医食同源

2004年8月5日
『共和党を支持する「赤い米国」と民主党を支持する「青い米国」。その価値観の対立が、先日の米民主党全国大会でも話題になった。興味深いのは、「すしを食べる」ことが「青」の人々の象徴的な生活スタイルに分類されている点だ。「赤青現象」は、しこりを残した2000年大統領選後の米国内の政治状況を、学者や評論家が分析したもの。すしは、「赤」の人々がバーベキューを好むのと対比させた概念として登場する。リベラルなインテリの食べ物といった感覚が、そこにある。「青」の人々は東と西の海岸沿いの州に多く住む。その間に広がる内陸部は圧倒的に「赤」の世界だ。すしは今や米国でもポピュラーな存在。ワシントン郊外ではスーパーでも売っている。とはいえ、確かに田舎ではあまり目にしない。ブッシュ大統領が昨年10月に訪日した時のことを思い出した。日本政府は小泉純一郎首相との夕食会に鉄板焼きの高級和牛を用意した。すしの嫌いな大統領に配慮してのことだ。事前のテレビのインタビューで自分のことを「ビーフマン」と公言していた大統領は、苦手の生魚に出合わずにご満悦の様子だった。すしを食べる人が「青=民主党支持」に色分けされるのは、こんな背景もあるかもしれない。牛肉を食べる「赤」こそが米国社会の主流なのだという共和党側のイメージ戦略もちらつく。もちろん、すしが大好物の共和党員もいるし、高くて手が出ない民主党員も少なくないだろう。しかし、大統領選まで、すしを食べる時は周囲をじっくり観察することにしよう。』

『衆院農林水産委員会は4日、牛海綿状脳症(BSE)問題を質疑し、国内で実施している全頭検査の見直しは「対米譲歩ではないか」との疑念が与野党から相次いだ。政府側は「国民の安全重視」(亀井善之農相)と答弁するのが精いっぱいだった。西川京子氏(自民)は「米国に譲歩したような印象を与えてもいいのか」、楢崎欣弥氏(民主)も「米大統領選を配慮しているのでは」とただした。これに対して亀井農相は「国民の安全・安心を確保し、理解を得ることが大事。(大統領選には)いささかも左右されない」と答弁した。また全頭検査の必要性ついての問いに関して、政府側は全頭検査の意義を認めながらも、今後の対応は「食品安全委員会の議論を注視したい」と繰り返した。』

医食同源とは中国の言葉だったろうか,米国では政食同源とでもいうのであろうか.以前に『米国式の食生活はリスクが高い』という日記を書いたが,動脈硬化とプリオン病で頭がおかしくなる確率は果物、野菜、魚、全粒穀物をたくさん食べているほうが少ないはずで,そういう点から見ても「青=民主党支持」のほうがクールに思える.

血の気の多い牛肉を好む人は好戦的なイメージがするのは私だけだろうか.イラク戦争とBSEのおかげで牛肉はなくても我慢ができるようになったことは経済的にも健康上もありがたいことである.日本はむしろブッシュ大統領を反面教師とすべきだ.農相で思い出したが,輸入牛肉を諫早湾のような無責任な結果に終わらせないように国民は十分に政府を監視し批判すべきであろう.
『厚生労働省によると、2002年度の1年間に使った国民医療費は約31兆1200億円。前年度に比べ0・6%減った。前年度比でマイナスとなったのは、介護保険制度が始まった2000年度(1・9%減)以来のことで、わずかでも医療費が減ることは財政的には喜ばしいことかもしれない。だが、医療現場では「患者が検査や治療を控える受診抑制の傾向が見られ、この先が心配だ」との声が聞かれる。症状が軽いときにきちんとした治療を受けないと、症状が重くなってしまう。結果として国民の健康を損なうだけではなく、かえって医療費を増やす恐れがあるというのだ。医療費の無駄は徹底して排除しなければならないが、受診抑制が度を越せば元も子もなくなる。医療費減少には正確な分析と冷静な判断が必要だ。医療費の減少には、いくつかの原因が考えられるが、初の診療報酬引き下げ(薬価を含め平均マイナス2・7%)が最大の原因であることに異論はないだろう。今でも医療関係団体や開業医には不評だが、物価や賃金の下落が続く中で、医療の値段を引き下げの例外としなかった判断は決して間違っていない。それでも、少子高齢化で若者に比べて病気にかかりやすい高齢者が増えていることや現状の医療水準を考えると、ある程度、医療費が増え続けることは避けられない。問題は受診抑制が、会社員や公務員ら健康保険など被用者保険の加入者に加え、高齢者の間にも浸透し始めていることだ。日本医師会総合政策研究機構の調査では、老人保健制度の加入者にも02年ごろから医療費の減少傾向が出始め、03年10月の時点で前年同月比1・5%減となった。ちなみに被用者保険の加入者は3・3%も減った。一方、被用者保険の家族と国民健康保険の加入者はともに増加傾向にある。つまりサラリーマンらと高齢者の間に受診抑制が起きている。高齢者が受診を控える背景として、02年度の医療制度改革などに伴う高齢者の負担増が考えられる。例えば、同年10月から、70歳以上の窓口負担が定率1割(所得の多い人は2割負担)となったり、一定額以上の医療費が払い戻される「償還制」で自己負担の上限額が引き上げられたりした。政府は、社会保障制度の財源について「お年寄りにも応分の負担を」と訴え続けている。財政難の折、所得の多い高齢者に応分の負担を求めることは当然だが、高齢者世帯の多くが年収400万円に満たない。生活費の柱である年金への不安が広がる中で、医療費の負担増は痛い。厚労省が指摘するように、65歳以上が国民医療費の49%(02年度)を使っていることは確かであり、老人医療費をどうするかは国家的な課題だ。だが、高齢者やサラリーマンが家計への影響を心配し、病院や診療所に足を運ばなくなるのは、国民の健康増進を掲げる国民皆保険制度の理念から逸脱している。』

本当の医療費の無駄とは病気で無い人が病院にかかり健康保険を使うことだろう.それ以外は無駄ではない.医療費の自己負担を懸念して受診抑制することは本当に病気だった場合はかわいそうだが医療費抑制を目的としている以上こういった状態は避けようがないだろう.そもそも先進国で最低レベルの医療費をさらに下げようというのだから国民皆保険制度の理念など言うのは無意味だろう.

政府は、社会保障制度の財源について「お年寄りにも応分の負担を」と訴え続けていると言うが,医療費を抑制するなら国民にも応分の負担として医療サービスの質の低下を受け入れてもらうしかないだろう.医療に資本主義の原理を持ち込めばそういう結末になるだろう.
『--逮捕の少年、大麻欲しさ窃盗 教育現場にショック--
 県内の高校生らが大麻欲しさに金庫破りなどの盗みを重ね、大麻取締法違反(所持など)や窃盗容疑などで逮捕されていたことが14日、明らかになった。少年らは金だけでなく、大麻を計量する上皿てんびんまで出身中学から盗み出したとみられる。警視庁の調べに少年らは「(大麻を)学校で吸った」と話しており、高校での薬物汚染の広がりに、教育現場はショックを受けている。警視庁に捕まった県内の高校生(当時)は少女を含め計9人。大麻などの薬物を乱用していた少年13人も補導された。
県教育局は終日情報収集に追われ、同局生徒指導室の中村幸一室長は「事実とすればあってはならないこと。(今後)どうすればいいのか」と述べた。同局は、県内の公立高校長に薬物乱用防止指導を徹底するよう文書で依頼したが、「報道で知って事実関係の把握に努めているが、学校の特定もままならない」(同局幹部)という。生徒2人が逮捕された県東部の県立高の教頭は「報道されている通りならショックで残念」と話した。事態を把握し、生徒や保護者に説明して対応策を検討するという。同校によると逮捕された生徒らは「多少ルーズなところはあるが、こんな事件にかかわるような態度はなかった」と説明している。学校内が大麻の吸飲や受け渡し場所になっていた疑いもあるが「たばこの吸いがらの有無などは常にチェックしているが、大麻と思われるものは見つかっていない」としている。大麻所持で昨年11月、逮捕された生徒から事前に「大麻を吸った」などと相談があり、担任らが指導をしていたという。一方、同高近くの市立中では4月、理科室から上皿てんびんが盗まれる事件があり、同中の卒業生で高校生グループの仲間が、大麻を計量するために盗み出した疑いが持たれている。校長は「なんでそんなもの(大麻)に手を出したのか、がっかりした」と話した。また、窃盗の疑いで逮捕された少年(17)が通っていた県中部の私立高は14日、職員会議を開き、17日の全校集会で事件を生徒に報告することを決めた。教頭は「(もし他の在校生の)関与があれば見過ごせない。調査をせざるを得ない」と話した。同校によると、逮捕された少年は、4月の新学期が始まってから休みがちになり同月20日ごろ、母親から退学届が提出され、同月30日に受理された。同校教諭の1人は生徒について「明るく身だしなみもきちんとしていた」などと話した。』

たばこでさえやめられない人間が多いのだからより依存性や習慣性の強い麻薬は一度手をつけたらやめらるわけがない.教育現場はまたもショックを受けたそうだが,殺人の低年齢化やHIV感染はここ数年の問題だが麻薬やシンナーや喫煙といった問題は昔からあることでなんでそんなことにいまさらショックを受けるのだろうか.

教育者の犯罪が社会問題になっている一方で社会問題や犯罪に鈍感な教師が多いだけなのではないだろうか.自分の生徒を危険から守る危機管理意識が欠けているという点から見ればこれも人を教育するものとしての資質の問題である.そういえば親に虐待されて不登校になった児童の家まで行っても虐待に気がつかなかった教師もいた.

もっとも教師が麻薬に敏感になったとしても犯罪は減るわけもない.中国などに比べるとわが国は麻薬に関しては刑罰が軽いのも気になる点だ.特に麻薬を資金源にしている犯罪者に対する刑罰は軽すぎるだろう.これが麻薬撲滅できない本当の理由のような気がするがどうだろうか.

麻薬が本人の健康を害するだけなら煙草と同じかもしれないが,その習慣性の強さと高価であるがゆえに強盗や窃盗の原因になったり,覚せい剤のように精神に異常をきたして殺人を犯したりと他の犯罪の原因となる点が非常に危険である.外国人強盗や精神異常者の殺人が社会問題となっている割には麻薬に対する認識は低すぎはしないだろうか.

もっとも喫煙による健康被害の数に比べれば麻薬ははるかに発生件数が少ないというのならまず受動喫煙に対する罰則をつくるべきなのかもしれないが.
『--1年で4人に3人退院を 精神障害者の復帰促す --
精神障害者が症状が重くないのに入院を続ける「社会的入院」解消を検討している厚生労働省の「精神病床に関する検討会」は26日、新しい入院患者が1年後に残る割合「平均残存率」を23-24%とするなど、具体的な数値目標を設定した報告書をまとめ、大筋で合意した。精神障害者の場合、入院治療を続けるほどの症状ではないが、受け入れ先がないためやむを得ず継続する社会的入院の解消が課題となっている。報告書には都道府県ごとの10年後の達成目標も盛り込まれている。平均残存率の目標数値は、既に上位の数県で達成している数値を平均した。1年以上入院している患者が、さらに1年後までに退院する割合を示す「退院率」については、28-29%を目指す。上位以外の都道府県は10年後の達成を目指し、現状と目標の中間値を5年後の目標と定める。さらに(1)症状が重い期間に手厚い医療を施す(2)退院支援を専門的に行う?体制づくりを目指し、患者に応じた病院の機能分化を進めることも盛り込まれた。』

『健康保険組合連合会は26日、大企業のサラリーマンが加入する健康保険組合の2003年度決算見込みを発表した。経常収支は、過去最悪だった前年度の3999億円の赤字から一転し、1385億円の黒字となった。黒字は医療費の本人負担分が1割から2割に引き上げられた1998年度以来5年ぶり。』

痴呆老人や寝たきり老人の社会的入院をなくすための介護保険制度がつくられた.次は精神障害者と身体障害者の福祉を介護保険に抱き合わせにするシナリオがすでにできているのだが,これは精神障害者の社会的入院をなくすための布石でもあったわけだ.なるほど厚生労働省らしいやり方だ.

健康保険組合連合会は黒字傾向になってほっと一安心したことだろうが,組合員たる国民は決して安心などできない.医療費や医療保険料が増えるとこまるのは国や企業もなのであるが,介護保険の主体である地方自治体は今後財政が悪化するだろう.そうなるといずれは地方税を上げざるを得なくなるだろう.

結局は老人や精神障害者の社会的入院にかかっていた費用は地方自治体の介護保険と個人が負担することになりサービスの低下と費用の増大などの問題が顕在化していくことになるだろう.そのいい例が最近の介護保険料の増大とグループホームの設置規制などである.

病院から追い出され,グループホームにも入れない老人は家庭で介護せよというのが政府の方針なのだろうか.共働きの夫婦には受け入れられない条件だろう.こんどはそれに精神障害者が加わるわけである.子供も老人も障害者もちゃんと面倒を見てもらえないで安心して働けるわけがないだろう.それとも女性はパートをやめて家にいるのが政府の理想とでもいうのだろうか.

税金はとれるだけ取っておいてこれはないだろう.福祉に関しては国はほとんどを地方自治体に丸投げにするつもりのように見える.だが,今のところ地方自治体の財源は限られている.もうそろそろ介護保険で破綻する自治体が続出してもおかしくない時期であるが,今後さらにその傾向は過疎地域で加速することであろう.
『資生堂は23日、キリンビールとの共同研究で、ビールの原料であるホップから抽出した成分に色素細胞を増やす効果を見つけたと発表した。色素細胞は皮膚と同様に毛髪に色を付ける働きがあり、年内にもホップの成分を配合した育毛料を発売するという。
資生堂によると、頭皮の色素細胞の増殖が老化などで正常に機能しなくなると、髪の色素が欠落し白髪になる。そこで、ホップの成分を調べたところ、この細胞を活性化させる効果を世界で初めて見つけたという。ただ、ホップ成分が白髪を予防する効果は多数の人を対象にした臨床試験で確認されておらず、発売する育毛料は薬事法上の理由で白髪の予防効果をうたわないという。』

以前よりアルコールによる虚血性心疾患のリスクの減少がいわれているが,同様の効果は脳血管にもあると考えられえる.それを理由に毎日350〜500mlのビールを飲んでいるのだが,このニュースはさらなる大義名分を私に与えてくれるものでありがたい.

発泡酒にもホップは入っているので効果はあるのかもしれないが,どうにもビール並においしい発泡酒が出てこないので私は相変わらずビールなのだ.もともとサッポロ黒ラベルが好きだったのだが数年前からサントリーのMALTSがメインになっている.

今年は特に暑い夏なのでビールを飲む機会は多くなるかもしれない.ただ,飲みすぎると脳出血のリスクが高くなるので血圧が高い人は特に注意をしたほうがいいだろう.
『外務省で開かれていた牛海綿状脳症(BSE)に関する3回目の日米専門家・実務者会合は22日、2日間の討議を終え、若い牛の感染を発見できず全頭検査に限界があることで合意したことを盛り込んだ報告書を公表した。報告書は、日米双方のBSE対策について科学的な検討を加え、脳、脊髄(せきずい)、腸の一部など食べると危険な部分を除去することが「非常に重要だ」と強調した。全頭検査については「若い牛については、現在の検査方法では異常プリオンの検出はありそうにない」と言う表現で限界を指摘した。日本国内では、内閣府の食品安全委員会が全頭検査の見直しを検討しており、8月上旬にもプリオン専門調査会を開く。日本側の全頭検査の基準緩和が進めば、米国産牛肉の対日輸出の解禁の環境が整う。日米両政府は、報告書を踏まえて8月下旬にも高級事務レベル協議を開き、牛肉貿易の再開に必要な具体的な条件を詰める。米側も脳など特定危険部位の除去を徹底、お互いに歩み寄ることで日米で内外無差別の統一基準を作り、相互に牛肉貿易を解禁する方向だ。専門家会合で、米側は牛の月齢確認や特定危険部位の適切な除去など、日本側が要求している衛生基準について、米農務省が認証する仕組みがあることも説明した。専門家会合では、若い牛の具体的な月齢については議論されなかった。報告書は、BSEの定義・検査方法など7項目で構成、飼料規制など見解が異なる部分では両論併記の形をとった。専門家会合には、小野寺節東大大学院教授、三輪昭外務省経済局審議官、フェルナンデス米農務省動植物検疫局次長らが出席した。』

新聞で米国産牛肉食べますか?の広告が最近よく出ているが私は迷わずNOにチェックマークである.いくら安全といわれても結局米国側の圧力に屈する形で合意したように見えるから信用ならないのである.日本が米国の農業戦略に組み込まれて久しいが事あるごとにこれが垣間見えるのに何の手も打たなかった(打てなかった?)政府は日本国民と米国農民のどちらの味方なのだろうか?
『英国の受精・胎生学局は21日、病気の子供に骨髄移植などの治療を受けさせるため、次に生まれる子供が骨髄提供者になれるかどうかの受精卵診断と、受精卵の選別を認めると発表した。英国はこれまで、遺伝病を防ぐ目的でのみ受精卵診断を認めてきたが、骨髄提供の適否を調べる診断でも受精卵に害がないことを確認できたとして要件を緩和した。治療では、体外受精した複数の受精卵のうち、病気の子供の組織のタイプと一致する受精卵だけを選び、母親の子宮に着床させる。生まれた子供のへその緒や骨髄が、病気の子供の治療に有用となる。治療が認められるのは、これが最後の手段である「極めて少数」の家族になるという。英国ではこれまで、血液病の子供を持つ親が、受精卵診断の規制が緩やかな米国に渡って治療を受けた例があり、同様な事情の家族は緩和決定を歓迎。一方、生命倫理団体は「完ぺきな人間をつくろうとするのは誤りだ」と批判している。』

自分がもし同胞を救うための臓器提供者として作られた子供だと知ったらどう考えて自分の存在というものを受け入れることができるのだろうか.この考え方の延長には受精卵から必要なものを作り出すという結果しか残らないだろう.へその緒や骨髄を提供してもらってもかまわないというのは相手が新生児であるから許されるという問題なのだろうか.

いつか受精卵から必要な臓器だけを分化させる技術ができたら受精卵はどんどん臓器移植に使われるだろうがそこにどんな意味があるのだろうか.そんなことをするくらいなら遺伝的欠陥のある受精卵を廃棄したほうがはるかに効率がいいことになってしまう.それはすなわち完ぺきな人間をつくろうとすることにほかならない.

これでは人類は家畜と同じである.遺伝子のエラーをなくして優良な労働者を量産すればよいだけなのだから.だが,優秀な遺伝子のコピーをいくら作っても人類の進化はないだろう.ある程度偶発的なエラーを許容していかなければ人類の遺伝子の進化はあり得ないと思うのだが.
『広島市は20日、原爆被害に関するさまざまなデータをまとめた「原爆被爆者対策事業概要」を発表。広島市内に住む被爆者(長崎での被爆も含む)の平均年齢は3月末時点で72.2歳で、昨年3月末より0.7歳上がった。被爆者健康手帳を持つ人を被爆者として数えた。同市内に住む被爆者は8万3732人で、昨年3月末と比べ、1333人減ったことも分かった。全国の被爆者数は27万3918人で、昨年から5256人減少した。』

米国政府は真珠湾攻撃にしても9・11にしても自国が攻撃を受けたことを米国民に決して忘れさせない.しかも,どういう形であれそれを政治的に利用することも決して忘れない.原子爆弾の実用化から近代兵器のテストまで米国の大儀のもとに他国民を使って兵器の人体実験をやっているようなものだ.そのやり方は非情で合理的である.

毎年8月というと原爆記念日の朝の黙祷がテレビでやっていたりしたものだが,平和的な日本人はノーモア・ヒロシマとはいってもリメンバー・ヒロシマとかリメンバー・ナガサキとは言わない.9・11の米国の犠牲者は5000人だったが,日本の原爆の犠牲者は少なくみても数十万人規模である.

米国人は日本の原爆の犠牲者数を知らなくとも9・11での犠牲者数は忘れられないだろう.広島に原爆を投下したB29爆撃機エノラ・ゲイがワシントン郊外のスミソニアン航空宇宙博物館に展示されたが,真珠湾の戦艦アリゾナのような戦史はそこにはない.「原爆投下が戦争終結を早め、多くの人命を救った」といいたい政治的意図があるのだろう.

しかるに日本はどうだろうか.世界で唯一原爆を体験したはずの日本がそれを忘れているのはなぜなのだろう.いやな思い出は忘れたいからなのか.それとも政治的な意図がはたらいているのか.戦争が日常化してしまった今こそ平和のために日本人はリメンバー・ヒロシマというべきなのかもしれない.
『横浜市中区の産婦人科「伊勢佐木クリニック」(原田慶堂(はらだ・けいどう)院長)が、妊娠12週以上の中絶胎児を一般ごみとして捨てていた疑いがあるとして、横浜市は20日までに立ち入り調査をした。墓地埋葬法は妊娠12週以上の中絶胎児は死体として扱うよう定めており、火葬・埋葬することになっている。市によると、同クリニックで12週以上の中絶胎児の手足を切断し、一般ごみとして捨てていた、との情報が市に寄せられた。今月中旬、立ち入り調査し、関係書類の提出を求めたという。市は、感染性廃棄物の適正処理を定めた廃棄物処理法や医療法にも違反する疑いがあるとみている。横浜市の調査に対し、原田院長は「中絶胎児は以前から適正に処理してきた。問題はない」と話しているという。一方、12週未満の中絶胎児は死体とみなされず、その扱いについて法的な位置付けははっきりしていない。同クリニックはベッド数が2つの診療所。この日は玄関に「本日休診」と張られ、関係者の出入りは見られなかった。』

『横浜市内のクリニックが中絶胎児を一般ごみとして捨てていた疑いがある問題について、坂口力厚生労働相は20日の閣議後記者会見で「事実なら大変なこと。きちんと調査して対処したい」と述べ、胎児の扱いを検討する考えを示した。坂口厚労相は「少ない月数でも胎児が生存可能になってきた。死産、流産、中絶の場合はどう扱うか、今まで考えていた月数だけで処理するのでなく現在の医学に照らして考えたい」とした。同省の省令は妊娠12週以後を「死産」として届けるよう規定。この趣旨に基づき墓地埋葬法は12週以後の胎児を「死体」として火葬・埋葬対象としている。12週未満の胎児は規定がなく、扱いはあいまいだ。胎児の妊娠週数での線引きや処理方法、医療機関への指導など多くの分野にまたがるため、同省生活衛生課の担当者は「まず問題点を整理して、対応を検討したい」と話している。』

法律が倫理観を規定することはありえない.これは順番が逆である.倫理観に基づいて死体の法的規定をすべきであるはずだが,それ以前に現在の日本人の倫理観は胎児を人間だとは思っていないらしい.胎児が死体であるならば中絶は殺人ではないのか.

新聞を読んでいると胎児をはさみで切り刻んで一般ゴミとして捨てていたと書いてあり,その行為がいかにも残虐な行為で証言した看護師は胎児に謝りながらやっていたなどと書かれていたが,中絶には罪の意識はなかったのだろうか.死体を切り刻むのが悪で命を奪うことは正当な理由があれば仕方がないとはどういう気持ちで言えるのだろうか.

ちょっと考えてもらいたい.低酸素脳症で意識がなく寝たきりの人間と人間として発生していく途中の胎児の違いはどこにあってどちらの命を奪ったら殺人になりその倫理上の根拠はどこにあるのかということを.もちろん低酸素脳症で意識がなく寝たきりの人が人為的に命を奪われれば殺人である.医療事故であれば業務上過失致死罪に問われる.では胎児ならなぜ殺人にならないのだろうか.

分娩されて個体で存在し得ないというのは理由にならない.人工呼吸器や経管栄養でないと生きられない人はたくさんいる.自分で意志表示できない点でも同じである.低酸素脳症の脳には障害があるが,正常胎児の脳には障害はない.それは発達して個性を持ったヒトの脳になるものだ.

私からみれば人間は受精して発生が始まった時点からすでに人間であり.人為的に命を絶つ行為はすべて殺人である.生殖医学に携わる者にこういった考えを持つ人が少ないと思うのだが気のせいだろうか.少数の選ばれた人間のために闇に葬られている人間のなんと多いことか.

人の幸せを言うのなら生殖医療のこういった影の部分を社会としてきちんと解決していかないといけないだろう.親の都合で中絶もやむを得ないという産婦人科医は,家族の都合で患者の生命維持装置をはずすのと同じことをしていることに気づくべきである.
『-BSE感染:米検査は対象牛の4分の1未満 ずさんさ明白-
米農務省が02年以降、BSE(牛海綿状脳症)感染の可能性がある中枢神経障害の症状を示した牛680頭を米国内で発見したが、感染検査を行ったのは4分の1未満の162頭だったことが、同省監査局の内部報告書で13日分かった。監査局によると、6月に始まった拡大検査でも、チェック漏れの条件は残っており、「米国の牛は安全」との同省の主張の信頼性を損ないかねないという。米国の検査体制のずさんさが浮き彫りになったことで、米国産牛肉の輸入再開に向けた日米交渉にも影響を及ぼすものと見られる。
報告書は原案で、昨年12月に米国初のBSE感染牛が発見された後の検査体制などを分析している。米下院政府改革委員会のワックスマン議員(民主党)が公表した。同委は14日に公聴会を開催、ベネマン農務長官から事情を聴く。報告書によると、検査体制の不備や関連機関の連絡不足などで、中枢神経系障害の症状が見られる牛の多くが検査されなかった。BSEに症状が似ている狂犬病が疑われ、検査結果が陰性だった場合、別途BSEの追加検査が行われたのは、586例中2割未満の94例だけだった。報告書は、20万頭以上を対象にした拡大検査体制も「すべての感染牛が、歩けないなどリスクの高い牛のグループに存在する」との前提に問題があると明言。健康に見える牛でも感染していた事例があり、同省が予定している2万頭の「健康牛」検査は不十分だと指摘した。さらに「ハイリスク」と考えられる牧場で死んだ牛についても、検体収集システムが確立されていないとも述べた。農務省側は報告書公表を受け13日に電話会見を行い「指摘は3月中旬ごろの状況に基づいたもので、その後改善した点も多い」などと反論した。』

『米国民の2大死因である心臓病と癌のリスクを減らすとして一般的に推奨されている食事は、3番目の死因である脳卒中のリスクも減らす。 脳卒中は45秒に1名の米国人を襲い、3分に1名の生命を奪っている。その脳卒中のリスクを減らすための食べる保険として研究者らが勧めるのは、この場合もやはり果物、野菜、その他の高繊維食品をたくさん摂り、ほとんどの人がいつも食べているものは減らすというものだ。約72,000名の女性を対象にした14年間の追跡によって、果物、野菜、魚、全粒穀物をたくさん食べていた女性は、そうした健康的な食品を食べる量が少ない女性に比べて、脳卒中になる傾向が小さいことがわかった。健康的でない食事とは、多くの米国人の典型的な食事すなわち、生鮮肉、加工肉食品、精製穀物、甘いものをより大量に食べるというものだ。この発見は明白であると言ってもいいが、新たな側面もある。過去には、個々の食事及び栄養と脳卒中との関連を探った研究がいくつか行われてきた。「しかし、食習慣全体が脳卒中にどのくらい影響を与えるのかを調べた研究はこれが初めてのものだ」と筆頭著者でシモンズ健康科学大学(ボストン)とハーバード大学公衆衛生学部の栄養学者のTeresa Fung, ScDは語る。「今回の研究の重要な点は、食習慣について一般的な方向性を人々に示したことにある」。』

以前にも米国からの輸入かんきつ類に米国内では使用禁止の防腐剤がつかわれていたことがあった.そんなことはもう忘れたのだろうか.米国の農家が輸出用牛肉の安全確保に費用をかけることを期待する日本人は本当におめでたいとしかいいようがない.

パンと牛肉と牛乳に関する食生活は戦後に米国によって日本に定着し,これにより日本は食料の自給自足ができなくなったとも言える.そして現在はBSEで牛肉の輸入ができなくなった.だが,日本政府が米国に圧力をかけられ危険な牛肉がひそかに市場に流れ出る危険はないのだろうか.

いろいろ考えると健康の面からはこのような米国式の食事はやめたほうがよさそうである.米国産の農産物は信用できない.やはり国産の野菜と穀物と魚や鶏を主体とした食事のほうがずっと体にはよさそうだ.歳をとるとともに焼肉を食べ過ぎると翌朝体調不良になるのが気になっていたのだが,この際牛肉は避けてみよう.
『バンコクで開催中の国際エイズ会議で、ブッシュ米政権のエイズ政策に対し、他国の政府や市民活動家から「途上国軽視」「保守的すぎる」との批判が噴出している。批判の先鋒(せんぽう)の1人はフランスのシラク大統領。大統領は会議に寄せた書簡で、米国が途上国との間で進めている自由貿易協定(FTA)交渉で、自国の製薬会社保護のために相手国に安価なエイズ薬製造の権利を放棄するよう求めていると批判し、「(途上国に対する)脅迫に等しい」と述べた。14日に米政府代表が会議で演説した際には、ブッシュ政権のエイズへの取り組みが不十分だと主張する活動家約50人が、演壇の下で「彼はうそつきだ」と書かれたプラカードを聴衆に向け掲げ続けた。中絶に反対し、エイズ予防で「コンドーム」より「禁欲」を重視する傾向が強いとみなされている米現政権の「保守的」姿勢も批判の的になっている。会議では「愛情ある結婚生活はコンドームより重要」と米支援の論陣を張ったウガンダのムゼベニ大統領に対し、参加者からは「まったく科学的でない」との反論が続出した。会議は16日に6日間の日程を終え閉幕する予定。』

『国連児童基金(ユニセフ)などは13日、エイズにより親を失った子どもが過去2年間で350万人増え、2003年末までに1500万人に上ったとする「世界の孤児の現状に関する報告書」をバンコクで開催中の第15回国際エイズ会議で発表した。報告書によると、03年末時点の世界の孤児の総数は、1990年より500万人多い約1億4300万人。全世界の子どものうち孤児が占める割合は8・4%で、最も高い国はアフリカのボツワナで20%だった。エイズに起因する孤児も特にアフリカで急増しており、90年の55万人から2003年には1230万人となり同地域の全孤児の28・3%を占めた。アフリカのエイズによる孤児は10年には1840万人に達すると見込まれ、同地域のすべての孤児の約36・8%を占めると予想されるという。またエイズ孤児の増加により、10年にはボツワナのほかレソト、スワジランド、ジンバブエで子どものうち孤児が占める割合が20%を上回ると見込まれている。』

『--イラク戦争:死亡米兵の45%は貧しい小さな町の若者--
イラク戦争の開始(昨年3月)から今月15日までに死亡した米兵の約45%が、人口4万人以下の小さな町の出身者であることが、米メディアや毎日新聞の調査で分かった。これらの町の総人口が米国全体に占める割合は27%に過ぎず、大都市から離れて経済的に恵まれない小さな町ほど戦争のしわ寄せを受ける実態が明らかになった。』

ブッシュ大統領のはじめたイラク戦争は米国市民の犠牲も増やしただけだった.それも低所得者層に負担を強いる結果となったようだ.自国でさえこんな状態なのだから,大儀のないこの戦争で犠牲になった他国の一般人の補償をする気など大統領にはあるわけもないだろう.

世界の平和と安定を声高にかかげる米国がAIDSや環境問題になると本音をさらけ出して自国の企業の利益ばかりを主張する.戦争を起こして利益を上げたのは武器商人だけだろう.要するにブッシュ大統領は経済的に強いものの味方というだけである.日本のコイズミとかいう首相も米国遊学でそんなもののまねをすることだけをおぼえて来たのであろうか.

米国に行って臓器移植を受けるというと寄付金がたくさん集まるのはすばらしいが,アフリカにAIDSの治療の寄付をといってもあまり集まらないらしい.なんでも米国というとありがたがるのが日本人が敗戦で失ったもののせいだとすると米国がイラクを第2の日本のようにしようともくろんだ理由もわかる気がする.
憲法で定められた基本的人権.

では,現在の日本で人権を認めるヒトの定義はいったい何なのであろうか.最近この日記で生殖医療のあるかたに関していろいろ発言させてもらったが,私が日常診ている遷延性意識障害の人たちについても私にはどこまでがヒトなのかよくわからない.

生きていれば生物学的には人間なのではあるが,ヒトとしての個性をどこに求めるかで社会的なヒトの意味は変わってくると考えられる.ヒトとはいったい何なのであろうか.

例えばヒトの胚としての受精卵も植物状態の人も生物学的には人間である.状態が異なってはいるがどちらも生物学的人間のある状態であり同じ生物であることは疑いが無い.

では,人間としての知性があればヒトであると仮定するとどうなるであろうか.受精卵や胎児に知性があるとは思えないし,遷延性意識障害の人にも知性を認めることは不可能である.では人工知能が知性のようなものを持てばヒトになるのであろうか.

現在はまさに社会的な人間の定義が生物学的人間の定義のどこまでをヒトと認めるかが不明瞭になっている時代である.

アンドロイドにヒトと同じ権利を認めた米国のSFテレビドラマがあったが,生殖医療が問題になっている現在にはまず人の発生のどの段階からを社会的なヒトと考えるかをあらためて考える時期にきていると思われる.
『日本に生殖補助医療を規制する法律はなく、これまでは、日本産科婦人科学会の会告など自主規制のもとに生殖補助医療が行われてきた。だが強制力はなく、既成事実化が進んでいる。公になっただけでも、長野県の産婦人科医が非配偶者間の体外受精を実施したり、神戸市の産婦人科医が男女産み分けのために受精卵診断を行うなどの事例が相次いだ。凍結精子について多くの病院は「提供者の死後は廃棄する」としているが、凍結精子児訴訟のケースでは、女性が夫の死を病院に言わないまま凍結精子を受け取り、別の病院で体外受精し、医師がチェックできないまま出産した。現在は、精子や未受精卵、受精卵の凍結保存が可能となり、さまざまな形態の親子関係が起こり得る状況になった。しかし、こうした技術のどこまでが容認されるのか、実際に生まれた子の親子関係をどう定めるのかは、日本では不明確だ。厚生労働省の生殖補助医療部会は昨年4月、生殖補助医療の法的規制について報告書をまとめたが、自民党から異論が出たため法制化は進んでいない。香川大病院で不妊治療を担当する柳原敏宏(やなぎはら・としひろ)助教授は「大半の医師が夫の死後に凍結精子を使った妊娠に否定的な見解を持っている。生殖補助医療の進歩に応じた法整備が必要だ」と指摘している。』

今なら法的規制がないのだから何をやってもいいわけだ.政府は規制する気はないらしい.もっとも出生率の低下をかくして年金法案の改悪を強行したぐらいだから人口が増えるんならなんでもいいとでも考えているかもしれない.

だが,一方で最近の医療に関する部分をみても政府はなにが起きてもなんの責任もとるつもりはないようだから生殖医療も問題がはっきりした時点で当事者に責任を負わせて逃げるつもりだとも考えられる.

これが政府の言う自己責任ということなのであろうか.やってる当事者が子供ができて喜んでるのだからいいというのであればあまりにも楽観的である.ヒトを物質という点でとらえるならそれでいいだろうが,生まれてきた人はどう考えるのだろうか.少なくともそうやって作られた人に責任を負わせることはできないだろう.では,問題が起きたらだれが責任をとるのだろうか.

まあ,最近は病院も24時間営業のコンビニと同じで患者の都合に合わせるのが当たり前と思っている人が増えているようなので,産婦人科医は倫理観など持たずに子供の欲しい人には子供を作ってやればいいという考えの人もいるかもしれない.だが,結果的にせよ営利目的に子供を作ったりヒトの胚を扱うようではすでに医師ではない.それは一種の人身売買に加担するマッドサイエンティストにほかならない.
『厚生労働省は14日、献血血液の安全対策や輸血による副作用・感染症報告数など、血液にまつわる情報を初めて1冊にまとめた「2004年版血液事業報告」を公表した。昨年問題化した、エイズウイルス(HIV)などが日赤の高感度検査をすり抜けてしまう現状も図解入りで説明し「感染症検査のために献血をするのはやめましょう」と呼び掛けている。A4判で55ページ。今後、5000部を都道府県などに配布するほか、厚労省ホームページでも公表する。「血液の白書」として年1回、内容を更新するという。事業報告は、献血された血液が製剤に加工される流れなどを解説。HIVや肝炎ウイルスに感染した直後に献血すると、高感度検査でも検出できない「空白期間」があることをグラフ付きで説明している。献血時のHIV検査で陽性だった人数は02年が82人と5年前の1.5倍に増えており、検査目的の献血が「血液製剤の安全性に支障を来しかねない」と警告した。』

現在,医療の現場ではHIV検査は患者の同意のもと健康保険外での任意検査というたてまえになっている.だが,確実にHIVの患者は増加してきており輸血製剤に関しては厚労省も危機感を持つようになったのかもしれない.

HIV検査に健康保険が使えなければ「感染症検査のために献血をするのはやめましょう」と呼び掛けてもやめるものはいないだろう.もともと身に覚えがあるような感染症に関する理解の低い人たちににそんなことを言っても無駄であろう.

病気やけがの人のことより自分のHIV感染が気になるものに献血の意味を説いても意味はないだろう.それよりもHIV検査は健康保険で義務化したほうが今後はHIV感染の拡散を予防する意味では効果が高いだろう.義務化というと抵抗があるかもしれないが,そんな人たちはアジアで急増しているHIV感染者の現状を知るべきである.

いずれにしてもこれだけHIV感染者が増えてくるといずれは輸血の適応はさらに縮小され,輸血を拒否する患者も増加してくることが予想される.早急に人工血液が完成されることを期待したい.
『総合科学技術会議生命倫理専門調査会(委員21人)が正式決定したヒトクローン胚(はい)研究解禁の最終報告書について、石井美智子明治大教授ら5委員は13日夜、記者会見し、ヒトクローン胚や研究目的での受精卵(ヒト胚)の作成は認めるべきではないとする意見書を公表した。5委員は「今回の審議は拙速。人間の尊厳という理念をどう考えるかの考察が十分でなく、結論の根拠は極めて乏しい」として、意見書を近く調査会長に提出する。意見書は、研究目的の受精卵作成は原則禁止し、例外としての取り扱いの是非をあらためて決めるべきだと指摘。ヒトクローン胚については、社会の理解と納得が得られるまでは作成を認めるべきではないとした。他の4委員は、位田隆一京都大教授、勝木元也基礎生物学研究所長、島薗進東京大教授、鷲田清一大阪大副学長。』

『日本産科婦人科学会倫理委員会が13日、慶応大に実施を認めた受精卵診断の審査では、学会の指針で実施の条件としている「重篤な遺伝性疾患」の判断が最後まで焦点になった。どのような場合に実施を認めるか、より幅広い議論が必要との指摘が同学会内部からも出ている。倫理委は「成人になる前に日常生活を強く損なう症状が出たり、生存が危ぶまれたりする疾患」を重篤の基準として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象とした診断を認めた。しかし、同日の倫理委でも「重篤かどうかは、患者や家族が判断すること」「『成人』など、年齢で線引きするのは間違い」などの異論が出て、一律に決めることの難しさが浮き彫りになった。障害者団体や生命倫理専門家らの間では、受精卵診断は命の選別にあたり、優生思想につながるとの批判が根強い。同学会は、「重篤」を厳密に判断することで実施に歯止めをかけたい考え。だが、神戸市の産婦人科医が「学会の規制は、患者が幸福になる権利を侵している」として受精卵診断を行う計画を進めるなど、実施を望む患者が多いのも事実だ。』

人間の尊厳という理念をどう考えるかの考察が不十分という意見は常識的である.これは日本国民全体あるいは人類全体でとらえるべき問題であって一部の研究者や患者が決めるべき問題ではない.だから「重篤な遺伝性疾患」という基準にも異論が出て当然である.

それよりもっと問題なのは,「重篤な遺伝性疾患」を持って生まれる可能性のある人間の存在は否定されてしまうのかということだ.確かに「重篤な遺伝性疾患」を持って生まれれば患者となるわけであるが,受精卵診断は選別によりその患者を生前に抹殺することにほかならない.遺伝情報の一部に不都合があるからといってその固体の存在の可能性を否定することは優生思想にほかならない.

男女産み分けなどを目的に受精卵診断を開始した神戸市の産婦人科医が「学会の規制は、患者が幸福になる権利を侵している」として受精卵診断を行う計画を進めるなどと言っているようだが,これなどはどう聞いても患者の存在そのものを否定しているようにしか聞こえない.

受精卵はすでに人間として発生するに必要な完全な情報を持っていると考えられる.そう考えると受精卵を廃棄する自由を親に与えるということは,胎児は抹殺してもかまわないと言っているのと論理的にはちがわないと思うのだがどうだろうか.

遺伝情報に欠陥があったら廃棄すればよい.不都合なところだけ遺伝子組み換えすればよい.優秀な遺伝子のみを組み合わせてつくればよい.という方向性を人類の進歩として受け入れるという社会なら何も言うことはないが.そうなれば人類の進化はなくなるだろう.
『人間の受精卵(ヒト胚(はい))やヒトクローン胚を使う研究のあり方を検討している政府の総合科学技術会議生命倫理専門調査会(薬師寺泰蔵会長)の最終報告書案全文が12日、判明した。焦点となっているヒト胚の作成と利用に対する規制は、法律ではなく国の指針(ガイドライン)を新たに整備し、実際の審査は大部分を日本産科婦人科学会(日産婦)にゆだねることにした。報告書案は13日の会合に報告されるが、強制力のある法律で規制すべきだとの意見も多く、委員からの反発が必至だ。同調査会はこれまで、不妊治療研究でのヒト胚作成を認め、6月23日の会合ではヒトクローン胚作りも難病などの基礎研究に限り容認した。薬師寺会長はこれを受け、研究の規制の枠組みを中心に報告書案を作成した。ヒト胚研究の規制について、報告書案は「強制力を有する法制度として整備するのは、倫理観や生命観の押し付け的な側面があって、極めて難しい」と判断し、強制力のない指針で十分とした。規制方法は「問題の性質上、専門家の知見が重要」だとして、日産婦を念頭に「生殖補助医療技術の専門家の団体が指針に基づく審査を行い、定期的に国に報告する」と規定した。国は日産婦に属さない研究者や、日産婦が判断できない問題の審査のみに対応すべきだとし、事実上、日産婦に規制を「丸投げ」した。ヒトクローン胚作成は現在、クローン技術規制法に基づく指針で禁止されており、作成を認めるための指針改正を検討する。クローン胚から作ったヒト胚性幹細胞(ES細胞)は、輸出入を認めないとしている。』

『総合科学技術会議生命倫理専門調査会の最終報告書案は、ヒト胚(はい)の作成や研究を法律では規制せず、強制力のない指針で対応する方針を打ち出した。しかも、指針に基づく審査を日本産科婦人科学会(日産婦)へ丸投げしようとしている。「なぜ規制が必要か」の原点に立ち返り、法律で規制すべきだ。ヒト胚やヒトクローン胚を作るには、女性から未受精卵を提供してもらわなければならず、女性の肉体的、精神的な負担が避けられない。このため、「女性を保護するための枠組み整備」「国による国内すべての研究者に対する規制」が必要という点で、調査会委員の意見は一致していた。こうした経緯にもかかわらず、ほとんど実質審議しないまま「法規制せず」の結論が出されたのは疑問が残る。また、日産婦の会告(学会規則)は自主規制にすぎないため、着床前診断の実施など、会員が意図的に規則違反をして社会的に物議をかもす事例が後を絶たない。「学会任せ」は適切ではない。市民団体「フィンレージの会」の鈴木良子さんは、ヒト胚には精子、ヒトクローン胚には体細胞の入手が必要だが、これらはまったく議論されていないと指摘、「終了の期日を重視するあまり、議論が尽くされない不十分な報告書案になってしまった」と批判する。報告書は日本の生殖補助医療や再生医療の研究にとって大きな意味を持つ。調査会はそれにふさわしい、説得力のある報告書をまとめることが求められる。』

『流産などを防ぐため受精卵診断の実施を求める夫婦21組と大谷産婦人科(神戸市)の大谷徹郎(おおたに・てつお)院長らが10日、診断を推進する会を結成、同院長はこの秋にも21組を対象に同診断を実施する方針を明らかにした。受精卵診断については、日本産科婦人科学会が「重篤な遺伝病に限る」として審査制度を設けているが、実施を認めたことはない。大谷院長は同学会審査を受けずに男女産み分けのために同診断を行ったことが発覚、学会を除名になっている。大谷院長は今後の実施も、学会に申請しない方針。受精卵診断には「命の選別につながる」との批判もあり、審査なしでの実施は議論を呼びそうだ。受精卵診断を実施する21組のうち17組は、染色体異常が原因で流産を繰り返す習慣性流産の夫婦。4組は、遺伝病のデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの診断を求めている。大谷院長は「たくさんの患者が受精卵診断を望んでいるのに実施できないのはおかしい。幸福になる権利が侵されている」と、実施に踏み切る理由を説明。同診断を多く手掛けている米エール大と提携して専門家を派遣してもらい、診断の精度を高めるとしている。推進する会には、非配偶者間の体外受精を行い同学会を除名になったことがある諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(ねつ・やひろ)院長も加わった。これとは別に、慶応大と名古屋市立大が筋ジストロフィーが子供に遺伝するのを防ぐための受精卵診断の実施を同学会に申請しており、学会は倫理委員会を一般にも公開して審議している。』

最後の記事をみるかぎり学会にはなんの拘束力もないのは明らかだ.たとえ医師と言えども生命倫理に関しては社会の認知を受ける必要があることは当然で,学会を除名されても強硬に受精卵診断を行おうというのであれば医師免許を停止すべきであろう.こんなことが許されれば金目当てに男女産み分けを公然と行う第2,第3の大谷院長が出てくるのは時間の問題である.

政府も国民にわかりやすい形でもっと議論する場を広げるべきであろう.すくなくとも社会全体に今後大きな影響を与える可能性のある問題は学会や研究者に丸投げせずにちゃんと議論をしてもらいたいものである.
『--「通所看護」06年度導入へ 入院せず施設で医療的ケア 厚労省、医療費抑制も期待 --
厚生労働省は8日、2005年に見直す介護保険制度で、医療的ニーズが高い高齢者らが利用できる「通所看護」(仮称)を、早ければ次の報酬改定に当たる2006年4月から導入する方向で検討に入った。実現すれば、症状に応じて週1、2回、自宅から日帰りで医療設備が整った施設に通って、たんの吸引などの医療的ケアが受けられるようになる。現在、介護保険で利用できる訪問看護は、看護師らが要介護者の自宅を訪問し必要なケアを行う。だが、原則1回1時間半までと短いことや訪問看護の事業者が近くにいない地域もあることなどから、休日や緊急時への対応が困難で、同省は訪問看護を補完する仕組みを検討していた。同省は、短時間の訪問看護では患者をよく把握できない現状から、訪問看護と通所看護を併用、入院までに至らせずにできるだけ自宅で療養できるように支援するのが狙い。入院医療費はかからないため、全体の医療費抑制につながることも期待している。通所看護では、医療的ケアを受けながら自宅で生活している人を、医師の指示書に基づいて、看護師らが「通所看護室」(仮称)で必要な処置を行う。食事、入浴サービスなども提供し、心身機能の維持向上を図る。最近では、慢性的な病気を抱え、心身の状態が不安定になったり、たんの吸引や酸素吸入、チューブで栄養を注入するなどのケアを毎日必要とする利用者が増えている。在宅での療養を継続するためには、こうした利用者への支援と家族の看護負担を軽減するサービスが必要だが、通所リハビリセンターやデイサービスなど現行の通所サービスでは受け入れが困難なのが実情だ。』

サービスの選択肢が増えることは歓迎すべきことのようにも思えるが,現在の介護保険による在宅支援には問題が多く特にコストの点から上記のような問題点があり,費用のかかるわりにサービスが悪いので利用者には不評なようである.

これを改善するために通所看護では、医療的ケアを受けながら自宅で生活している人を、医師の指示書に基づいて、看護師らが「通所看護室」(仮称)で必要な処置を行うというのだが,実際に利用するには通わなければならないため本当にたんの吸引や酸素吸入、チューブで栄養を注入するなどのケアを毎日必要とする利用者が利用しやすいものになるのかは疑問である.

さらにより根本的な問題点として訪問看護にあたる看護師や医師が在宅で必要な医療的ケアについて精通していないような場合まであり,制度のみが先行しても低コストで良質なケアが期待できないことも考えられる.

このような実態を考えるとニュースにはさりげなく言及されている全体の医療費抑制というのが厚生労働省の本音のようだ.だとするとあまり利用できない絵に描いた餅になってしまう可能性がある.医療サービスには本来コストがかかるものである.コストの抑制ばかり考えるのではなく,本当に利用者の立場で良質なサービスが提供されるような改善を期待したい.

老害が目立つ日本

2004年7月9日
『--球団再編:強硬発言繰り返す巨人・渡辺オーナー--
巨人の渡辺恒雄オーナーは8日、報道陣から「選手会の古田会長(敦也・ヤクルト)がオーナーと会いたいと要望しているが」との質問に、「無礼なことを言うな。分をわきまえなきゃいかんよ、たかが選手が。立派な選手もいるけどね。オーナーと対等に話をする協約上の根拠は一つもない」と話した。また、選手会側がストライキ権の行使に言及していることについては「どうぞどうぞ、やったらいい」と強硬発言を繰り返した。』

分をわきまえるというなら社会に影響力を持つマスコミのトップとしてこれほど分をわきまえない不適切な発言はないであろう.そもそも古田選手は巨人の選手でもないのに巨人の渡辺オーナーから「たかが選手」といわれる理由はない.

外来をやっていると社長という肩書きがあるだけでたいへん傲慢な態度をとる患者や家族にたまにお目にかかるのだが,彼らはいったい何様のつもりなのであろうかと思う.まあ,中小企業の社長であれば井の中の蛙と笑って大目にみてあげてもいいのだろうが,こと読売新聞社ほどであれば笑ってすまされる問題ではない.

こういう偏見に満ち平気で他人を蔑視するような発言をするような人物をトップに据える企業など信用できるものではない.これがマスコミであれば世の中に間違った情報や考え方を意図的に広めることも考えられるわけで,その悪影響は三菱自動車のリコール隠しにも匹敵する情報操作となってあらわれても不思議ではない.

渡辺オーナーがマスコミの重鎮であるためか,マスコミ業界内部からはまったく批判の声が出てこないようだが,これも現在のマスコミがいかに歪んだ思考や情報操作でなりたっているかの証拠ともとれるだろう.もっとも報道の自由を主張するばかりで誤った報道をしても偏った報道をしても一切責任を負わないのがマスコミ業界の慣例であるようであるから,自分たちに都合の悪い意見など報道する必要も感じないのであろう.

日本のプロ野球にはもう興味がなくなって久しいが,今年もまた甲子園だけは観ようかと思っている矢先に「たかが選手」発言を聞かされたのでは高校球児ならずともスポーツを愛し,プロスポーツを夢見る子供たちに与える悪影響は計り知れないと感じられる.

老人たちの年金を支え,老人医療にお金をかけるのもいいが,自分勝手な心無い発言を繰り返す老害老人にははやく舞台から降りてもらうのもよい日本をつくる若い世代の使命であろう.
『札幌市の情報公開審査会が6月、市立札幌病院で起きた医療事故の報告書で非開示となっていた医師名について「医師は公務員で、担当医師名の公開は妥当」とする答申を行い、これを受けた市が決定を変更、医師名や事故に関する病院の見解などの情報を開示したことが5日、分かった。厚生労働省は「裁判になったケース以外、医療事故に関係した医師名を開示した例は聞いたことがない」としており、極めて異例。市民が情報公開を求める流れを受け、今後、同様の判断が各地で出ることも予想され、医療現場に影響を与えそうだ。開示されたのは2001年から3年間の、同病院の「医療安全対策会議審議内容報告書」。臓器の一部が損傷し病院側がミスを認めた例や、手術で視力を失ったと患者が主張している例など19件あった。担当医師や手術の執刀医など10人の医師名と、病院側の判断や対応も記載していた。札幌市は市民からの情報公開請求に対し昨年、医師名を含む事故概要のほとんどを非開示とした。しかし異議申し立てを受け、第三者でつくる審査会が「医師名を開示しても患者の個人情報に当たらない。公務員である医師の職務を記載した文書で、担当医師名を開示するのは妥当」と判断した。』

『札幌市が医療事故に関係した医師名を開示したことで、「ミスした医師の名が分かれば、何度もミスを繰り返す医師を避けることができる」と歓迎する声がある一方、現場からは「医師が委縮する」と慎重な対応を求める声も出ている。医療事故に詳しい「医療事故市民オンブズマン・メディオ」(東京都)は、患者側が医師を選ぶ手掛かりを得ることの利点を指摘。また医療ミスに対する病院側の検討内容や判断も開示されたことで、裁判などで患者側の有力な情報となり、ミスの再発防止に役立つとの見方もある。しかし日本医師会は「医師が失敗を恐れて委縮する。治せる病気も治せなくなる恐れがあり、開示は患者の利益にならない」と否定的だ。厚生労働省医政局指導課も「医療ミスの報告が上がってこなくなる可能性がある」と開示に対して慎重にみている。』

税金で運営される公的機関の情報開示ということにはもちろん私も賛成である.一般人の視点みると一見公正な対応のように見えるのだが,市立病院に大学から派遣されている医師たちにはそうは思えないだろう.

医療事故に関係した医師名を公表するということは院内で事故報告書の対象になったすべての医師の名前が公表される可能性がある.そうなると色々な意味でリスクのある業務を日常的にたくさんやっている医師ほど名前が公表される可能性が高い.医療事故はいつでも起こりうるから一生懸命働く医師ほど不利になるわけだ.

これでは市立病院で定年まで働く固定の医師であればなるべく働かないほうが安全なわけで,院長や部長などの管理職の医師はリスクの高い仕事を避け,派遣の医師たちがこのリスクを背負って主治医になる機会が増えても不思議ではない.

市立病院にとっても医師名を公表して病院に患者が来なくなれば困るから結局は派遣医師の責任にして大学に返すというもっとも簡単な解決法を選択する可能性が高い.事故を起こした医師がいなくなり新任の医師が大学から来るだけでは医師名を公表しても事故が減少することは期待できない.

では患者の利益になるのだろうか.まず,病院内でも問題になるようなリピーター医師は医師名を公表する以前にさっさと辞めてもらえばいい.裁判のときには訴えられる医師はわかっているはずであるから公表するまでもない.ミスの再発防止という点ではミスした場合の医師名公表を恐れてリスクを犯さなければミスは減るが治療の機会も減るだろう.

結局のところ医師も人間で程度の差はあるもののたくさんやっていれば確率的にミスは起こるものだから医師名の開示で医療が改善されるになることはなさそうである.むしろ札幌市立病院がこれで市民の信頼を得て経営状態を改善できるのかどうかだけが注目すべきことといえるかもしれない.
『-医学生志望調査:「やりがい」で小児科 内科は「漠然」と-
 小児科と産婦人科志望は、やりがいを重視。医学部の学生に将来の志望診療科と理由を尋ねたところ、こんな結果が出た。小児科と産婦人科は勤務のきつさなどから成り手が少ないと指摘されているが、調査した多摩大学大学院の真野俊樹客員教授(医療経営学)は「医学部の授業や病院実習で、やりがいをアピールすれば、やる気のある学生が集まるのでは」と話している。
調査は真野客員教授と名古屋大医療管理情報学講座の共同研究。診療科間で医師の偏りが目立ってきたため、医学生の志望先とその理由を探り、不足がちな診療科への志望者を増やすのが狙い。同大、藤田保健衛生大など4大学の6年生と4年生218人に02年秋、志望する診療科とその理由などを尋ねた。診療科を決める際に重視するものとして、「時間的自由」「やりたいことができる自由」「やりがい」「収入」「安定感」の5項目について、「強い」から「弱い」の5段階で答えてもらった。
その結果、第1志望先は内科89人(41%)、外科22人(10%)、小児科16人(7%)、整形外科と産婦人科11人(5%)、皮膚科と精神科7人(3%)、耳鼻科6人(3%)、眼科5人(2%)の順だった。志望先と性別、重視する項目の相関を分析すると、小児科では女性の志望が多く、時間的自由や収入の多さよりも、やりがいを重視する学生が多かった。産婦人科も女性が多く、外科とともに、やりがいを重視する傾向があった。一方、内科は他の診療科に比べ、志望理由が不明確な学生が目立った。整形外科と同様に収入を重視する傾向も弱いながら認められた。真野客員教授は小児科や産婦人科医の確保策として、各診療科によるやりがいの強調のほか、女性が多いので出産や育児が安心してできる職場環境の整備を勧めている。』

脳外科を志望するものは書かれていないということは218人中5人以下ということなのだろう.21世紀は脳科学の時代といわれながら脳に興味を持ってもらえないとしたら寂しい限りである.脳こそが人間がヒトである所以なのだが,最近の獣医学部の人気といいヒトであることに興味のない学生が増えたのだろうか.

小児科,産婦人科を志望するものが少ないのもヒトに対する興味が薄れているのが一つの原因なのではないかという気がする.医学というものを病気という側面からしかみることができないのでは医師としては不十分である.それなら動物もヒトも同じようなものだ.

医師の対象はヒトであり,そのヒトの人生にかかわるからこそやりがいのある仕事なのだと私は思っている.一人の人間である医師が多くの人々の人生に大きくかかわっていくことにこそやりがいを感じて欲しいものだ.そういった意味でヒトたる人間の脳に自分の手で直接的にかかわれる唯一の診療科目であるのことが私が脳外科医になった理由のひとつである.

医師という職業を収入を得るための仕事としてとらえるならば時間的自由や収入の多さを重視することになるだろうが,それなら他の職業のほうがはるかに効率がいいだろう.たとえば似たような職業でも歯科医や獣医であれば人間の死というものに直面することは医師にくらべればはるかに少ないのだから.

だから結果として収入を得るための仕事であるにしてもヒトと向き合っていくことにやりがいを感じれなければ長続きせずにやる気を失っていくことになるのである.私のまわりにも脳外科医としてのやる気を失ってしまった医師たちが目につくようになったが「漠然」と選択した結果だとしたらただ同情するほかない.

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