『--ビール原料がピロリ無毒化 ホップのポリフェノール--
千葉大大学院医学研究院の野田公俊(のだ・まさとし)教授(病原分子制御学)とアサヒビールの研究チームは17日、ビールの原料ホップに含まれる「ホップポリフェノール」という物質が、胃がんなどに関与しているとされるヘリコバクターピロリ菌の毒素を無毒化することを確認した、と発表した。菌ではなく毒素に作用するため、抗生物質が効かなくなった耐性菌にも有効で、予防や治療に使う薬などの開発につながると期待される。4月に東京で開かれる日本細菌学会で発表する。
この物質はホップの先端に含まれている。味を整えるため一部の飲料に使われるが、通常は捨てる部分だという。ピロリ菌の毒素「VacA」は、胃の細胞内に液体の入った泡状の空胞を作り細胞を破壊する。研究チームはマウスにホップポリフェノールを経口投与する実験で、この物質がVacAと結合。毒素の分子構造を変化させて細胞を壊さなくすることを確認した。
野田教授らは、ホップポリフェノールが病原性大腸菌O157のベロ毒素を、リンゴに含まれるポリフェノールがコレラ毒素を無毒化することも突き止めている。アサヒビール広報部は「将来はこの物質を配合した食品で、消化器の病気を予防する方法を確立したい」としている。』
閉塞性脳血管障害や虚血性心疾患の予防に酒類の中でもビールが特にいいらしい.それを根拠に毎日ビールを1缶程度は楽しんでいるのだが,そんな私にとってはうまい話である.ピロリ菌の毒素を無毒化するということは胃潰瘍や胃癌の予防にもなるということなのだろうか.
一部の飲料に使われるが、通常は捨てる部分というのがちょっと気になる点だが,まあ,これでビールを飲む理由がちょっとでも増えるのなら大歓迎である.
千葉大大学院医学研究院の野田公俊(のだ・まさとし)教授(病原分子制御学)とアサヒビールの研究チームは17日、ビールの原料ホップに含まれる「ホップポリフェノール」という物質が、胃がんなどに関与しているとされるヘリコバクターピロリ菌の毒素を無毒化することを確認した、と発表した。菌ではなく毒素に作用するため、抗生物質が効かなくなった耐性菌にも有効で、予防や治療に使う薬などの開発につながると期待される。4月に東京で開かれる日本細菌学会で発表する。
この物質はホップの先端に含まれている。味を整えるため一部の飲料に使われるが、通常は捨てる部分だという。ピロリ菌の毒素「VacA」は、胃の細胞内に液体の入った泡状の空胞を作り細胞を破壊する。研究チームはマウスにホップポリフェノールを経口投与する実験で、この物質がVacAと結合。毒素の分子構造を変化させて細胞を壊さなくすることを確認した。
野田教授らは、ホップポリフェノールが病原性大腸菌O157のベロ毒素を、リンゴに含まれるポリフェノールがコレラ毒素を無毒化することも突き止めている。アサヒビール広報部は「将来はこの物質を配合した食品で、消化器の病気を予防する方法を確立したい」としている。』
閉塞性脳血管障害や虚血性心疾患の予防に酒類の中でもビールが特にいいらしい.それを根拠に毎日ビールを1缶程度は楽しんでいるのだが,そんな私にとってはうまい話である.ピロリ菌の毒素を無毒化するということは胃潰瘍や胃癌の予防にもなるということなのだろうか.
一部の飲料に使われるが、通常は捨てる部分というのがちょっと気になる点だが,まあ,これでビールを飲む理由がちょっとでも増えるのなら大歓迎である.
研修医が一人で当番?
2005年3月14日 医療の問題『--動脈瘤見落とし患者死亡 高知の県立病院で研修医--
高知県立安芸病院(安芸市)で昨年11月、当番医をしていた20代の女性研修医が、80代の男性患者のCT検査で胸部大動脈瘤(りゅう)を見落とし、男性がその後死亡していたことが分かった。県が11日、明らかにした。
同病院によると、男性は昨年11月13日未明、胸と背中の痛みを訴え救急車で運ばれた。研修医は心電図やCTを使って検査したが、筋肉痛と誤診。男性に湿布などを処方し帰宅させた。
同日午前11時半ごろ、別の医師がCT検査の結果をみて胸部大動脈瘤の疑いを指摘。研修医はもう1度来院するよう男性宅に電話したが、男性は自宅を出たところで動脈瘤が原因の発作を起こし、間もなく死亡した。
研修医は男性に再来院を求めた際も救急車の手配など適切な対応をしていなかった。
病院側は「最初に疾患を見つけていれば助かった可能性が高い」として遺族に謝罪。事故後、研修医が当番医のときは経験のある医師1人を付けるようにしたという。』
研修医が一人で当番をするのだったら研修医制度の言うところの研修医による医療過誤を減らすという意味はないだろう.こんな病院で研修することになった研修医には同情してあげてもいいだろう.
この場合はまだ訴えられてはいないが,同様に研修医が当番で一人で救急処置をして医療過誤で患者が死亡したら業務上過失致死罪で訴えられることもあるだろう.その場合,誰がその責任を負うのかが問題なのだが,いずれにしても研修医は責任を負わされることは間違いないだろう.病院側は監督責任を問われるだろうが院長が刑事責任まで問われることはないだろう.
結局,研修医であれ自分のやったことの責任は自分でとらねばならないという当たり前のことになるだけである.だが,研修医が危険な処置はせずに見学だけしていたのではいつまで経っても自分でできるようにはならないのも事実だろう.危険はたとえ熟練した医師がついてもゼロにはならない.2人でやれば責任を分かち合うことになるだけなのだ.
すくない研修時間で指導する医師との人間関係を築き技術を身につけなくてはならないのだが,今の研修制度でそれができるだろうか.正直に言うと私はそこまで研修医を信用することはできないだろう.だから危険なことはやらせないで安全第一を優先し,いやな体験をさせないでさっさと次の診療科の研修に回ってもらうことになるだろう.
こんなことをすべての科でやったとしたら,これは大学での学生の実習でもできそうなことだ.結局2年間の研修体験だけで身につくことはそう多くはないだろう.その後,救急の現場を離れたら数年で救急処置など忘れるだろう.そういう意味では胸部大動脈瘤を見落としたこの20代の女性研修医は大変貴重な経験を積んだわけでこれを乗り越えてしっかり勉強して将来も是非臨床で活躍してもらいたいと思う.
高知県立安芸病院(安芸市)で昨年11月、当番医をしていた20代の女性研修医が、80代の男性患者のCT検査で胸部大動脈瘤(りゅう)を見落とし、男性がその後死亡していたことが分かった。県が11日、明らかにした。
同病院によると、男性は昨年11月13日未明、胸と背中の痛みを訴え救急車で運ばれた。研修医は心電図やCTを使って検査したが、筋肉痛と誤診。男性に湿布などを処方し帰宅させた。
同日午前11時半ごろ、別の医師がCT検査の結果をみて胸部大動脈瘤の疑いを指摘。研修医はもう1度来院するよう男性宅に電話したが、男性は自宅を出たところで動脈瘤が原因の発作を起こし、間もなく死亡した。
研修医は男性に再来院を求めた際も救急車の手配など適切な対応をしていなかった。
病院側は「最初に疾患を見つけていれば助かった可能性が高い」として遺族に謝罪。事故後、研修医が当番医のときは経験のある医師1人を付けるようにしたという。』
研修医が一人で当番をするのだったら研修医制度の言うところの研修医による医療過誤を減らすという意味はないだろう.こんな病院で研修することになった研修医には同情してあげてもいいだろう.
この場合はまだ訴えられてはいないが,同様に研修医が当番で一人で救急処置をして医療過誤で患者が死亡したら業務上過失致死罪で訴えられることもあるだろう.その場合,誰がその責任を負うのかが問題なのだが,いずれにしても研修医は責任を負わされることは間違いないだろう.病院側は監督責任を問われるだろうが院長が刑事責任まで問われることはないだろう.
結局,研修医であれ自分のやったことの責任は自分でとらねばならないという当たり前のことになるだけである.だが,研修医が危険な処置はせずに見学だけしていたのではいつまで経っても自分でできるようにはならないのも事実だろう.危険はたとえ熟練した医師がついてもゼロにはならない.2人でやれば責任を分かち合うことになるだけなのだ.
すくない研修時間で指導する医師との人間関係を築き技術を身につけなくてはならないのだが,今の研修制度でそれができるだろうか.正直に言うと私はそこまで研修医を信用することはできないだろう.だから危険なことはやらせないで安全第一を優先し,いやな体験をさせないでさっさと次の診療科の研修に回ってもらうことになるだろう.
こんなことをすべての科でやったとしたら,これは大学での学生の実習でもできそうなことだ.結局2年間の研修体験だけで身につくことはそう多くはないだろう.その後,救急の現場を離れたら数年で救急処置など忘れるだろう.そういう意味では胸部大動脈瘤を見落としたこの20代の女性研修医は大変貴重な経験を積んだわけでこれを乗り越えてしっかり勉強して将来も是非臨床で活躍してもらいたいと思う.
アルツハイマー病は減少する
2005年3月14日 医療の問題『--アルツハイマー病早期発見 磁気画像診断に新技術 --
脳に蓄積しアルツハイマー病を引き起こすアミロイドという物質に結合する化合物を理化学研究所脳科学総合研究センター(埼玉県和光市)と同仁化学研究所(熊本県益城町)のチームが開発、13日付の米科学誌ネイチャーニューロサイエンス電子版に発表した。
化合物が結合したアミロイドは磁気共鳴画像装置(MRI)で簡単に識別できるため、現在の技術では難しい発症前の診断が可能になるという。開発したのはアミロイドに結合しやすいスチリルベンゼンに、MRIで検知しやすいフッ素を結合させた化合物で、FSBと名付けた。アミロイドはタンパク質の構造が壊れ、凝集した繊維状物質。アミロイドが脳に蓄積するマウスを遺伝子操作で作り、微量のFSBを静脈注射すると、脳内でアミロイドが集まった部分をMRI画像上で識別できることが分かった。
アミロイドがたまると、大脳に染みのような老人斑ができる。アルツハイマー病の症状が出るのは老人斑が脳の断面画像の10-30%になった段階。マウスでは老人斑が2%程度を占めた段階で、MRIで検知できた。
理研の西道隆臣(さいどう・たかおみ)チームリーダーは「早期に蓄積が分かれば神経細胞が損傷する前に、開発が進んでいる薬でアミロイドを減らすことが期待できる。患者数を10分の1にできるのではないか」と話している。』
痴呆には血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆があるのだが,決定的な鑑別診断法は脳組織を採取してアミロイド沈着を組織学的に証明するしかなかった.特に高齢者では脳血管性かアルツハイマーかの鑑別は難しかった.にもかかわらず最近ではアルツハイマー病と診断されてくる高齢者が外来でよくみられるようになった.
中には多発性脳梗塞でどうみても血管性痴呆としか思えない患者さんまでアルツハイマー病という診断名がついていたりする.ここ数年でアルツハイマー病という病気はすっかり有名になったこともあるのだろうが,本当にアルツハイマー病の患者さんは増えているのだろうか?
アルツハイマー病の初期に病気の進行を抑えると言われているアリセプトという薬が発売されてからアルツハイマー病の患者さんが急に増えたような気がしているのは私だけだろうか.痴呆が進行してしまったアルツハイマーより血管性痴呆の可能性が高い患者さんにアリセプトが投与されているのをみると昔の脳賦活剤といわれた一連の薬を思い出す.これら脳賦活剤は効果がなくて今では市場から姿を消したが,脳出血や脳梗塞の後遺症の患者さんに1つや2つは必ず処方されていたものだ.
脳内でアミロイドが集まった部分をMRI画像上で識別できるようになれば血管性痴呆とアルツハイマー病は容易に鑑別できるようになるのだろう.その結果アルツハイマー病という診断名のつく患者数は激減するのだろうか.予想以上に減少するとすればその理由が興味深いところである.
脳に蓄積しアルツハイマー病を引き起こすアミロイドという物質に結合する化合物を理化学研究所脳科学総合研究センター(埼玉県和光市)と同仁化学研究所(熊本県益城町)のチームが開発、13日付の米科学誌ネイチャーニューロサイエンス電子版に発表した。
化合物が結合したアミロイドは磁気共鳴画像装置(MRI)で簡単に識別できるため、現在の技術では難しい発症前の診断が可能になるという。開発したのはアミロイドに結合しやすいスチリルベンゼンに、MRIで検知しやすいフッ素を結合させた化合物で、FSBと名付けた。アミロイドはタンパク質の構造が壊れ、凝集した繊維状物質。アミロイドが脳に蓄積するマウスを遺伝子操作で作り、微量のFSBを静脈注射すると、脳内でアミロイドが集まった部分をMRI画像上で識別できることが分かった。
アミロイドがたまると、大脳に染みのような老人斑ができる。アルツハイマー病の症状が出るのは老人斑が脳の断面画像の10-30%になった段階。マウスでは老人斑が2%程度を占めた段階で、MRIで検知できた。
理研の西道隆臣(さいどう・たかおみ)チームリーダーは「早期に蓄積が分かれば神経細胞が損傷する前に、開発が進んでいる薬でアミロイドを減らすことが期待できる。患者数を10分の1にできるのではないか」と話している。』
痴呆には血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆があるのだが,決定的な鑑別診断法は脳組織を採取してアミロイド沈着を組織学的に証明するしかなかった.特に高齢者では脳血管性かアルツハイマーかの鑑別は難しかった.にもかかわらず最近ではアルツハイマー病と診断されてくる高齢者が外来でよくみられるようになった.
中には多発性脳梗塞でどうみても血管性痴呆としか思えない患者さんまでアルツハイマー病という診断名がついていたりする.ここ数年でアルツハイマー病という病気はすっかり有名になったこともあるのだろうが,本当にアルツハイマー病の患者さんは増えているのだろうか?
アルツハイマー病の初期に病気の進行を抑えると言われているアリセプトという薬が発売されてからアルツハイマー病の患者さんが急に増えたような気がしているのは私だけだろうか.痴呆が進行してしまったアルツハイマーより血管性痴呆の可能性が高い患者さんにアリセプトが投与されているのをみると昔の脳賦活剤といわれた一連の薬を思い出す.これら脳賦活剤は効果がなくて今では市場から姿を消したが,脳出血や脳梗塞の後遺症の患者さんに1つや2つは必ず処方されていたものだ.
脳内でアミロイドが集まった部分をMRI画像上で識別できるようになれば血管性痴呆とアルツハイマー病は容易に鑑別できるようになるのだろう.その結果アルツハイマー病という診断名のつく患者数は激減するのだろうか.予想以上に減少するとすればその理由が興味深いところである.
治療目的ならいいのか
2005年3月9日 こころの問題『--クローン人間禁止を採択 国連総会、日本は反対票--
国連総会は8日、治療目的も含むすべてのヒトクローン技術の禁止を加盟国に求めた政治宣言を、賛成84、反対34、棄権37の賛成多数で正式に採択した。宣言に法的拘束力はない。
治療目的に限り同技術を認めるよう主張してきた日本は「宣言は加盟国のさまざまな見解を反映していない。日本の国内政策に影響を与えるものではなく、厳しい条件を課した上で治療目的のクローン技術の開発を進める」と述べ、反対票を投じた。
この問題では、イタリアや米国、中南米諸国などヒトクローン技術の全面禁止派と、日本や中国、ベルギーなど部分容認派が激しく対立したが、国連総会の第6委員会は2月18日、賛成多数で同宣言を採択していた。』
日本人には本当に生命を尊重するという倫理観があるのかどうかが問われているのではないだろうか.
1.治療目的ならヒトクローン胚をつくってもいい.
2.胎児は中絶して医療用に使ってもいい.
3.自分の子供の臓器なら同胞に移植してもいい.
この延長線上の医療とはいったいなんなのだろうか?
国連総会は8日、治療目的も含むすべてのヒトクローン技術の禁止を加盟国に求めた政治宣言を、賛成84、反対34、棄権37の賛成多数で正式に採択した。宣言に法的拘束力はない。
治療目的に限り同技術を認めるよう主張してきた日本は「宣言は加盟国のさまざまな見解を反映していない。日本の国内政策に影響を与えるものではなく、厳しい条件を課した上で治療目的のクローン技術の開発を進める」と述べ、反対票を投じた。
この問題では、イタリアや米国、中南米諸国などヒトクローン技術の全面禁止派と、日本や中国、ベルギーなど部分容認派が激しく対立したが、国連総会の第6委員会は2月18日、賛成多数で同宣言を採択していた。』
日本人には本当に生命を尊重するという倫理観があるのかどうかが問われているのではないだろうか.
1.治療目的ならヒトクローン胚をつくってもいい.
2.胎児は中絶して医療用に使ってもいい.
3.自分の子供の臓器なら同胞に移植してもいい.
この延長線上の医療とはいったいなんなのだろうか?
命の値段もGDPの伸び率で決まる
2005年3月4日 医療の問題『--「不可能」と厚労省反論 奥田氏らの医療費抑制策--
経済財政諮問会議の民間議員が15日、医療給付費などの伸び率を名目国内総生産(GDP)の伸び率以下に抑制するよう主張したことに対し、厚生労働省は同日、抑制は事実上不可能だとする反論をまとめ同会議に提出した。
厚労省によると、国民医療費は、高齢化や医療技術の進歩により増加し、2025年には保険からの給付は59兆円に上ると推計される。 名目GDPの伸び率以下に抑制するとすると、同年の医療給付は38兆円。厚労省が推計した59兆円との差額分約20兆円は(1)個人負担の増(2)医療費自体の抑制(3)診療報酬の引き下げ-などで埋め合わせることになる。
試算では、全額を患者側の自己負担で賄えば、負担は現在の2.5-3倍程度に跳ね上がる。また医療費を抑え込めば健康水準が低下。診療報酬単価の引き下げは、医療の質の低下を招くというのが厚労省の主張だ。
厚労省は、医療費の伸びを適正化するため、生活習慣病対策や入院日数の短縮、公的保険給付範囲の見直しなどを検討している。』
結局のところ国の赤字削減のターゲットは社会福祉ということなのだろう.国民の寿命が縮まっても,医療の質が低下してもかまわないというのが本音だろう.医療の質の向上という点で言えば先端医療は別としてコスト重視とせざるを得ない通常の診療報酬の低下は先端医療で助かる患者さんよりもはるかに多くの普通の病気の患者さんにとっては負担の大きいものになるだろう.
医療を社会的に採算の合うものにすることはおそらく不可能なはずである.なぜなら企業が利益を追及するということは企業に収益を集中させ,労働者の賃金や福祉を減額することにほかならないからである.人間よりも設備への投資を優先する企業と福祉よりも公共事業を優先させてきた国が今の赤字国家日本である.
高齢化社会で医療に採算性を求めれば個人負担の増大を招き,それはすなわち低所得な高齢者の切り捨てにつながることは誰が考えてもわかることだ.だがそんな事は企業の論理で生きてきた財界の人間や地元の利権を優先させてきた政治家にはきっとわからない,いや知ったことではないのだろう.
経済財政諮問会議の民間議員が15日、医療給付費などの伸び率を名目国内総生産(GDP)の伸び率以下に抑制するよう主張したことに対し、厚生労働省は同日、抑制は事実上不可能だとする反論をまとめ同会議に提出した。
厚労省によると、国民医療費は、高齢化や医療技術の進歩により増加し、2025年には保険からの給付は59兆円に上ると推計される。 名目GDPの伸び率以下に抑制するとすると、同年の医療給付は38兆円。厚労省が推計した59兆円との差額分約20兆円は(1)個人負担の増(2)医療費自体の抑制(3)診療報酬の引き下げ-などで埋め合わせることになる。
試算では、全額を患者側の自己負担で賄えば、負担は現在の2.5-3倍程度に跳ね上がる。また医療費を抑え込めば健康水準が低下。診療報酬単価の引き下げは、医療の質の低下を招くというのが厚労省の主張だ。
厚労省は、医療費の伸びを適正化するため、生活習慣病対策や入院日数の短縮、公的保険給付範囲の見直しなどを検討している。』
結局のところ国の赤字削減のターゲットは社会福祉ということなのだろう.国民の寿命が縮まっても,医療の質が低下してもかまわないというのが本音だろう.医療の質の向上という点で言えば先端医療は別としてコスト重視とせざるを得ない通常の診療報酬の低下は先端医療で助かる患者さんよりもはるかに多くの普通の病気の患者さんにとっては負担の大きいものになるだろう.
医療を社会的に採算の合うものにすることはおそらく不可能なはずである.なぜなら企業が利益を追及するということは企業に収益を集中させ,労働者の賃金や福祉を減額することにほかならないからである.人間よりも設備への投資を優先する企業と福祉よりも公共事業を優先させてきた国が今の赤字国家日本である.
高齢化社会で医療に採算性を求めれば個人負担の増大を招き,それはすなわち低所得な高齢者の切り捨てにつながることは誰が考えてもわかることだ.だがそんな事は企業の論理で生きてきた財界の人間や地元の利権を優先させてきた政治家にはきっとわからない,いや知ったことではないのだろう.
なんの責任を問いたいのかな
2005年3月3日 医療の問題『--医師の責任問わない方針 宮崎県警、輸血ミスで--
宮崎大病院(宮崎県清武町、江藤胤尚(えとう・たねなお)院長)で昨年3月、入院中の40代の男性が違う血液型の血液を輸血された後、死亡した事故で、宮崎南署は2日までに、担当医師の刑事責任を問うのは困難との判断を固めた。
同署は遺族からの告訴を受け、業務上過失致死容疑で捜査していたが、輸血ミスはあったものの、死亡との因果関係の証明が困難と判断したとみられる。
告訴事件はすべて検察庁に送付するとの刑事訴訟法の規定に基づき、今月中に捜査結果を宮崎地検に書類送付する方針。
調べでは、男性は食道がんで入院していたが、昨年3月29日夜、食道近くの大動脈が破裂し大量に吐血したため、担当医師が血液型を調べA型と判定、約15分間、緊急輸血した。しかし、その後精密検査でO型であることが分かり輸血を中止したが、男性は翌30日未明死亡した。』
食道がんが進行して血管壁を食い破っての出血だったとしたら輸血すること自体が意味のないことだったのかも知れない.患者さんの延命のために慣れない血液型判定を自分で行い輸血した結果が刑事告訴されるような問題になったのだとしたら医師の行為はいったいなんだったのだろうか.
告訴した家族にしてみれば医師の過失により死亡したと思っているのであろうが,訴えられた医師にしてみれば余計なことをしたばかりに誤解を招いた自分の判断のミスと血液型の判定のミスが重なったことでさぞかし悔しい思いをしたことだろう.
宮崎大病院(宮崎県清武町、江藤胤尚(えとう・たねなお)院長)で昨年3月、入院中の40代の男性が違う血液型の血液を輸血された後、死亡した事故で、宮崎南署は2日までに、担当医師の刑事責任を問うのは困難との判断を固めた。
同署は遺族からの告訴を受け、業務上過失致死容疑で捜査していたが、輸血ミスはあったものの、死亡との因果関係の証明が困難と判断したとみられる。
告訴事件はすべて検察庁に送付するとの刑事訴訟法の規定に基づき、今月中に捜査結果を宮崎地検に書類送付する方針。
調べでは、男性は食道がんで入院していたが、昨年3月29日夜、食道近くの大動脈が破裂し大量に吐血したため、担当医師が血液型を調べA型と判定、約15分間、緊急輸血した。しかし、その後精密検査でO型であることが分かり輸血を中止したが、男性は翌30日未明死亡した。』
食道がんが進行して血管壁を食い破っての出血だったとしたら輸血すること自体が意味のないことだったのかも知れない.患者さんの延命のために慣れない血液型判定を自分で行い輸血した結果が刑事告訴されるような問題になったのだとしたら医師の行為はいったいなんだったのだろうか.
告訴した家族にしてみれば医師の過失により死亡したと思っているのであろうが,訴えられた医師にしてみれば余計なことをしたばかりに誤解を招いた自分の判断のミスと血液型の判定のミスが重なったことでさぞかし悔しい思いをしたことだろう.
NHKもいらないけれど
2005年2月27日 社会の問題『--ライブドア、証券監視委などに調査申し入れへ--
ニッポン放送が、ライブドアによる経営権奪取を避ける目的で、巨額増資につながる新株予約権発行を決めたことについて、ライブドアは26日、証券取引等監視委員会や東京証券取引所に、証券取引法違反にあたるかどうかを調査するよう、近日中に申し入れる方針を明らかにした。
同放送は23日、フジテレビジョンを引受先として4720万株の新株予約権の発行を発表。権利がすべて行使された場合に生まれる新株の数は現在の発行済み株式の1.44倍となり、株式の価値が大きく下がる可能性がある。
これに対しライブドアは「将来、1株あたりの価値が下がることを株主に連想させ、株価を下落に向かわせることを意図したのではないか」(幹部)として、証取法違反(株価操縦)にあたるとみている。同放送の株価は、新株予約権発行の発表翌日の24日、一時、前日比640円安の6160円まで急落した。
フジは3月7日を期限に、同放送株の株式公開買い付け(TOB)を実施中だ。しかし同放送の株価はTOB価格の5950円を上回っており、株主がTOBに応じにくい状況が続いている。 』
フジテレビと裏取引でもしたかのようなニッポン放送の取締役のやり方にうんざりした人は多いだろう.ライブドアの傘下に入りたくない気持ちはわからないでもないが,法的に問題があるかどうか以前に企業としてこの態度のどこに放送局の公共性が感じられるだろうか.まるで企業のエゴがむき出しではないか.
政権政党の方を向いて仕事をしていたNHKに受信料を払うのもばかばかしいが,ニッポン放送やフジテレビが公共性の高い電波を使用することにも腹立たしい.そういう意味ではインターネットは玉石混合ではあるがまさに機会均等で公平性は保たれている.くだらない民放は潰して国民に電波をもっと開放すべきだろう.無線インターネット電話なんかが無料で使えるようにしてくれたほうが国民も喜ぶだろう.
ニッポン放送とフジテレビには受信料を払ってはいないが,これを機に見ないことにした.と言ってももともとテレビはほとんど見ていないので意味もない.考えてみると私の生活にはすでにテレビもラジオもほとんど必要なくなっていたのであった.だから地上波デジタルもいらない.その帯域を使ってもっと携帯電話やインターネットを便利にしてくれたほうがありがたいのは私だけだろうか.
テレビ局なんてタクシーみたいなものだ.公共の電波という道路を使ってサービスを提供し利益をあげているのだから,それを自分の好き勝手に使うということはタクシーが暴走しているようなものだ.テレビ局の取材の人たちの傲慢さや身勝手な編集やヤラセは一度自分で経験すればテレビなど見る気はしなくなるだろう.救急病棟24時なんて聞いただけできっとヤラセに違いないと思うのは私だけではないだろう.
あんまりつまらないものをやるようなら政府もニッポン放送とフジテレビの放送免許を停止するくらいはやって欲しいものだ.
ニッポン放送が、ライブドアによる経営権奪取を避ける目的で、巨額増資につながる新株予約権発行を決めたことについて、ライブドアは26日、証券取引等監視委員会や東京証券取引所に、証券取引法違反にあたるかどうかを調査するよう、近日中に申し入れる方針を明らかにした。
同放送は23日、フジテレビジョンを引受先として4720万株の新株予約権の発行を発表。権利がすべて行使された場合に生まれる新株の数は現在の発行済み株式の1.44倍となり、株式の価値が大きく下がる可能性がある。
これに対しライブドアは「将来、1株あたりの価値が下がることを株主に連想させ、株価を下落に向かわせることを意図したのではないか」(幹部)として、証取法違反(株価操縦)にあたるとみている。同放送の株価は、新株予約権発行の発表翌日の24日、一時、前日比640円安の6160円まで急落した。
フジは3月7日を期限に、同放送株の株式公開買い付け(TOB)を実施中だ。しかし同放送の株価はTOB価格の5950円を上回っており、株主がTOBに応じにくい状況が続いている。 』
フジテレビと裏取引でもしたかのようなニッポン放送の取締役のやり方にうんざりした人は多いだろう.ライブドアの傘下に入りたくない気持ちはわからないでもないが,法的に問題があるかどうか以前に企業としてこの態度のどこに放送局の公共性が感じられるだろうか.まるで企業のエゴがむき出しではないか.
政権政党の方を向いて仕事をしていたNHKに受信料を払うのもばかばかしいが,ニッポン放送やフジテレビが公共性の高い電波を使用することにも腹立たしい.そういう意味ではインターネットは玉石混合ではあるがまさに機会均等で公平性は保たれている.くだらない民放は潰して国民に電波をもっと開放すべきだろう.無線インターネット電話なんかが無料で使えるようにしてくれたほうが国民も喜ぶだろう.
ニッポン放送とフジテレビには受信料を払ってはいないが,これを機に見ないことにした.と言ってももともとテレビはほとんど見ていないので意味もない.考えてみると私の生活にはすでにテレビもラジオもほとんど必要なくなっていたのであった.だから地上波デジタルもいらない.その帯域を使ってもっと携帯電話やインターネットを便利にしてくれたほうがありがたいのは私だけだろうか.
テレビ局なんてタクシーみたいなものだ.公共の電波という道路を使ってサービスを提供し利益をあげているのだから,それを自分の好き勝手に使うということはタクシーが暴走しているようなものだ.テレビ局の取材の人たちの傲慢さや身勝手な編集やヤラセは一度自分で経験すればテレビなど見る気はしなくなるだろう.救急病棟24時なんて聞いただけできっとヤラセに違いないと思うのは私だけではないだろう.
あんまりつまらないものをやるようなら政府もニッポン放送とフジテレビの放送免許を停止するくらいはやって欲しいものだ.
未破裂脳動脈瘤の手術のリスクは?
2005年2月25日 医療の問題『--日赤に4000万円賠償命令 「死の危険、説明怠る」--
水戸赤十字病院(水戸市)で脳動脈瘤(りゅう)の手術を受け死亡した茨城県の男性=当時(65)=の遺族4人が、手術の危険性について適切な事前説明がなく、措置にもミスがあったとして、日赤に約5700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は23日、約4000万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は1992年3月、脳動脈瘤の破裂を予防するため手術を受けたが、脳内出血したため再手術。しかし、意識が回復せず死亡した。判決理由で仙波英躬(せんば・ひでみ)裁判長は「男性や原告側が死亡の危険性を正確に理解した上で、手術を承諾したと認めるのは困難」と指摘。理解できる程度の説明を怠った担当医の過失を認定した。
また「2回目の手術後、男性の瞳孔に異常が判明した時点で、3回目の手術をする義務があったのに怠った」と判断。医師の過失と男性の死亡との因果関係を認めた。男性の長男(53)は閉廷後「判決に満足している。病院は患者に説明をしっかりやってほしい」と話した。被告代理人は「判決に納得していないので控訴を検討中」としている。』
未破裂脳動脈瘤が発見後の1年間に破裂するリスクは多く見積もっても2%ということは脳神経外科専門医ならほとんどが同意するだろうし実際はそれ以下だと思っている医師が多いだろう.
では,未破裂脳動脈瘤の手術のリスクが1%以下だと信じている医師はどれくらいいるだろうか.私自身の数少ない経験では幸い未破裂脳動脈瘤の手術で亡くなった例も社会復帰できなかった例もないが,他の施設も含めいったいどれくらいの確率で重度の障害や死亡例が起きているのかは知る由もない.
大衆雑誌をながめると動脈瘤の名医などというのが書いてあるが,考えるにたくさんやっていればそれなりに結果の良くない例が必ずあるはずで,それさえも公表されないのでいったいどのくらいのリスクがあるのかは本当のところ私もわからないのだ.
非常にあいまいで説明に苦労するので私は1%くらいのリスクがあって命にかかわる場合もあるとは説明している.だが命にかかわる場合が0.5%程もあったら未破裂動脈瘤の手術の妥当性が無くなるのではないかと危惧しながら説明しているのが本当のところである.
脳神経外科学会がこのような脳神経外科手術の結果に関する統計をとったという話は聞いたことがないが,術者による差が大きいとはいえ患者さんの手術を受けるかどうかの判断の参考になる基本的な統計データくらいは把握して情報を一般に開示しておく必要があるのではと思うのだがどうだろうか.
水戸赤十字病院(水戸市)で脳動脈瘤(りゅう)の手術を受け死亡した茨城県の男性=当時(65)=の遺族4人が、手術の危険性について適切な事前説明がなく、措置にもミスがあったとして、日赤に約5700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は23日、約4000万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は1992年3月、脳動脈瘤の破裂を予防するため手術を受けたが、脳内出血したため再手術。しかし、意識が回復せず死亡した。判決理由で仙波英躬(せんば・ひでみ)裁判長は「男性や原告側が死亡の危険性を正確に理解した上で、手術を承諾したと認めるのは困難」と指摘。理解できる程度の説明を怠った担当医の過失を認定した。
また「2回目の手術後、男性の瞳孔に異常が判明した時点で、3回目の手術をする義務があったのに怠った」と判断。医師の過失と男性の死亡との因果関係を認めた。男性の長男(53)は閉廷後「判決に満足している。病院は患者に説明をしっかりやってほしい」と話した。被告代理人は「判決に納得していないので控訴を検討中」としている。』
未破裂脳動脈瘤が発見後の1年間に破裂するリスクは多く見積もっても2%ということは脳神経外科専門医ならほとんどが同意するだろうし実際はそれ以下だと思っている医師が多いだろう.
では,未破裂脳動脈瘤の手術のリスクが1%以下だと信じている医師はどれくらいいるだろうか.私自身の数少ない経験では幸い未破裂脳動脈瘤の手術で亡くなった例も社会復帰できなかった例もないが,他の施設も含めいったいどれくらいの確率で重度の障害や死亡例が起きているのかは知る由もない.
大衆雑誌をながめると動脈瘤の名医などというのが書いてあるが,考えるにたくさんやっていればそれなりに結果の良くない例が必ずあるはずで,それさえも公表されないのでいったいどのくらいのリスクがあるのかは本当のところ私もわからないのだ.
非常にあいまいで説明に苦労するので私は1%くらいのリスクがあって命にかかわる場合もあるとは説明している.だが命にかかわる場合が0.5%程もあったら未破裂動脈瘤の手術の妥当性が無くなるのではないかと危惧しながら説明しているのが本当のところである.
脳神経外科学会がこのような脳神経外科手術の結果に関する統計をとったという話は聞いたことがないが,術者による差が大きいとはいえ患者さんの手術を受けるかどうかの判断の参考になる基本的な統計データくらいは把握して情報を一般に開示しておく必要があるのではと思うのだがどうだろうか.
『--「生」か「死」か論議再び 米女性の安楽死問題--
米フロリダ州高裁は22日、約15年にわたり植物状態が続いている同州の女性テリ・シャイボさん(41)の栄養補給装置を取り外し安楽死させることを求めた夫の主張を認め、同日午後以降の取り外しを認める決定をした。
これに対し、安楽死に反対しているテリさんの両親は「保護者」としての夫の適格性などを問題として取り外し差し止めを州地裁に申し立て、23日夕までの差し止めが認められた。
地裁の審理は同日午後開かれる予定で、夫と両親の安楽死論争が司法の場で本格的に再燃することになった。
テリさんの補給装置は安楽死を認めた州高裁の判断を基に2003年10月いったん外されたが、ブッシュ州知事が安楽死中止を命令。米連邦最高裁はことし1月に命令を違憲とするなど、テリさんの「生死」は米国で安楽死問題の象徴的存在となっている。』
『--「今国会での提出目指す」 尊厳死法議連が正式発足へ--
超党派の国会議員でつくる「尊厳死法制化を考える議員連盟」の世話人会が23日開かれ、近く正式に議連を発足させることを決めた。会長に選出された中山太郎元外相は終了後、「今国会での法案提出を目指しているが、日本医師会や関連学会の意見も聞きたい」と述べた。
尊厳死は、患者が自らの意思で延命治療を中止し、人工呼吸器などを用いない自然な状態で死を迎えるもの。
議員立法での法制化を目指す世話人会のメンバーは自民、民主両党の議員18人。中山会長らは日本尊厳死協会が作成した要綱案を基に、法案骨子の作成を進めている。
この日の会合では、尊厳死の権利を患者に認めた場合、医師が従わなければならないかや、患者の意思表示がない時に家族が代行できるか、などの問題点があることが報告された。
尊厳死協会はこれまでに約13万8000人分の署名を集めており、法制化を求める請願書を提出する予定だ。』
患者さんが植物状態つまり遷延性意識障害や痴呆で意思決定ができない場合に誰が尊厳死を決定できるのかというところが問題ということだろう.だが,それ以前に医療の現場では誰が延命処置を決定するのかも問題である.
医師は倫理観から患者の生命を維持する処置を常に選択するわけであり,そのために人工呼吸器を装着したり中心静脈栄養や経管栄養を開始したりしているわけで,これらを開始するときに本人の意思確認をしたりすることは通常は無いし状態が悪くてできないことが多い.そうして結果として意識が戻らないと植物状態ということになってしまうわけである.
植物状態とは呼吸,栄養,清潔,体位交換などの条件が処置によって満たされれば生存できる状態ともいえるだろう.本人の植物状態を望まないとの意思表示を事前に確認できていれば人工呼吸や栄養を中止することに同意できる場合は多いだろう.
だが,現在すでに遷延性意識障害で寝たきりの場合は尊厳死の決定を誰がするのかは難問だろう.回復の可能性がまったくないと言える医師はたぶん一人もいないから,医師に決定権を与えられるのも困るし,家族に決定権を与える根拠は脳死臓器移植の場合のようにはいかないだろう.脳死と遷延性意識障害はまったく別物だから.
だが,今後の決定方法なら簡単に述べることができないわけではない.脳死臓器移植は今後はドナーをはっきり拒否していない場合はOKということになるようだが,それなら延命処置をはっきりと希望していない場合は植物状態になったら人工呼吸や経管栄養を中止するというのもひとつの方法だろう.
健康保険証や免許証の裏にでも本人の意思を書くことになったらみんなはなんと書くのだろうか.
米フロリダ州高裁は22日、約15年にわたり植物状態が続いている同州の女性テリ・シャイボさん(41)の栄養補給装置を取り外し安楽死させることを求めた夫の主張を認め、同日午後以降の取り外しを認める決定をした。
これに対し、安楽死に反対しているテリさんの両親は「保護者」としての夫の適格性などを問題として取り外し差し止めを州地裁に申し立て、23日夕までの差し止めが認められた。
地裁の審理は同日午後開かれる予定で、夫と両親の安楽死論争が司法の場で本格的に再燃することになった。
テリさんの補給装置は安楽死を認めた州高裁の判断を基に2003年10月いったん外されたが、ブッシュ州知事が安楽死中止を命令。米連邦最高裁はことし1月に命令を違憲とするなど、テリさんの「生死」は米国で安楽死問題の象徴的存在となっている。』
『--「今国会での提出目指す」 尊厳死法議連が正式発足へ--
超党派の国会議員でつくる「尊厳死法制化を考える議員連盟」の世話人会が23日開かれ、近く正式に議連を発足させることを決めた。会長に選出された中山太郎元外相は終了後、「今国会での法案提出を目指しているが、日本医師会や関連学会の意見も聞きたい」と述べた。
尊厳死は、患者が自らの意思で延命治療を中止し、人工呼吸器などを用いない自然な状態で死を迎えるもの。
議員立法での法制化を目指す世話人会のメンバーは自民、民主両党の議員18人。中山会長らは日本尊厳死協会が作成した要綱案を基に、法案骨子の作成を進めている。
この日の会合では、尊厳死の権利を患者に認めた場合、医師が従わなければならないかや、患者の意思表示がない時に家族が代行できるか、などの問題点があることが報告された。
尊厳死協会はこれまでに約13万8000人分の署名を集めており、法制化を求める請願書を提出する予定だ。』
患者さんが植物状態つまり遷延性意識障害や痴呆で意思決定ができない場合に誰が尊厳死を決定できるのかというところが問題ということだろう.だが,それ以前に医療の現場では誰が延命処置を決定するのかも問題である.
医師は倫理観から患者の生命を維持する処置を常に選択するわけであり,そのために人工呼吸器を装着したり中心静脈栄養や経管栄養を開始したりしているわけで,これらを開始するときに本人の意思確認をしたりすることは通常は無いし状態が悪くてできないことが多い.そうして結果として意識が戻らないと植物状態ということになってしまうわけである.
植物状態とは呼吸,栄養,清潔,体位交換などの条件が処置によって満たされれば生存できる状態ともいえるだろう.本人の植物状態を望まないとの意思表示を事前に確認できていれば人工呼吸や栄養を中止することに同意できる場合は多いだろう.
だが,現在すでに遷延性意識障害で寝たきりの場合は尊厳死の決定を誰がするのかは難問だろう.回復の可能性がまったくないと言える医師はたぶん一人もいないから,医師に決定権を与えられるのも困るし,家族に決定権を与える根拠は脳死臓器移植の場合のようにはいかないだろう.脳死と遷延性意識障害はまったく別物だから.
だが,今後の決定方法なら簡単に述べることができないわけではない.脳死臓器移植は今後はドナーをはっきり拒否していない場合はOKということになるようだが,それなら延命処置をはっきりと希望していない場合は植物状態になったら人工呼吸や経管栄養を中止するというのもひとつの方法だろう.
健康保険証や免許証の裏にでも本人の意思を書くことになったらみんなはなんと書くのだろうか.
PEGにもリスクはある
2005年2月23日 医療の問題『--医師NPO:「胃ろう」挿管ミス多発 昨年、15人死亡--
腹から胃に開けた穴「胃ろう」に流動食用チューブを通す栄養管理法で、挿管ミスが原因とみられる死亡事故が多発している。02年に千葉県で起きた事故では、医師2人が業務上過失致死容疑で書類送検され、チューブのメーカーの説明書にない交換方法が記された病院作成のマニュアルが使われていたことも、毎日新聞の調べで分かった。医師らで作るNPO(非営利組織)「PEGドクターズネットワーク(PDN)」(事務局・東京都)には、同様のミスがあった病院などから、昨年だけで15件の死亡事故相談があった。患者の肉体的負担が少ない栄養管理法として急速に普及しているだけに、PDNは「知識や技術が不十分な医師による事故が多発しているとみられる。十分な知識を学んだ上で処置してほしい」と呼び掛けている。
千葉の事故は02年2月、船橋市立医療センターで、脳障害で入院中の女性(当時24歳)の処置中に発生。県警によると、管が誤って腹腔(ふっくう)内に挿入されて流動食が漏れ、腹膜炎から敗血症を起こして死亡した。胃ろうは消化器内科医が設置したが、管を交換した脳神経外科医と医療チーム責任者が書類送検された。
メーカーの説明書は腹壁と胃壁が癒着した後(目安は設置後1カ月)に管を交換するよう明記。だが、病院作成のマニュアルでは、最初の挿管後、1週間に2回、3週間で計6回、順に太い管に換えるようになっていた。事故報告書によると、脳神経外科医はマニュアルに従って行った3回目の交換でミスした。同センターは胃ろうによる栄養管理法を96年から導入したが、マニュアルは「誰がいつ作成したか分からない」という。事件後、「マニュアルにも問題があった」として作り直している。
PDN代表理事で、東京慈恵会医科大外科学講座の鈴木裕講師は「胃ろうの壁が不安定な時期に管を交換すると、別の場所に入り込みやすいため、内視鏡などの確認のもとに行うのが好ましい」と話す。PDNに相談のあった15件はすべて管が胃ではなく、腹腔内に入ったケースばかりで、どの病院も原因すら分かっていなかったという。鈴木講師は「チューブ交換は基本を誤ると重大な事故につながる危険がある。セミナーなどによる知識向上が必要」と訴える。
また、東京大医学部付属病院(東京都文京区)は02年7月に胃ろうの外来担当を設置。担当の山口浩和医師は「別の医師が設置した胃ろうの向きを把握するのは難しい。担当者を決め、連携して設置と交換をしたほうが、安全とコスト面で優れている」と理由を説明する。』
PEGにもリスクがあることを本人や家族が理解できないならやらないほうがいいに決まっている.患者さんのためにやっても結果が悪いと刑事処分が待っているというのでは医師はPEGなどやりたくないだろう.
経鼻経管栄養にしても管が気管に迷入するリスクがあるし,胃ろうの場合は特に初回の交換時に腹腔内に入ってしまうことがあるが,交換の頻度は経鼻経管栄養にくらべると1/20位なので交換時のリスクという面では一長一短という感じである.
患者さんのストレスという面から言うと経鼻経管栄養からPEGになった患者さんには喜ばれることの方が圧倒的に多く合併症の頻度も少ない.これがPEGが推奨されている理由であろう.
だが,いくら安全性が高いとはいえ技術や経験や使用する器具の選択などクリアする問題は多く,実際にはあまりすすんでやりたい手技ではないのも事実である.患者さんや家族や看護師さんのためと思えばこそ医師が我慢しているのが本当のところだろう.
将来的にもっと器具が進歩して安全性が高まればもっと普及すると思われるが,少なくとも医師でなければ交換できないほどのものであるうちは真に安全とは言えないということも理解してもらいたいものである.
腹から胃に開けた穴「胃ろう」に流動食用チューブを通す栄養管理法で、挿管ミスが原因とみられる死亡事故が多発している。02年に千葉県で起きた事故では、医師2人が業務上過失致死容疑で書類送検され、チューブのメーカーの説明書にない交換方法が記された病院作成のマニュアルが使われていたことも、毎日新聞の調べで分かった。医師らで作るNPO(非営利組織)「PEGドクターズネットワーク(PDN)」(事務局・東京都)には、同様のミスがあった病院などから、昨年だけで15件の死亡事故相談があった。患者の肉体的負担が少ない栄養管理法として急速に普及しているだけに、PDNは「知識や技術が不十分な医師による事故が多発しているとみられる。十分な知識を学んだ上で処置してほしい」と呼び掛けている。
千葉の事故は02年2月、船橋市立医療センターで、脳障害で入院中の女性(当時24歳)の処置中に発生。県警によると、管が誤って腹腔(ふっくう)内に挿入されて流動食が漏れ、腹膜炎から敗血症を起こして死亡した。胃ろうは消化器内科医が設置したが、管を交換した脳神経外科医と医療チーム責任者が書類送検された。
メーカーの説明書は腹壁と胃壁が癒着した後(目安は設置後1カ月)に管を交換するよう明記。だが、病院作成のマニュアルでは、最初の挿管後、1週間に2回、3週間で計6回、順に太い管に換えるようになっていた。事故報告書によると、脳神経外科医はマニュアルに従って行った3回目の交換でミスした。同センターは胃ろうによる栄養管理法を96年から導入したが、マニュアルは「誰がいつ作成したか分からない」という。事件後、「マニュアルにも問題があった」として作り直している。
PDN代表理事で、東京慈恵会医科大外科学講座の鈴木裕講師は「胃ろうの壁が不安定な時期に管を交換すると、別の場所に入り込みやすいため、内視鏡などの確認のもとに行うのが好ましい」と話す。PDNに相談のあった15件はすべて管が胃ではなく、腹腔内に入ったケースばかりで、どの病院も原因すら分かっていなかったという。鈴木講師は「チューブ交換は基本を誤ると重大な事故につながる危険がある。セミナーなどによる知識向上が必要」と訴える。
また、東京大医学部付属病院(東京都文京区)は02年7月に胃ろうの外来担当を設置。担当の山口浩和医師は「別の医師が設置した胃ろうの向きを把握するのは難しい。担当者を決め、連携して設置と交換をしたほうが、安全とコスト面で優れている」と理由を説明する。』
PEGにもリスクがあることを本人や家族が理解できないならやらないほうがいいに決まっている.患者さんのためにやっても結果が悪いと刑事処分が待っているというのでは医師はPEGなどやりたくないだろう.
経鼻経管栄養にしても管が気管に迷入するリスクがあるし,胃ろうの場合は特に初回の交換時に腹腔内に入ってしまうことがあるが,交換の頻度は経鼻経管栄養にくらべると1/20位なので交換時のリスクという面では一長一短という感じである.
患者さんのストレスという面から言うと経鼻経管栄養からPEGになった患者さんには喜ばれることの方が圧倒的に多く合併症の頻度も少ない.これがPEGが推奨されている理由であろう.
だが,いくら安全性が高いとはいえ技術や経験や使用する器具の選択などクリアする問題は多く,実際にはあまりすすんでやりたい手技ではないのも事実である.患者さんや家族や看護師さんのためと思えばこそ医師が我慢しているのが本当のところだろう.
将来的にもっと器具が進歩して安全性が高まればもっと普及すると思われるが,少なくとも医師でなければ交換できないほどのものであるうちは真に安全とは言えないということも理解してもらいたいものである.
患者さんを疑うわけではないが
2005年2月22日 医療の問題『--薬物入手に処方せん悪用 目立つ多重受診、コピーも 向精神薬で薬剤師会調査--
覚せい剤と似た作用があるリタリン(一般名塩酸メチルフェニデート)や、ハルシオン(同トリアゾラム)といった向精神薬を、処方せんの悪用によって不正入手したケースが、2001年からの3年半に少なくとも30都道府県で128件あったことが21日までに、日本薬剤師会の自治体アンケートで分かった。
1人で多くの病院で受診し正規の処方せんを受け取る「多重受診」の手口が目立ち、コピーの例もあった。向精神薬は幻覚などの副作用があり若者の間で麻薬代わりの乱用が懸念されているが、処方せんの取り扱いで対策を迫られそうだ。
調査は昨年8月、全都道府県の薬務担当課に実施。01年1月から昨年8月まで処方せんを悪用して向精神薬を薬局などから不正入手した事例の把握分について、担当者に尋ねた。
件数は01年に29件、02年に25件、03年に51件、04年は8月までに23件だった。03年からの急増が目立ち、発生地は首都圏や大阪府など大都市が中心だった。
薬の種類は抗うつ剤のリタリンが48件、睡眠導入剤のハルシオンが37件。手口は「多重受診」が34件(17都道府県)で4分の1を占めた。処方せんを何枚もカラーコピーしたり、改ざんして処方日数を増やしたり、1から偽造するなどの方法もあった。
日本薬剤師会の石井甲一(いしい・こういち)専務理事は「薬局にとって不正を見抜くのは難しく、勘だけが頼り。不正は急増しており、組織的な対応が求められる」と話している。』
ハルシオンは悪い意味で有名になりすぎたのと,高齢者での副作用が多いため結果として非常に使いにくくなりもう何年も処方はしていない.他の睡眠導入剤があるのにいまだに処方する医師がいるのが不思議だが,こういう不正入手もあるのがわかっているのならやはり何らかの対策をとるべきだろう.
医療のシステムと言うのは基本的に患者さんは善人という前提になっているようで,詐病による偽診断書にはじまり薬物の不正使用などに対してはほとんど無防備である.先日も救急トレーから薬物が盗まれる事件があったが,学校以上に不審者の侵入に対してもガードが甘いのである.病院内での盗難は時々ニュースになっており大学病院で患者さんの個人情報の入ったノートパソコンが盗まれたのも記憶に新しい.
以前にも健康保険証のICカード化のことを書いたが,来院者のIDや投薬記録などの情報が健康保険証で確認できれば受付で簡単に本人確認や受診投薬歴が確認できて便利だと思うのだがどうだろうか.個人情報は自分で管理するのがもっとも安全なはずである.もっとも免許証と同じで常時携帯しなければ意味がないから,かえってわずらわしくて実現は難しいかもしれない.
覚せい剤と似た作用があるリタリン(一般名塩酸メチルフェニデート)や、ハルシオン(同トリアゾラム)といった向精神薬を、処方せんの悪用によって不正入手したケースが、2001年からの3年半に少なくとも30都道府県で128件あったことが21日までに、日本薬剤師会の自治体アンケートで分かった。
1人で多くの病院で受診し正規の処方せんを受け取る「多重受診」の手口が目立ち、コピーの例もあった。向精神薬は幻覚などの副作用があり若者の間で麻薬代わりの乱用が懸念されているが、処方せんの取り扱いで対策を迫られそうだ。
調査は昨年8月、全都道府県の薬務担当課に実施。01年1月から昨年8月まで処方せんを悪用して向精神薬を薬局などから不正入手した事例の把握分について、担当者に尋ねた。
件数は01年に29件、02年に25件、03年に51件、04年は8月までに23件だった。03年からの急増が目立ち、発生地は首都圏や大阪府など大都市が中心だった。
薬の種類は抗うつ剤のリタリンが48件、睡眠導入剤のハルシオンが37件。手口は「多重受診」が34件(17都道府県)で4分の1を占めた。処方せんを何枚もカラーコピーしたり、改ざんして処方日数を増やしたり、1から偽造するなどの方法もあった。
日本薬剤師会の石井甲一(いしい・こういち)専務理事は「薬局にとって不正を見抜くのは難しく、勘だけが頼り。不正は急増しており、組織的な対応が求められる」と話している。』
ハルシオンは悪い意味で有名になりすぎたのと,高齢者での副作用が多いため結果として非常に使いにくくなりもう何年も処方はしていない.他の睡眠導入剤があるのにいまだに処方する医師がいるのが不思議だが,こういう不正入手もあるのがわかっているのならやはり何らかの対策をとるべきだろう.
医療のシステムと言うのは基本的に患者さんは善人という前提になっているようで,詐病による偽診断書にはじまり薬物の不正使用などに対してはほとんど無防備である.先日も救急トレーから薬物が盗まれる事件があったが,学校以上に不審者の侵入に対してもガードが甘いのである.病院内での盗難は時々ニュースになっており大学病院で患者さんの個人情報の入ったノートパソコンが盗まれたのも記憶に新しい.
以前にも健康保険証のICカード化のことを書いたが,来院者のIDや投薬記録などの情報が健康保険証で確認できれば受付で簡単に本人確認や受診投薬歴が確認できて便利だと思うのだがどうだろうか.個人情報は自分で管理するのがもっとも安全なはずである.もっとも免許証と同じで常時携帯しなければ意味がないから,かえってわずらわしくて実現は難しいかもしれない.
『--たばこの煙好きな人も 禁煙化要望にJR西社長--
日本循環器学会などが要望している新幹線車内などのたばこ対策強化に対し、JR西日本の垣内剛(かきうち・たけし)社長は17日の記者会見で「もうもうとした煙がいいという人もいる」と述べ、全面禁煙化に消極的な考えを示した。
垣内社長は「喫煙者への配慮もある」とした上で、駅の分煙化についても「喫煙を認めているところはホームの端にあり、近寄らなければ影響を受けない」と話した。垣内社長自身はたばこを吸わない。
同学会などでつくる「禁煙指導ガイドライン委員会」は、新幹線の禁煙車両や駅ホームの喫煙場所周辺で、たばこの煙の濃度が、厚生労働省が定めた受動喫煙防止の基準より高いとして、JR各社に対策を要望している。』
たばこの煙が好きな人はいても構わないが,受動喫煙で病気になりたい人はいないだろう.喫煙が社会に悪影響を与える以上,公共の場では当然制限されるべきである.私は喫煙も飲酒も基本的に個人の自由であるとは思うが,喫煙も飲酒も公共の場で許されるものではないと考える.
未成年者や女性の喫煙が最近問題になっているのだが,人前で喫煙する人が当然のように扱われるのでは喫煙の害を唱えても無駄であろう.日頃よくみる光景が悪いことだといわれても感覚が麻痺してわからないだろう.そういう意味では教育者や医師が児童や患者のいる近くで喫煙してけむりや煙草の匂いをまきちらすのもプロとしては失格だろう.
喫煙は直接的に他人に害を与える点で飲酒よりはるかに性質がわるいということをなぜわからないのだろうか.人間は音と匂いを避けることは不可能に近い.だから騒音と同じようにたばこの煙も公共の場では規制されるのが当然だろう.
「禁煙指導ガイドライン委員会」は、新幹線の禁煙車両や駅ホームの喫煙場所周辺で、たばこの煙の濃度が、厚生労働省が定めた受動喫煙防止の基準より高いと指摘しているのであって煙の好き嫌いの話をしているのではない.JR西日本の垣内剛(かきうち・たけし)社長は指摘の意味が理解不能なのであろうか.それなら新幹線の騒音が基準を超えても「新幹線の走る音が好きな人もいる」とでも言うのだろうか.
JR西日本の垣内剛(かきうち・たけし)社長の発言の真意はわからないが,これは好き嫌いの問題ではなく善悪の問題だろう.迷惑する人がいるのにそれを好む人がいるから規制しないというのでは話にならない.JRという公共性の強い会社のトップにしてはあまりに不用意で不適切な発言で,その公共意識の低さはまさに論外である.
日本循環器学会などが要望している新幹線車内などのたばこ対策強化に対し、JR西日本の垣内剛(かきうち・たけし)社長は17日の記者会見で「もうもうとした煙がいいという人もいる」と述べ、全面禁煙化に消極的な考えを示した。
垣内社長は「喫煙者への配慮もある」とした上で、駅の分煙化についても「喫煙を認めているところはホームの端にあり、近寄らなければ影響を受けない」と話した。垣内社長自身はたばこを吸わない。
同学会などでつくる「禁煙指導ガイドライン委員会」は、新幹線の禁煙車両や駅ホームの喫煙場所周辺で、たばこの煙の濃度が、厚生労働省が定めた受動喫煙防止の基準より高いとして、JR各社に対策を要望している。』
たばこの煙が好きな人はいても構わないが,受動喫煙で病気になりたい人はいないだろう.喫煙が社会に悪影響を与える以上,公共の場では当然制限されるべきである.私は喫煙も飲酒も基本的に個人の自由であるとは思うが,喫煙も飲酒も公共の場で許されるものではないと考える.
未成年者や女性の喫煙が最近問題になっているのだが,人前で喫煙する人が当然のように扱われるのでは喫煙の害を唱えても無駄であろう.日頃よくみる光景が悪いことだといわれても感覚が麻痺してわからないだろう.そういう意味では教育者や医師が児童や患者のいる近くで喫煙してけむりや煙草の匂いをまきちらすのもプロとしては失格だろう.
喫煙は直接的に他人に害を与える点で飲酒よりはるかに性質がわるいということをなぜわからないのだろうか.人間は音と匂いを避けることは不可能に近い.だから騒音と同じようにたばこの煙も公共の場では規制されるのが当然だろう.
「禁煙指導ガイドライン委員会」は、新幹線の禁煙車両や駅ホームの喫煙場所周辺で、たばこの煙の濃度が、厚生労働省が定めた受動喫煙防止の基準より高いと指摘しているのであって煙の好き嫌いの話をしているのではない.JR西日本の垣内剛(かきうち・たけし)社長は指摘の意味が理解不能なのであろうか.それなら新幹線の騒音が基準を超えても「新幹線の走る音が好きな人もいる」とでも言うのだろうか.
JR西日本の垣内剛(かきうち・たけし)社長の発言の真意はわからないが,これは好き嫌いの問題ではなく善悪の問題だろう.迷惑する人がいるのにそれを好む人がいるから規制しないというのでは話にならない.JRという公共性の強い会社のトップにしてはあまりに不用意で不適切な発言で,その公共意識の低さはまさに論外である.
『--国、企業は争う姿勢 イレッサ副作用死訴訟--
肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の投与後に死亡した、さいたま市の近沢三津子(ちかざわ・みつこ)さん=当時(31)=の遺族が「副作用の危険について警告を怠った」として、輸入販売会社アストラゼネカ(大阪市)と、輸入を承認した国に、計3850万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が16日、東京地裁(滝沢泉(たきざわ・いずみ)裁判長)で開かれた。
国側は答弁書で「輸入承認の審査は適正だった」と反論。アストラゼネカは「死亡と副作用の因果関係は医学的に確定していない」と、共に請求棄却を求め、全面的に争う姿勢を示した。
三津子さんの父親昭雄(あきお)さんは「1日でも長く生きたい、という思いをイレッサに絶たれた。欧州では承認申請が取り下げられたのに、日本人には効くなどとだまし続けるのは国や製薬会社のすることではない」と意見陳述した。
イレッサをめぐっては副作用が疑われる国内の死者が600人近くに達し、日本を除く28カ国の大規模臨床検査でも延命効果が確認されなかった。だが厚生労働省の検討会は1月、東洋人では改善例もあるなどとして「当面使用は制限しない」と判断した。』
『--市販薬監視の独立委を設置 米、副作用で批判受け--
米食品医薬品局(FDA)は15日、市販されている医薬品の安全性を監視する独立委員会を同局内に設置すると発表した。
医療従事者や患者に薬の副作用情報などをいち早く知らせる狙いがある。昨年来、広く普及している消炎鎮痛剤や抗うつ剤の副作用が問題になり、FDAの対応が不十分だったと批判が強まっていることを受けた措置。
独立委は新薬承認部門とは切り離すが、委員はFDAや政府内の医学専門家が務めるため、監視の独立性をめぐり早くも疑問の声が出ている。新薬の製造販売を認めるかどうかの審査に加え、市販後の安全監視もFDAの業務の1つ。だがいったん市販されると、副作用情報は主に製薬会社からの報告に頼っており、対応が遅れがちだと指摘されている。』
厚生労働省や国の対応は薬害AIDSの時とたいして変わっていない.要は自分たちの認可の結果の薬害であっても責任は取りたくないということだろう.これでは何のための認可なのかわからない.アストラゼネカの「死亡と副作用の因果関係は医学的に確定していない」という姿勢は多くの医師の失笑をかうだけだろう.
もっとも今後もイレッサを使いたい医師と患者のために選択の余地を残しておいても実害は少ないだろう.これだけ問題になれば副作用に関する説明と同意も相当に厳しくなるだろうから.
副作用については認可の時点で広く知られていたかどうかが問題だろう.非常に頻度の少ないものについては非常に多くの患者さんに使用して初めてわかるものだってあるのだから.そういう意味では薬にはすべて副作用がある可能性はあるわけで,抗がん剤はその中でもリスクが高いことは医師にとっては常識である.
米国民も同じような問題で被害に遭ったようだが,結局FDA内部で新薬承認と市販薬監視の部門を分けても信用できないということであろう.薬害AIDSの時のことを思い出すとわが国の場合は国も厚生労働省も厚生労働省研究班の教授たちも信用できないわけでこの場合はいったいどうしたらいいのであろうか.
肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の投与後に死亡した、さいたま市の近沢三津子(ちかざわ・みつこ)さん=当時(31)=の遺族が「副作用の危険について警告を怠った」として、輸入販売会社アストラゼネカ(大阪市)と、輸入を承認した国に、計3850万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が16日、東京地裁(滝沢泉(たきざわ・いずみ)裁判長)で開かれた。
国側は答弁書で「輸入承認の審査は適正だった」と反論。アストラゼネカは「死亡と副作用の因果関係は医学的に確定していない」と、共に請求棄却を求め、全面的に争う姿勢を示した。
三津子さんの父親昭雄(あきお)さんは「1日でも長く生きたい、という思いをイレッサに絶たれた。欧州では承認申請が取り下げられたのに、日本人には効くなどとだまし続けるのは国や製薬会社のすることではない」と意見陳述した。
イレッサをめぐっては副作用が疑われる国内の死者が600人近くに達し、日本を除く28カ国の大規模臨床検査でも延命効果が確認されなかった。だが厚生労働省の検討会は1月、東洋人では改善例もあるなどとして「当面使用は制限しない」と判断した。』
『--市販薬監視の独立委を設置 米、副作用で批判受け--
米食品医薬品局(FDA)は15日、市販されている医薬品の安全性を監視する独立委員会を同局内に設置すると発表した。
医療従事者や患者に薬の副作用情報などをいち早く知らせる狙いがある。昨年来、広く普及している消炎鎮痛剤や抗うつ剤の副作用が問題になり、FDAの対応が不十分だったと批判が強まっていることを受けた措置。
独立委は新薬承認部門とは切り離すが、委員はFDAや政府内の医学専門家が務めるため、監視の独立性をめぐり早くも疑問の声が出ている。新薬の製造販売を認めるかどうかの審査に加え、市販後の安全監視もFDAの業務の1つ。だがいったん市販されると、副作用情報は主に製薬会社からの報告に頼っており、対応が遅れがちだと指摘されている。』
厚生労働省や国の対応は薬害AIDSの時とたいして変わっていない.要は自分たちの認可の結果の薬害であっても責任は取りたくないということだろう.これでは何のための認可なのかわからない.アストラゼネカの「死亡と副作用の因果関係は医学的に確定していない」という姿勢は多くの医師の失笑をかうだけだろう.
もっとも今後もイレッサを使いたい医師と患者のために選択の余地を残しておいても実害は少ないだろう.これだけ問題になれば副作用に関する説明と同意も相当に厳しくなるだろうから.
副作用については認可の時点で広く知られていたかどうかが問題だろう.非常に頻度の少ないものについては非常に多くの患者さんに使用して初めてわかるものだってあるのだから.そういう意味では薬にはすべて副作用がある可能性はあるわけで,抗がん剤はその中でもリスクが高いことは医師にとっては常識である.
米国民も同じような問題で被害に遭ったようだが,結局FDA内部で新薬承認と市販薬監視の部門を分けても信用できないということであろう.薬害AIDSの時のことを思い出すとわが国の場合は国も厚生労働省も厚生労働省研究班の教授たちも信用できないわけでこの場合はいったいどうしたらいいのであろうか.
団塊の世代は早死してもいいのか
2005年2月16日 医療の問題『--給付伸び、成長率に抑制を 医療、介護で民間議員--
奥田碩日本経団連会長ら経済財政諮問会議の民間議員4人は15日、増大する社会保障給付費を経済規模に合わせるため、今後急激な伸びが予想される医療や介護給付を名目国内総生産(GDP)の伸びの範囲内に抑えるべきだとする意見書を、諮問会議に提出した。意見書は、現状のままだと社会保障給付は団塊の世代が老後を迎える2000年1けた代後半から2010年代を通じて名目成長率を大きく上回って伸びると指摘。安定的な社会保障制度を維持するためには総額の目安を定め、制度改革や効率化を図るべきだと強調している。
具体的な抑制策として、当面06年度から10年度までの5カ年計画を今年中に策定。その中で、(1)生活習慣病対策など医療サービス向上プログラムの策定(2)診療報酬、介護報酬の改定に際し、名目成長率を目安に抑制する方式の導入(3)風邪など軽度な疾病の診療を公的保険の対象から除外、利用者の一部負担を引き上げるなど保険給付範囲の見直し-を盛り込むべきだと提案している。』
『--「不可能」と厚労省反論 奥田氏らの医療費抑制策 --
経済財政諮問会議の民間議員が15日、医療給付費などの伸び率を名目国内総生産(GDP)の伸び率以下に抑制するよう主張したことに対し、厚生労働省は同日、抑制は事実上不可能だとする反論をまとめ同会議に提出した。厚労省によると、国民医療費は、高齢化や医療技術の進歩により増加し、2025年には保険からの給付は59兆円に上ると推計される。名目GDPの伸び率以下に抑制するとすると、同年の医療給付は38兆円。厚労省が推計した59兆円との差額分約20兆円は(1)個人負担の増(2)医療費自体の抑制(3)診療報酬の引き下げ-などで埋め合わせることになる。
試算では、全額を患者側の自己負担で賄えば、負担は現在の2.5-3倍程度に跳ね上がる。また医療費を抑え込めば健康水準が低下。診療報酬単価の引き下げは、医療の質の低下を招くというのが厚労省の主張だ。厚労省は、医療費の伸びを適正化するため、生活習慣病対策や入院日数の短縮、公的保険給付範囲の見直しなどを検討している。』
個人負担を増やすことは診療機会を減らすだろうし,診療報酬単価の引き下げは医療の質の低下を招くのはまちがいない.介護報酬の引き下げはさらなるサービスの低下と家族による虐待をもたらすであろう.
医療や介護給付を名目国内総生産(GDP)の伸びの範囲内に抑えるべきだというが,では今までの高速道路や鉄道やダムなどの社会資本への投資は適切だったというのであろうか.また,日本経済を支えてきた労働力である団塊の世代の健康に投資するのは無駄だというのであろうか.
国民年金にしても国民健康保険にしても十分な準備をしないままに団塊の世代の定年退職という時代に突入してしまうことが問題なのであって,今さらお金がないから保険料は払えませんというのでは病気で死んでいく団塊の世代は使い捨てにされたということになる.
もっとも社会資本の充実にのみ目を向けて国民の健康をないがしろにしてきたのには国民にも責任があるのだろうが,国民の健康意識の啓蒙や医療の効率化といったことを怠りながら保険料や税金を無駄使いしてきた社会保険庁や政府の責任はさらに大きいだろう.
団塊の世代が高齢化すればいよいよ医療は薄利多売のコンビニ状態になっていくのだろうがたとえ自費で払ったところで医療の質の低下は止めようがないだろう.なぜならば経営環境が厳しくなった病院そのものも今後は営利企業のようにならねば存続することが難しい時代になっていくのだから.
奥田碩日本経団連会長ら経済財政諮問会議の民間議員4人は15日、増大する社会保障給付費を経済規模に合わせるため、今後急激な伸びが予想される医療や介護給付を名目国内総生産(GDP)の伸びの範囲内に抑えるべきだとする意見書を、諮問会議に提出した。意見書は、現状のままだと社会保障給付は団塊の世代が老後を迎える2000年1けた代後半から2010年代を通じて名目成長率を大きく上回って伸びると指摘。安定的な社会保障制度を維持するためには総額の目安を定め、制度改革や効率化を図るべきだと強調している。
具体的な抑制策として、当面06年度から10年度までの5カ年計画を今年中に策定。その中で、(1)生活習慣病対策など医療サービス向上プログラムの策定(2)診療報酬、介護報酬の改定に際し、名目成長率を目安に抑制する方式の導入(3)風邪など軽度な疾病の診療を公的保険の対象から除外、利用者の一部負担を引き上げるなど保険給付範囲の見直し-を盛り込むべきだと提案している。』
『--「不可能」と厚労省反論 奥田氏らの医療費抑制策 --
経済財政諮問会議の民間議員が15日、医療給付費などの伸び率を名目国内総生産(GDP)の伸び率以下に抑制するよう主張したことに対し、厚生労働省は同日、抑制は事実上不可能だとする反論をまとめ同会議に提出した。厚労省によると、国民医療費は、高齢化や医療技術の進歩により増加し、2025年には保険からの給付は59兆円に上ると推計される。名目GDPの伸び率以下に抑制するとすると、同年の医療給付は38兆円。厚労省が推計した59兆円との差額分約20兆円は(1)個人負担の増(2)医療費自体の抑制(3)診療報酬の引き下げ-などで埋め合わせることになる。
試算では、全額を患者側の自己負担で賄えば、負担は現在の2.5-3倍程度に跳ね上がる。また医療費を抑え込めば健康水準が低下。診療報酬単価の引き下げは、医療の質の低下を招くというのが厚労省の主張だ。厚労省は、医療費の伸びを適正化するため、生活習慣病対策や入院日数の短縮、公的保険給付範囲の見直しなどを検討している。』
個人負担を増やすことは診療機会を減らすだろうし,診療報酬単価の引き下げは医療の質の低下を招くのはまちがいない.介護報酬の引き下げはさらなるサービスの低下と家族による虐待をもたらすであろう.
医療や介護給付を名目国内総生産(GDP)の伸びの範囲内に抑えるべきだというが,では今までの高速道路や鉄道やダムなどの社会資本への投資は適切だったというのであろうか.また,日本経済を支えてきた労働力である団塊の世代の健康に投資するのは無駄だというのであろうか.
国民年金にしても国民健康保険にしても十分な準備をしないままに団塊の世代の定年退職という時代に突入してしまうことが問題なのであって,今さらお金がないから保険料は払えませんというのでは病気で死んでいく団塊の世代は使い捨てにされたということになる.
もっとも社会資本の充実にのみ目を向けて国民の健康をないがしろにしてきたのには国民にも責任があるのだろうが,国民の健康意識の啓蒙や医療の効率化といったことを怠りながら保険料や税金を無駄使いしてきた社会保険庁や政府の責任はさらに大きいだろう.
団塊の世代が高齢化すればいよいよ医療は薄利多売のコンビニ状態になっていくのだろうがたとえ自費で払ったところで医療の質の低下は止めようがないだろう.なぜならば経営環境が厳しくなった病院そのものも今後は営利企業のようにならねば存続することが難しい時代になっていくのだから.
尊厳死をみとめてあげたい
2005年2月14日 社会の問題『--母親に執行猶予つき判決 ALS呼吸器停止事件--
人工呼吸器を止め、筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)で療養中の長男(当時40)を死なせたとして、殺人罪に問われた神奈川県相模原市宮下本町1丁目、菅野初子被告(60)に対して、横浜地裁は14日、殺人罪よりも法定刑の軽い嘱託殺人罪の成立を認め、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。被告・弁護側は「息子の承諾のうえだった」と主張していた。
小倉正三裁判長は「同じ難病に苦しみながら闘病生活を送っている患者や家族に与えた衝撃は大きいが、生活のすべてを息子に捧げ、献身的に介護に専念してきた」と述べた。
刑法で殺人罪の法定刑は「死刑か無期もしくは3年以上の懲役」と定められているが、その人の嘱託や同意を受けて殺した場合は「6カ月以上7年以下の懲役または禁固」とされている。
弁護側は昨年11月からの公判で、幸男さんが呼吸器装着を後悔しており、昨年春に眼球の動きが低下してパソコンが使用できなくなってからは「死にたい。呼吸器を外してほしい」と繰り返し訴えていた、と指摘。
菅野被告が事件当日の夕方、「今日、お母さんと逝こう」と語り掛けると、五十音が並んだ文字盤を眼球で追って「おふくろ、ごめん。ありがとう」と応じたので、菅野被告は幸男さんが呼吸器停止を承諾していると考えた、と訴えていた。
これに対して検察側は「幸男さんは意思表示能力が極度に減退しており、被告は幸男さんとほとんど意思疎通できなかった」と指摘。幸男さんが「おふくろ、ごめん。ありがとう」と答えたとしても、謝罪と感謝の言葉にも受け取れるので、真意の承諾とは評価できない、と主張していた。
判決によると、菅野被告は昨年8月26日、長男幸男さんに睡眠薬を飲ませたうえ、同日午後11時59分ごろ、呼吸器の酸素供給を停止させ、幸男さんを窒息で死なせた。菅野被告も自殺を図ったが、夫に発見されて、一命を取り留めた。』
日々,寝たきりで意識もない患者さんたちを診させてもらっているが.手足がすっかり拘縮してミイラのようになってしまった姿をみるにつけ元気だった頃はどんな方だったのだろうと思う.だが,変わり果てたその姿からは想像することさえ難しい.
自分の家族や自分がその様な状態になるとしたら私はやっぱり尊厳死を選ぶだろうと思う.自分の家族や自分の姿が元気だったころの家族との思い出から乖離していってしまうことには耐えられない.
またALSに限らず意識はしっかりしていても言葉を出せず,手も足も動かせず,目で合図することしかできない状態になる脳梗塞の一種もある.閉じこめ症候群といわれるものである.かなり昔の映画でピラミッドという映画があった.拷問に使う人型の拘束具に閉じこめられた悪者の眼だけが画面にアップになる場面があった.ちょうど身動きできないまま死の恐怖に怯えるところが恐かったので記憶に残っているのだが,まさに自分の体に閉じこめられる気分になるだろう.
介護してもらえるとはいえ,いつ死ぬかもわからず自分ではどうすることもできないというのでは死んだほうがましという気分になってもおかしくないだろう.問題は自殺する自由も与えられないということだろう.
わが国では尊厳死が認められていない.だからこのような家族に頼んで楽にしてもらうなどという悲劇が起こるのだろう.医学は基本的に患者を延命させるという使命があるのはわかるが,患者の苦痛をなくすという視点で考えれば尊厳死もみとめてあげなければならないような気がする.
人工呼吸器を止め、筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)で療養中の長男(当時40)を死なせたとして、殺人罪に問われた神奈川県相模原市宮下本町1丁目、菅野初子被告(60)に対して、横浜地裁は14日、殺人罪よりも法定刑の軽い嘱託殺人罪の成立を認め、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。被告・弁護側は「息子の承諾のうえだった」と主張していた。
小倉正三裁判長は「同じ難病に苦しみながら闘病生活を送っている患者や家族に与えた衝撃は大きいが、生活のすべてを息子に捧げ、献身的に介護に専念してきた」と述べた。
刑法で殺人罪の法定刑は「死刑か無期もしくは3年以上の懲役」と定められているが、その人の嘱託や同意を受けて殺した場合は「6カ月以上7年以下の懲役または禁固」とされている。
弁護側は昨年11月からの公判で、幸男さんが呼吸器装着を後悔しており、昨年春に眼球の動きが低下してパソコンが使用できなくなってからは「死にたい。呼吸器を外してほしい」と繰り返し訴えていた、と指摘。
菅野被告が事件当日の夕方、「今日、お母さんと逝こう」と語り掛けると、五十音が並んだ文字盤を眼球で追って「おふくろ、ごめん。ありがとう」と応じたので、菅野被告は幸男さんが呼吸器停止を承諾していると考えた、と訴えていた。
これに対して検察側は「幸男さんは意思表示能力が極度に減退しており、被告は幸男さんとほとんど意思疎通できなかった」と指摘。幸男さんが「おふくろ、ごめん。ありがとう」と答えたとしても、謝罪と感謝の言葉にも受け取れるので、真意の承諾とは評価できない、と主張していた。
判決によると、菅野被告は昨年8月26日、長男幸男さんに睡眠薬を飲ませたうえ、同日午後11時59分ごろ、呼吸器の酸素供給を停止させ、幸男さんを窒息で死なせた。菅野被告も自殺を図ったが、夫に発見されて、一命を取り留めた。』
日々,寝たきりで意識もない患者さんたちを診させてもらっているが.手足がすっかり拘縮してミイラのようになってしまった姿をみるにつけ元気だった頃はどんな方だったのだろうと思う.だが,変わり果てたその姿からは想像することさえ難しい.
自分の家族や自分がその様な状態になるとしたら私はやっぱり尊厳死を選ぶだろうと思う.自分の家族や自分の姿が元気だったころの家族との思い出から乖離していってしまうことには耐えられない.
またALSに限らず意識はしっかりしていても言葉を出せず,手も足も動かせず,目で合図することしかできない状態になる脳梗塞の一種もある.閉じこめ症候群といわれるものである.かなり昔の映画でピラミッドという映画があった.拷問に使う人型の拘束具に閉じこめられた悪者の眼だけが画面にアップになる場面があった.ちょうど身動きできないまま死の恐怖に怯えるところが恐かったので記憶に残っているのだが,まさに自分の体に閉じこめられる気分になるだろう.
介護してもらえるとはいえ,いつ死ぬかもわからず自分ではどうすることもできないというのでは死んだほうがましという気分になってもおかしくないだろう.問題は自殺する自由も与えられないということだろう.
わが国では尊厳死が認められていない.だからこのような家族に頼んで楽にしてもらうなどという悲劇が起こるのだろう.医学は基本的に患者を延命させるという使命があるのはわかるが,患者の苦痛をなくすという視点で考えれば尊厳死もみとめてあげなければならないような気がする.
院外処方は安全なのか?
2005年2月11日 医療の問題 コメント (1)『--医薬分業率の地域差4倍 厚労省があり方見直しへ--
患者が医師から処方せんをもらい、外部の薬局で薬を受け取る「医薬分業」の2003年度実施率は51・6%で、都道府県別では最高だった秋田県の71・7%から最低の福井県17・0%まで4倍以上も地域格差があったことが9日、厚生労働省の開いた薬務関係主管課長会議で報告された。
厚労省はのみ合わせの確認など薬の安全対策として分業を推進しているが、患者側には「二度手間になり、メリットを感じない」との声もある。このため、同省は春に専門家の検討会を発足させ、患者に役立つ分業のあり方や全国普及策などを再検討する。
分業実施率は、日本薬剤師会が処方せんの枚数などから推計した。高かったのは秋田をトップに佐賀(69・7%)、神奈川(68・6%)。逆に低かったのは福井と和歌山(26・0%)、石川(27・8%)などだった。
厚労省医薬食品局によると、抗がん剤とののみ合わせで多数の副作用死が出たソリブジン薬害などを教訓に、分業率は各都道府県とも約10年前の3倍程度に上がった。しかし、ほかの先進国では医療機関と薬局が完全分離しており、検討会はそうした外国の制度も調査し、安全に薬を処方する仕組みを話し合う。』
院外処方は薬価による病院側の利益が少なくなったので進んでいるようであるが,本当に患者のためになっているのだろうか.院外処方でも投薬ミスは起きているし,患者さんがそれぞれの病院の近くの院外処方薬局に行っていれば重複投薬も起こる可能性がある.経済的にも院外処方箋料がかかるぶん院内処方よりも患者負担はいくぶん大きくなっている.
これではいったい何のための院外処方だったのかわからなくなって当然である.実施率が低いのもこの辺りに問題があるのだろう.話を安全というところに戻すなら健康保険証をICカードにして現在の処方内容を記録しておくだけで重複投薬を防ぐのは可能なはずで,院外処方薬局のチェーン店の利益を確保するために院外処方の実施率をあげるのだとしたら何の意味もない.
厚生労働省が無理にこれを推し進めるのだとしたら日本歯科医師会のような政治的な働きかけが日本薬剤師会にもあるのではないかと疑いたくもなるのだがどうだろうか.
患者が医師から処方せんをもらい、外部の薬局で薬を受け取る「医薬分業」の2003年度実施率は51・6%で、都道府県別では最高だった秋田県の71・7%から最低の福井県17・0%まで4倍以上も地域格差があったことが9日、厚生労働省の開いた薬務関係主管課長会議で報告された。
厚労省はのみ合わせの確認など薬の安全対策として分業を推進しているが、患者側には「二度手間になり、メリットを感じない」との声もある。このため、同省は春に専門家の検討会を発足させ、患者に役立つ分業のあり方や全国普及策などを再検討する。
分業実施率は、日本薬剤師会が処方せんの枚数などから推計した。高かったのは秋田をトップに佐賀(69・7%)、神奈川(68・6%)。逆に低かったのは福井と和歌山(26・0%)、石川(27・8%)などだった。
厚労省医薬食品局によると、抗がん剤とののみ合わせで多数の副作用死が出たソリブジン薬害などを教訓に、分業率は各都道府県とも約10年前の3倍程度に上がった。しかし、ほかの先進国では医療機関と薬局が完全分離しており、検討会はそうした外国の制度も調査し、安全に薬を処方する仕組みを話し合う。』
院外処方は薬価による病院側の利益が少なくなったので進んでいるようであるが,本当に患者のためになっているのだろうか.院外処方でも投薬ミスは起きているし,患者さんがそれぞれの病院の近くの院外処方薬局に行っていれば重複投薬も起こる可能性がある.経済的にも院外処方箋料がかかるぶん院内処方よりも患者負担はいくぶん大きくなっている.
これではいったい何のための院外処方だったのかわからなくなって当然である.実施率が低いのもこの辺りに問題があるのだろう.話を安全というところに戻すなら健康保険証をICカードにして現在の処方内容を記録しておくだけで重複投薬を防ぐのは可能なはずで,院外処方薬局のチェーン店の利益を確保するために院外処方の実施率をあげるのだとしたら何の意味もない.
厚生労働省が無理にこれを推し進めるのだとしたら日本歯科医師会のような政治的な働きかけが日本薬剤師会にもあるのではないかと疑いたくもなるのだがどうだろうか.
技術料を適切に評価せよ
2005年2月9日 医療の問題『--麻酔科医不足、学会が解消案 負担軽減など提言--
手術中の患者の全身状態を管理する麻酔科医の不足が深刻なことから、日本麻酔科学会(花岡一雄理事長、会員9287人)は、麻酔科医の負担軽減や女性医師が働きやすい環境の整備などの対策を盛り込んだ提言をまとめた。近く、厚生労働省や日本医師会、日本病院会に提出する。
麻酔科医は年々増えているが、手術件数も増加の一途をたどっている。全身麻酔の手術を行う全国の約4千病院のうち、同学会員の常勤麻酔科医がいる施設は半数しかない。高齢や合併症など高リスクの患者の手術が増え、患者の医療安全への関心が高まっていることも麻酔科医の需要を押し上げる。少ない人数で多くの仕事をこなす労働環境の悪さから勤務先を辞める麻酔科医も多く、人員不足に拍車がかかる。負担軽減策として、(1)術前の薬剤や麻酔機器の準備を薬剤師や臨床工学技士に担当してもらうなど医師以外の職種を活用する(2)予定される手術は特定の曜日に集中させない(3)手術時間を左右する要因を分析し、時間の適正化に努める――などを挙げている。
また、34歳以下の年齢層では麻酔科医の4割が女性であるとし、託児所を充実させ、働きやすい環境を整えるよう訴えている。
診療報酬でも麻酔科医の技術料が適切に評価されておらず、それが若くて体力のある麻酔科医を少数雇用し、より多くの手術を行わせようとする傾向を助長しているとして、報酬上の配慮を厚労省に求めている。』
現在でも麻酔科医がいないため外科医が麻酔をかけて看護師にモニターしてもらいながら手術をしている病院が多いのだろう.だが,もしそれですべてうまくいくのなら麻酔科医の需要はここまで伸びなかったはずである.
人手不足を理由に一人の医師がなんでもやらなければならないと言うのではリスクマネージメントはできるわけがない.ある意味で分業し細分化することで医療は高度化できたのであろう.麻酔が麻酔専門医によって行われるようになったのも安全性を考えれば当然のことであろう.
問題は診療報酬の設定にあるのだと思う.今のところ麻酔専門医がかけても外科医がかけても診療報酬上の差はないし,2つ以上の手術を一人の麻酔科医がかけても同様である.つまり麻酔科専門医がかけることを診療報酬上はまったく評価していないのである.
これでは外科医が麻酔をかけれれば麻酔科医がいないほうがコストの削減になるし,仮に麻酔科医がいても相対的に麻酔科医不足にしたほうが利益が上がることになる.つまり安全マージンを低くしたほうが儲かることになる.リスクが大きいほど利益が大きいという図式が病院に当てはまっていいものだろうか.
病床あたりの看護師数は診療報酬に反映するようになっている.手術数あたりの麻酔科専門医の数が診療報酬に反映されなければ麻酔科専門医の価値は看護師ほどないことになるのではないだろうか.私は麻酔科医のお世話になることが多いし,長い時間の手術に付き合ってもらうこともあるので麻酔科医の肩を持つわけではないが,麻酔専門医のかける麻酔の技術料はもっと正当に評価すべきであろう.
脳外科の手術の技術料についても同じことが言える.今の診療報酬では手術料の中に医療材料費をまるめるようなことをしたり,破裂動脈瘤と未破裂脳動脈瘤の差がなかったりとおかしなことが多いのである.脳外科医は一人前になるのに10年はかかる.破裂動脈瘤などではリスクも高い.それに比べると手術料はバーゲン価格というのでは脳外科医になる気はなくなるだろう.
医療不信をまねくような医療事故や医療訴訟のニュースを毎日目にするようになり病院経営が難しい最近の状況では献身的に働くことは以前より難しくなってきている.現実には勤務医は医師といえどもサラリーマンである.労働環境を厚生労働省が積極的に改善してくれないことには労働条件の悪い診療科目の医師は減少し医療の質の確保も難しくなるだろう.
手術中の患者の全身状態を管理する麻酔科医の不足が深刻なことから、日本麻酔科学会(花岡一雄理事長、会員9287人)は、麻酔科医の負担軽減や女性医師が働きやすい環境の整備などの対策を盛り込んだ提言をまとめた。近く、厚生労働省や日本医師会、日本病院会に提出する。
麻酔科医は年々増えているが、手術件数も増加の一途をたどっている。全身麻酔の手術を行う全国の約4千病院のうち、同学会員の常勤麻酔科医がいる施設は半数しかない。高齢や合併症など高リスクの患者の手術が増え、患者の医療安全への関心が高まっていることも麻酔科医の需要を押し上げる。少ない人数で多くの仕事をこなす労働環境の悪さから勤務先を辞める麻酔科医も多く、人員不足に拍車がかかる。負担軽減策として、(1)術前の薬剤や麻酔機器の準備を薬剤師や臨床工学技士に担当してもらうなど医師以外の職種を活用する(2)予定される手術は特定の曜日に集中させない(3)手術時間を左右する要因を分析し、時間の適正化に努める――などを挙げている。
また、34歳以下の年齢層では麻酔科医の4割が女性であるとし、託児所を充実させ、働きやすい環境を整えるよう訴えている。
診療報酬でも麻酔科医の技術料が適切に評価されておらず、それが若くて体力のある麻酔科医を少数雇用し、より多くの手術を行わせようとする傾向を助長しているとして、報酬上の配慮を厚労省に求めている。』
現在でも麻酔科医がいないため外科医が麻酔をかけて看護師にモニターしてもらいながら手術をしている病院が多いのだろう.だが,もしそれですべてうまくいくのなら麻酔科医の需要はここまで伸びなかったはずである.
人手不足を理由に一人の医師がなんでもやらなければならないと言うのではリスクマネージメントはできるわけがない.ある意味で分業し細分化することで医療は高度化できたのであろう.麻酔が麻酔専門医によって行われるようになったのも安全性を考えれば当然のことであろう.
問題は診療報酬の設定にあるのだと思う.今のところ麻酔専門医がかけても外科医がかけても診療報酬上の差はないし,2つ以上の手術を一人の麻酔科医がかけても同様である.つまり麻酔科専門医がかけることを診療報酬上はまったく評価していないのである.
これでは外科医が麻酔をかけれれば麻酔科医がいないほうがコストの削減になるし,仮に麻酔科医がいても相対的に麻酔科医不足にしたほうが利益が上がることになる.つまり安全マージンを低くしたほうが儲かることになる.リスクが大きいほど利益が大きいという図式が病院に当てはまっていいものだろうか.
病床あたりの看護師数は診療報酬に反映するようになっている.手術数あたりの麻酔科専門医の数が診療報酬に反映されなければ麻酔科専門医の価値は看護師ほどないことになるのではないだろうか.私は麻酔科医のお世話になることが多いし,長い時間の手術に付き合ってもらうこともあるので麻酔科医の肩を持つわけではないが,麻酔専門医のかける麻酔の技術料はもっと正当に評価すべきであろう.
脳外科の手術の技術料についても同じことが言える.今の診療報酬では手術料の中に医療材料費をまるめるようなことをしたり,破裂動脈瘤と未破裂脳動脈瘤の差がなかったりとおかしなことが多いのである.脳外科医は一人前になるのに10年はかかる.破裂動脈瘤などではリスクも高い.それに比べると手術料はバーゲン価格というのでは脳外科医になる気はなくなるだろう.
医療不信をまねくような医療事故や医療訴訟のニュースを毎日目にするようになり病院経営が難しい最近の状況では献身的に働くことは以前より難しくなってきている.現実には勤務医は医師といえどもサラリーマンである.労働環境を厚生労働省が積極的に改善してくれないことには労働条件の悪い診療科目の医師は減少し医療の質の確保も難しくなるだろう.
脳神経外科学会は良心的?
2005年2月8日 医療の問題『--抗がん剤の専門医制混乱 2学会が別々に認定試験予定--
抗がん剤によるがん治療の専門医制度をめぐって、医学界に混乱が起きている。内科系の日本臨床腫瘍(しゅよう)学会(会員約3000人)と外科系の日本癌(がん)治療学会(会員約1万4000人)の2学会が別々に専門医制度をつくり、今秋に初の認定試験を予定しているからだ。歩み寄りの兆しはなく、このままでは、専門医制度を医師や病院の選択基準にしようとする患者にまで混乱が及びそうだ。
先行したのは、優れた腫瘍内科医の育成を目標にする日本臨床腫瘍学会だ。02年に「臨床腫瘍専門医」の創設を決め、現在研修を行っている。今年11月に初の認定試験を予定する。
抗がん剤は副作用が強いうえ、市販後も医師主導の臨床試験を通して標準治療の改良に取り組む特徴がある。人口が日本の約2倍の米国には約9000人の腫瘍内科医がいるとされ、同学会は日本の必要数を3000〜4000人とみている。
理事長の西條長宏・国立がんセンター東病院副院長は「系統的なカリキュラムにのっとって学び、薬物治療に精通した医師を育てることこそ、学会の役割だ」と話す。
一方、日本癌治療学会は昨年10月、「がん治療専門医」制度の創設を決めた。初試験は今年10月の予定だ。
同学会は会員の半数が外科医。日本の大学には臨床腫瘍学の講座がほとんどなく、外科医が手術と並行して抗がん剤治療をしてきた経緯がある。外科医の水準向上を目的に、臨床腫瘍専門医よりはるかに多い2万人の専門医養成を目指す。
北島政樹理事長(慶応大学医学部長)の下で制度づくりに当たる久保田哲朗・同大助教授(消化器外科)は「腫瘍内科医と外科医が分業してがん患者の治療に当たれる病院は一握り。多くのがん患者は外科医による薬物治療を受けている。外科医の薬物治療のレベルを上げることが重要ではないか」と話す。
外科領域の基盤学会である日本外科学会は癌治療学会の動きに反対の立場だ。「『がん治療専門医』を認定する必然性を感じない。将来的に外科医の仕事から薬物療法を切り離すよう働きかけるべきだ」とする文書を癌治療学会あてに送った。だが、2学会とも既定路線を突き進んでいる。
日本専門医認定制機構の酒井紀(おさむ)・代表理事は「統一的な研修カリキュラムや認定基準を作り、制度を一本化しないと国民のためにならない」といい、2学会に話し合いを呼びかけている。』
脳外科に関する最近できた専門医制度といえば血管内治療の専門医と脳卒中専門医である.日本脳神経血管内治療学会と日本脳卒中学会が認定している.日本脳神経血管内治療学会の方は脳外科医の会員が多いかもしれないが,日本脳卒中学会の方は大半が神経内科もしくは内科医であると思われる.
日本脳神経外科学会で脳卒中の内科的治療が取り上げられることはほとんどないためか,内科的治療も含めて実際の治療にあたってきた脳外科医に脳卒中専門医の認定を学会独自で行うようなことはしていない.この点で癌治療学会の動きはどうも外科医の仕事から薬物療法を切り離したくないように見える.
「『がん治療専門医』を認定する必然性を感じない。将来的に外科医の仕事から薬物療法を切り離すよう働きかけるべきだ」という考え方には私は賛成だ.脳卒中の治療も内科的なものはすべて脳卒中専門医の認定を受けた脳神経内科医にやってもらいたい.そうすれば脳外科医不足も解消されて脳外科医は本来の手術治療に専念できるわけである.
実際はそう簡単ではないことはわかっているが,今まで地域の脳卒中治療に貢献したつもりでいても脳卒中学会に属さなければ専門医認定もしないというのであれば脳外科医としてはやっぱり手術治療に専念したいというのが本音なわけである.
抗がん剤によるがん治療の専門医制度をめぐって、医学界に混乱が起きている。内科系の日本臨床腫瘍(しゅよう)学会(会員約3000人)と外科系の日本癌(がん)治療学会(会員約1万4000人)の2学会が別々に専門医制度をつくり、今秋に初の認定試験を予定しているからだ。歩み寄りの兆しはなく、このままでは、専門医制度を医師や病院の選択基準にしようとする患者にまで混乱が及びそうだ。
先行したのは、優れた腫瘍内科医の育成を目標にする日本臨床腫瘍学会だ。02年に「臨床腫瘍専門医」の創設を決め、現在研修を行っている。今年11月に初の認定試験を予定する。
抗がん剤は副作用が強いうえ、市販後も医師主導の臨床試験を通して標準治療の改良に取り組む特徴がある。人口が日本の約2倍の米国には約9000人の腫瘍内科医がいるとされ、同学会は日本の必要数を3000〜4000人とみている。
理事長の西條長宏・国立がんセンター東病院副院長は「系統的なカリキュラムにのっとって学び、薬物治療に精通した医師を育てることこそ、学会の役割だ」と話す。
一方、日本癌治療学会は昨年10月、「がん治療専門医」制度の創設を決めた。初試験は今年10月の予定だ。
同学会は会員の半数が外科医。日本の大学には臨床腫瘍学の講座がほとんどなく、外科医が手術と並行して抗がん剤治療をしてきた経緯がある。外科医の水準向上を目的に、臨床腫瘍専門医よりはるかに多い2万人の専門医養成を目指す。
北島政樹理事長(慶応大学医学部長)の下で制度づくりに当たる久保田哲朗・同大助教授(消化器外科)は「腫瘍内科医と外科医が分業してがん患者の治療に当たれる病院は一握り。多くのがん患者は外科医による薬物治療を受けている。外科医の薬物治療のレベルを上げることが重要ではないか」と話す。
外科領域の基盤学会である日本外科学会は癌治療学会の動きに反対の立場だ。「『がん治療専門医』を認定する必然性を感じない。将来的に外科医の仕事から薬物療法を切り離すよう働きかけるべきだ」とする文書を癌治療学会あてに送った。だが、2学会とも既定路線を突き進んでいる。
日本専門医認定制機構の酒井紀(おさむ)・代表理事は「統一的な研修カリキュラムや認定基準を作り、制度を一本化しないと国民のためにならない」といい、2学会に話し合いを呼びかけている。』
脳外科に関する最近できた専門医制度といえば血管内治療の専門医と脳卒中専門医である.日本脳神経血管内治療学会と日本脳卒中学会が認定している.日本脳神経血管内治療学会の方は脳外科医の会員が多いかもしれないが,日本脳卒中学会の方は大半が神経内科もしくは内科医であると思われる.
日本脳神経外科学会で脳卒中の内科的治療が取り上げられることはほとんどないためか,内科的治療も含めて実際の治療にあたってきた脳外科医に脳卒中専門医の認定を学会独自で行うようなことはしていない.この点で癌治療学会の動きはどうも外科医の仕事から薬物療法を切り離したくないように見える.
「『がん治療専門医』を認定する必然性を感じない。将来的に外科医の仕事から薬物療法を切り離すよう働きかけるべきだ」という考え方には私は賛成だ.脳卒中の治療も内科的なものはすべて脳卒中専門医の認定を受けた脳神経内科医にやってもらいたい.そうすれば脳外科医不足も解消されて脳外科医は本来の手術治療に専念できるわけである.
実際はそう簡単ではないことはわかっているが,今まで地域の脳卒中治療に貢献したつもりでいても脳卒中学会に属さなければ専門医認定もしないというのであれば脳外科医としてはやっぱり手術治療に専念したいというのが本音なわけである.
これは過失ではなく故意だ
2005年2月7日 社会の問題『--中学生が運転、1人死亡4人重軽傷 静岡--
6日午前3時25分ごろ、静岡県富士宮市城北町の県道交差点で、同市内の中学2年生の少年(14)が運転する乗用車と、同市朝日町の自営業、植松芳幸さん(35)の乗用車が出合い頭に衝突した。少年の車の助手席に乗っていた同市東町の会社員、田村直也さん(19)が胸を強く打ち間もなく死亡、運転していた少年と同乗の中学生の男女と植松さんの計4人が重軽傷を負った。
県警富士宮署の調べでは、現場は信号機のある見通しのいい片側1車線。車は少年の家族の所有で「遊びに行くため勝手に車を持ち出した」と話しているという。同署で事故原因を調べている。』
『--8人ひき逃げ、4人死亡で容疑者逮捕--
千葉県松尾町の県道で5日夜、同窓会の会場を出た男女8人が軽乗用車にはねられ、4人が死亡した事件で、千葉県警は6日、成東署に自首した同県成東町上横地、建設作業員田中佳志(よしゆき)容疑者(31)を業務上過失致死傷と道交法違反(ひき逃げなど)の疑いで緊急逮捕した。田中容疑者は昨年12月7日、速度超過などの交通違反で免停処分を受け、無免許状態だった。県警は危険運転致死傷容疑の立件も検討する。
田中容疑者は「車を何かにぶつけたが、人かどうかわからなかった。怖くて逃げた」「酒を飲んでいた」「時速70キロくらい出ていた」などと供述しているという。現場の制限速度は40キロだった。
5日の行動については「知人の四十九日の供養をした後、コンビニエンスストアで買った日本酒を九十九里海岸で1人で飲んでいた。そのまま軽乗用車を運転した」などと話している。軽乗用車は妻の名義だった。
田中容疑者は6日午前5時ごろ、「車を何かにぶつけたかもしれない」と成東署に電話し、知人に伴われて自首。現場に散乱していた部品と車種が一致した。 』
無免許運転あるいは免停中の事故が偶然続いたようだ.だが,結果は悲惨である.被害者を救おうと血だらけになったであろう救急隊員や医療関係者は大変だったことだろう.おまけに加害者が無免許の中学生や免停中の酒気帯びの男というのではなんともやりきれないことだったろう.
この加害者たちははきっと業務上過失致死罪ということになるのだろうが,これは車を運転する上での過失だったのだろうか.もともと運転の資格がないわけであるから,重大な事故を起こす可能性があるにもかかわらず敢えて運転したことは故意ではないのだろうか.
医療行為にも免許は必要である.医師は医師免許を持っている.医師免許を持たずに他人を傷つけたり死亡させたら傷害罪や殺人罪であろう.免許があるからこそ医療事故で患者が死亡したら業務上過失致死というのだろう.
運転する資格の無いものが死亡事故を起こしたら殺人罪を適用するのが妥当であろう.
6日午前3時25分ごろ、静岡県富士宮市城北町の県道交差点で、同市内の中学2年生の少年(14)が運転する乗用車と、同市朝日町の自営業、植松芳幸さん(35)の乗用車が出合い頭に衝突した。少年の車の助手席に乗っていた同市東町の会社員、田村直也さん(19)が胸を強く打ち間もなく死亡、運転していた少年と同乗の中学生の男女と植松さんの計4人が重軽傷を負った。
県警富士宮署の調べでは、現場は信号機のある見通しのいい片側1車線。車は少年の家族の所有で「遊びに行くため勝手に車を持ち出した」と話しているという。同署で事故原因を調べている。』
『--8人ひき逃げ、4人死亡で容疑者逮捕--
千葉県松尾町の県道で5日夜、同窓会の会場を出た男女8人が軽乗用車にはねられ、4人が死亡した事件で、千葉県警は6日、成東署に自首した同県成東町上横地、建設作業員田中佳志(よしゆき)容疑者(31)を業務上過失致死傷と道交法違反(ひき逃げなど)の疑いで緊急逮捕した。田中容疑者は昨年12月7日、速度超過などの交通違反で免停処分を受け、無免許状態だった。県警は危険運転致死傷容疑の立件も検討する。
田中容疑者は「車を何かにぶつけたが、人かどうかわからなかった。怖くて逃げた」「酒を飲んでいた」「時速70キロくらい出ていた」などと供述しているという。現場の制限速度は40キロだった。
5日の行動については「知人の四十九日の供養をした後、コンビニエンスストアで買った日本酒を九十九里海岸で1人で飲んでいた。そのまま軽乗用車を運転した」などと話している。軽乗用車は妻の名義だった。
田中容疑者は6日午前5時ごろ、「車を何かにぶつけたかもしれない」と成東署に電話し、知人に伴われて自首。現場に散乱していた部品と車種が一致した。 』
無免許運転あるいは免停中の事故が偶然続いたようだ.だが,結果は悲惨である.被害者を救おうと血だらけになったであろう救急隊員や医療関係者は大変だったことだろう.おまけに加害者が無免許の中学生や免停中の酒気帯びの男というのではなんともやりきれないことだったろう.
この加害者たちははきっと業務上過失致死罪ということになるのだろうが,これは車を運転する上での過失だったのだろうか.もともと運転の資格がないわけであるから,重大な事故を起こす可能性があるにもかかわらず敢えて運転したことは故意ではないのだろうか.
医療行為にも免許は必要である.医師は医師免許を持っている.医師免許を持たずに他人を傷つけたり死亡させたら傷害罪や殺人罪であろう.免許があるからこそ医療事故で患者が死亡したら業務上過失致死というのだろう.
運転する資格の無いものが死亡事故を起こしたら殺人罪を適用するのが妥当であろう.
NHKは受信料負担の納得できる理由を示せ
2005年2月5日 社会の問題『--NHK受信料、不払いへ 病院の貸しテレビ業界団体--
全国の病院に貸しテレビを納入している業者でつくる業界団体「テレビシステム運営協会」は3日、東京都内で幹事会を開いた後に記者会見し、NHKの不祥事などを理由に、2月以降の受信料支払いをストップすることを明らかにした。年間不払い総額は約40億円に上るとしている。
NHK広報局は「極めて遺憾。撤回を強く求めた」とした上で「40億円は推測の域を出ない。NHKがリース業者と契約しているのは数億円」と反論している。NHKによると、不祥事を理由とした法人の受信料支払い拒否は初めてという。
不祥事の影響で、NHKの2005年度受信料収入は04年度に比べ72億円の減収となる見通しだったが、減収額はさらに膨らみそうだ。
協会によると、精神病院などを除いた全国の病院に納入されているテレビ約100万台のほとんどを協会加盟業者が納入。病室ごとに受信契約をする仕組みで、NHKと業者側が約30万件の受信契約を交わしている。貸しテレビの多くは業者が病室のベッド脇などにテレビを設置し、患者がプリペイドカードを挿入すると一定時間の視聴ができる方式という。
NHK側は、病室にテレビが常設されている場合には受信契約が必要との立場。約10年前から受信料負担が発生したが、協会側は「患者は自宅でも受信料を負担しており二重払いになる」と反発し、業者側が受信料を負担してきたという。
協会は昨年12月に発足。加盟36社で従業員計約5000人。
協会の小木曽幸男(おぎそ・ゆきお)事務局長は「会長が辞任して顧問に就くなど考えられない。ずさんなNHKの実態を知り、まじめに支払うのはばかばかしくなった」としている。』
NHKの言う受信料の根拠にはどうにも納得がいかない.NHKは民間放送ではなくやはり国営放送だからなのだろうか.それなら税金で運営するべきだろう.国会で予算がつくらしいがそれなのになぜ見なくても受信回線やテレビがあるだけで料金を払わなければいけないのだろう.いまやテレビがあるからと言って必ずしも放送を見ているわけではない.
衛星放送のように料金を払わないと見れないようにしてくれれば料金を払ってまでNHKを受診する必要など私にはない.NHK特集は昔よく見ていたがこれもDVDで発売されるし,受信料を払っていても割引購入できるわけでもない.だからNHKは今こそ「まじめに支払うのはばかばかしく」ならない納得できる受信料負担の理由を国民に述べるべきだろう.それができないならもうNHKは民放になるべきだろう.
全国の病院に貸しテレビを納入している業者でつくる業界団体「テレビシステム運営協会」は3日、東京都内で幹事会を開いた後に記者会見し、NHKの不祥事などを理由に、2月以降の受信料支払いをストップすることを明らかにした。年間不払い総額は約40億円に上るとしている。
NHK広報局は「極めて遺憾。撤回を強く求めた」とした上で「40億円は推測の域を出ない。NHKがリース業者と契約しているのは数億円」と反論している。NHKによると、不祥事を理由とした法人の受信料支払い拒否は初めてという。
不祥事の影響で、NHKの2005年度受信料収入は04年度に比べ72億円の減収となる見通しだったが、減収額はさらに膨らみそうだ。
協会によると、精神病院などを除いた全国の病院に納入されているテレビ約100万台のほとんどを協会加盟業者が納入。病室ごとに受信契約をする仕組みで、NHKと業者側が約30万件の受信契約を交わしている。貸しテレビの多くは業者が病室のベッド脇などにテレビを設置し、患者がプリペイドカードを挿入すると一定時間の視聴ができる方式という。
NHK側は、病室にテレビが常設されている場合には受信契約が必要との立場。約10年前から受信料負担が発生したが、協会側は「患者は自宅でも受信料を負担しており二重払いになる」と反発し、業者側が受信料を負担してきたという。
協会は昨年12月に発足。加盟36社で従業員計約5000人。
協会の小木曽幸男(おぎそ・ゆきお)事務局長は「会長が辞任して顧問に就くなど考えられない。ずさんなNHKの実態を知り、まじめに支払うのはばかばかしくなった」としている。』
NHKの言う受信料の根拠にはどうにも納得がいかない.NHKは民間放送ではなくやはり国営放送だからなのだろうか.それなら税金で運営するべきだろう.国会で予算がつくらしいがそれなのになぜ見なくても受信回線やテレビがあるだけで料金を払わなければいけないのだろう.いまやテレビがあるからと言って必ずしも放送を見ているわけではない.
衛星放送のように料金を払わないと見れないようにしてくれれば料金を払ってまでNHKを受診する必要など私にはない.NHK特集は昔よく見ていたがこれもDVDで発売されるし,受信料を払っていても割引購入できるわけでもない.だからNHKは今こそ「まじめに支払うのはばかばかしく」ならない納得できる受信料負担の理由を国民に述べるべきだろう.それができないならもうNHKは民放になるべきだろう.