『--高崎女児殺害、被告に無期懲役言い渡し 地裁高崎支部--

 群馬県高崎市の県営住宅で昨年3月、小学1年だった女児(当時7)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた市内の会社員野木巨之(のりゆき)被告(28)に対し、前橋地裁高崎支部は9日、求刑通り無期懲役を言い渡した。

 大島哲雄裁判長は「人間性をかなぐり捨てた欲望のおもむくままの動機に酌量の余地はない。再犯のおそれは否定しがたく、終生、反省悔悟の日々を送らせ、罪を償わせるのが相当」などと述べた。

 判決によると、野木被告は04年3月11日午後2時40分ごろ、下校してきた女児を待ち伏せ。女児がエレベーターを降りた付近で抱え上げ、すぐ脇にある野木被告宅の玄関内に入れた。騒がれたため、首をタオルで絞め、窒息死させた。

 被告宅と女児宅は通路を挟んで隣り合い、女児が帰宅するには被告宅前を通らなければならなかった。

 弁護側が申請し、採用された心理鑑定は、野木被告について「小児性愛傾向がある。犯行は対人関係の困難によるストレス状況下で、攻撃性が衝動的に突出する形で行われた」などとしていた。

 検察側は論告で、成人女性に不信感を抱いた野木被告が少女に性的興味を持つようになったとして、「力では抵抗できない女児を狙い、小児性愛による特異な欲望を満たそうとした」と主張していた。 』

 「人間性をかなぐり捨てた欲望のおもむくままの動機に酌量の余地はない。再犯のおそれは否定しがたく、終生、反省悔悟の日々を送らせ、罪を償わせるのが相当」と裁判長が言っても実際には減刑されて10数年で再び社会に野放しになっているのが現実だと聞いたことがある.米国で社会復帰した性犯罪者の情報を地域に流すような方向性にあるのも再犯の確率が高いからであろう.

 私はこういった幼少児の殺人に関しては死刑でいっこうにかまわないと思う.再犯性の高い犯人を生かしておく価値はないし,生物学的にも遺伝情報を抹消するほうが将来の犯罪の抑止にもなると考えるからである.人間の脳というものも遺伝によりプログラムされている部分が実はかなり多いのではないかと思うからだ.犯罪者の遺伝子を社会が淘汰させることは必要なのではないだろうか.

 最初から過激な意見を書いたと思われるかも知れないが,真に生命を尊ぶとはこういうことではないだろうか.被害者が奪われたのと等価に犯罪者の自由を奪うことは自然で公平なことだろう.死刑が野蛮だというなら無期懲役でも一切の減刑や特赦をみとめないという条件付きではいいかもしれない.だが,それでは税金で犯罪者を養っているだけになりはしないだろうか.

 もっと犯罪者が社会に貢献できる方法としては臓器移植があるだろう.死刑後に臓器を提供してもらうとかいうのがいいかもしれない.これなら少女の命が失われた代わりにだれかの命が助かることになり社会的な損失は多少なりとも償われる.医師なのに残酷と思われたかもしれない.だが,なんの罪もない女の子を故意に殺害するほど残酷なことがこの世の中にあるだろうかと思うと私にはこのような犯罪者はヒトとは思えない.獣はヒトをかみ殺したら殺処分するのがあたりまえである.

 もっともここまでしても子供を失った家族の怒りや悲しみはなくなることはないであろう.後を絶たない小学1年生女子への殺人事件を絶つにはどうすればよいのだろうか.司法,警察,教育関係者の方々には今の何倍もシビアに考えてもらいたいものだ.
『--小2女児刺した18歳逮捕 群馬県警、殺人未遂容疑で--

 群馬県警捜査1課と高崎署は7日、3月に塾帰りの小学2年の女児をナイフで刺して重傷を負わせたとして、殺人未遂と銃刀法違反の疑いで、同県高崎市のアルバイト少年(18)を逮捕した。
 調べでは、少年は3月15日午後6時すぎ、高崎市中居町の県営住宅の階段で、塾から帰宅中の女児(9つ)の腹を刃渡り約12センチのナイフで刺し、重傷を負わせた疑い。
 少年は容疑を認め「女の子に興味はあるが、同年代には声を掛けられず、誰かを刺せばそういう気持ちがすっきりするのではないかと思った」と供述しているという。
 付近では2003年7月に小学生の女児が若い男にカッターナイフで切られる事件が発生。少年は「他にも女児に抱きついたりしたことが数件ある」と供述しており、県警は関連を調べる。
 少年は車の免許を持っておらず、犯行当時、自転車で市内の職場から帰宅する途中だった。』

 こういう通り魔的な殺人(未遂)事件が最近よく起きている.それも女児を標的にしたものだ.何の関係もない人間の自由や生命を脅かす卑劣な行為にはまったく情状酌量の余地はない.私は未成年であろうとなかろうと誘拐や殺人という犯罪を犯した者にはそれなりの社会的制裁が必要であると思う.

 最近続いている小学校1年生の女児に対する殺人事件の犯人は私にはテロリストと同じに思える.社会に不安や混乱をもたらした罪はそれだけで厳罰に値すると思う.まして他人の生命を故意に奪った者は死刑でなにが悪いのか.

 とは言っても警察や司法の判断が必ずしも正しいとは限らないこともあるのだろうから冤罪で死刑になったりするのも困る.DNA鑑定が決め手になっている場合はかなり正確性が高いのだろうが使い方を誤れば間違える可能性は残る.それでも有罪の可能性が99%くらいなら死刑でもいいような気もする.

 未成年だからといって刑が軽いのも問題だ.成人を1とするなら18歳なら18/20くらいの責任能力はあるだろうし殺人で死刑なら死刑でかまわないだろう.未成年であっても刑が確定したら実名で報道すべきである.加害者の人権ばかりが議論になるが,被害者が失った権利を考えればバランスを欠いていると言わざるを得ない.

 犯罪はその性質と結果のみによって裁かれるのが合理的だと思うのだがこういう考え方は野蛮なのだろうか.
『実は、「足のしびれ」や「力がはいらない」などの症状は、脳梗塞の前触れである、かくれ脳梗塞の典型的な症状なのです。「かくれ脳梗塞」とは、脳の血管全てが塞がってしまうわけではなく、一部分だけが塞がっていて血流が少なくなっている状態、あるいは、一度血管を塞いだ血栓が、血圧などの影響により、移動した状態のことを指します。』

『・朝起きたとき、手足がシビレて感覚が鈍くなっている。
 ・めまいがして天井がぐるぐる回る。
 ・ろれつが回らなかったり、
 ・食事中に箸を落としたりする・・・・。
こんな症状が見られると、「無症候性脳梗塞」の可能性がある。
脳梗塞の初期段階で、隠れ脳梗塞の正式名称だ。』

『専門語でいうと一過性脳虚血発作(TIA)のことです。脳梗塞といえば脳の血管がつまってその血管で栄養を送られている脳細胞が壊れてしまうことによって手足の麻痺、言語障害などが起こる病気です。では、「かくれ脳梗塞」はどんな状態かというと、脳の血管全てが塞がってしまうわけではなく一部分だけが塞がっていて、血流が少なくなっている状態、あるいは、一度血管を塞いだ血栓が血圧などの影響により移動した状態のことをいいます。 』

『隠れ脳梗塞は小さな梗塞が徐々に増え本当に脳梗塞になる一歩手前の状態だ。確実な発見法は脳ドックでの検査。自覚症状が無くても、MRI検査で脳の血管に直径2〜3mmの地位SAS名梗塞が数ヶ所見つかる場合もあるという。早い段階で見つかれば薬物治療も効果を増す。塩酸チクロピジンなど抗血小板薬の服用や運動療法などを適切に組み合わせれば約85%は再発を防げ、重い脳梗塞に進行する可能性も小さい。』

 外来に来る患者さんたちがテレビでやっていたという「かくれ脳梗塞」についてGoogleで調べてみた.読んでみても脳梗塞の病態が混同されていて本当はどの病態のことをさすのか理解できなかった.こんな話をテレビで聞いていったい何をわかったつもりになっているのだろうか.

 いろいろ読んでみると「かくれ脳梗塞」というのは脳梗塞にはなっていないが将来において脳梗塞になる可能性のある状態の総称のようであると思われる.だから無症候性脳梗塞や一過性脳虚血発作や心原性塞栓症といった病態が説明の中にとりあげられているのだろう.そういう意味ではどの説明も部分的に正しいともいえるがすべて不十分であるともいえるのではないだろうか.

 患者さんたちはこれら説明のうち自分に該当するものだけを勝手に「かくれ脳梗塞」の症状だと思って外来にやってくるのであろう.かくして外来には「頭が心配で」やってくる患者さんが後を絶たない.まあ,ほとんどの人はまったく異常がないかびまん性白質病変なわけで,無症候性梗塞やラクナ梗塞の患者というものはそれほど見つかるものではない.

 これが脳ドックとしての受診なら自費なので問題ないが,「かくれ脳梗塞」のまえぶれ症状で受診されると健康保険をつかわれることになるのである.病院勤務の私としてはいずれも大事なお客様であるが,時間と医療資源の無駄使いをしているような気がしないでもない.健康な老人の不安を煽る健康番組の真意は健康保険の破綻であろうか,それとも外来を忙しくして医者を困らせることなのであろうか.

 診療報酬が引き下げられるということは診療単価が下がるということだが,こんな「かくれ脳梗塞」の患者様のお相手をして外来の薄利多売をやらなければ病院が潰れるというのなら皆保険制度などいらないと思うのは私だけだろうか.皆保険制度を維持するつもりなら「かくれ脳梗塞」のお客様は是非「脳ドック」で受診されることをおすすめしたい.

 誤解のないように書いておきますが,上の引用文の内容は不正確ですので信用なさらないように.ちなみに「無症候性脳梗塞患者では高血圧の管理が推奨される(グレードB)」ですから研修医の方々はパナルジン投与などしないように..(老婆心?)
『--「天下り幹部が問題発言」 骨髄移植財団で労組結成--

 骨髄バンクを運営する骨髄移植推進財団(東京)の職員2人が2日、記者会見し「厚生労働省からの天下り幹部が、部下の人格を否定するような発言を続けている。退職者が相次ぎ、移植あっせん業務に支障が出かねない」として、職場環境の改善を求めて労働組合を結成したと発表した。

 労組の遠藤允(えんどう・とおる)委員長は同日、正岡徹(まさおか・とおる)理事長に業務運営について労使協議の場を設置するよう申し入れた。正岡理事長は「外部調査委員会を設けて(幹部の言動を)調べる」とし、幹部は「ノーコメント」としている。

 労組側は「雇用をたてに職員を不安に陥れる行為が行われている」と指摘。労組には財団の中央事務局(39人)のほぼ半数が加入、地方の地区事務局(27人)にも呼び掛けるという。

 労組によると、幹部は厚労省を退職後、民間企業を経て昨年8月に就任した。部下に「国立大の経済、商学部(卒業)でないと駄目だ」など学歴差別とも取れる発言を繰り返したり、月給制の契約社員として採用した職員を一方的に時給待遇の臨時職員にしたりした。

 幹部就任後に、職員の約4割に当たる26人が退職。提供者(ドナー)から白血病などの患者へ骨髄移植をあっせんする部門では、経験1年未満の職員が約半数に上るという。

 同財団は1991年12月設立。10月末までに移植は約6900件行われ、ドナー登録者は約29万人に上る。』

 天下り先で自分の学歴コンプレックスのうっぷんでも晴らしたかったのであろうか.その天下り幹部の学歴がどの程度のものか興味があるが,どんなにいい大学を出ていたとしても母校の恥以外の何者でもないであろう.雇用をたてに自分より立場の弱い職員を不安に陥れるとはなんとも下品な弱いものいじめをしたものだ.

 こんなことがニュースになると骨髄バンクひいては骨髄移植へのイメージ低下につながることはまちがいない.天下りさせることにどういうメリットがあるのかわからないが,天下りをさせる企業にはどうも官庁と裏取引をしているようでいいイメージはない.公務で得たメリットを自分の再就職に利用するような人間に学歴なんか意味はないだろう.

 マスコミの医師たたきも高学歴,高収入というイメージへのコンプレックスなのかも知れないが,現在でもマスコミに比べれば高収入ではないし,将来は優秀な人間は医師にはならないだろうからいずれマスコミ並に高学歴でもなくなることだろう.今後は安全・格安な医療が求められているようだからきっとそれでいいのだろう.どこかの役人が言ってくれたが,いっそのこと医師はすべて国家公務員にしてくれたら仕事も楽になり天下りもできていいかもしれない.

 
『--HPで医師資格照会可能に 行政処分も確認、厚労省--

 厚生労働省の検討会は1日、医師、歯科医師の国家資格について、名前だけで厚労省のホームページから照会できるようにすることを決めた。2007年4月から実施される予定。

 同時に、刑事責任を問われるなどした医師が現在、行政処分を受けているかどうかも確認可能になる。ただ、個人情報保護の観点から、処分期間が満了した後は削除されるため、過去に免許取り消しや医業停止の処分を受けていても知ることができない。

 医師・歯科医師資格の照会はこれまで氏名、生年月日、登録番号の3つの情報がそろった場合だけ登録の有無を厚労省が回答していた。しかし、国民が登録番号を知ることは難しく実効性がないとの批判があった。

 さらに、厚労省は本年度から医師・歯科医師国家試験の合格者名を非公表にすることを決定。合格者名簿の代わりに、医師が〓本物〓かどうかを確認する手段が必要となっていた。

 データベースには医師約27万人、歯科医師約9万人の氏名、性別、登録年月日を全員入力。氏名表記を漢字にするか仮名にするかは決まっていないという。

 また検討会は同日、調査に強制力がある医療版の「事故調査委員会」の新設や、処分医師の再教育義務付けなどを盛り込んだ報告書案をまとめた。これを受け厚労省は、来年の通常国会に医師法改正案を提出する。』

 医師資格照会と言っているがこの真の目的は行政処分を受けているかどうかを確認させることだろう.本音を言えば過去の処分歴を知りたいところなのだろうがそれはやはりできないということなのだろう.

 こういう制度をつくるなら医師や歯科医師だけではなくて裁判官や警察官そして国会議員まですべてつくった方がいいだろう.過去かかわった事件などがわかると最高裁判事の信任投票もより意味のあるものになるだろう.ついでに国家公務員の資格や処分についても公開したほうがいいだろう.税金の無駄使いをしても責任をとる必要のない公務員には特にあったほうがいい制度ではなかろうか.まあ,それも過去の処分歴でなければ価値は少ないだろうが...

 医師に話をもどすが,氏名,性別と登録年月日がわかるとだれでも簡単に医師になりすますことができるようになるのではないだろうか.登録番号もきっと知ることができるだろうから,医師免許なんて簡単に偽造できるようになるだろう.それをネットで確認しても意味がないだろう.これでは本末転倒である.情報というものは公開したとたんに偽造できるようになるということが厚労省の役人にはわからないのだろう.

 悪用されてから「性善説で運用される前提でしたので,まさかこんなことになるとは..」などと言うのじゃ国交省と同じである.国家公務員には責任感も危機感もないということか.せめて自分の氏名が結婚詐欺師や医師とのお見合いクラブなどで悪用されないように祈るとしよう.
『--指導医の60%「時間ない」 新臨床研修制度めぐり調査--

 全国の病院で「医者の卵」を指導する医師の約60%は、昨年4月に始まった臨床研修制度について「指導時間が不十分」と感じていることが1日、全日本医学生自治会連合(医学連)の調査で分かった。

 厚生労働省は、指導医が研修医に対する指導時間を十分確保するよう通知で受け入れ側の病院に求めている。

 医学連は「指導医は忙しい中で患者の診療と研修医の指導を両立させている。このままではいずれも不十分になりかねない」として同日、厚労省に指導医の環境改善を要望した。

 調査は今年7-11月、研修医を受け入れている971病院を対象に実施。202病院の925人の指導医から回答を得た。

 指導時間が「不十分」と感じているのは550人(59・5%)で、「十分」と感じている253人(27・4%)を大幅に上回った。

 指導に対する給与の手当も「全くない」が528人(57・1%)。「不十分」の236人(25・5%)と合わせると80%以上に上り、「十分」は91人(9・8%)にとどまった。』

 医学連のアンケート結果を見ると研修医は将来の進路と一人前の医師になれるかどうかに不安があり,指導医の確保と業務保障が研修の改善のために必要とされると感じているようだ.

 指導医からの結果を見るとこれはひどいもので経済的にも業務保障も指導の時間もないとまさに現場の指導医の精神力に頼るのみの研修であることがわかる.研修医の立場は考慮しても指導医に対する配慮がなければまともな研修内容になるわけがない.

 私は新臨床研修制度の真の目的は大学中心の医局制度の崩壊にあると思っていたし,事実そうなっているのだから効果は絶大であった.大学の研修医がいなくなり派遣先の地方病院からの引き上げというおまけも付いて地方の医療の崩壊は現在も進行中である.さらに名義貸しによる病院の取り潰し,医療事故のマスコミによる過大な報道という流れの中ですでに現場は守りの体制である.

 こんな状況で指導に十分な時間がかけられなければ危険なことは研修医にやらせるわけにはいかない.つまり研修医にとって腕をみがくチャンスはないだろう.指導医も一生懸命教えても自分のところの労働力になるでもなく,自分の給与になるでもなく,おまけに自分の仕事は研修医が帰ってからやらねばならないでは本音はもう辞めたいというところだろう.

 ようするに制度があって自分のところの病院が研修医を募集するからやっているだけなのだ.研修医に自分の病院に残ってもらうためにやるとしたらあまりに効率が悪すぎるだろう.結局は給料もらって有名病院で学生時代のポリクリの補習をやっているようなものなのではないだろうか.今後は医局の人事の影響力もなくなり医師も能力主義になると思われる.今の研修医は研修が終わって半人前で就職しても今度は研修医以下の待遇で働くことになるかもしれないという危機感を持ったりはしないのだろうか.
私が美しいと感じた紅葉
今週もあまり楽しい話題がなくて...
週末ですので写真で眼と心を癒していただければ幸いです.
『--愛の分子を確認--

 胸が高鳴り、そわそわして心から幸せ。ちょっと愚かしいくらい-。イタリア・パビア大の研究者らによると、こんな恋心は、神経成長因子と呼ばれる分子が引き起こすのだという。

 熱烈な恋に最近落ちた58人の血液を調べたところ、恋人のいない人や長年付き合い続けた人たちよりも、圧倒的高レベルの因子が確認された。

 ただ、この58人も1年後には因子がめっきり減少。どうしたらレベルが上がるのかは、解明できていないという。』

 恋心が芽生えると神経成長因子が出るのか,神経成長因子が出るから恋心が芽生えるのか.まあ,面白い話だ.
 
 1年後にめっきり減ったり,長年付き合い続けるとレベルが下がるのもなんとなくわかる.

 どうしたらレベルが上がるかって?そりゃあなた,新しい恋を見つけることでしょう.

 ああ,なんてオジさんなオチだろう...
 その昔,こんなフレーズで始まるCMがありました.新1年生が楽しそうにTVの中でふざけ合っていました.

 来春1年生になる子供たちもきっと楽しみにしていることでしょう.子供たちの笑顔はいつも輝いているように私には見えます.私は子供の泣き顔が我慢できなくて小児科医はあきらめました.

 でも,そんな子供たちがダンボールの中に詰められて空き地に捨てられていたり,たくさん刺されて山中に捨てられていたりするなんて犯人に対する怒りでいっぱいです.どうしてこんな世の中になってしまったのでしょうか.

 どうやったら犯罪者から子供を守れるのでしょうか.もっと周囲の大人が注意してやればいいのでしょうか.病気の子供を治すのは小児科医の仕事だろうけど,私も日常生活で普通の大人としてやるべきことがあるような気がします.いい考えは浮かんでこないけれど,とにかく明日からは自分の周りの子供たちにもっと注意して歩くようにしてみようと思う.医者じゃなくても弱者を助けるのは誰にでもできることですよね.
 
『--医療ミス事件の判決要旨--

 東京女子医大医療ミス事件で東京地裁が30日、元同病院医師佐藤一樹被告に言い渡した無罪判決の要旨は次の通り。

 【死因】

 被告は、女児=当時(12)=の心臓手術で、体外循環を行う人工心肺装置の操作を担当した。手術中に女児の体から装置に血が行かなくなったのは、装置の圧力を低く保つことができなかったためで、その直接的かつ決定的な原因は、装置内外の温度差で発生した水滴がガスフィルターに吸着して目詰まりし、吸引力が伝わらなくなったためと考えるのが合理的だ。

 【予見可能性】

 被告の過失責任を問うには、人工心肺の長時間使用でフィルターが目詰まりし、血液が循環不能の状態になる一連の仕組みを予見できることが必要。医師が順守すべき注意義務は、その医師を取り巻く診療条件などを前提に、当時の臨床医療の一般水準に従って判断すべきだ。

 被告はフィルターが取り付けられていることや、手術中に結露が生じることは知っていたが、目詰まりの危険性と結び付けて考えたことはなかった。同僚のほかの医療関係者にも、この事態を想定した者はなかった。そのほかの医師の証言や文献を検討しても、当時の臨床医療の一般水準という観点から見て、被告が手術の際に目詰まりの危険性まで予見できたとは認めがたい。

 客観的には装置にフィルターを取り付ける必要性は乏しく、むしろ危険でさえある。このような人工心肺の構造には瑕疵(かし)があると言うほかない。しかしこの装置は特定機能病院の承認を受けた東京女子医大で、経験を積んだ医師らによって開発され、それなりに有効な体外循環装置として長年事故もなく使用されてきた。

 開発に携わったわけでもない被告が、もともと危険な構造であることに気付かなかったとしても、責めるのは酷な面がある。その他、事故時の被告の行動や諸状況を検討しても、循環不良の発生を予見できたことを認定することは困難だ。

 【結論】

 証拠を総合しても、被告に予見可能性を認め難い以上、事故を回避するために何らかの措置を講じることができたとも認められない。過失責任を問うことはできない。』

 合理的な判断でこのように判決の要旨をわかりやすく報道することは今後も必要だと思う.

『父の歯科医利明(としあき)さん(55)は「運転手が事故を起こしても、車の構造を知らないなら無罪になるようなもの。医師は事故が起きた時の対応力が問われているのに...」と不満を口にした。

 母むつ美さん(45)も「人工心肺は勝手に動いているわけではない。なぜ動かしていた医師の責任が問えないのか納得できない」と怒りをあらわにした。


 ご両親の不満は一部の引用であろうが,車の構造的欠陥で事故が起きた場合は運転手も当然被害者であろうし,人工心肺に限らず医療機器というものはたとえ原理を知っていても医師がとっさの故障に対応できることはむしろ稀なことであるのが現実である.

 大事な娘を事故で失ったのは大変お気の毒であるが,医療の進歩とは過去もそういった犠牲の上に成り立ってきていることも部分的には真実であるのだから医学発達の恩恵を受ける以上は患者側もリスクを受け入れるのでなければ医療は成り立たないだろう.医師側に明らかな過失がないと判断されたこのケースはそう言う意味で医療行為における医師の安全責任のひとつの限界を示したもので非常に意義があるものだと私は思うのだがどうだろうか.
『--「こんな図面通ったら大変」偽装通報者、1年半前に指摘--

 耐震強度偽装問題で、姉歯秀次建築士の構造計算書偽造を見抜き、検査機関・日本ERIとイーホームズに通報した東京都渋谷区の設計事務所代表(44)が朝日新聞の取材に応じた。姉歯建築士の図面は「はりや柱が細く、鉄筋の本数も少なかった。どれも常識では考えられない水準だった」という。代表は驚き、検査機関に伝えたが、不正が明るみに出るまで、それから1年半かかった。

 国土交通省が当初発表した21棟の偽装物件のうち、少なくとも10棟は代表が検査機関に連絡した後の1年半の間に建築確認が下りていた。

 04年1月、神奈川県の設計会社の依頼で姉歯建築士が構造計算した東京都港区の10階建てビルの図面を調べ、異常にすぐ気付いた。

 代表は構造計算の経験が約20年間あり、建設コストを抑える経済設計に詳しい。姉歯建築士の図面は直径32ミリの鉄筋を17本入れるべき1階の最下部のはりに、直径25ミリの鉄筋が5本しか入っていなかった。構造計算書は地震時にかかる力を本来の基準の4分の1まで落として計算していた。

 それなのに日本ERIの審査担当者は04年1月に建築確認していた。

 設計会社社長は姉歯建築士に連絡した。姉歯建築士は「外注した。チェックミスだった」と説明し、「(契約から)おりる」と伝えてきた。

 代表は構造計算をやり直した。同年4月に日本ERIの担当者に会い、図面を見せて問題点を説明した。「こんな図面が建築確認を通っていたら大変だ。ほかにも例がないか確かめてはどうか」と言い添えた。

 ところが、1年半たった今年10月半ば、代表は再び姉歯建築士の図面を目にした。都内でヒューザーが建てるマンションの工事を請け負った建設会社から「必要な資材の量が少なすぎる」と再点検を頼まれた。

 柱やはりが極端に細く、鉄筋も少ない。「こんないい加減な仕事をするのは、1人しか知らない」。やはり姉歯建築士が構造計算を受注し、イーホームズが建築確認していた。この建設会社が姉歯建築士の設計で建てたマンションが都内に1棟できていた。

 代表はすぐイーホームズに足を運び、担当者2人に訴えた。「何も知らずに安心して住んでいる人がいる。すぐ対応しなきゃだめだ」

 最初は指摘の意味がわからない様子だった担当者たちも、やがてことの重大性に気づいた。

 約1カ月後の11月17日夕、イーホームズから報告を受けた国土交通省が偽造を発表した。

 イーホームズは11月29日の衆院国土交通委員会で、日本ERIが姉歯建築士の偽造を知りながら「隠蔽(いんぺい)した」と指摘した。同日、日本ERIは記者会見し、反省点はあるが隠蔽した事実はないと反論した。』

 その道20年のプロの眼というのはそういう物だろう.一級建築士であれば一目見ただけでわかるほど姉歯建築士の図面はひどいものだったのだろう.日本ERI側が検査用プログラムが改ざんされていたとか複数の書類を合わせて偽装したなどと言っても私には責任逃れのようにしか聞こえない.

 「(図面は)はりや柱が細く、鉄筋の本数も少なかった。どれも常識では考えられない水準だった」と指摘しているのは極めて重要だろうし,そういう経験豊富な人の意見を聞かなかった日本ERIの姿勢には当然相応の責任が生ずると思われる.国土交通省が当初発表した21棟の偽装物件のうち、代表が検査機関に連絡した後の1年半の間に建築確認が下りていた少なくとも10棟については責任を逃れることはできないだろう.

 先日,元東京女子医大病院の佐藤医師に無罪の判決が出た.判決のポイントはそもそも欠陥のある装置であり,当時の医療レベルではその装置で死亡事故が起きることを予見することは不可能だったということだった.

 医療機器にしても検査プログラムにしても欠陥や脆弱性は決してゼロではない.高度な機械やプログラムほど問題点が見つけにくくなるのがむしろ当たり前である.そういう当たり前のことを認識して自分の眼で異常を見つけられるのが本当のプロだと思うのだがどうだろうか.

『--麻酔科医の労働条件、過酷 是正求め、労基署に申告--

 麻酔科医の労働条件が手術の安全性を損なうほど過酷な状態にあり、労働基準法違反だとして、大阪府池田市の市立池田病院の麻酔科主任部長(50)が29日、淀川労働基準監督署に是正措置を求めて申告した。

 申告書によると、麻酔科の医師は昨年12月から1人欠員の3人で、非常勤の医師が毎週3、4人勤務。連日1-5時間の残業を強いられ、3日に1度は時間外の呼び出しに応じられるよう待機態勢を取らなければならないため緊張状態が解けないなどとし、「過重労働で患者の安全に直結する問題」と訴えている。

 病院側は、今年になって午後8時以降に麻酔科医を呼び出したのは5回だけで過重な負担ではないと反論。全国的に麻酔科医が不足しており、欠員の補充は難しいという。

 黒川正典(くろかわ・まさのり)病院長は「医師の労働条件の緩和と待遇改善について検討している」とコメントした。』

 医師の労働時間は基本的には病院の診療時間と同じで9時から17時で昼休み1時間を除いた7時間で1日分と計算されるそうである.ただし,病院の診療時間がそれより長いとそれで1日分で7時間以上でも同じ1日分の計算になるそうだ.これが診療報酬の請求のときに問題となる医師数の計算法の元になっている.当直をした場合はまた別の計算式で加算される.

 つまり当直の場合を除くと1日診療時間時間以上働いてもそれらは一切計算には入らない.つまり病院側からみると診療報酬上のメリットはなにもないわけである.医師に時間外手当てがない理由はおそらくこんなところではないだろうか.まあ,特殊勤務手当てとか勤勉手当とかいうものはあるがこれは働く時間に関係なく一定で公的病院では上司も部下もあまり関係がないようだ.

 ところで医師の時間外勤務には当直の他に待機というものがありこれは緊急時には病院に行く義務がある.そうなると家に帰ってもいつ電話が来るかと思えばストレスがたまる.実際の呼び出しが多ければ当直とあまり変わらないし,少なくとも酒を飲んで酔っ払っているわけにはいかないし遠出することもできないが,待機していることに対する報酬と言うものはない.

 「連日1-5時間の残業を強いられ、3日に1度は時間外の呼び出しに応じられるよう待機態勢を取らなければならないため緊張状態が解けない」とあるが常勤の3人で対応しているから3日に1度なのであろう.これがどの程度大変かは医師でなければわからないだろうし,医師の感覚や体力あるいは精神力の個人差も関係してくるだろう.

 ちなみに脳外科医の場合は公的病院では2−3人で待機し,月に1−2回程度病院当直があり,待機の時は平均1回は病院の救急室に呼び出されるのが普通という感覚だった.自分が待機でなくとも緊急手術になれば全員病院へ行くのがあたりまえの世界なので真面目にやると夜遊びなどもできるわけがない.術者であれば常時体調を整えていつでも手術できなければならないわけだ.

 たぶん昔からの考え方ではこれで良かったし,脳外科医も今まではそうだと思っていたのだが,考えてみるとこれって働きすぎなのではないだろうか.特に外科の手術に夜中に付き合わされる麻酔科にしてみれば文句のひとつも言いたくなるのは理解できる.場合によっては朝まで麻酔をかけなければならないんだから.私は麻酔科にはいつもお世話になっているので麻酔科の味方である.

 ところで労働基準監督署は同じ厚労省の管轄のはずであるが,医師の労働状態をちゃんと監督する気はあるのだろうか.医療の安全確保は現在重大な問題であると思うが厚労省はこういった医師数に出てこない勤務実態をちゃんと把握しているだろうか.いや,おそらく診療報酬には関係ないから気にしていないだろう.それに医療事故が起きても訴えられるのは医師と病院だけで過労やストレスは理由にならないからであろう.

 結局はニュースのように自分から訴えないと誰も真剣には考えてくれないのである.多くの脳外科医もただ一生懸命働くだけでこの問題には立ち向かう気力もない.中には時間外まで働くのが当たり前だと自分で自分を納得させているような哀れな人もいる.だが,若い脳外科医は当直と待機だけで厭になりクリニック開業するものがあとを絶たないのである.

 最近,「健康保険に税金を使っているのだから医師はみんな公務員だ」などと言った役人がいた.「医師の給料は高すぎる」とプロパガンダしたマスコミもいた.だが,ほとんどの勤務医がこんな労働条件で頑張っていることを知っているのだろうか.麻酔科の先生には頑張ってもらって労働条件の改善のために一石を投じてほしいものだ.


『--長期入院患者の負担軽減 「180日ルール」廃止--

 厚生労働省は25日、医療保険適用型療養病床の長期入院患者に対し、入院日数が180日を超えると自己負担が増える「180日ルール」を来年4月の診療報酬改定で廃止する方針を中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。

 同時に、同療養病床の患者を処置の内容や疾患、状態に応じて分類。医療の必要度が低い患者への診療報酬を減額し、介護保険適用施設などに移るよう促す報酬体系にする。

 180日ルールは退院できるのに入院し続ける「社会的入院」解消のため、罰則的に導入された制度。同じ病気での入院日数が通算180日を超えると、入院料の15%が保険給付の対象外となる。

 しかし、現実には行き先がないため、負担増のまま入院し続ける患者が多く、制度廃止を求める声が出ていた。』

 これで長期に安心して入院ができるようになったということにはならないだろう.むしろ医療の必要度が低い患者への診療報酬を減額することにより長期療養患者は介護保険施設への移動を余儀なくされることだろう.

 どういうことかを説明すると長い話になってしまうが,ことの始まりは介護保険制度の導入であろう。社会的入院と呼ばれる特に治療を要しないのに入院している患者を病院から引き離し家庭や施設に移すという制度である.私は当時在宅医療にも従事していたが,制度導入以前に介護保険事業による医療サービスの低下を懸念していた.

 果たして介護保険制度によって提供される医療サービスは社会的入院の場合より向上しただろうか?そして,同じサービスを提供するためにかかるコストは低下したであろうか?私はどう見てもコストパフォーマンスは低下していると思う.

 入院療養を介護療養に切り替えることは病院から介護業者へのサービス主体の転換であり,国の健康保険から自治体の介護保険への支払いの主体転換でもあった.その結果としてはおそらく医療費の低下よりも介護保険料と自費の増加のほうがはるかに多いだろう.これでは自治体と住民が自前で公共事業をやるようなものだ.

 今回の180日ルールの改正も入院条件の緩和では決してなく,同時に同療養病床の患者の分類を細分化することにより社会的入院では病院側に採算が取れなくすることにより介護保険適用施設などに移るよう促すということである.もとより経営状態の厳しい病院であれば社会的入院を長引かせれば診療単価の低下を招くわけであるから急性期の28日を過ぎれば180日どころか1日でも早くベッドを空けるように患者に求めることは容易に想像できる.

 今後は療養型病床であればより介護度の高い寝たきりや神経難病の患者さんにシフトすることになるだろう.介護型病床にするなら改築の補助金まで出してもらえるようだが現在の介護保険施設を見ても採算性には疑問がありいずれの選択をとるか難しいだろう.来年4月の診療報酬改定次第ではあるが療養型病床の縮小が今後は進むと予想されるのだがどうなるだろうか.

 180日ルールの廃止は負担軽減のためなどではなく医療費削減のための必要性が薄れただけということなのであろう.慢性期療養の患者さんにとっては食費の自己負担も含め医療サービスのさらなる低下は避けられないであろう.

『--アミロイド生成を妨害 アルツハイマー治療薬も--

 アルツハイマー病発症の原因物質アミロイドの生成にかかわる酵素に結合、アミロイドができるのを妨げる化合物を合成することに京都薬科大の木曽良明(きそ・よしあき)教授(薬品化学)と木村徹(きむら・とおる)助手、東京大、理化学研究所が27日までに成功した。

従来症状を軽くする薬はあったが、この化合物は治療薬開発に役立つのではないかという。

 木曽教授らは、βセクレターゼという酵素の遺伝子が欠損したマウスでは、アミロイドがほとんどできない点に着目。

 この酵素が機能する中心部分に結合し働かなくする化合物として、アミノ酸8個の化合物を設計し合成。さらに脳細胞に入りやすいようアミノ酸を5個にしてコンパクト化した。

 家族性アルツハイマー病遺伝子を発現させたマウスと普通のマウスで、脳の記憶に関係する海馬という部分にこの化合物を注射すると、いずれも3時間後には生成されるアミロイドが約4割減少し、副作用もなかったという。

 木曽教授は「発症を遅らせることができそうで、経口投与で効果があるよう研究を進めたい」と話した。

 研究結果は大阪市で開かれる日本薬学会で28日、発表する。』

 外来に痴呆を心配して受診する患者と家族がここ2週間くらいに3組も来た.話を聞いているうちに「痴呆症は大丈夫だろうか.新聞によく効く薬があると書いてあった.」と一様に言うのである.いままでもテレビの健康番組で脳梗塞の予兆はコレというような話をやると翌日の外来にそれを心配する患者が増えたりすることはあった.

 痴呆症も話を聞いて,MRI検査とHDS-Rをやって異常なしでもいいのだけれど,心配なのは痴呆を治す薬があると思っているらしいことである.どうも新聞には痴呆が治ると言うように書いてあったらしい.現在のところ痴呆を改善する薬は知られていない.

 このニュースも「発症を遅らせることができそう」ということで治すとか改善するというのではないだろう.そこに「治療薬開発に役立つのではないか」と書かれているのは希望的予想であってこれが本当に治療薬になるかどうかはまだわからないのである.

 一般の人が読むマスコミの医療ニュースには医師が読むと意味がわからないことが書かれていることがよくある.特に問題なのはこういった薬効や副作用に関する過大もしくは間違った解説や医療事故などでの事実の不正確な記述である.これも一種の医師たたきなのかもしれないが,いいかげんな記事で医師の仕事を増やすのはやめて欲しい.

 例によってマスコミはたとえ間違って報道してもめったなことでは訂正したり謝罪はしないだろうし世間を騒がせた責任もとらないのだろうから,せめて医療情報を記事にするときにもっとよく考えて正確な事実を科学的な解説のもとに記載して欲しいものだと思う.


養鶏場の檻の監査は誰がする?
 白状すると私はほとんど読書というものをしない.医学生になって以来教科書と医学書と雑誌以外はほとんど読まなくなった.最近読んだ本はと言えば養老孟司先生の『こまった人』である.このなかに「養鶏場に似るヒト社会」というタイトルの文章がある.鳥インフルエンザと経済効率優先の現代社会を養鶏場に例えて解説している.(興味があればちょっと立ち読みしてみてください.)

 今回のマンションの耐震構造計算書の偽造事件は例えると我々の知らないところで粗悪な檻がつくられていたということになるのだろうか.こういうことがあるとまた国交省は建築士の免許更新制度だの監査の強化だのと言うのだろうが,これこそまさに税金の無駄遣いであろう.官庁に任せるよりも損害保険会社に監査をさせて問題が起こったら監査した保険会社が補償金や保険金を払うようにしたほうが間違いが少ないだろう。

 無駄と言えば厚労省がもっとも無駄な仕事が多い省庁ではないかと思う.今回予算の削減目標がもっとも大きかったのが厚労省であることがそれを示している.経済効率という点で見ると年金、健康保険のいずれもたくさんの税金を投入してこの有様なのだからこんな仕事のできない省庁は一度リストラすべきだろう.国交省にしても道路公団の件やJRの相次ぐ事故そして今回の構造計算書の偽造事件を見ればとても仕事ができる省庁とは思えないだろう.

 結局,国家公務員であることにあぐらをかいて面倒なことは手を抜くか地方自治体にまる投げするしか能がないのではないだろうか.省庁の経費を節約して国債の発行を無くしても国民にはまだたくさんの借金が残っているのである.たいした仕事もしないくせに業務を煩雑にし自分たちの天下り先に仕事を流すだけの省庁はもういらないと思うのは私だけだろうか.

 そう言えばバブル後の銀行の時には国民のお金をずいぶん投入したようだけど,考えようによっては財務省の偉いヒトの天下り先は銀行などの金融機関だからやってることは同じだろう.結局はバカをみるのは一般国民なんだけど,この場合「こまった人」というのは国民なのか?それとも官僚なのか?いつまでもお上がなんとかしてくれると思っているようなお役所頼みの国民にも問題があるのではないだろうか.
『--NCP Cardiovascular Medicine 2005年10月号 Vol.2 No.10

ビタミンEは心血管イベントと癌を予防できるか --

原論文
The HOPE and HOPE-TOO trial investigators (2005) Effects of long-term vitamin E supplementation on cardiovascular events and cancer. JAMA 293: 1338-1347

PRACTICE POINT(診断のポイント)
確立した冠動脈疾患、末梢血管疾患、脳卒中の既往、または糖尿病を有する患者に対し、ビタミンEを投与すべきではない。

BACKGROUND(背景)
心血管イベントおよび癌の予防と、ビタミンEとの関連は、実験動物や疫学的データで示されているにもかかわらず、臨床試験では現在までのところ明らかにされていない。エビデンスが不足しているのは、試験期間の相対的な短さに原因があるかもしれない。

OBJECTIVE(目的)
心血管イベント、癌、および癌関連死亡と、長期間のビタミンE摂取との関連を調査すること。

DESIGN & INTERVENTION(デザインと介入)
国際二重盲検試験Heart Outcomes Prevention Evaluation(HOPE)試験の対象は、脳卒中の病歴、冠血管疾患か末梢血管疾患の既往、または1つ以上の心血管危険因子を伴う糖尿病を有する55歳以上の患者であった。除外基準は、過去4週間の心不全、管理されていない高血圧、心筋梗塞、脳卒中、および過去または現在継続中のビタミンE摂取あるいはアンギオテンシン変換酵素阻害薬使用であった。適格患者をビタミンE 400IU毎日投与群またはプラセボ群のいずれかに、またramipril10mg投与群またはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付けた。実施施設が継続参加を決定した場合、試験期間を延長し、同意の得られた患者に対して2003年5月まで、ビタミンE 400IUまたはプラセボの毎日投与を継続した。これがHOPE-The Ongoing Outcomes(HOPE-TOO)試験である。解析はすべてintention to treatによって行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)
一次評価項目は、癌、癌関連死亡、および脳卒中・心筋梗塞・心血管関連死亡の複合とした。心血管疾患の副次的評価項目は、心不全、入院を要する不安定狭心症、うっ血の臨床症状を伴う入院を要する心不全、および全死因死亡などとした。

RESULTS(結果)
最初のHOPE試験の参加患者は9,541例であったが、このうち4,761例をビタミンE群に、4,780例をプラセボ群に割り付けた。このうち7,030例がHOPE-TOO延長試験の参加に同意し、3,520例にビタミンE投与を、3,510例にプラセボ投与を継続した。最初のHOPE試験と延長試験において、癌と癌関連死亡の発生率は両投与群間で有意差はなかった。主要心血管イベントの発生数はビタミンE摂取の影響を受けず、HOPEではビタミンE群の1,022件に対してプラセボ群985件(P=0.34)、HOPE-TOOではビタミンE群の807件に対してプラセボ群769件であった(P=0.31)。さらに脳卒中、心筋梗塞、心血管関連死亡、入院を要する不安定狭心症、血行再建術、および全死因死亡の個別の発生率に関して有意差はなかった。しかしHOPEとHOPE-TOOの双方において、心不全と心不全による入院の発生率は、ビタミンE投与患者のほうがプラセボ投与患者より高かった(心不全の相対リスクは、HOPEでは1.13、95%CI 1.01〜1.26、P=0.03、HOPE-TOOでは1.19、95%CI 1.05〜1.35、P=0.007)。

CONCLUSION(結論)
血管疾患患者と糖尿病患者にビタミンEを長期投与しても、主要な心血管イベント、癌、および癌関連死亡の発生率は低下しなかった。とくにビタミンEは心不全と心不全による入院の発生数を増加させ、さらなる調査の必要性が浮き彫りになった。

COMMENTARY(解説)
Julian D Widder and David G Harrison*
基礎研究によると、酸化的傷害はアテローム性動脈硬化症をもたらすあらゆるイベントを助長し、また高血圧症、心筋梗塞、心不全の一因にもなっている1。培養細胞や実験動物を用いたこれまでの試験から、抗酸化ビタミンはヒトにおける心血管疾患を減少させるという仮定は妥当であると考えられていた。残念ながら、最初のHOPE試験、Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Infarto Miocardico(GISSI)Prevenzione試験、また近ごろのHeart Protection Studyなどの最近行われたいくつかの臨床試験では、共通して用いられた抗酸化物質の効果を示すことはできなかった。そして今度は、HOPE-TOO試験の驚くべき予想外の結果が明らかになった。すなわち、ビタミンEは、実は心不全の発生数を増加させたのである。ビタミンEが有害である可能性が示唆されたのはこれが最初ではない。19の臨床試験について最近行われたメタアナリシスによると、ビタミンEの1日量が少ない場合は(400IU未満)効果は不明であったが、1日量が多ければ(400IU超)死亡率が上昇した。

臨床試験において、ビタミンEが心血管疾患の予防に効果がない理由は容易に想像できる。たとえば、ビタミンEは病原性を有するラジカルを捕捉しない、酸化ストレスは疾患に関与しない、ビタミンEの投与量が間違っていた、などが考えられる。しかし、なぜビタミンEによって患者の転帰は悪化するのであろうか。これについては推測する以外にないが、ビタミンEの化学的特性の一部を考慮することが役立つであろう。ラジカルとビタミンEの反応によりビタミンEラジカル(tocopheroxyl radical)が形成されるが、これは酸化促進効果をもちうる3。ビタミンEラジカルはビタミンCのような共抗酸化物質(coantioxidant)によってトコフェロールにリサイクルされる。しかし、この過程の有効性はin vivo下ではまだ証明されておらず、ラジカルの産生が抑制されない場合は、せいぜい内在性のビタミンCや他の抗酸化物質が消費されるだけであろう。さらに、一部の活性酸素種は有益なシグナル特性をもっており、ビタミンEがこれらを取り除くことで体に害がもたらされる可能性がある。

合成型ビタミンEと天然型ビタミンEの利益の比較に関して論争がある。この論争の中心には、天然型ビタミンEは有益であるのに対し、合成型ビタミンEは有害かもしれないという前提がある。HOPE-TOO試験では天然源由来のビタミンEが用いられたが、それでもなお有害作用がみられた。これは天然型でさえ有益ではないことを示唆する。これに関連して、αトコフェロールの問題もある。αトコフェロールは臨床試験でしばしば用いられ、天然由来のビタミンEの主流を成しているが、これを投与すると組織からγトコフェロールが排除される。γトコフェロールは、酸化的傷害において重要な役割を演じるペルオキシ亜硝酸イオンの捕捉にとくに有効であるため、γトコフェロールの排除は問題である。

驚くべきHOPE-TOOの結果に対してどのような解釈をしようとも、重要な結論は変わらない。すなわち、ビタミンEは、確立した冠動脈疾患、末梢血管疾患、脳卒中の既往、または糖尿病を有する患者への適応はなく、これらの患者に投与すべきではない。総合ビタミン剤にわずかに含まれる場合(おそらく1日50IU未満)を除き、これらの患者にはビタミンEを摂取するのをやめさせるべきである。一般集団におけるビタミンEの利用については、その有効性はまだ証明されておらず、慎重な研究が必要である。 Copyright Nature Publishing Group 2005. All Rights Reserved. 』

ビタミンEについては2004年11月12日の日記に書いた.当時の日記を参照されたい.

脳外科医としては冠動脈疾患、末梢血管疾患、脳卒中の既往、または糖尿病を有する患者へのビタミンE投与はもう中止するべきだと思う.
また,国内での健康食品やサプリメントについても注意や規制が必要なのではないだろうか.厚生労働省はこの件にどういう対応をするのか注意してみる必要もあるだろう.

当直明け

2005年11月26日 私の写真集
当直明け
冬の寒い朝なのだろうが当直室ではわからない.
コーヒーでも飲んで寝ぼけ頭を覚ますとしよう.
女児殺害や連れ去り未遂などまた厭なニュース.
当直室の変な夢から厳しい現実へ引き戻される.

『--国交省、開発3社を聴取 居住者への補償など 耐震偽装--

 首都圏のマンションなどの耐震性偽装問題で、国土交通省は25日、マンションの開発会社シノケン(福岡市)の常務から、居住者への補償などについて事情聴取をした。ヒューザー(東京都千代田区)とサン中央ホーム(千葉県船橋市)の両社長からも同日中に事情を聴く。また、構造計算書を偽造していた姉歯秀次1級建築士(48)が、国交省などに対し、施工会社幹部が、開発会社の意向を根拠に無理な設計を求めたと説明していたこともわかった。

 この日午前の記者会見で北側国交相は、「建築主、売り主は瑕疵(かし)担保責任を居住者に負っている。本日中にも3社の代表者を呼び、ヒアリングしたい」と述べた。

 3社は書類が偽造されたうち複数のマンションを手がけており、住宅品質確保促進法に基づく欠陥住宅の売り主の顧客に対する賠償責任について、契約解除や建て替え、転居費用負担などの対応方法を尋ねる。

 一方、姉歯建築士は「最も厳しいコスト削減を求めてきたのは施工会社の支店長で、『開発会社(建築主)の意向だ』と言われた」と、圧力がかかった構図を会社名を挙げて国土交通省などに詳細に説明していた。

 姉歯建築士には、これまで千葉県が4回、国交省が24日の聴聞会で、それぞれ事情を聴いている。建築士は、国交省の聴聞会で鉄筋の量を減らすよう大口受注先から圧力がかかったなどと説明、関係者によると、木村建設(熊本県八代市)、ヒューザーなどの3社の名前を挙げた。

 建築士はこれまでの調べに、「施工会社の支店長から『開発会社から建築費を坪単価40万円以下にするように言われたので、鉄筋の量を減らしてくれ』と言われた」と説明していることも新たに分かった。

 開発会社は、建築士への「圧力」について直接の指示を否定。施工会社も、鉄筋の量を減らすように指示したとの疑いを否定している。

 専門家によると、鉄筋コンクリートのマンションで坪単価40万円以下の建築費は「不可能ではないが相当に安い。知恵を絞るか、無理をしないとできない」という。』

「施工会社の支店長から『開発会社から建築費を坪単価40万円以下にするように言われたので、鉄筋の量を減らしてくれ』と言われた」というのが事実であるとすれば,背後にもっと悪いヤツがいるということであろう.が,ことは人命にかかわることだけにそれを引き受けてしまった姉歯建築士にはプロとしての誇りはなかったのだろうか.

 もっとも現在の建設業界には不景気の波を乗り切るにはこれくらい危険スレスレでやらなければならない危機感でもあるのだろうか.素人の私から見ると建築物の手抜き工事などは形として長い期間残るものだからバレるリスクが高いと思うのだがどうなのだろうか.いずれバレると思ったら枕を高くして眠れないだろうからあまり割に合う行為ではないだろう.

 医療の分野でも架空診療は論外として過剰な検査や過剰な治療というものは存在するだろう.一番多いのは満床策である.外来でできる検査なのにとにかく入院させるとか,とりあえず検査のために入院というのがよくあるパターンである.脳神経外科の病院でも昔は脳血管造影検査というものを1泊入院でよくやっていた.

 先日,脳梗塞の患者にこの検査をやって症状を悪化させ訴えられていたが,昔は症状のまったくない患者を入院させてこの検査をやっていたのだから今から考えると恐い話である.最近はMRAがあるのでこのような危険な検査は私はほとんどやらなくなった.でも,聞くところによると病院の収益のためや血管内治療の専門医の資格のために積極的にこの検査をやる病院もあるようである.

 手術の適応というものもある.最近では脳卒中治療に関してもガイドラインがあるのであまり無茶なことをする脳外科医は減ったと思う.しかし,このガイドラインにも担当医の裁量範囲内で選択されるものがあるのだが,これをいつも手術適応ありとする脳外科医もまだいるようだ.これも病院の収益のためであったり,研修医の技術向上のためであったりするのだろう.

 私の研修医時代には検査や治療については上司がやれといったらやらなくてはならないものだった.それに意見を言っても無視されるか他の医師に手術をさせるだけというのが一般的だった.これからの時代は医師は事故を避けたいから無理はしないだろうが,病院の経営者側は病院の収益という圧力を今後も医師にかけ続けるだろう.診療報酬を減らすとその圧力はさらに高まることが予想される.医療事故を起した医師がその検査や手術を病院側の圧力でやったと弁明するようなことが起きなければいいのだが...

 
『--5000億円規模の削減を 社会保障費の自然増圧縮 財務省、医療費抑制迫る--

 財務省は24日、来年度予算で社会保障関係費の8000億円の自然増を5000億円規模で圧縮する方針を明らかにした。8月の概算要求基準(シーリング)では、自然増の圧縮幅を2200億円とすることで閣議了解していたが、削減幅を大幅に拡大する。

 谷垣禎一財務相は同日、政府・与党医療改革協議会で「医療制度改革と診療報酬の引き下げで、医療費の相当大胆な切り込みが必要だ」と述べ、医療費の厳しい抑制が必要との考えを表明した。

 さらに財務相は「首相から指示のあったように新規国債発行を30兆円に近づけるためには、歳入だけでなく、歳出も削減し、社会保障や地方交付税の相当な切り込みが必要」と説明した。

 財務相は協議会で、70歳以上の高齢者の自己負担の引き上げや、外来診療1回ごとにかかった医療費のうち500円を自己負担とする保険免責制の導入などの実現を強く求めた。』

 医師というものは「命より大切なものはない」という言葉を半分信用していないが,残り半分を守るために働いているようなものではないだろうか.どの程度に生命を大切と考えるかは医師の個人差があるであろうが,臨床医を長くやっていていろんな患者や家族を経験すればこの言葉を100%信じてやっていくことのできる医師はほとんどいないだろう.

 しかし,このような社会保障関係費削減の議論を聞くと,ただお金がないというだけでそこには金額以外は自分たちには関係ないという無責任な姿勢が垣間見える.どうやら,今の政府には「命より大切なものはない」という倫理はすでに無いものと思われる.これに患者の個人負担が増えると選挙の時に困る国会議員と医師たたきをしたいマスコミが相乗りすると診療報酬を減らせという話になるのだろうか.

 だが,厚生労働省の病院ベッドの削減もあり公立病院は言うにおよばず病院はどこも経営上非常に厳しい状態である.だからベッドも満床で回転も速くしなければならない.要するに余裕がない状態なのである.地方では医師の数も少ない.さて,ここに災害や鳥インフルエンザなどの感染症の流行が起きるとどうなるのであろうか.

 特に鳥インフルエンザに関するタミフルの備蓄や感染流行時の対策についてはすでに国と地方自治体そして医療機関の連携はまったくなっていないようである.こんなことで国民の健康はだれが守るのであろうか.もし例によって何の策もなく現場だけが頑張ることを期待しているのであれば国民の生命という大きな代償を払うことになるのではないだろうか.

 

冬への備え

2005年11月21日 私の写真集
冬への備え
長い冬への備えは万全だろうか?

もう2年も続けているんです私の日記。
そう言えば最初の日も当直でした。

井上陽水の「氷の世界」って知ってますか?
今はYUKIの「AIR WAVE」を聞いています。

救急で呼ばれ吹雪の中を車で走った夜がなぜか懐かしいです。

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