわらず患者が死亡すると賠償請求のための訴訟が続くようではやはり無過失賠償保険が必要だろう.それまでは安心して治療できないと感じる医師は防衛医療に徹するしかないのかも知れない,こんな報道が続くようでは,ここしばらくは医療の矮小化はますます加速することになるのだろう.