『--ドイツ大統領がイスラエル国会で謝罪--
ケーラー独大統領は2日、公式訪問先のイスラエルの国会で演説し、「ナチス・ドイツによるホロコースト(大虐殺)はドイツに歴史的責任があり、ドイツ人のアイデンティティーを形成している。深く恥じ、謹んで頭を下げる」と謝罪した。
両国の国交樹立40周年などを記念して訪問。イスラエルからの報道によると、独語による演説を不快に感じる人々の声に配慮して、大統領はヘブライ語を多数交えて演説し、理解を求めた。』
戦争犯罪としての規模の違いはあるにせよ大統領として当然の行為が実行できるところがドイツ人らしいと言えばいいのであろうか.
ブッシュ大統領をみているうちに自分も大統領にでもなったかのように振る舞うようになったどこかの首相とはえらい違いである.さっぱり経済が回復していないのに郵政民営化ばかり唱えてどうするつもりなのだろうか.
靖国神社に固執し,不適切な大臣を任命し,米国頼みで北朝鮮の拉致問題を解決するのでは虎の威を借るキツネといったところであろう.
ケーラー独大統領は2日、公式訪問先のイスラエルの国会で演説し、「ナチス・ドイツによるホロコースト(大虐殺)はドイツに歴史的責任があり、ドイツ人のアイデンティティーを形成している。深く恥じ、謹んで頭を下げる」と謝罪した。
両国の国交樹立40周年などを記念して訪問。イスラエルからの報道によると、独語による演説を不快に感じる人々の声に配慮して、大統領はヘブライ語を多数交えて演説し、理解を求めた。』
戦争犯罪としての規模の違いはあるにせよ大統領として当然の行為が実行できるところがドイツ人らしいと言えばいいのであろうか.
ブッシュ大統領をみているうちに自分も大統領にでもなったかのように振る舞うようになったどこかの首相とはえらい違いである.さっぱり経済が回復していないのに郵政民営化ばかり唱えてどうするつもりなのだろうか.
靖国神社に固執し,不適切な大臣を任命し,米国頼みで北朝鮮の拉致問題を解決するのでは虎の威を借るキツネといったところであろう.
『--医歯学部4年に患者応対テスト 新年度から108大学で--
患者ときちんと話をして丁寧に診察できる医師や歯科医を育てるため全国108の医学部、歯学部のある大学が4年生を対象にした共通試験を05年度から始める。知識だけでなく模擬患者に問診し、コミュニケーションが図れるかなども判断する。合否は5年生への進級の判断材料になる。最終的に進級できなければ進路変更も含めた指導を検討する。医療不信が高まる中で知識偏重の医学教育からの転換を目指す。
医師の無神経な言動で傷つけられる患者は少なくない。未熟な医師による医療ミスも相次ぐ。医療不信を招くこうした問題の一因に、5年生からの臨床実習が、主に指導医の診療の見学に終わるなど、十分に機能していないことがあると指摘されてきた。この反省から、文部科学省は臨床実習を「見学型」から「参加型」に改革することを検討。大学側も、学生が診療に加わって患者と接することができる最低限必要な技能や適性が身についているか、共通の基準で判定する準備を進めてきた。02年度からの試行を踏まえ05年度から本格的に実施することにした。試験では、医学知識を問う問題に加え、模擬患者を問診してもらう。そのやりとりから、患者が信頼して症状や悩みを相談できる態度がとれるかどうか、患者の訴えに耳を傾けられるか、意思疎通が図れるか……などを判定する。さらに脈拍・血圧測定、頭から胸、腹部などの診察や、救命救急の処置などもチェック。歯学系では、抜歯や歯科治療などの技能も問う。
各大学は、この試験の成績を5年生への進級の判断材料にする。進級できなければ、さらに1年勉強して再試験を受ける。こうした判断は各大学の裁量に委ねられるものの、大学側は、再試験でも進級できない学生に対しては、必要なら進路変更を促すなど、きめ細かい指導を行う考えだ。
大学側は試験を公正に実施するために社団法人「医療系大学間共用試験実施評価機構(仮称)」をつくる計画で、今月中にも文科省に申請する。文科省は「患者中心の質の高い医療を担う医師を育成するための重要なステップ。全国共通の基準で判定できることに大きな意味がある」(医学教育課)と話している。』
コンビニの店員のように接客態度を学ばせようというのなら試験をやっても医師のコミュニケーション能力の向上は見込めないというのが私の考えだ.確かにコンビニで商品を売るのであれば見かけの接客態度さえよければそれでいいし,マニュアルどおりに対応すれば商品は売れるわけである.しかし,医師というのは接客業とは思えない.
医師と患者が人間として対等であることは当然であるが,治療するほうとされるほうではおのずから立場はまったく違うものである.極端なことを言えば患者の求めるものと医師のめざすものがまったく異なる場合さえあり得るわけである.だから医師の患者への態度には医師としての経験とその生命観というようなものが強く影響するはずである.
自分が重い病気になって初めて患者の言うことが理解できるようになったという医師は多い.知識として持っている患者への理解と自分が経験した患者体験ではまったく違うということなのだろう.
こういう経験の少なさというものを試験で補えると考えているのであればそれこそ知識偏重というものであり,全国共通の基準で判定できることに何の意味があるのであろうか.私は学生時代に医師にとって最も大切なものは"Sympathy"であると聞いたことがあるが,まさに患者の立場を心で理解する経験が必要なのだと思う.それが今後の医学教育で可能になるのであろうか.
全国標準の接遇マニュアルどおりに診察し,全国標準の治療を行うことを医療の質の向上というのでは医師という仕事も随分と軽薄な作業になってきたものだ.
患者ときちんと話をして丁寧に診察できる医師や歯科医を育てるため全国108の医学部、歯学部のある大学が4年生を対象にした共通試験を05年度から始める。知識だけでなく模擬患者に問診し、コミュニケーションが図れるかなども判断する。合否は5年生への進級の判断材料になる。最終的に進級できなければ進路変更も含めた指導を検討する。医療不信が高まる中で知識偏重の医学教育からの転換を目指す。
医師の無神経な言動で傷つけられる患者は少なくない。未熟な医師による医療ミスも相次ぐ。医療不信を招くこうした問題の一因に、5年生からの臨床実習が、主に指導医の診療の見学に終わるなど、十分に機能していないことがあると指摘されてきた。この反省から、文部科学省は臨床実習を「見学型」から「参加型」に改革することを検討。大学側も、学生が診療に加わって患者と接することができる最低限必要な技能や適性が身についているか、共通の基準で判定する準備を進めてきた。02年度からの試行を踏まえ05年度から本格的に実施することにした。試験では、医学知識を問う問題に加え、模擬患者を問診してもらう。そのやりとりから、患者が信頼して症状や悩みを相談できる態度がとれるかどうか、患者の訴えに耳を傾けられるか、意思疎通が図れるか……などを判定する。さらに脈拍・血圧測定、頭から胸、腹部などの診察や、救命救急の処置などもチェック。歯学系では、抜歯や歯科治療などの技能も問う。
各大学は、この試験の成績を5年生への進級の判断材料にする。進級できなければ、さらに1年勉強して再試験を受ける。こうした判断は各大学の裁量に委ねられるものの、大学側は、再試験でも進級できない学生に対しては、必要なら進路変更を促すなど、きめ細かい指導を行う考えだ。
大学側は試験を公正に実施するために社団法人「医療系大学間共用試験実施評価機構(仮称)」をつくる計画で、今月中にも文科省に申請する。文科省は「患者中心の質の高い医療を担う医師を育成するための重要なステップ。全国共通の基準で判定できることに大きな意味がある」(医学教育課)と話している。』
コンビニの店員のように接客態度を学ばせようというのなら試験をやっても医師のコミュニケーション能力の向上は見込めないというのが私の考えだ.確かにコンビニで商品を売るのであれば見かけの接客態度さえよければそれでいいし,マニュアルどおりに対応すれば商品は売れるわけである.しかし,医師というのは接客業とは思えない.
医師と患者が人間として対等であることは当然であるが,治療するほうとされるほうではおのずから立場はまったく違うものである.極端なことを言えば患者の求めるものと医師のめざすものがまったく異なる場合さえあり得るわけである.だから医師の患者への態度には医師としての経験とその生命観というようなものが強く影響するはずである.
自分が重い病気になって初めて患者の言うことが理解できるようになったという医師は多い.知識として持っている患者への理解と自分が経験した患者体験ではまったく違うということなのだろう.
こういう経験の少なさというものを試験で補えると考えているのであればそれこそ知識偏重というものであり,全国共通の基準で判定できることに何の意味があるのであろうか.私は学生時代に医師にとって最も大切なものは"Sympathy"であると聞いたことがあるが,まさに患者の立場を心で理解する経験が必要なのだと思う.それが今後の医学教育で可能になるのであろうか.
全国標準の接遇マニュアルどおりに診察し,全国標準の治療を行うことを医療の質の向上というのでは医師という仕事も随分と軽薄な作業になってきたものだ.
『--中山文科相、また「自虐的」と発言--
中山成彬文部科学相は29日、宮崎県都城市であった自身の大臣就任祝賀会で、歴史教科書について再び「自虐的な教科書がいっぱいある」などと発言した。同相は昨年11月にも、歴史教科書の記述は「極めて自虐的」などと発言し、韓国メディアなどからの批判を受けて発言を修正したばかり。同様趣旨の発言は、再び内外の論議を呼びそうだ。
中山文科相は、あいさつの中で、自民党が公明党との調整がつかずに今国会提出を断念した教育基本法改正案について「私としては『愛国心』という言葉でまとめ、改正したい」との考えを示した。そのうえで、歴史教科書に触れて「自虐的な教科書がいっぱいある。日本が悪いことばかりしたという教科書がある」などと述べた。
同相は昨年11月に大分県で行われたタウンミーティングで、歴史教科書について「自虐史観に立った教育だけはしてはいけない」などと発言。韓国メディアらの強い批判の後「個人的な立場で述べたが、教科書検定を実施する立場になった以上(発言は)控えるべきだった」と、発言を修正していた。
今回の発言に同相は「もう失言はしないようにしようと思っている。本当は失言したいんです。今日はマスコミはいるの? じゃあ、あまり(失言)しないように」とも述べた。』
政治家とか大臣と聞いて教養のあるというイメージを持つ人はどれくらいいるのであろうか.靖国神社もそうだが,歴史教科書についても愛国心の意味を履き違えて日本の戦争犯罪を客観的に省みることができないような人物が文部科学相ではわが国の教育の未来はお先真っ暗である.
これでは観衆がサッカー場で騒ぎを起こすような結果になった中国の排日教育となんら方向性が違わないのではないだろうか.もっとも,こういう発言をする政治家の提出する教育基本法改正案であれば反対するのにわかりやすくていいかもしれない.日本が過去に悪いことをしたのならそれを正確に伝えることが大切であって,過去にいいことをしたから愛国心を感じるというものでもないだろう.日本の中高生はすでに歴史教科書も現在の政治家も信じていないことに気づくべきである.
不適切な発言を指摘されたときには訂正して謝るが,また同じ過ちを繰り返して今度は開き直るというのでは,過去の日本どころか現在の日本の恥であろう.愛国心をいうのであれば世界から日本が物笑いにならないように発言や行動を慎むのが古来からの日本人の美徳というものであろう.
社会保険庁の国家公務員や警察官が国民の税金を着服したり,NHKの番組を検閲したり,大臣の不適切発言が外国のひんしゅくを買うようでは将来の歴史教科書も自分たちの都合のいいように書きかえなくてはならないことだろう.過去の事実を歪曲する暇があったらまず現在の自分から訂正しないといけないことに気づけるような適切な人物を大臣に選んでほしいものだ.
中山成彬文部科学相は29日、宮崎県都城市であった自身の大臣就任祝賀会で、歴史教科書について再び「自虐的な教科書がいっぱいある」などと発言した。同相は昨年11月にも、歴史教科書の記述は「極めて自虐的」などと発言し、韓国メディアなどからの批判を受けて発言を修正したばかり。同様趣旨の発言は、再び内外の論議を呼びそうだ。
中山文科相は、あいさつの中で、自民党が公明党との調整がつかずに今国会提出を断念した教育基本法改正案について「私としては『愛国心』という言葉でまとめ、改正したい」との考えを示した。そのうえで、歴史教科書に触れて「自虐的な教科書がいっぱいある。日本が悪いことばかりしたという教科書がある」などと述べた。
同相は昨年11月に大分県で行われたタウンミーティングで、歴史教科書について「自虐史観に立った教育だけはしてはいけない」などと発言。韓国メディアらの強い批判の後「個人的な立場で述べたが、教科書検定を実施する立場になった以上(発言は)控えるべきだった」と、発言を修正していた。
今回の発言に同相は「もう失言はしないようにしようと思っている。本当は失言したいんです。今日はマスコミはいるの? じゃあ、あまり(失言)しないように」とも述べた。』
政治家とか大臣と聞いて教養のあるというイメージを持つ人はどれくらいいるのであろうか.靖国神社もそうだが,歴史教科書についても愛国心の意味を履き違えて日本の戦争犯罪を客観的に省みることができないような人物が文部科学相ではわが国の教育の未来はお先真っ暗である.
これでは観衆がサッカー場で騒ぎを起こすような結果になった中国の排日教育となんら方向性が違わないのではないだろうか.もっとも,こういう発言をする政治家の提出する教育基本法改正案であれば反対するのにわかりやすくていいかもしれない.日本が過去に悪いことをしたのならそれを正確に伝えることが大切であって,過去にいいことをしたから愛国心を感じるというものでもないだろう.日本の中高生はすでに歴史教科書も現在の政治家も信じていないことに気づくべきである.
不適切な発言を指摘されたときには訂正して謝るが,また同じ過ちを繰り返して今度は開き直るというのでは,過去の日本どころか現在の日本の恥であろう.愛国心をいうのであれば世界から日本が物笑いにならないように発言や行動を慎むのが古来からの日本人の美徳というものであろう.
社会保険庁の国家公務員や警察官が国民の税金を着服したり,NHKの番組を検閲したり,大臣の不適切発言が外国のひんしゅくを買うようでは将来の歴史教科書も自分たちの都合のいいように書きかえなくてはならないことだろう.過去の事実を歪曲する暇があったらまず現在の自分から訂正しないといけないことに気づけるような適切な人物を大臣に選んでほしいものだ.
『--沖縄靖国参拝訴訟、原告側が全面敗訴 那覇地裁判決--
小泉首相の靖国神社参拝は政教分離を定めた憲法に違反し、精神的苦痛を受けたとして、沖縄戦戦没者の遺族ら94人が首相と国に1人当たり10万円の慰謝料を求めた「沖縄靖国参拝訴訟」の判決が28日、那覇地裁であった。西井和徒裁判長は「参拝による法的利益の侵害はない」として、原告の請求を全面的に棄却した。参拝が憲法違反にあたるかどうかや、公的か私的かの判断はしなかった。原告側は控訴する方針。
小泉首相の靖国神社参拝をめぐる訴訟は、大阪、松山、福岡、千葉、東京、那覇の全国6地裁で8件が起こされ、東京と松山(2次)、那覇のほかは昨年、一審判決が出た。5件とも原告側が敗訴していたが、昨年4月の福岡地裁判決(確定)は違憲の判断を示した。残りは憲法判断には踏み込んでいないものの、2件は参拝を公的とした。一連の裁判で、参拝の性質についても判断しなかったのは初めて。
今回の裁判では、首相が行った01年8月と02年4月の参拝の是非が問われた。01年の参拝では、首相は秘書官らを連れて公用車を使い、「内閣総理大臣小泉純一郎」との名前入りの封筒で献花料を支払った。02年も公用車を使い、「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し、献花した。 判決では、こうした参拝行為が公的か私的かや、政教分離に反するか否かについては一切触れず、法的利益の侵害の有無についてのみ検討し、「信教の自由など原告らの法的利益が侵害されたとは言えない」と退けた。
原告らは沖縄戦の「被害者」が「国事に殉じた英霊」として戦争を推進した側とともに、靖国神社に無断合祀(ごうし)されている点を指摘。軍国主義の精神的支柱の役割を担った靖国神社への首相の参拝は「遺族感情を踏みにじるもので耐え難い苦痛」と主張していた。
判決は沖縄戦遺族の被害感情について「集団自決を強いるなど沖縄県民にとって加害者とも受け取られる旧日本軍関係者らとともに靖国に合祀されたなど、原告らの感じる精神的苦痛は、靖国神社のあり方に疑問を呈する苦痛より具体的に理解しうる」と、一定の理解は示した。
今回の裁判では、原告が被害立証のために現場検証を求めたのに対し、那覇地裁は、裁判の証拠にはならない「現地進行協議」の形で、一連の靖国訴訟として初の現地視察を実施。裁判官が沖縄本島南部の激戦地跡を訪れ、遺族の戦争体験を聴いていた。』
内閣総理大臣に信教の自由をみとめないか,宗教施設への参拝目的の立ち入りを禁止すれば解決する問題なのだろうか.慰謝料を請求したのは訴訟するための手段かもしれないが,論点が違うだろう.
憲法では信教の自由が認められているのであるから小泉首相が靖国神社に参拝するはたとえそれが公的であっても問題にするべきではない.むしろ問題は宗教を政治に持ち込まない宗教的中立を首相が意識しているかどうかだけだろう.わざわざ内閣総理大臣と書きくわえて中国につけ込むスキを与えるような大人げない政治家をわが国の首相に選んだのはだれなのだろうか.
テロリストたちが好んで使う宗教世界の対立の図式をわざわざ政治の世界に持ち込むのは愚かなことであろう.あくまでも靖国神社にこだわるようではオウム真理教の信者となんら変わるところはないと思うのは私だけであろうか.
小泉首相の靖国神社参拝は政教分離を定めた憲法に違反し、精神的苦痛を受けたとして、沖縄戦戦没者の遺族ら94人が首相と国に1人当たり10万円の慰謝料を求めた「沖縄靖国参拝訴訟」の判決が28日、那覇地裁であった。西井和徒裁判長は「参拝による法的利益の侵害はない」として、原告の請求を全面的に棄却した。参拝が憲法違反にあたるかどうかや、公的か私的かの判断はしなかった。原告側は控訴する方針。
小泉首相の靖国神社参拝をめぐる訴訟は、大阪、松山、福岡、千葉、東京、那覇の全国6地裁で8件が起こされ、東京と松山(2次)、那覇のほかは昨年、一審判決が出た。5件とも原告側が敗訴していたが、昨年4月の福岡地裁判決(確定)は違憲の判断を示した。残りは憲法判断には踏み込んでいないものの、2件は参拝を公的とした。一連の裁判で、参拝の性質についても判断しなかったのは初めて。
今回の裁判では、首相が行った01年8月と02年4月の参拝の是非が問われた。01年の参拝では、首相は秘書官らを連れて公用車を使い、「内閣総理大臣小泉純一郎」との名前入りの封筒で献花料を支払った。02年も公用車を使い、「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し、献花した。 判決では、こうした参拝行為が公的か私的かや、政教分離に反するか否かについては一切触れず、法的利益の侵害の有無についてのみ検討し、「信教の自由など原告らの法的利益が侵害されたとは言えない」と退けた。
原告らは沖縄戦の「被害者」が「国事に殉じた英霊」として戦争を推進した側とともに、靖国神社に無断合祀(ごうし)されている点を指摘。軍国主義の精神的支柱の役割を担った靖国神社への首相の参拝は「遺族感情を踏みにじるもので耐え難い苦痛」と主張していた。
判決は沖縄戦遺族の被害感情について「集団自決を強いるなど沖縄県民にとって加害者とも受け取られる旧日本軍関係者らとともに靖国に合祀されたなど、原告らの感じる精神的苦痛は、靖国神社のあり方に疑問を呈する苦痛より具体的に理解しうる」と、一定の理解は示した。
今回の裁判では、原告が被害立証のために現場検証を求めたのに対し、那覇地裁は、裁判の証拠にはならない「現地進行協議」の形で、一連の靖国訴訟として初の現地視察を実施。裁判官が沖縄本島南部の激戦地跡を訪れ、遺族の戦争体験を聴いていた。』
内閣総理大臣に信教の自由をみとめないか,宗教施設への参拝目的の立ち入りを禁止すれば解決する問題なのだろうか.慰謝料を請求したのは訴訟するための手段かもしれないが,論点が違うだろう.
憲法では信教の自由が認められているのであるから小泉首相が靖国神社に参拝するはたとえそれが公的であっても問題にするべきではない.むしろ問題は宗教を政治に持ち込まない宗教的中立を首相が意識しているかどうかだけだろう.わざわざ内閣総理大臣と書きくわえて中国につけ込むスキを与えるような大人げない政治家をわが国の首相に選んだのはだれなのだろうか.
テロリストたちが好んで使う宗教世界の対立の図式をわざわざ政治の世界に持ち込むのは愚かなことであろう.あくまでも靖国神社にこだわるようではオウム真理教の信者となんら変わるところはないと思うのは私だけであろうか.
外来生物をばらまくな
2005年1月22日 その他『--オオクチバス、指定第1陣規制リストに 先送りから一転--
国内生態系に影響を及ぼす「特定外来生物」の指定作業で焦点になっていたブラックバスの一種オオクチバスについて、環境省は21日、指定に関する議論を半年間先送りする方針を転換し、6月の外来生物法施行時から適用される、指定第1陣のリストに盛り込むことを決めた。小池環境相が先送りを認めない考えを表明し、担当部局に再検討を促したことで事態が急転した。31日に開かれる哺乳(ほにゅう)類なども合わせた指定の全体会合で、決定する見通し。
21日午後の指定に関する魚類専門家会合で、小野寺浩・同省自然環境局長は「環境相から『まず指定せよ』との指示があり、それを前提に物事を考えたい」と発言。環境省がとりまとめ、19日のオオクチバスの専門家グループ会合で了承された「半年をめどに指定に向けた検討を進める」とする報告案を、白紙に戻す考えを明らかにした。
指定されると、釣り自体が禁止されるわけではないが、適切な管理のため輸入、移動、飼育、放流などが規制される。
魚類専門家会合では、4人の委員が「生態系への被害は明らかで、一刻も早く指定すべきだ」「釣り人が法律を周知する期間として、(法施行までの)半年は妥当な線だ」などと発言。ブラックバスの別種、コクチバスやブルーギルなど3種を候補とする魚類の特定外来生物リストを決めた。オオクチバスについてはこのリストに入れず、多紀保彦座長(自然環境研究センター理事長)が「指定を求める声が強くあった」との付帯意見を31日の全体会合に報告し、判断を仰ぐことになった。
小池環境相は21日の閣議後の記者会見で、「外来生物法の一番の目玉がオオクチバス。指定回避は先送りと批判されても仕方がない」と表明、担当部局に再検討を促した。
小野寺局長は「釣り人の協力は重要なので粘り強く理解を求めていくしかない」としている。これに対し、指定反対の中心になってきた釣り業界関係者らの団体「日本釣振興会」は、「オオクチバス会合で合意された結論を大臣一人の考えで覆すならゆゆしき事態。事実なら厳重に抗議する」とのコメントを発表した。』
「日本釣振興会」なんて初めて聞いた団体だが,そもそもは養殖目的か釣りを楽しむ目的で安易に外来種を放流したのが問題なのだろう.釣り具を売る方にしてみれば誰でもが釣りを楽しめてどこでも釣れれば売り上げが伸びるわけだ.法的規制がなければ繁殖力が強くて当りの強い外来種をばらまくのも当然だ.
私のように釣りに興味のない人間は最初からこの種の議論には無関心だ.だが,知らないうちにそこいらの川や湖から在来種が消えていくというのでは納得できない.河川や湖は公共の財産であるはずで,そこを利害関係だけで好き勝手に変えられるのはあまり面白い話ではない.
小泉首相にはじまり小池環境相が先送りを認めない考えを表明したことによってこの問題が広く世間に知られるところとなり議論されることはいいことだろう.「オオクチバス会合で合意された結論を大臣一人の考えで覆すならゆゆしき事態。事実なら厳重に抗議する」とあるが,そんな利害関係者だけの会合で勝手に合意して自然破壊をすすめるのならゆゆしき事態であり一般国民としては断固抗議したいところである.
国内生態系に影響を及ぼす「特定外来生物」の指定作業で焦点になっていたブラックバスの一種オオクチバスについて、環境省は21日、指定に関する議論を半年間先送りする方針を転換し、6月の外来生物法施行時から適用される、指定第1陣のリストに盛り込むことを決めた。小池環境相が先送りを認めない考えを表明し、担当部局に再検討を促したことで事態が急転した。31日に開かれる哺乳(ほにゅう)類なども合わせた指定の全体会合で、決定する見通し。
21日午後の指定に関する魚類専門家会合で、小野寺浩・同省自然環境局長は「環境相から『まず指定せよ』との指示があり、それを前提に物事を考えたい」と発言。環境省がとりまとめ、19日のオオクチバスの専門家グループ会合で了承された「半年をめどに指定に向けた検討を進める」とする報告案を、白紙に戻す考えを明らかにした。
指定されると、釣り自体が禁止されるわけではないが、適切な管理のため輸入、移動、飼育、放流などが規制される。
魚類専門家会合では、4人の委員が「生態系への被害は明らかで、一刻も早く指定すべきだ」「釣り人が法律を周知する期間として、(法施行までの)半年は妥当な線だ」などと発言。ブラックバスの別種、コクチバスやブルーギルなど3種を候補とする魚類の特定外来生物リストを決めた。オオクチバスについてはこのリストに入れず、多紀保彦座長(自然環境研究センター理事長)が「指定を求める声が強くあった」との付帯意見を31日の全体会合に報告し、判断を仰ぐことになった。
小池環境相は21日の閣議後の記者会見で、「外来生物法の一番の目玉がオオクチバス。指定回避は先送りと批判されても仕方がない」と表明、担当部局に再検討を促した。
小野寺局長は「釣り人の協力は重要なので粘り強く理解を求めていくしかない」としている。これに対し、指定反対の中心になってきた釣り業界関係者らの団体「日本釣振興会」は、「オオクチバス会合で合意された結論を大臣一人の考えで覆すならゆゆしき事態。事実なら厳重に抗議する」とのコメントを発表した。』
「日本釣振興会」なんて初めて聞いた団体だが,そもそもは養殖目的か釣りを楽しむ目的で安易に外来種を放流したのが問題なのだろう.釣り具を売る方にしてみれば誰でもが釣りを楽しめてどこでも釣れれば売り上げが伸びるわけだ.法的規制がなければ繁殖力が強くて当りの強い外来種をばらまくのも当然だ.
私のように釣りに興味のない人間は最初からこの種の議論には無関心だ.だが,知らないうちにそこいらの川や湖から在来種が消えていくというのでは納得できない.河川や湖は公共の財産であるはずで,そこを利害関係だけで好き勝手に変えられるのはあまり面白い話ではない.
小泉首相にはじまり小池環境相が先送りを認めない考えを表明したことによってこの問題が広く世間に知られるところとなり議論されることはいいことだろう.「オオクチバス会合で合意された結論を大臣一人の考えで覆すならゆゆしき事態。事実なら厳重に抗議する」とあるが,そんな利害関係者だけの会合で勝手に合意して自然破壊をすすめるのならゆゆしき事態であり一般国民としては断固抗議したいところである.
『--コーヒー党に肝がん少ない 肝硬変防止の可能性も 東北大が6万人調査--
コーヒーを1日に1杯以上飲む人が肝臓がんになる危険性は、全く飲まない人の6割程度-。東北大の辻一郎(つじ・いちろう)教授(公衆衛生学)らが21日までに、約6万1000人の追跡調査結果をまとめた。大津市で開催の日本疫学会で22日発表する。
辻教授によると、コーヒーに含まれるどんな物質が作用するかはよく分かっていないが、肝硬変の発症リスクを低下させる可能性があるほか、動物実験では成分のクロロゲン酸が肝臓がんの発生を抑制したとする報告もあるという。
1984-97年に、40歳以上の男女を7-9年間追跡調査。計約6万1000人のうち、調査期間中に新たにがんになったのは117人だった。年齢や性別などの要因を考慮して解析した結果、全く飲まない人の危険度を「1」とした場合、1日平均1杯以上飲む人は0.58、1杯未満の人は0.71だった。がん以外の肝臓疾患を経験した人や60歳以上の人、過去に喫煙経験がある人では、こうした傾向が特に強かった。辻教授は「年齢や性別、飲酒状況などで分けて解析しても傾向は変わらなかった。ただし、コーヒーに砂糖などを入れすぎると体に良くないので注意してほしい」としている。』
私がまだ医学生のころコーヒーを一日5杯以上飲むと心筋梗塞になりやすいと循環器内科の講義で聞いたような気がするが,最近はそんなことは信じられていないらしい.
かく言う私も今やコーヒーを1日に2〜4杯は飲んでいる.コナやモカが好きでこれを備前焼のカップで飲むとその苦さがいいのである.
これが肝硬変や肝癌のリスクを減らすとは私にとってはよい話である.酒が脳梗塞や心筋梗塞のリスクを減らし,今度はコーヒーが肝硬変のリスクを減らすのだあれば,どちらも好きな私にとっては好都合である.
だが,調子にのって飲み過ぎるとどちらも胃を痛めるので気をつけなければならない.実はいたずら程度にダビドフの葉巻を吸いたくなることがあるのだが,葉巻の効用については聞いたことがない.残念だがやはりこれだけは密かな楽しみにしておいたほうがよさそうだ.
コーヒーを1日に1杯以上飲む人が肝臓がんになる危険性は、全く飲まない人の6割程度-。東北大の辻一郎(つじ・いちろう)教授(公衆衛生学)らが21日までに、約6万1000人の追跡調査結果をまとめた。大津市で開催の日本疫学会で22日発表する。
辻教授によると、コーヒーに含まれるどんな物質が作用するかはよく分かっていないが、肝硬変の発症リスクを低下させる可能性があるほか、動物実験では成分のクロロゲン酸が肝臓がんの発生を抑制したとする報告もあるという。
1984-97年に、40歳以上の男女を7-9年間追跡調査。計約6万1000人のうち、調査期間中に新たにがんになったのは117人だった。年齢や性別などの要因を考慮して解析した結果、全く飲まない人の危険度を「1」とした場合、1日平均1杯以上飲む人は0.58、1杯未満の人は0.71だった。がん以外の肝臓疾患を経験した人や60歳以上の人、過去に喫煙経験がある人では、こうした傾向が特に強かった。辻教授は「年齢や性別、飲酒状況などで分けて解析しても傾向は変わらなかった。ただし、コーヒーに砂糖などを入れすぎると体に良くないので注意してほしい」としている。』
私がまだ医学生のころコーヒーを一日5杯以上飲むと心筋梗塞になりやすいと循環器内科の講義で聞いたような気がするが,最近はそんなことは信じられていないらしい.
かく言う私も今やコーヒーを1日に2〜4杯は飲んでいる.コナやモカが好きでこれを備前焼のカップで飲むとその苦さがいいのである.
これが肝硬変や肝癌のリスクを減らすとは私にとってはよい話である.酒が脳梗塞や心筋梗塞のリスクを減らし,今度はコーヒーが肝硬変のリスクを減らすのだあれば,どちらも好きな私にとっては好都合である.
だが,調子にのって飲み過ぎるとどちらも胃を痛めるので気をつけなければならない.実はいたずら程度にダビドフの葉巻を吸いたくなることがあるのだが,葉巻の効用については聞いたことがない.残念だがやはりこれだけは密かな楽しみにしておいたほうがよさそうだ.
『--校内全面禁煙、誓約書も 名古屋女子大が効果上げる--
喫煙したら自主退学します-。名古屋女子大・短大(名古屋市瑞穂区)は敷地から通学路までを全面禁煙とし、新入生に異例の「禁煙誓約書」を書かせるなど徹底した禁煙教育を行い、喫煙者が半減するなど大きな効果を上げている。
一部の教員や学生から「女性差別だ」などの反対もある中、「妊娠・出産期の悪影響がはっきりしている以上、煙のないキャンパスを」と2003年度に全面禁煙に踏み切り、04年度には禁煙誓約書も導入した。これまで違反による退学者は1人もいないという。喫煙者には個人面接し、禁煙を促すためのニコチンパッチを支給。処方に必要な医師の診断も学内で行っている。また、愛知県内で禁煙運動を進める小児科医も講演でたばこの害を説くなど協力。04年度の調査では喫煙者は195人から98人に半減した。
敷地外でたばこをこっそり吸っていた上級生は「分煙の方がマナーを守れる」と不満そうだが、全面禁煙後に入学してきた1、2年生はボランティア組織を結成。吸いがらを拾ったり、喫煙を見掛けたら注意するなど、吸わない学生ばかりになるはずの2年後を目指して活動を続けている。』
喫煙したら自主退学というのが面白いが,こんなことを大学でやる必要があるとは思えない.敷地外でたばこをこっそり吸っていた上級生がいるとあるから禁煙を徹底させたいために考えた苦肉の策なのかもしれないが,これが大学教育というならあまりに情けない.
大学構内の禁煙が目的なら喫煙者に単位を与えなければよいだけだろう.禁煙教育に誓約書が必要だとは思えない.「女性差別だ」というのもちょっと的外れな反論である.禁煙が必要なのはなにも妊婦だけではない.誰でも健康のために必要なのである.癌,心筋梗塞,脳梗塞さらには自殺にまで関係している喫煙という悪い習慣をやめるためにはもっと小さい頃からの健康教育が必要であろう.
インフォームドコンセントと言う言葉も医療業界では聞き飽きた感がある.それほどまでに患者さんやその家族に病状や治療について説明がなされ同意を得るという行為が日常化している.これ自体はとても重要なことだと思うが,さて説明されたことをちゃんと理解して同意している人がどれほどいるのだろうか.
外来で喫煙の害を脳血管障害の患者さんや脳ドックの受診者に説明してもそれだけで禁煙できる人はほとんどいない.私の言うことは聞いているようであるが,理解して行動することができないということなのだろう.
これはやはり決定的に人体に対する知識と論理的な思考能力の欠如に原因があるのだろうと思う.人体についての知識がほとんど無い人に医学の話をしてもしょうがないし,論理的思考のできない人に治療法の選択をさせるのも無理だろう.それなのに同意書や誓約書を書いてもらっても意味がない.
できれば小学校くらいから禁煙教育だけでなく,人体やその健康管理に関することをしっかり教えてもらいたいものである.
喫煙したら自主退学します-。名古屋女子大・短大(名古屋市瑞穂区)は敷地から通学路までを全面禁煙とし、新入生に異例の「禁煙誓約書」を書かせるなど徹底した禁煙教育を行い、喫煙者が半減するなど大きな効果を上げている。
一部の教員や学生から「女性差別だ」などの反対もある中、「妊娠・出産期の悪影響がはっきりしている以上、煙のないキャンパスを」と2003年度に全面禁煙に踏み切り、04年度には禁煙誓約書も導入した。これまで違反による退学者は1人もいないという。喫煙者には個人面接し、禁煙を促すためのニコチンパッチを支給。処方に必要な医師の診断も学内で行っている。また、愛知県内で禁煙運動を進める小児科医も講演でたばこの害を説くなど協力。04年度の調査では喫煙者は195人から98人に半減した。
敷地外でたばこをこっそり吸っていた上級生は「分煙の方がマナーを守れる」と不満そうだが、全面禁煙後に入学してきた1、2年生はボランティア組織を結成。吸いがらを拾ったり、喫煙を見掛けたら注意するなど、吸わない学生ばかりになるはずの2年後を目指して活動を続けている。』
喫煙したら自主退学というのが面白いが,こんなことを大学でやる必要があるとは思えない.敷地外でたばこをこっそり吸っていた上級生がいるとあるから禁煙を徹底させたいために考えた苦肉の策なのかもしれないが,これが大学教育というならあまりに情けない.
大学構内の禁煙が目的なら喫煙者に単位を与えなければよいだけだろう.禁煙教育に誓約書が必要だとは思えない.「女性差別だ」というのもちょっと的外れな反論である.禁煙が必要なのはなにも妊婦だけではない.誰でも健康のために必要なのである.癌,心筋梗塞,脳梗塞さらには自殺にまで関係している喫煙という悪い習慣をやめるためにはもっと小さい頃からの健康教育が必要であろう.
インフォームドコンセントと言う言葉も医療業界では聞き飽きた感がある.それほどまでに患者さんやその家族に病状や治療について説明がなされ同意を得るという行為が日常化している.これ自体はとても重要なことだと思うが,さて説明されたことをちゃんと理解して同意している人がどれほどいるのだろうか.
外来で喫煙の害を脳血管障害の患者さんや脳ドックの受診者に説明してもそれだけで禁煙できる人はほとんどいない.私の言うことは聞いているようであるが,理解して行動することができないということなのだろう.
これはやはり決定的に人体に対する知識と論理的な思考能力の欠如に原因があるのだろうと思う.人体についての知識がほとんど無い人に医学の話をしてもしょうがないし,論理的思考のできない人に治療法の選択をさせるのも無理だろう.それなのに同意書や誓約書を書いてもらっても意味がない.
できれば小学校くらいから禁煙教育だけでなく,人体やその健康管理に関することをしっかり教えてもらいたいものである.
『--研修医の労働時間を制限する最新のガイドラインでは安全性向上の効果はほとんどない--
24時間以上連続して病院に勤務する医学インターンが自動車衝突事故を起こす確率は、長時間勤務をしないインターンの2倍以上であり、報告されたニアミスの数も5倍であるという調査結果が、『New England Journal of Medicine』1月13日号に掲載された。
また、インターンの長時間勤務が1カ月あたり1回増えるごとに自動車衝突事故のリスクが9%増加し、1カ月の間に勤務先から帰宅する際に衝突事故を起こす確率は16%増加した。この調査はインターネットを利用したもので、全米規模で医学研修1年目の研修生2,737例を対象にしている。
インターンの病院勤務は週あたり平均70時間、そのうち覚醒していた時間は申告では全体の96%の67時間であったことがこの調査で判明した。インターンの報告によれば、長時間勤務の回数は1カ月あたり平均3.9回で、1回あたりの平均勤務時間は32時間であった。
18カ月間行われたこの調査は、Accreditation Council for Graduate Medical Education(ACGME)による2003年7月のガイドラインが効力を発する直前に終了した。ガイドラインでは、オンコールを連続24時間(診療上の経過観察継続の場合さらに6時間)まで、週の総時間は80時間に制限している。
こうした新しい要請があるにも関わらず、今回の結果では、疲れ切った研修医が自分自身や他者に対して危害を与える可能性が高いことが明確に出ている、と共同著者でハーバード大学医学部睡眠医学科(マサチューセッツ州、ボストン)の医学教授であるCharles A. Czeisler, PhD, MDが述べている。
インターンと研修医における長時間勤務は依然として、医学界では必要な教育のひとつとして見られているが、Czeisler博士によると、「患者、インターン、市民にとって危険であり、過去の遺物であり、捨て去るべきもの」だという。
「私の知る限りでは、30時間ものマラソン勤務を看過している規制機関は、あらゆる分野を見渡してもACGMEのみである」とCzeisler博士はMedscapeに対して語っている。その最新のガイドラインは「既成事実を明文化したものに過ぎない。表面的な体裁を整えるのではなく、実質的な改革必要がある」と同博士は述べている。(抜粋)』
米国の研修医はいまだに大変なようである.現在の日本の研修医はこれに比べたらはるかにいい環境だろう.私自身も1年目のころは大学病院で早くて夜10時くらいまでは働いていた.それも患者さんを診ているのではなくカンファレンスや教授回診や学会発表の準備という大学ならではの仕事のためだった.
居眠りも当然多かった.抄読会や手術中は言うまでもなく,患者さんや家族への説明中や帰宅する際の運転中もよく居眠りしそうになっていた.救急部にいたころはほとんど泊り込みだったのでかえって通勤時間分の睡眠がとれて楽だった覚えがある.
あまりいい思い出ではないのでほとんど忘れてしまった.研修医制度のおかげで人手不足は当分続きそうだ.当直の回数も4月からまた増えそうだ.研修医が働かない分のしわよせがどこからかまわりまわって私のところに来ているのだろうか.
研修医制度は私から見ると給料をもらって医学生をやっているようなものだ.本当の仕事は研修医が終わってからだろう.日本では研修後の医師の過労死や医療事故が今後増えていくような気がする.
24時間以上連続して病院に勤務する医学インターンが自動車衝突事故を起こす確率は、長時間勤務をしないインターンの2倍以上であり、報告されたニアミスの数も5倍であるという調査結果が、『New England Journal of Medicine』1月13日号に掲載された。
また、インターンの長時間勤務が1カ月あたり1回増えるごとに自動車衝突事故のリスクが9%増加し、1カ月の間に勤務先から帰宅する際に衝突事故を起こす確率は16%増加した。この調査はインターネットを利用したもので、全米規模で医学研修1年目の研修生2,737例を対象にしている。
インターンの病院勤務は週あたり平均70時間、そのうち覚醒していた時間は申告では全体の96%の67時間であったことがこの調査で判明した。インターンの報告によれば、長時間勤務の回数は1カ月あたり平均3.9回で、1回あたりの平均勤務時間は32時間であった。
18カ月間行われたこの調査は、Accreditation Council for Graduate Medical Education(ACGME)による2003年7月のガイドラインが効力を発する直前に終了した。ガイドラインでは、オンコールを連続24時間(診療上の経過観察継続の場合さらに6時間)まで、週の総時間は80時間に制限している。
こうした新しい要請があるにも関わらず、今回の結果では、疲れ切った研修医が自分自身や他者に対して危害を与える可能性が高いことが明確に出ている、と共同著者でハーバード大学医学部睡眠医学科(マサチューセッツ州、ボストン)の医学教授であるCharles A. Czeisler, PhD, MDが述べている。
インターンと研修医における長時間勤務は依然として、医学界では必要な教育のひとつとして見られているが、Czeisler博士によると、「患者、インターン、市民にとって危険であり、過去の遺物であり、捨て去るべきもの」だという。
「私の知る限りでは、30時間ものマラソン勤務を看過している規制機関は、あらゆる分野を見渡してもACGMEのみである」とCzeisler博士はMedscapeに対して語っている。その最新のガイドラインは「既成事実を明文化したものに過ぎない。表面的な体裁を整えるのではなく、実質的な改革必要がある」と同博士は述べている。(抜粋)』
米国の研修医はいまだに大変なようである.現在の日本の研修医はこれに比べたらはるかにいい環境だろう.私自身も1年目のころは大学病院で早くて夜10時くらいまでは働いていた.それも患者さんを診ているのではなくカンファレンスや教授回診や学会発表の準備という大学ならではの仕事のためだった.
居眠りも当然多かった.抄読会や手術中は言うまでもなく,患者さんや家族への説明中や帰宅する際の運転中もよく居眠りしそうになっていた.救急部にいたころはほとんど泊り込みだったのでかえって通勤時間分の睡眠がとれて楽だった覚えがある.
あまりいい思い出ではないのでほとんど忘れてしまった.研修医制度のおかげで人手不足は当分続きそうだ.当直の回数も4月からまた増えそうだ.研修医が働かない分のしわよせがどこからかまわりまわって私のところに来ているのだろうか.
研修医制度は私から見ると給料をもらって医学生をやっているようなものだ.本当の仕事は研修医が終わってからだろう.日本では研修後の医師の過労死や医療事故が今後増えていくような気がする.
『--不妊治療法を国民投票へ イタリア --
イタリアで昨年制定され、受精卵の検査(スクリーニング)禁止など厳しい条件を患者に課した不妊治療法について同国の憲法裁判所は13日、法修正の是非を問う国民投票実施を決定した。投票は4月15日から6月15日の間に行われる。
投票にかけられる条項には(1)母体に戻す前の受精卵の異常を見つけるためのスクリーニング禁止(2)一度に受精させられる卵子数の制限(3個まで)と凍結保存の禁止(3)第三者からの精子、卵子の提供禁止(4)受精卵の研究目的への使用禁止-などが含まれている。
いずれの条項もバチカン(ローマ法王庁)のカトリック的倫理観を反映している。条件緩和を求める野党などが国民投票を求めていた。』
『--受精卵診断を名市大が承認 産婦人科学会に実施申請へ --
名古屋市立大医学部の倫理委員会は14日までに、体外受精した受精卵を母胎に戻す前に遺伝病の有無を調べる受精卵診断(着床前診断)を承認した。産婦人科の鈴森薫(すずもり・かおる)教授からの申請で、実施にはさらに日本産科婦人科学会の倫理委の承認が必要なため、鈴森教授は同日中に学会に申請する。
受精卵診断をめぐっては、同学会が昨年7月、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象とした慶応大の申請を初めて承認。鈴森教授の申請が認められれば2例目となる。
申請の対象は筋力が低下し、歩行困難などの障害が起きる筋強直性ジストロフィーを発症した女性。鈴森教授は「死産を経験しており、生まれてくる子供が重篤化する確率は高い。診断はやむを得ない」と話している。
鈴森教授の申請は今回が2例目。別の夫婦を対象とした1例目は、同大の倫理委は承認したが、学会が「成人後も日常生活を送ることができる可能性があり、重篤な遺伝病に当たらない」として認めなかった。』
法治国家であれば倫理観を国民の多数決で法に反映させるというのは合理的であろう.社会福祉制度そのものが法的なものである以上,それが適応されるものすべては規制されるべきであるという考え方も理解できる.
しかるにわが国はどうであろうか.大学医学部や学会の倫理委員会がどう決定したところで,結果として生まれてくる子供が重篤化したとしても何の責任も負わないだろう.
受精卵診断(着床前診断)を承認して障害者が生まれないようにするのが倫理的かどうかの問題ではなく,社会保障制度を支えている国民が医療に何を求めるのかが問題だろう.
医療費を含む社会福祉の費用を減らすのが目的なら障害者をその発生の時点で排除するのが合理的なのかも知れないが,それでいいのだろうか.それを問うものこそが倫理観だろう.
イタリアで昨年制定され、受精卵の検査(スクリーニング)禁止など厳しい条件を患者に課した不妊治療法について同国の憲法裁判所は13日、法修正の是非を問う国民投票実施を決定した。投票は4月15日から6月15日の間に行われる。
投票にかけられる条項には(1)母体に戻す前の受精卵の異常を見つけるためのスクリーニング禁止(2)一度に受精させられる卵子数の制限(3個まで)と凍結保存の禁止(3)第三者からの精子、卵子の提供禁止(4)受精卵の研究目的への使用禁止-などが含まれている。
いずれの条項もバチカン(ローマ法王庁)のカトリック的倫理観を反映している。条件緩和を求める野党などが国民投票を求めていた。』
『--受精卵診断を名市大が承認 産婦人科学会に実施申請へ --
名古屋市立大医学部の倫理委員会は14日までに、体外受精した受精卵を母胎に戻す前に遺伝病の有無を調べる受精卵診断(着床前診断)を承認した。産婦人科の鈴森薫(すずもり・かおる)教授からの申請で、実施にはさらに日本産科婦人科学会の倫理委の承認が必要なため、鈴森教授は同日中に学会に申請する。
受精卵診断をめぐっては、同学会が昨年7月、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象とした慶応大の申請を初めて承認。鈴森教授の申請が認められれば2例目となる。
申請の対象は筋力が低下し、歩行困難などの障害が起きる筋強直性ジストロフィーを発症した女性。鈴森教授は「死産を経験しており、生まれてくる子供が重篤化する確率は高い。診断はやむを得ない」と話している。
鈴森教授の申請は今回が2例目。別の夫婦を対象とした1例目は、同大の倫理委は承認したが、学会が「成人後も日常生活を送ることができる可能性があり、重篤な遺伝病に当たらない」として認めなかった。』
法治国家であれば倫理観を国民の多数決で法に反映させるというのは合理的であろう.社会福祉制度そのものが法的なものである以上,それが適応されるものすべては規制されるべきであるという考え方も理解できる.
しかるにわが国はどうであろうか.大学医学部や学会の倫理委員会がどう決定したところで,結果として生まれてくる子供が重篤化したとしても何の責任も負わないだろう.
受精卵診断(着床前診断)を承認して障害者が生まれないようにするのが倫理的かどうかの問題ではなく,社会保障制度を支えている国民が医療に何を求めるのかが問題だろう.
医療費を含む社会福祉の費用を減らすのが目的なら障害者をその発生の時点で排除するのが合理的なのかも知れないが,それでいいのだろうか.それを問うものこそが倫理観だろう.
監修料で裏金作ってる暇があったら
2005年1月14日 社会の問題『--「国主導で感染症対策を」 院内感染の専門家ら意見 --
後を絶たない院内感染の防止策を話し合う厚生労働省の「院内感染対策中央会議」(座長・小林寛伊(こばやし・ひろよし)NTT東日本関東病院名誉院長)の初会合が13日開かれた。インフルエンザや新型肺炎(SARS)への備えが急務な上、この冬は高齢者施設や病院などで感染性胃腸炎の集団発症が相次いでおり、専門家からは「国が主導して感染防止策を進めるべきだ」との意見が相次いだ。
厚労省は2003年秋以降、院内感染対策強化のために大学病院などに専任担当者の配置を義務化。地域ごとに感染症の専門家のネットワークをつくり、中小医療機関を支援するモデル事業も全国8カ所で始めている。しかし、その後も京都大病院や秋田大病院などで院内感染による患者死亡が相次いだ。こうした現状を受けて開かれた初会合では、委員から「地域や病院任せでは酷。国が本部をつくり、発生調査や対策指揮をすべきだ」との声が上がった。また医療機関は集団感染を隠そうとしがちだが、すぐ専門家に相談する仕組みづくりが大切との意見も多かった。
厚労省はこうした意見を近く提言にまとめ、今後の施策に反映する。中央会議は今後、年1-2回開き、感染防止策を技術面から検討する。』
まあ,考えれば当たり前のことである.監督省庁という言葉があるが,厚生労働省は監督,監査,監修が自分たちの仕事と思っているのだろうか.監査に来たときの態度をみるかぎり公僕という言葉は彼らにとっては死語なのかもしれないが,もう一度思い出してもらう必要があるだろう.
もっとも,病院の監査に来てもぜんぜん働いていない人が数人はいるくらいだから,それさえも真面目にやっているとは思えない.こんな監査を毎年やっていて問題を見落とすものだから何年も前からの名義貸しさえ発見できなかったのだろう.だが,ずっと見落としていた責任を問われた人がいただろうか.
厚生労働省の役人は病院からの税金も自分たちの給料になってることを忘れずに国民の健康を守るためにもっと真摯な態度で働いてもらいたいものである.
特に監修料と称して国民の税金で自分たちの懐を潤すようなまねは許されるはずはないだろう.名義貸しで健康保険料の返還を医師にさせたのだから,自分たちも監修料を国庫に返納するくらいしてもらわないと反省しているようにはみえないだろう.
『--社保庁不正、32人を処分 癒着取引5年で21億円--
社会保険庁職員らと贈賄容疑で社長が逮捕・起訴された情報処理機器会社「カワグチ技研」や関連会社「ニチネン企画」との間の不祥事をめぐり、厚生労働省と社会保険庁は14日、過去5年分について内部調査の結果を発表した。図書購入などの取引額は約21億円、職員が受け取った監修料は約3200万円にのぼった。ゴルフ接待や金品などを受けた職員が約100人いたほか、社会保険事務局OB26人も約6140万円のコンサルタント料を受け取り、取引をあっせんするなど組織ぐるみの癒着が明らかになった。 尾辻厚労相は、図書購入費などを通じて職員に監修料が渡ることで、結果的に公金が職員に「還流」していたことを認め、「国民の信頼を損ない深くおわびします」と謝罪した。
調査結果によると、職員36人が両社から餞別(せんべつ)として1回1万円から30万円を受け取っていた。高級腕時計を受け取った職員もいた。ゴルフや旅行の接待が14人、中元・歳暮を受け取ったのが79人、飲食の接待を受けた職員も4人いた。
このうち、海外を含む複数回のゴルフ接待を受けた職員らについては今後、国家公務員倫理審査会と協議、懲戒免職を含めた厳しい処分を求める。
OBのコンサルタント契約は、1人あたり年約150万円。04年3月までの5年間でニチネン企画から図書類の購入実績があった41事務局のうち、OBのあっせんがあった取引は8カ所、約3億8100万円。コンサルタントがいない事務局に比べ、1カ所平均の取引高は約10倍にのぼっていた。
社保庁は「OBのあっせんで購入しており、調達担当者の判断がゆがめられていると受け止められてもやむを得ない」としている。公益法人に再就職しているOBについては法人に処分を求める。
職員の処分も同日発表され、収賄で起訴された渡辺俊之・元社保庁地方課長を懲戒免職にしたほか、監督責任を問い、社保庁次長の現・元職3人を訓告処分にした。監修料に関する昨年10月の調査が不十分だったとして辻哲夫厚生労働審議官ら5人や、調査で事実関係を積極的に明らかにしなかった職員23人も厳重注意とした。
〈社会保険庁不祥事に関する調査結果の主な内容〉
(1)金銭登録機 国民年金保険料の徴収で使う携帯端末を02年度にカワグチ技研から調達。渡辺元地方課長の指示で不適切な地方ごとの随意契約に
(2)届け出用紙印刷機器 印刷システムを99年度にカワグチ技研から導入。契約を締結する前に担当者が計画文書をカワグチ技研に手渡し、200万円を受け取る。印刷機はほとんど使われず
(3)図書購入・印刷発注 過去5年間にニチネン企画から9品目の図書を購入、11品目の印刷物を発注して計11億7300万円を支払う。印刷物の一部は渡辺元課長が競争入札で受注を指示
(4)コンサルタント契約 ニチネン企画が各地の社保庁OB26人とコンサルタント契約、総額6140万円を支払う。契約者がいる地方社会保険事務局の図書などの平均購入額は、いない事務局の約10倍に
(5)監修料に関する追加調査 各課の庶務担当者から経理課の担当者に監修料が預けられ、各課の職員数に応じて配分するなど組織的に管理。ニチネン企画からの監修料は過去5年間で3200万円 』
後を絶たない院内感染の防止策を話し合う厚生労働省の「院内感染対策中央会議」(座長・小林寛伊(こばやし・ひろよし)NTT東日本関東病院名誉院長)の初会合が13日開かれた。インフルエンザや新型肺炎(SARS)への備えが急務な上、この冬は高齢者施設や病院などで感染性胃腸炎の集団発症が相次いでおり、専門家からは「国が主導して感染防止策を進めるべきだ」との意見が相次いだ。
厚労省は2003年秋以降、院内感染対策強化のために大学病院などに専任担当者の配置を義務化。地域ごとに感染症の専門家のネットワークをつくり、中小医療機関を支援するモデル事業も全国8カ所で始めている。しかし、その後も京都大病院や秋田大病院などで院内感染による患者死亡が相次いだ。こうした現状を受けて開かれた初会合では、委員から「地域や病院任せでは酷。国が本部をつくり、発生調査や対策指揮をすべきだ」との声が上がった。また医療機関は集団感染を隠そうとしがちだが、すぐ専門家に相談する仕組みづくりが大切との意見も多かった。
厚労省はこうした意見を近く提言にまとめ、今後の施策に反映する。中央会議は今後、年1-2回開き、感染防止策を技術面から検討する。』
まあ,考えれば当たり前のことである.監督省庁という言葉があるが,厚生労働省は監督,監査,監修が自分たちの仕事と思っているのだろうか.監査に来たときの態度をみるかぎり公僕という言葉は彼らにとっては死語なのかもしれないが,もう一度思い出してもらう必要があるだろう.
もっとも,病院の監査に来てもぜんぜん働いていない人が数人はいるくらいだから,それさえも真面目にやっているとは思えない.こんな監査を毎年やっていて問題を見落とすものだから何年も前からの名義貸しさえ発見できなかったのだろう.だが,ずっと見落としていた責任を問われた人がいただろうか.
厚生労働省の役人は病院からの税金も自分たちの給料になってることを忘れずに国民の健康を守るためにもっと真摯な態度で働いてもらいたいものである.
特に監修料と称して国民の税金で自分たちの懐を潤すようなまねは許されるはずはないだろう.名義貸しで健康保険料の返還を医師にさせたのだから,自分たちも監修料を国庫に返納するくらいしてもらわないと反省しているようにはみえないだろう.
『--社保庁不正、32人を処分 癒着取引5年で21億円--
社会保険庁職員らと贈賄容疑で社長が逮捕・起訴された情報処理機器会社「カワグチ技研」や関連会社「ニチネン企画」との間の不祥事をめぐり、厚生労働省と社会保険庁は14日、過去5年分について内部調査の結果を発表した。図書購入などの取引額は約21億円、職員が受け取った監修料は約3200万円にのぼった。ゴルフ接待や金品などを受けた職員が約100人いたほか、社会保険事務局OB26人も約6140万円のコンサルタント料を受け取り、取引をあっせんするなど組織ぐるみの癒着が明らかになった。 尾辻厚労相は、図書購入費などを通じて職員に監修料が渡ることで、結果的に公金が職員に「還流」していたことを認め、「国民の信頼を損ない深くおわびします」と謝罪した。
調査結果によると、職員36人が両社から餞別(せんべつ)として1回1万円から30万円を受け取っていた。高級腕時計を受け取った職員もいた。ゴルフや旅行の接待が14人、中元・歳暮を受け取ったのが79人、飲食の接待を受けた職員も4人いた。
このうち、海外を含む複数回のゴルフ接待を受けた職員らについては今後、国家公務員倫理審査会と協議、懲戒免職を含めた厳しい処分を求める。
OBのコンサルタント契約は、1人あたり年約150万円。04年3月までの5年間でニチネン企画から図書類の購入実績があった41事務局のうち、OBのあっせんがあった取引は8カ所、約3億8100万円。コンサルタントがいない事務局に比べ、1カ所平均の取引高は約10倍にのぼっていた。
社保庁は「OBのあっせんで購入しており、調達担当者の判断がゆがめられていると受け止められてもやむを得ない」としている。公益法人に再就職しているOBについては法人に処分を求める。
職員の処分も同日発表され、収賄で起訴された渡辺俊之・元社保庁地方課長を懲戒免職にしたほか、監督責任を問い、社保庁次長の現・元職3人を訓告処分にした。監修料に関する昨年10月の調査が不十分だったとして辻哲夫厚生労働審議官ら5人や、調査で事実関係を積極的に明らかにしなかった職員23人も厳重注意とした。
〈社会保険庁不祥事に関する調査結果の主な内容〉
(1)金銭登録機 国民年金保険料の徴収で使う携帯端末を02年度にカワグチ技研から調達。渡辺元地方課長の指示で不適切な地方ごとの随意契約に
(2)届け出用紙印刷機器 印刷システムを99年度にカワグチ技研から導入。契約を締結する前に担当者が計画文書をカワグチ技研に手渡し、200万円を受け取る。印刷機はほとんど使われず
(3)図書購入・印刷発注 過去5年間にニチネン企画から9品目の図書を購入、11品目の印刷物を発注して計11億7300万円を支払う。印刷物の一部は渡辺元課長が競争入札で受注を指示
(4)コンサルタント契約 ニチネン企画が各地の社保庁OB26人とコンサルタント契約、総額6140万円を支払う。契約者がいる地方社会保険事務局の図書などの平均購入額は、いない事務局の約10倍に
(5)監修料に関する追加調査 各課の庶務担当者から経理課の担当者に監修料が預けられ、各課の職員数に応じて配分するなど組織的に管理。ニチネン企画からの監修料は過去5年間で3200万円 』
『--「良医」育成に初の指針 厚労省、2000病院に周知--
新人医師に昨年4月から義務化された臨床研修で、小児科や内科など幅広い分野で必要な診療技術を教え込んでもらうため、厚生労働省は10日までに、初の「指導ガイドライン」を作成し、全国2200余りある研修先の病院に周知する方針を決めた。
「働きながら見て学べ」という徒弟的な風潮が根強い中、どこでも“良医”が育つよう指導法を標準化するのが狙い。各分野の関連医学会などの協力を得て春までに試行版をつくり、現場に順次普及させたい考えだ。
厚労省医師臨床研修推進室によると、ガイドラインは新制度で数カ月間ずつ経験するよう定められた小児科、内科、外科、救急医療などの7領域について、専門医学会メンバーらによる検討班をつくって作成する。』
ガイドラインで指導法を標準化するのは結構なことだ.指導法が書いてあればそれに従って教えればよいということなのだろう.研修医にどういう風に接するのがいいのかも含めて是非とも現場で役立つガイドラインができることを期待しよう.
残る問題は標準化された指導でよい医師が量産されるかどうかということである.文部省の学習指導要領というのを思い出してもらいたい.はたして標準化した指導を行うとみんな優秀な生徒になったであろうか.
「働きながら見て学べ」という徒弟的な風潮が根強い中、どこでも“良医”が育つよう指導法を標準化するのが狙いとあるが,そもそも良医とはどんな医師なのであろうか.徒弟制の小さな病院では良医は生まれないといいたいのだろうか.
ガイドラインに従ってたった数カ月間ずつ小児科、内科、外科、救急医療などの7領域を経験するだけで良医になれるんだったら結構なことだろうがそんなうまい話があるだろうか.
新人医師に昨年4月から義務化された臨床研修で、小児科や内科など幅広い分野で必要な診療技術を教え込んでもらうため、厚生労働省は10日までに、初の「指導ガイドライン」を作成し、全国2200余りある研修先の病院に周知する方針を決めた。
「働きながら見て学べ」という徒弟的な風潮が根強い中、どこでも“良医”が育つよう指導法を標準化するのが狙い。各分野の関連医学会などの協力を得て春までに試行版をつくり、現場に順次普及させたい考えだ。
厚労省医師臨床研修推進室によると、ガイドラインは新制度で数カ月間ずつ経験するよう定められた小児科、内科、外科、救急医療などの7領域について、専門医学会メンバーらによる検討班をつくって作成する。』
ガイドラインで指導法を標準化するのは結構なことだ.指導法が書いてあればそれに従って教えればよいということなのだろう.研修医にどういう風に接するのがいいのかも含めて是非とも現場で役立つガイドラインができることを期待しよう.
残る問題は標準化された指導でよい医師が量産されるかどうかということである.文部省の学習指導要領というのを思い出してもらいたい.はたして標準化した指導を行うとみんな優秀な生徒になったであろうか.
「働きながら見て学べ」という徒弟的な風潮が根強い中、どこでも“良医”が育つよう指導法を標準化するのが狙いとあるが,そもそも良医とはどんな医師なのであろうか.徒弟制の小さな病院では良医は生まれないといいたいのだろうか.
ガイドラインに従ってたった数カ月間ずつ小児科、内科、外科、救急医療などの7領域を経験するだけで良医になれるんだったら結構なことだろうがそんなうまい話があるだろうか.
厚生労働省は施設の感染症予防ガイドラインをつくるべき
2005年1月8日 医療の問題『--特養ホーム:入所者6人死亡 ロタウイルスの疑い--
広島県福山市の特別養護老人ホーム「福山福寿園」(岡田剛理事長)で入所者6人が相次いで死亡するなどした問題で、同市保健所は8日、同園に対し再度、立ち入り調査した。4日に全入所者に実施した検便では、食中毒菌は検出されておらず、感染症が原因である可能性が高まった。
福山市医師会によると、昨年12月初めごろから、同市内でロタウイルスなどによる感染性胃腸炎でおう吐、下痢などを訴える患者が急増。週に100〜200人程度が受診したため、注意を呼びかけていたという。ロタウイルスは、食中毒の原因となるノロウイルスと異なり、空気感染するのが特徴で、今回の同園のケースも、症状や発生状況などからロタウイルスが原因である可能性が高いと考えられるという。
一方、8日未明に記者会見した岡田理事長らによると、死亡した6人のうち2人が下痢、おう吐を発症していたが、他の4人には症状が見られなかった。このため、食中毒や感染症による死亡との認識はなく、主治医を兼務していた岡田理事長は「終末状態から亡くなったと考えていた」と明らかにした。
園によると、入園者の平均年齢は約90歳で、昨年1年間で約25人が死亡。高齢による体力の低下に加え、風邪やインフルエンザなどで体調を崩し、毎年、同数程度の入所者が死亡しているという。市保健所によると、感染症の有無を調査するため、入所者全員に7日、検便を実施。2、3日中にも結果の報告があるという。』
『広島・特養ホーム:さらに1人死亡 感染症の可能性高まる
広島県福山市の特別養護老人ホーム「福山福寿園」(岡田剛理事長)の入所者6人が昨年末から今年初めにかけ、嘔吐(おうと)や下痢などの症状で相次ぎ死亡した問題で、同市保健所は8日、同日午後に新たに男性入所者(83)1人の容体が急変し、死亡したと発表した。市のこれまでの調査で、死亡者のうち4人は、食中毒が発生する可能性が極めて低い市販の流動食のみを取るなどしており、感染症が原因の可能性がさらに高まった。
一方、市は、事実の報告が遅れるなど厚生労働省令に違反した疑いもあるとして、同日午後、園に特別監査を実施。通報が遅れた理由や、健康・衛生面の管理について岡田宏園長らに聞き取り調査したが、監査中に入所者が死亡したため、調査を中止した。
開原算彦助役や保健所長ら市幹部でつくる対策会議は同日発足。今後、感染症の専門家らでつくる調査委員会の設置や、17の特養ホームなど市内の全老人保健施設に対する感染防止の指導を決めた。開原助役は「全容の把握ができておらず深刻に受け止めている。一刻も早く原因を究明したい」と話した。
今後、昨年12月20日以降の入所者全員の看護記録の確認や、病原体追跡のため、頻繁に行われたとされる入所者の部屋の移動状況などを調査することを決めた。』
特別養護老人ホームに限らず大勢の人間が共同で生活するような施設では感染症の影響は大きい.特にそれが幼児や高齢者などの免疫力の低いものであればなおさらだろう.風邪から肺炎になることだって別に珍しいことではないのだ.
感染症が流行すると施設の管理責任が問われるのは当然としても,看護職員だけでなく面会に来る家族が感染症のキャリアになっている場合も多いと考えられ,感染症の予防のためには面会者のコントロールも必要であろう.
病院,学校,幼稚園,保育所などにも同様のことが言える.最近,各地の病院や施設でノロウィルスによる食中毒が流行っているのもこれら施設での感染対策の重要性を示しているいい例だろう.病院には感染症対策委員会があるが,施設や学校にはそのようなものもない.急増したグループホームなども高齢者が多く管理レベルは低いため注意が必要だろう.
いずれにしても感染症が流行した施設の省令違反の有無を監査するだけででなく,施設入所者を感染症から守り,面会者にも理解できるような感染症対策のガイドラインをつくってもらいたいものである.
広島県福山市の特別養護老人ホーム「福山福寿園」(岡田剛理事長)で入所者6人が相次いで死亡するなどした問題で、同市保健所は8日、同園に対し再度、立ち入り調査した。4日に全入所者に実施した検便では、食中毒菌は検出されておらず、感染症が原因である可能性が高まった。
福山市医師会によると、昨年12月初めごろから、同市内でロタウイルスなどによる感染性胃腸炎でおう吐、下痢などを訴える患者が急増。週に100〜200人程度が受診したため、注意を呼びかけていたという。ロタウイルスは、食中毒の原因となるノロウイルスと異なり、空気感染するのが特徴で、今回の同園のケースも、症状や発生状況などからロタウイルスが原因である可能性が高いと考えられるという。
一方、8日未明に記者会見した岡田理事長らによると、死亡した6人のうち2人が下痢、おう吐を発症していたが、他の4人には症状が見られなかった。このため、食中毒や感染症による死亡との認識はなく、主治医を兼務していた岡田理事長は「終末状態から亡くなったと考えていた」と明らかにした。
園によると、入園者の平均年齢は約90歳で、昨年1年間で約25人が死亡。高齢による体力の低下に加え、風邪やインフルエンザなどで体調を崩し、毎年、同数程度の入所者が死亡しているという。市保健所によると、感染症の有無を調査するため、入所者全員に7日、検便を実施。2、3日中にも結果の報告があるという。』
『広島・特養ホーム:さらに1人死亡 感染症の可能性高まる
広島県福山市の特別養護老人ホーム「福山福寿園」(岡田剛理事長)の入所者6人が昨年末から今年初めにかけ、嘔吐(おうと)や下痢などの症状で相次ぎ死亡した問題で、同市保健所は8日、同日午後に新たに男性入所者(83)1人の容体が急変し、死亡したと発表した。市のこれまでの調査で、死亡者のうち4人は、食中毒が発生する可能性が極めて低い市販の流動食のみを取るなどしており、感染症が原因の可能性がさらに高まった。
一方、市は、事実の報告が遅れるなど厚生労働省令に違反した疑いもあるとして、同日午後、園に特別監査を実施。通報が遅れた理由や、健康・衛生面の管理について岡田宏園長らに聞き取り調査したが、監査中に入所者が死亡したため、調査を中止した。
開原算彦助役や保健所長ら市幹部でつくる対策会議は同日発足。今後、感染症の専門家らでつくる調査委員会の設置や、17の特養ホームなど市内の全老人保健施設に対する感染防止の指導を決めた。開原助役は「全容の把握ができておらず深刻に受け止めている。一刻も早く原因を究明したい」と話した。
今後、昨年12月20日以降の入所者全員の看護記録の確認や、病原体追跡のため、頻繁に行われたとされる入所者の部屋の移動状況などを調査することを決めた。』
特別養護老人ホームに限らず大勢の人間が共同で生活するような施設では感染症の影響は大きい.特にそれが幼児や高齢者などの免疫力の低いものであればなおさらだろう.風邪から肺炎になることだって別に珍しいことではないのだ.
感染症が流行すると施設の管理責任が問われるのは当然としても,看護職員だけでなく面会に来る家族が感染症のキャリアになっている場合も多いと考えられ,感染症の予防のためには面会者のコントロールも必要であろう.
病院,学校,幼稚園,保育所などにも同様のことが言える.最近,各地の病院や施設でノロウィルスによる食中毒が流行っているのもこれら施設での感染対策の重要性を示しているいい例だろう.病院には感染症対策委員会があるが,施設や学校にはそのようなものもない.急増したグループホームなども高齢者が多く管理レベルは低いため注意が必要だろう.
いずれにしても感染症が流行した施設の省令違反の有無を監査するだけででなく,施設入所者を感染症から守り,面会者にも理解できるような感染症対策のガイドラインをつくってもらいたいものである.
研修体制に問題はないのか
2005年1月5日 医療の問題『--意識不明の男性死亡 京都大病院で薬誤投与--
京都大病院(田中紘一(たなか・こういち)院長)は3日、限度量の3倍近い抗リウマチ薬を投与され、意識不明だった近畿在住の70代の男性が2日午後3時29分に死亡したと発表した。同病院は、医療事故調査委員会を設置して事故原因などを調査中。京都府警川端署は司法解剖し、詳しい死因を調べる。
男性は、関節リウマチなどで同病院に通院していたが、昨年10月、消化管出血で緊急入院。医師歴1年の研修医が限度量の3倍近い投与を指示。男性は数日後に呼吸状態が悪化し、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。』
研修医の投薬ミスによる医療事故ということだろうか.ニュースに書かれた研修医には誠にお気の毒であるが,投与量の誤りによる死亡であることが明らかになれば業務上過失致死で訴えられるのであろうか.こういう初歩的ミスはベテランでも犯す可能性がないわけではないだろうが,やはり研修医には起こりやすい事故であるだろう.
医師である以上は本人の過失責任があるのはわかるが,研修病院である大学附属病院で研修中であったことを考えると,こういった事故を防ぐための体制がちゃんと整っていたかがより重要な問題であると思うのだがどうであろうか.
病棟で医師が処方箋を書くなり,オーダーを入れるなりしたとしても薬剤師が必ず監査するはずであるし,看護師も処方内容は確認するはずである.そもそも研修医の場合は指導医がその仕事をみているはずであるが,これら最低3人の医療従事者の目をすりぬけて事故が起きていることの問題点をよく考えるべきだろう.
研修中のしかもこんな初歩的ミスが研修医一人の責任にされて刑事責任まで負わされるようでは研修制度の本来の目的からはずれるだろう.今後,京都大病院がどういう対応をとるのか気になるところだ.
京都大病院(田中紘一(たなか・こういち)院長)は3日、限度量の3倍近い抗リウマチ薬を投与され、意識不明だった近畿在住の70代の男性が2日午後3時29分に死亡したと発表した。同病院は、医療事故調査委員会を設置して事故原因などを調査中。京都府警川端署は司法解剖し、詳しい死因を調べる。
男性は、関節リウマチなどで同病院に通院していたが、昨年10月、消化管出血で緊急入院。医師歴1年の研修医が限度量の3倍近い投与を指示。男性は数日後に呼吸状態が悪化し、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。』
研修医の投薬ミスによる医療事故ということだろうか.ニュースに書かれた研修医には誠にお気の毒であるが,投与量の誤りによる死亡であることが明らかになれば業務上過失致死で訴えられるのであろうか.こういう初歩的ミスはベテランでも犯す可能性がないわけではないだろうが,やはり研修医には起こりやすい事故であるだろう.
医師である以上は本人の過失責任があるのはわかるが,研修病院である大学附属病院で研修中であったことを考えると,こういった事故を防ぐための体制がちゃんと整っていたかがより重要な問題であると思うのだがどうであろうか.
病棟で医師が処方箋を書くなり,オーダーを入れるなりしたとしても薬剤師が必ず監査するはずであるし,看護師も処方内容は確認するはずである.そもそも研修医の場合は指導医がその仕事をみているはずであるが,これら最低3人の医療従事者の目をすりぬけて事故が起きていることの問題点をよく考えるべきだろう.
研修中のしかもこんな初歩的ミスが研修医一人の責任にされて刑事責任まで負わされるようでは研修制度の本来の目的からはずれるだろう.今後,京都大病院がどういう対応をとるのか気になるところだ.
『過労死防止策:「医師指導」の義務化、申し出た場合のみに
労働政策審議会は27日、労働者の過労死・自殺防止策として医師による面接指導を企業に義務付けるよう労働安全衛生法の改正を求める報告書を尾辻秀久厚生労働相に提出した。厚労省は当初、時間外労働が月100時間を超えた労働者全員への面接指導を義務化する方針だったが、審議会で使用者側委員が反発し、労働者から申し出があった場合のみの義務化に後退した。』
『--100時間超残業者に医師面接 過労対策で企業に義務付け 労働安全衛生法改正へ--
厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会は27日、過労や心の健康(メンタルヘルス)対策で、月100時間を超える残業をした労働者について、本人の申し出などを前提に医師の面接指導を企業に義務付ける案をまとめた。これを受け厚労省は、来年の通常国会で労働安全衛生法を改正する。
長時間労働が減らず、過労死、過労自殺が増え続ける中、厚労省はこれまで指針や通達で対応してきたが、初めて法規制に踏み出す。法改正にはこのほか、企業の事務部門などで衛生管理者の外部委託を認めることや、化学物質を扱う現場で有害性の程度に応じて容器などに絵表示を義務付けることも盛り込まれている。過労、メンタルヘルス対策は(1)月100時間を超えた労働者から申し出があった場合、企業は医師の面接指導を受けさせ、必要な措置を取らなければならない(2)企業の産業医の判断で労働者に面接指導を勧めることができる(3)企業の衛生委員会には過労とメンタルヘルス対策を新たに審議事項に加える,などの内容。
当初、厚労省の専門家による検討会の案では、前提条件の「労働者本人の申し出」はなかったが、審議会で使用者側委員の意見で加わった。
衛生管理者の外部委託は、化学物質を扱うような職場は除き、特段の危険が少ない事務職場などで外部からの衛生管理者の受け入れを認める内容。労働者派遣法は衛生管理者の派遣を認めていないことから、今後、関係する法律の改正が必要となる。』
労働者本人からの申し出がなければ過労ではないということなのだろうか.労働者が過労を自己申告しなければいけないのでは制度の意味がかなり薄められるだろう.有給休暇でさえまともに取れないのがわが国の実態であることは誰でも知っている.審議会にこんなことを言い出す使用者側委員が含まれていること自体が人選ミスだろう.
仮に労働者本人が申告しないで過労死した場合の責任は誰がとるのであろうか.まさか自己責任というのではないだろうが,そうなった場合には反発した使用者側委員の方にも是非責任をとっていただきたいものだ.
労働政策審議会は27日、労働者の過労死・自殺防止策として医師による面接指導を企業に義務付けるよう労働安全衛生法の改正を求める報告書を尾辻秀久厚生労働相に提出した。厚労省は当初、時間外労働が月100時間を超えた労働者全員への面接指導を義務化する方針だったが、審議会で使用者側委員が反発し、労働者から申し出があった場合のみの義務化に後退した。』
『--100時間超残業者に医師面接 過労対策で企業に義務付け 労働安全衛生法改正へ--
厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会は27日、過労や心の健康(メンタルヘルス)対策で、月100時間を超える残業をした労働者について、本人の申し出などを前提に医師の面接指導を企業に義務付ける案をまとめた。これを受け厚労省は、来年の通常国会で労働安全衛生法を改正する。
長時間労働が減らず、過労死、過労自殺が増え続ける中、厚労省はこれまで指針や通達で対応してきたが、初めて法規制に踏み出す。法改正にはこのほか、企業の事務部門などで衛生管理者の外部委託を認めることや、化学物質を扱う現場で有害性の程度に応じて容器などに絵表示を義務付けることも盛り込まれている。過労、メンタルヘルス対策は(1)月100時間を超えた労働者から申し出があった場合、企業は医師の面接指導を受けさせ、必要な措置を取らなければならない(2)企業の産業医の判断で労働者に面接指導を勧めることができる(3)企業の衛生委員会には過労とメンタルヘルス対策を新たに審議事項に加える,などの内容。
当初、厚労省の専門家による検討会の案では、前提条件の「労働者本人の申し出」はなかったが、審議会で使用者側委員の意見で加わった。
衛生管理者の外部委託は、化学物質を扱うような職場は除き、特段の危険が少ない事務職場などで外部からの衛生管理者の受け入れを認める内容。労働者派遣法は衛生管理者の派遣を認めていないことから、今後、関係する法律の改正が必要となる。』
労働者本人からの申し出がなければ過労ではないということなのだろうか.労働者が過労を自己申告しなければいけないのでは制度の意味がかなり薄められるだろう.有給休暇でさえまともに取れないのがわが国の実態であることは誰でも知っている.審議会にこんなことを言い出す使用者側委員が含まれていること自体が人選ミスだろう.
仮に労働者本人が申告しないで過労死した場合の責任は誰がとるのであろうか.まさか自己責任というのではないだろうが,そうなった場合には反発した使用者側委員の方にも是非責任をとっていただきたいものだ.
クモ膜下出血の頭痛の特徴
2004年12月30日 医療の問題 先日,近郊の町立病院の整形外科医から電話で患者さんの依頼があった.
5日前に転倒して頭部を打撲したが,3日前の昼頃に突然頭が痛くなってきたので町立病院を受診した.頭部CTを撮ったら右のシルビウス裂の上の方に小さな白いものが写っていて右のシルビウス裂の見えが悪いと言う.担当の整形外科医は頭部打撲による脳挫傷と脳浮腫を疑っているようだった.
しかし,この話から私は脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血を疑ったので,搬送のことをたずねたら,患者さんが自分で車を運転して来院するようなことを言うので危険だから救急車で搬送するように伝えた.
搬入後に持参した町立病院のCTでやはりクモ膜下出血だった.頭部MRAで前交通動脈瘤をみとめた.発症後時間が経っているので脳血管攣縮の危険もあったが,正月の休日体制下で再破裂されると困るので緊急手術した,経過は良好である.
脳神経外科専門医なら初診時の頭部CTでほぼ間違いなくクモ膜下出血の診断をつけるだろうが,研修医にはわからないだろうし,他科の医師でも頭部CTを見慣れていないと動脈瘤破裂には思いいたらなくとも不思議ではない.もっともCTがなくとも頭痛の発症時のことを患者さんによく聞けば鑑別診断でまず第一に考えるべきものである.
クモ膜下出血の頭痛の特徴は0から100になる頭痛だということだ.突然に頭をなぐられたかのように痛くなるらしい.私の経験でも電話で息子を怒鳴った瞬間にとか,パチンコで777が出た瞬間にとか,妻と久しぶりにの最中に突然激しい頭痛がしてという例がある.重症な場合はそのまま意識を失ったり呼吸が停止する.
歩いて外来に来ることをWalking SAHなどというが,出血が少なくて頭痛だけが唯一の症状の場合の診断が一番難しいのである.突然の激しい頭痛という発症の特徴だけが唯一の手がかりというわけである.
なぜ,突然にこんな事を書いたのかというと,いつもお正月休みにはクモ膜下出血の患者さんがやって来て緊急手術になるので,今日書いておけばゆっくり休めるような気がしたからである.
今年も半分愚痴のような拙文を読んでいただいた皆さまには大変感謝しております.くれぐれも飲み過ぎ,食べ過ぎ,騒ぎ過ぎに注意してどうぞよいお年をお迎えください.
5日前に転倒して頭部を打撲したが,3日前の昼頃に突然頭が痛くなってきたので町立病院を受診した.頭部CTを撮ったら右のシルビウス裂の上の方に小さな白いものが写っていて右のシルビウス裂の見えが悪いと言う.担当の整形外科医は頭部打撲による脳挫傷と脳浮腫を疑っているようだった.
しかし,この話から私は脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血を疑ったので,搬送のことをたずねたら,患者さんが自分で車を運転して来院するようなことを言うので危険だから救急車で搬送するように伝えた.
搬入後に持参した町立病院のCTでやはりクモ膜下出血だった.頭部MRAで前交通動脈瘤をみとめた.発症後時間が経っているので脳血管攣縮の危険もあったが,正月の休日体制下で再破裂されると困るので緊急手術した,経過は良好である.
脳神経外科専門医なら初診時の頭部CTでほぼ間違いなくクモ膜下出血の診断をつけるだろうが,研修医にはわからないだろうし,他科の医師でも頭部CTを見慣れていないと動脈瘤破裂には思いいたらなくとも不思議ではない.もっともCTがなくとも頭痛の発症時のことを患者さんによく聞けば鑑別診断でまず第一に考えるべきものである.
クモ膜下出血の頭痛の特徴は0から100になる頭痛だということだ.突然に頭をなぐられたかのように痛くなるらしい.私の経験でも電話で息子を怒鳴った瞬間にとか,パチンコで777が出た瞬間にとか,妻と久しぶりにの最中に突然激しい頭痛がしてという例がある.重症な場合はそのまま意識を失ったり呼吸が停止する.
歩いて外来に来ることをWalking SAHなどというが,出血が少なくて頭痛だけが唯一の症状の場合の診断が一番難しいのである.突然の激しい頭痛という発症の特徴だけが唯一の手がかりというわけである.
なぜ,突然にこんな事を書いたのかというと,いつもお正月休みにはクモ膜下出血の患者さんがやって来て緊急手術になるので,今日書いておけばゆっくり休めるような気がしたからである.
今年も半分愚痴のような拙文を読んでいただいた皆さまには大変感謝しております.くれぐれも飲み過ぎ,食べ過ぎ,騒ぎ過ぎに注意してどうぞよいお年をお迎えください.
わかっちゃいるけどやめられない?
2004年12月28日 医食同源『--喫煙で年間483万人死亡 全世界の死因の12% 1位は心臓血管病 米研究グループが調査 --
喫煙が原因で2000年の1年間に死亡したと考えられる30歳以上の人は、全世界で483万人に達し、死因の12%を占めるとの調査結果を、米ハーバード大のマジド・エザッチ博士らの研究グループが25日までにまとめた。
先進国と発展途上国の死者はほぼ同数だが、途上国ではアジアや西太平洋地域に集中。死因となったのはいずれも心臓血管系の病気が1位、途上国では慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)など呼吸器系疾患の割合が高い傾向が見られた。
喫煙による死亡数は従来約500万人とされてきたが、地域や死因別に詳細に推定したのは初めて。研究グループは「地域ごとの喫煙傾向の特徴も踏まえ、途上国などでの対策を強化しなければ、健康被害はさらに深刻になる」と警告している。研究グループは、世界保健機関(WHO)が分けている世界6地域を、先進国と発展途上国、子供の死亡率などで、さらに計14ブロックに細分。喫煙と肺がんに関する研究データなどから、地域ごとに喫煙による死者数を推定した。
合計483万人の死者のうち、女性は2割。途上国では死者の集中地域があり、インドやバングラデシュなど7カ国のブロックと、中国やカンボジアなど22カ国のブロックで、死者がそれぞれ約80万人に達した。
先進国での死因は心臓血管の病気が一番多く約100万人。次いで肺がん(約50万人)、COPD(約30万人)の順だった。
一方、途上国のCOPDの比率は先進国の2倍以上で、他の呼吸器疾患も含め全体の4割を占めた。研究グループは、石炭や動植物由来の燃料で家の中の空気が汚れていると、たばこにより体への影響がより強められる可能性を指摘している。』
『--喫煙男性は飲みすぎに注意 酒量多いとがんの危険増加--
たばこを吸う男性は飲酒量が増えるにつれ、がんになる危険が高くなる-。こんな大規模疫学調査の結果を厚生労働省研究班(主任研究者、津金昌一郎(つがね・しょういちろう)・国立がんセンター予防研究部長)が24日までにまとめた。日本酒で1日平均3合(ビールなら同大瓶3本)以上の人は、「時々飲む」人に比べ危険性が倍以上になるという。研究班は「アルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこが含む発がん物質も活性化するのではないか」と分析。他の研究結果も考慮し、飲酒は日本酒で1日1合(ビールなら同大瓶1本)程度までにすべきだとしている。
研究班は40-50代の男女約7万3000人を1990年から約10年間追跡。飲酒、喫煙習慣とがんとの関連を調べた。
男性喫煙者の場合、1日の飲酒量が日本酒で平均3合以上、同2-3合の人のがん発生率は、「時々飲む」人に比べそれぞれ2.32倍、1.93倍に達した。非喫煙者ではこうした傾向はなかった。ただ、食道がんや肝臓がんなど、飲酒との関連が強いがん個別では、酒量に応じ発生率は高まった。また、女性は定期的に飲酒する人が少なく、男性のような傾向はみられなかったという。
研究班によると、日本酒1合は焼酎で0.6合、ウイスキーでダブル1杯、ワインでグラス2杯程度に相当する。』
喫煙や多量の飲酒が体に悪いことに異論を唱える人はさすがにもういないのだろうが,禁煙できない人は大勢いるし,自分がそれらの依存症だという病識さえない人もまだたくさんいると思われる.だが,生活習慣病の本当の恐さを知るのは病気になってからというのだから病識がないというのは哀れなものである.「人間は未来を知らされていない」というのはトルストイの民話集の一節だが,仮に生活習慣が原因で病気になることを知らされていたとしてもまだやめられないのが人間のような気がする.
スマトラ沖大地震では現時点で2万人以上が亡くなったようだ.被害に遭った人々には誠にお気の毒であるが,台風,地震,津波,火山噴火などの自然現象に対しては人間はまだほとんど無力だということを毎度思い知らされているだけだ.地球は人間の存在に関係なくその姿を変え続けているということなのだろう.とは言えプーケットに余暇に行った人々にとってはまさに天国から地獄だっただろう.
地球の歴史からみれば人間はほんの一瞬の存在にすぎないが,これほどまでに人間が増えて地球環境に変化を与えればそのうち人間自身の手で地球環境を激変させることになるかも知れない.それは人類が地球史上最も繁栄した生物である証になるのかも知れないが,自ら造り出した環境に適応して絶滅をまぬがれることができるのだろうか.
開発による環境破壊もある意味で喫煙と同じようなものに思える.悪いのはわかっているがやめられない.もうすぐ2004年も終わりである.明日の事も知ることのできない我が身ではあるが,来年はいったいどんな1年になるのであろうか.
喫煙が原因で2000年の1年間に死亡したと考えられる30歳以上の人は、全世界で483万人に達し、死因の12%を占めるとの調査結果を、米ハーバード大のマジド・エザッチ博士らの研究グループが25日までにまとめた。
先進国と発展途上国の死者はほぼ同数だが、途上国ではアジアや西太平洋地域に集中。死因となったのはいずれも心臓血管系の病気が1位、途上国では慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)など呼吸器系疾患の割合が高い傾向が見られた。
喫煙による死亡数は従来約500万人とされてきたが、地域や死因別に詳細に推定したのは初めて。研究グループは「地域ごとの喫煙傾向の特徴も踏まえ、途上国などでの対策を強化しなければ、健康被害はさらに深刻になる」と警告している。研究グループは、世界保健機関(WHO)が分けている世界6地域を、先進国と発展途上国、子供の死亡率などで、さらに計14ブロックに細分。喫煙と肺がんに関する研究データなどから、地域ごとに喫煙による死者数を推定した。
合計483万人の死者のうち、女性は2割。途上国では死者の集中地域があり、インドやバングラデシュなど7カ国のブロックと、中国やカンボジアなど22カ国のブロックで、死者がそれぞれ約80万人に達した。
先進国での死因は心臓血管の病気が一番多く約100万人。次いで肺がん(約50万人)、COPD(約30万人)の順だった。
一方、途上国のCOPDの比率は先進国の2倍以上で、他の呼吸器疾患も含め全体の4割を占めた。研究グループは、石炭や動植物由来の燃料で家の中の空気が汚れていると、たばこにより体への影響がより強められる可能性を指摘している。』
『--喫煙男性は飲みすぎに注意 酒量多いとがんの危険増加--
たばこを吸う男性は飲酒量が増えるにつれ、がんになる危険が高くなる-。こんな大規模疫学調査の結果を厚生労働省研究班(主任研究者、津金昌一郎(つがね・しょういちろう)・国立がんセンター予防研究部長)が24日までにまとめた。日本酒で1日平均3合(ビールなら同大瓶3本)以上の人は、「時々飲む」人に比べ危険性が倍以上になるという。研究班は「アルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこが含む発がん物質も活性化するのではないか」と分析。他の研究結果も考慮し、飲酒は日本酒で1日1合(ビールなら同大瓶1本)程度までにすべきだとしている。
研究班は40-50代の男女約7万3000人を1990年から約10年間追跡。飲酒、喫煙習慣とがんとの関連を調べた。
男性喫煙者の場合、1日の飲酒量が日本酒で平均3合以上、同2-3合の人のがん発生率は、「時々飲む」人に比べそれぞれ2.32倍、1.93倍に達した。非喫煙者ではこうした傾向はなかった。ただ、食道がんや肝臓がんなど、飲酒との関連が強いがん個別では、酒量に応じ発生率は高まった。また、女性は定期的に飲酒する人が少なく、男性のような傾向はみられなかったという。
研究班によると、日本酒1合は焼酎で0.6合、ウイスキーでダブル1杯、ワインでグラス2杯程度に相当する。』
喫煙や多量の飲酒が体に悪いことに異論を唱える人はさすがにもういないのだろうが,禁煙できない人は大勢いるし,自分がそれらの依存症だという病識さえない人もまだたくさんいると思われる.だが,生活習慣病の本当の恐さを知るのは病気になってからというのだから病識がないというのは哀れなものである.「人間は未来を知らされていない」というのはトルストイの民話集の一節だが,仮に生活習慣が原因で病気になることを知らされていたとしてもまだやめられないのが人間のような気がする.
スマトラ沖大地震では現時点で2万人以上が亡くなったようだ.被害に遭った人々には誠にお気の毒であるが,台風,地震,津波,火山噴火などの自然現象に対しては人間はまだほとんど無力だということを毎度思い知らされているだけだ.地球は人間の存在に関係なくその姿を変え続けているということなのだろう.とは言えプーケットに余暇に行った人々にとってはまさに天国から地獄だっただろう.
地球の歴史からみれば人間はほんの一瞬の存在にすぎないが,これほどまでに人間が増えて地球環境に変化を与えればそのうち人間自身の手で地球環境を激変させることになるかも知れない.それは人類が地球史上最も繁栄した生物である証になるのかも知れないが,自ら造り出した環境に適応して絶滅をまぬがれることができるのだろうか.
開発による環境破壊もある意味で喫煙と同じようなものに思える.悪いのはわかっているがやめられない.もうすぐ2004年も終わりである.明日の事も知ることのできない我が身ではあるが,来年はいったいどんな1年になるのであろうか.
健康保険の次は介護保険というわけね.
2004年12月27日 医療の問題『厚生労働省は05年の介護保険制度改正で、特別養護老人ホームなどに所属するケアマネジャーらが入所者の要介護度の認定調査をすることを禁じたり、事業者が認定申請を代行するのを制限したりするなど調査を厳格化する方針を決めた。事業者による甘い調査で要介護度が上がり、必要度が低い人にまで介護サービスを提供する「過剰な掘り起こし」が給付費の急増の一因と判断した。06年4月から実施する予定。
認定調査は、介護サービスを最初に利用するときに研修を受けたケアマネジャーらが、申請した高齢者と面接して介護の必要度を調べる。継続して利用する場合も原則1年(最長2年)ごとに調査を受ける必要がある。調査をもとに、市町村の介護認定審査会で要介護度を認定する。 ケアプランを作る居宅介護支援事業者や特養などの介護保険施設は、市町村の委託を受けて認定調査をしているほか、高齢者に代わって認定を申請することができる。
厚労省は改正で、新たに認定を申請する場合の認定調査は原則市町村が行うようにする。委託する場合も介護予防や相談事業の拠点となる地域包括支援センターなどに限り、民間事業者所属のケアマネジャーは行えないようにする。継続利用の場合でも、施設のケアマネジャーが入所している高齢者の調査をすることは認めない。また、新規に認定を申請する場合は事業者が代行することは認めず、地域包括支援センターや民生委員に限る。事業者は継続利用のための申請代行はできるが、本人が承諾していないのに申請を代行するなど悪質なケースはペナルティーを科す方針だ。 厚労省は、入所施設のケアマネジャーが認定調査した場合は、それ以外と比べて要介護度が高くなる傾向があるとしている。認定申請では居宅介護支援事業者などの代行が79%を占めている。 』
どんな理由をつけてもいいが,結果的に介護認定の件数が減ればいいわけだ.こうなることはある程度予想されていたことで別に驚くにはあたらないが, 制度をつくっている厚労省にもっともそうな理由を述べられるのにはいつもながら嫌気がさしてくる.
介護保険サービスの主体はすでに民間業者である。民間業者であれば利益を追求するのはあたりまえだ。もともと民間人である経営者には医師のような医療倫理を期待するのは無理だろう。だからきちんとしたルールが必要だろう。介護認定はケアマネージャが主体だが介護サービス業者に雇用されているケアマネージャが業者に有利な判定をしてもそれを責めることはできないだろう。
そもそもは医師が勧めてもいないのに安易に介護保険をすすめる自治体の窓口が問題だろうが、これについては介護保険制度の主体が自治体に今後変わることによって財政難の自治体では抑制が起こるだろう。
医師も介護保険申請の意見書を書いている。私も当然書いているが患者の状態を書くだけで、患者さんの希望や受けられるサービスのことを考えれば、わざわざ申請に障害になるようなことはするわけがない。だから申請すればほとんど全例サービスが受けられるようになるわけだ。これのどこがいけないのだろうか?
結局、医療機関から患者さんを引き離したもののそのケアにかかる費用は以前にも増して増大し、歯止めが利かないことがこんなことをはじめる理由なのだろう。本来大多数の適正な医療倫理を持った医師のいる医療機関の患者を民間業者のサービスの手に渡したのは誰だったのか、保健医療を民間業者に渡そうとしている小泉首相はわかるだろうか。
認定調査は、介護サービスを最初に利用するときに研修を受けたケアマネジャーらが、申請した高齢者と面接して介護の必要度を調べる。継続して利用する場合も原則1年(最長2年)ごとに調査を受ける必要がある。調査をもとに、市町村の介護認定審査会で要介護度を認定する。 ケアプランを作る居宅介護支援事業者や特養などの介護保険施設は、市町村の委託を受けて認定調査をしているほか、高齢者に代わって認定を申請することができる。
厚労省は改正で、新たに認定を申請する場合の認定調査は原則市町村が行うようにする。委託する場合も介護予防や相談事業の拠点となる地域包括支援センターなどに限り、民間事業者所属のケアマネジャーは行えないようにする。継続利用の場合でも、施設のケアマネジャーが入所している高齢者の調査をすることは認めない。また、新規に認定を申請する場合は事業者が代行することは認めず、地域包括支援センターや民生委員に限る。事業者は継続利用のための申請代行はできるが、本人が承諾していないのに申請を代行するなど悪質なケースはペナルティーを科す方針だ。 厚労省は、入所施設のケアマネジャーが認定調査した場合は、それ以外と比べて要介護度が高くなる傾向があるとしている。認定申請では居宅介護支援事業者などの代行が79%を占めている。 』
どんな理由をつけてもいいが,結果的に介護認定の件数が減ればいいわけだ.こうなることはある程度予想されていたことで別に驚くにはあたらないが, 制度をつくっている厚労省にもっともそうな理由を述べられるのにはいつもながら嫌気がさしてくる.
介護保険サービスの主体はすでに民間業者である。民間業者であれば利益を追求するのはあたりまえだ。もともと民間人である経営者には医師のような医療倫理を期待するのは無理だろう。だからきちんとしたルールが必要だろう。介護認定はケアマネージャが主体だが介護サービス業者に雇用されているケアマネージャが業者に有利な判定をしてもそれを責めることはできないだろう。
そもそもは医師が勧めてもいないのに安易に介護保険をすすめる自治体の窓口が問題だろうが、これについては介護保険制度の主体が自治体に今後変わることによって財政難の自治体では抑制が起こるだろう。
医師も介護保険申請の意見書を書いている。私も当然書いているが患者の状態を書くだけで、患者さんの希望や受けられるサービスのことを考えれば、わざわざ申請に障害になるようなことはするわけがない。だから申請すればほとんど全例サービスが受けられるようになるわけだ。これのどこがいけないのだろうか?
結局、医療機関から患者さんを引き離したもののそのケアにかかる費用は以前にも増して増大し、歯止めが利かないことがこんなことをはじめる理由なのだろう。本来大多数の適正な医療倫理を持った医師のいる医療機関の患者を民間業者のサービスの手に渡したのは誰だったのか、保健医療を民間業者に渡そうとしている小泉首相はわかるだろうか。
これも一種の延命治療?
2004年12月25日 医療の問題『--延命効果確認できず 肺がん治療薬イレッサ--
肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の比較臨床試験を日本を含まない28カ国で実施したところ、イレッサを服用した患者と偽薬をのんだ患者とで生存期間にはっきりした差はなかったとする解析結果を、輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)が23日までにまとめた。
がんの縮小についてはイレッサ服用患者で改善がみられたという。最終的な結果は来年上半期に発表する。
試験はロンドンのアストラゼネカが2003年7月から今年8月にかけ、210施設で実施。化学療法が効かない非小細胞肺がん患者を対象に、約1130人にイレッサ、約560人に偽薬を投与し、生存期間を比べた。イレッサ服用者は5.6カ月、偽薬では5.1カ月で、統計的に延命効果はみられなかった。
ただ、マレーシア、タイなどの東洋人約370人の成績は、イレッサ服用者9.5カ月、偽薬5.5カ月と生存期間の改善が示唆された。喫煙歴のない患者でも延命効果が示唆されたという。同社は、厚生労働省に結果を報告し、医療機関への情報提供を始めた。』
http://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/04_12_20.html
副作用の間質性肺炎でマスコミの格好のねたとなった期待の新薬であるが,こうなるとその終焉は近いと思われる.日本人での延命効果の解析はまだこれからであるが,延命が6ヶ月を超えることはないのだろう.
まあ,こういう薬は他にもあるのだろうが延命効果がどの程度なら健康保険の適用にするべきかという論議も今後出てくるのだろう.さて延命効果が6ヶ月の薬が保険適用外だったとして,いったいいくらだったら使ってもらおうと思うか考えてみようかと思ったのだが,よく考えるとその6ヶ月をどう使うのかということで値段も変わることに気がついた.
明日の朝にはサンタさんからのプレゼントをもらって喜ぶ子供たちの姿が全国的にみられる一方で,家族に看取られることもなくあの世へと旅立っていく患者さんたちも大勢いるのが現実の世の中なのである.明日はわが身と思わない人が多いだろうが,人間は実に簡単に死んでしまうし,自分がいつ死ぬかは幸いにも直前まで誰にも知らされていない.
6ヶ月.さて6ヶ月前は何をしていただろうか,今後の6ヶ月で何をするのだろうか.6ヶ月の延命が得られた人間としての視点から考えようとしてもそれすらできないということに気がついて今夜の私には延命治療の意味を考えることができなくなった.
肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の比較臨床試験を日本を含まない28カ国で実施したところ、イレッサを服用した患者と偽薬をのんだ患者とで生存期間にはっきりした差はなかったとする解析結果を、輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)が23日までにまとめた。
がんの縮小についてはイレッサ服用患者で改善がみられたという。最終的な結果は来年上半期に発表する。
試験はロンドンのアストラゼネカが2003年7月から今年8月にかけ、210施設で実施。化学療法が効かない非小細胞肺がん患者を対象に、約1130人にイレッサ、約560人に偽薬を投与し、生存期間を比べた。イレッサ服用者は5.6カ月、偽薬では5.1カ月で、統計的に延命効果はみられなかった。
ただ、マレーシア、タイなどの東洋人約370人の成績は、イレッサ服用者9.5カ月、偽薬5.5カ月と生存期間の改善が示唆された。喫煙歴のない患者でも延命効果が示唆されたという。同社は、厚生労働省に結果を報告し、医療機関への情報提供を始めた。』
http://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/04_12_20.html
副作用の間質性肺炎でマスコミの格好のねたとなった期待の新薬であるが,こうなるとその終焉は近いと思われる.日本人での延命効果の解析はまだこれからであるが,延命が6ヶ月を超えることはないのだろう.
まあ,こういう薬は他にもあるのだろうが延命効果がどの程度なら健康保険の適用にするべきかという論議も今後出てくるのだろう.さて延命効果が6ヶ月の薬が保険適用外だったとして,いったいいくらだったら使ってもらおうと思うか考えてみようかと思ったのだが,よく考えるとその6ヶ月をどう使うのかということで値段も変わることに気がついた.
明日の朝にはサンタさんからのプレゼントをもらって喜ぶ子供たちの姿が全国的にみられる一方で,家族に看取られることもなくあの世へと旅立っていく患者さんたちも大勢いるのが現実の世の中なのである.明日はわが身と思わない人が多いだろうが,人間は実に簡単に死んでしまうし,自分がいつ死ぬかは幸いにも直前まで誰にも知らされていない.
6ヶ月.さて6ヶ月前は何をしていただろうか,今後の6ヶ月で何をするのだろうか.6ヶ月の延命が得られた人間としての視点から考えようとしてもそれすらできないということに気がついて今夜の私には延命治療の意味を考えることができなくなった.
子供ができないと離婚?
2004年12月23日 医療の問題『--不妊治療に保険適用を 治療医ら51人が請願、採択 --
体外受精や人工授精などの不妊治療に保険適用を、と全国の不妊治療医らが訴えている。「不妊の頻度は高く、体外受精で生まれた子供は全出生児の1%を占めている。保険を適用しないのは、他の病気と比べ不公平」という理由だ。全国の不妊治療医院など122施設が集めた約1万4000人の署名を添付し、治療医51人が、衆院に請願書を提出、21日までに採択され、内閣に送られた。請願を呼び掛けたセント・ルカ産婦人科(大分市)の宇津宮隆史(うつのみや・たかふみ)院長によると、1回の体外受精費は、少なくとも30万-50万円。1回で成功するとは限らないため、借金をする夫婦や離婚の原因になるケースもあるという。
4月に始まった国の不妊治療費助成は、年10万円を上限に2年間の支給で、不妊夫婦にとっては足りない、とした。宇津宮院長は「結婚年齢の上昇や生活環境の悪化などが男女ともに影響し、不妊は今後も増える。少子問題の解決のためにも保険適用を」としている。』
「我田引水」ー不妊治療医にしてみれば健康保険が適用されればもっと治療の機会が増えるだろうから経済的にもっともな主張であろうと納得.だが,不妊治療が子供が欲しい夫婦の欲求を満たし,離婚を防いだり少子化問題を解決するなんていう理由は納得できない.結婚年齢の上昇による不妊は自然の摂理というもので病気ではない.
少子化問題は教育により国民1人あたりの生産性を上げれば解決できるだろう.不妊治療よりもこの世に生を受けながら事件や事故や親による虐待で命を失う子供たちに対する保護のほうが先だろう.少ない子供を社会のためになるようだいじに育てることのほうが大切で,団塊の世代の老化が問題になっている時代に人口を増やせば解決できる事はないだろう.
不妊治療をする一方で,家を継いでくれる男児を希望して受精卵の選択をする不妊夫婦までいるのが今の日本である.このような人たちにまで健康保険を適用する必要があるのだろうか.成功するかしないかもわからない不妊治療であるなら成功して出産した場合にのみ不妊治療の分まで補助するのが妥当だろう.
婚姻の定義は知らないが子供がいないと夫婦関係が成り立たないというならできちゃった結婚がいちばん理にかなっている.いっそのこと子供がいないと婚姻を認めないように法改正でもすれば子供ができなくていじめられる嫁も少なくなっていいだろう.(それでも男児でないといじめられるのかもしれないが..)
自分も含めて言うが,とかく医者は目の前の疾患にとらわれるあまり社会的視点を失うことが多い.そういう意味では良くも悪くも科学者であるのだろうが,本当は視野をもっと広く持つ必要があるのだろう.医療を病院の利益で考えるようではすでに医師ではないだろう.
体外受精や人工授精などの不妊治療に保険適用を、と全国の不妊治療医らが訴えている。「不妊の頻度は高く、体外受精で生まれた子供は全出生児の1%を占めている。保険を適用しないのは、他の病気と比べ不公平」という理由だ。全国の不妊治療医院など122施設が集めた約1万4000人の署名を添付し、治療医51人が、衆院に請願書を提出、21日までに採択され、内閣に送られた。請願を呼び掛けたセント・ルカ産婦人科(大分市)の宇津宮隆史(うつのみや・たかふみ)院長によると、1回の体外受精費は、少なくとも30万-50万円。1回で成功するとは限らないため、借金をする夫婦や離婚の原因になるケースもあるという。
4月に始まった国の不妊治療費助成は、年10万円を上限に2年間の支給で、不妊夫婦にとっては足りない、とした。宇津宮院長は「結婚年齢の上昇や生活環境の悪化などが男女ともに影響し、不妊は今後も増える。少子問題の解決のためにも保険適用を」としている。』
「我田引水」ー不妊治療医にしてみれば健康保険が適用されればもっと治療の機会が増えるだろうから経済的にもっともな主張であろうと納得.だが,不妊治療が子供が欲しい夫婦の欲求を満たし,離婚を防いだり少子化問題を解決するなんていう理由は納得できない.結婚年齢の上昇による不妊は自然の摂理というもので病気ではない.
少子化問題は教育により国民1人あたりの生産性を上げれば解決できるだろう.不妊治療よりもこの世に生を受けながら事件や事故や親による虐待で命を失う子供たちに対する保護のほうが先だろう.少ない子供を社会のためになるようだいじに育てることのほうが大切で,団塊の世代の老化が問題になっている時代に人口を増やせば解決できる事はないだろう.
不妊治療をする一方で,家を継いでくれる男児を希望して受精卵の選択をする不妊夫婦までいるのが今の日本である.このような人たちにまで健康保険を適用する必要があるのだろうか.成功するかしないかもわからない不妊治療であるなら成功して出産した場合にのみ不妊治療の分まで補助するのが妥当だろう.
婚姻の定義は知らないが子供がいないと夫婦関係が成り立たないというならできちゃった結婚がいちばん理にかなっている.いっそのこと子供がいないと婚姻を認めないように法改正でもすれば子供ができなくていじめられる嫁も少なくなっていいだろう.(それでも男児でないといじめられるのかもしれないが..)
自分も含めて言うが,とかく医者は目の前の疾患にとらわれるあまり社会的視点を失うことが多い.そういう意味では良くも悪くも科学者であるのだろうが,本当は視野をもっと広く持つ必要があるのだろう.医療を病院の利益で考えるようではすでに医師ではないだろう.
230万分の6に注意する?
2004年12月21日 医療の問題『--抗生物質、服用後に6人が意識失う 厚労省が注意呼びかけ--
咽頭(いんとう)炎や急性気管支炎などの感染症に処方される抗生物質「テリスロマイシン」(商品名ケテック錠)を飲んだ数時間後、一時的に意識を失う患者が昨年12月から半年で6人にのぼることが21日、厚生労働省のまとめでわかった。全員回復したが、車の運転中で事故が起きたケースもあり、同省は医療機関に処方の際の注意を呼びかける安全性情報を出した。 この錠剤は昨年10月に承認された。同12月に販売を始め、今年5月までの半年で投与患者は230万人にのぼる。
意識を失ったのは50歳〜80歳代の男女6人。70歳代男性は急性咽喉(いんこう)頭炎で1日1回2錠を処方された。最初の服用から4時間後に気を失って転倒。その日のうちに回復したが、翌日も服用4時間後に倒れて搬送された。50歳代男性は服用数時間後、車の運転中に意識をなくして対向車とぶつかり、軽傷を負ったという。 厚労省は、服用後に車の運転をしないなど、処方の際に注意するよう呼びかけている。』
先週,三共のMRがやってきてケテックもよろしくと言って帰ったばかりだったが,こういう安全情報がニュースになるともう外来では使えない.外来患者の多くは車で来ているし,高齢者も転倒の危険があるのではやはり使いにくい.
もっとも230万人で6人しか起きない副作用をどう考えるのかという問題もある.だが,この情報を患者に話せば他の薬を希望されるだろう.期待の新薬もこのまま消えてしまうのだろうか?薬の副作用なんてものはもともと非常に低い確率で起こるから薬が実用になるのであって副作用が0なんて薬はきっと効果も0だろう.
いまや薬の情報もマスコミから流れるようになり記事の書き方やテレビ番組での取り上げ方によっては世間が大騒ぎという時代である.どうせやるなら副作用情報を世間の人に徹底的に公開して自分で使いたい薬を決めさせてあげたらどうだろうか.そういえば混合診療で問題になった未承認の抗がん剤なんていうのもマスコミが取り上げて話題になった結果,国内の治験が終わらなくても使えるようになったらしい.これなどもマスコミ主導で患者が使う薬を選んだ結果だろう.
これを患者のニーズなどと言った人がいたようだが,さて副作用で患者の状態が悪くなったら誰の責任なのか,この際はっきりさせておいてもらいたいものだ.
咽頭(いんとう)炎や急性気管支炎などの感染症に処方される抗生物質「テリスロマイシン」(商品名ケテック錠)を飲んだ数時間後、一時的に意識を失う患者が昨年12月から半年で6人にのぼることが21日、厚生労働省のまとめでわかった。全員回復したが、車の運転中で事故が起きたケースもあり、同省は医療機関に処方の際の注意を呼びかける安全性情報を出した。 この錠剤は昨年10月に承認された。同12月に販売を始め、今年5月までの半年で投与患者は230万人にのぼる。
意識を失ったのは50歳〜80歳代の男女6人。70歳代男性は急性咽喉(いんこう)頭炎で1日1回2錠を処方された。最初の服用から4時間後に気を失って転倒。その日のうちに回復したが、翌日も服用4時間後に倒れて搬送された。50歳代男性は服用数時間後、車の運転中に意識をなくして対向車とぶつかり、軽傷を負ったという。 厚労省は、服用後に車の運転をしないなど、処方の際に注意するよう呼びかけている。』
先週,三共のMRがやってきてケテックもよろしくと言って帰ったばかりだったが,こういう安全情報がニュースになるともう外来では使えない.外来患者の多くは車で来ているし,高齢者も転倒の危険があるのではやはり使いにくい.
もっとも230万人で6人しか起きない副作用をどう考えるのかという問題もある.だが,この情報を患者に話せば他の薬を希望されるだろう.期待の新薬もこのまま消えてしまうのだろうか?薬の副作用なんてものはもともと非常に低い確率で起こるから薬が実用になるのであって副作用が0なんて薬はきっと効果も0だろう.
いまや薬の情報もマスコミから流れるようになり記事の書き方やテレビ番組での取り上げ方によっては世間が大騒ぎという時代である.どうせやるなら副作用情報を世間の人に徹底的に公開して自分で使いたい薬を決めさせてあげたらどうだろうか.そういえば混合診療で問題になった未承認の抗がん剤なんていうのもマスコミが取り上げて話題になった結果,国内の治験が終わらなくても使えるようになったらしい.これなどもマスコミ主導で患者が使う薬を選んだ結果だろう.
これを患者のニーズなどと言った人がいたようだが,さて副作用で患者の状態が悪くなったら誰の責任なのか,この際はっきりさせておいてもらいたいものだ.